個人情報保護に関するコンプライアンス研修とは?
伝えるべきルール・違反のリスク・
企業に求められる取り組みなどを
分かりやすく解説!
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※この記事は、2026年10月29日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- ・個人情報保護法、法…個人情報の保護に関する法律
目次
個人情報保護に関するコンプライアンス研修とは
個人情報保護に関するコンプライアンス研修とは、個人情報保護法のルールや、個人情報を安全に取り扱うための具体的な行動などを従業員に理解させるための研修です。
企業には、個人データの安全管理措置を講じ、従業者を必要かつ適切に監督する義務があります(個人情報保護法23条・24条)。個人情報保護に関するコンプライアンス研修は、これらの義務を履行するための重要な取り組みの一つです。
後述するように、個人情報保護に関して従業員が知っておくべきことはたくさんあります。法務部門や情報システム部門などが連携し、効果的なコンプライアンス研修の内容や実施方法を検討しましょう。
個人情報保護に関するコンプライアンス違反・事故の具体例
個人情報の漏えいは、故意による持出しだけでなく、日常的なミスなどによっても発生することがあります。
(例)
・顧客宛ての一斉メールでBCCではなくCCを使い、送信先全員のメールアドレスを表示してしまう
・顧客名簿を保存したパソコンやUSBメモリを紛失する
・従業員が顧客情報を不正にコピーし、外部へ持ち出す
・不正アクセスを受け、顧客データが第三者に取得される
・利用目的と関係のない営業活動に、取得した個人情報を流用する
など
特に最近では、大企業などが相次いで不正アクセスを受け、個人情報が流出する事案が多発しています。情報セキュリティ対策の強化の一環として、個人情報保護の重要性は一層高まっているといえるでしょう。
コンプライアンス研修で伝えるべき個人情報保護法の主なルール
個人情報保護法では、個人情報の取扱いに当たって事業者が遵守すべきルールが詳細に定められています。コンプライアンス研修の内容は、個人情報保護法のルールを踏まえて設計することが大切です。
コンプライアンス研修で伝えるべき個人情報保護法の主なルールとしては、次の例が挙げられます。
① 個人情報・個人データ・保有個人データの違い
② 利用目的の特定・公表・本人への通知等
③ 取得・利用の方法
④ 安全管理措置
⑤ 従業者・委託先の監督
⑥ 漏えい等の報告・通知
⑦ 第三者提供
⑧ 開示請求等への対応
個人情報・個人データ・保有個人データの違い
個人情報保護法では、事業者が取り扱う情報等をさまざまな種類に区別しています。特に幅広い従業員に関係するものとしては、次の3つが重要です。
(a) 個人情報(法2条1項)
生存する個人に関する情報であって、氏名や生年月日などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することで識別できるものを含む)、または個人識別符号が含まれるもの
(b) 個人データ(法16条3項)
個人情報データベース等を構成する個人情報
※個人情報データベース等:個人情報を含む情報の集合物であって、特定の個人情報を検索できるように体系的に整理されたもの
(c) 保有個人データ(法16条4項)
事業者が開示・訂正・利用停止等を行う権限を有する個人データのうち、法定の除外事由に当たらないもの
なお「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者のうち、国の機関・地方公共団体・独立行政法人等・地方独立行政法人でないものをいいます(法16条2項)。
個人情報保護法の規定を正しく理解するためには、個人情報・個人データ・保有個人データの区別を意識する必要があります。
利用目的の特定・公表・本人への通知等
個人情報取扱事業者が個人情報を取り扱う際には、利用目的をできる限り特定しなければなりません(法17条)。また原則として、その目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはなりません(法18条)。
個人情報取扱事業者が個人情報を取得する際には、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、原則として速やかにその利用目的を本人へ通知し、または公表する必要があります(法21条)。
なお、申込書・契約書やウェブサイトの入力フォームなどで、本人から直接個人情報を取得する場合には、原則として、あらかじめ本人に利用目的を明示する必要があります(法21条2項・4項)。
コンプライアンス研修では、利用目的を特定するための記載の方法や、本人に対する通知・公表の手順などを従業員に伝えましょう。
取得・利用の方法
個人情報取扱事業者が偽りその他不正の手段で個人情報を取得することは禁止されています(法20条1項)。また、差別や犯罪などの違法または不当な行為を助長・誘発するおそれがある方法で個人情報を利用してはなりません(法19条)。
人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴などの要配慮個人情報を取得する際には、原則として事前に本人の同意を得る必要があります(法20条2項)。
コンプライアンス研修では、個人情報の入手経路や利用目的を確認し、個人情報保護法に従って処理すべき旨などを伝えましょう。
安全管理措置
個人情報取扱事業者は、取り扱う個人データの漏えい・滅失・毀損を防ぐため、必要かつ適切な安全管理措置を講じなければなりません(法23条)。
個人情報保護委員会のガイドラインでは、組織的・人的・物理的・技術的な安全管理措置などが示されています。各事業者においては、ガイドラインを参考にしつつ、自社の状況に適した安全管理措置を講ずることが求められます。
コンプライアンス研修では、個人情報の保存方法や持ち出す際の手続きなど、安全管理上必要な対応について従業員に周知しましょう。
従業者・委託先の監督
個人情報取扱事業者は、個人データを取り扱う従業者に対して必要かつ適切な監督を行わなければなりません(法24条)。正社員だけでなく、業務上個人データを扱う非正規社員や派遣社員なども監督の対象となり得ます。
また、個人データの取扱いを外部に委託した場合には、委託先に対する必要かつ適切な監督が求められます(法25条)。契約で秘密保持を約束させるだけでなく、安全管理の方法、再委託の条件、事故発生時の連絡方法などを確認することが重要です。
特に管理職や、個人情報の取り扱いを他社に委託する取引に関与する従業員については、コンプライアンス研修を通じて監督上の注意点などを周知しましょう。
漏えい等の報告・通知
個人情報取扱事業者において個人データの漏えい・滅失・毀損が発生し、またはそのおそれがある場合で、次のいずれかに該当するときは、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要です(法26条)。
- 要配慮個人情報が含まれる場合
- 不正利用によって財産的被害が生じるおそれがある場合
- 不正の目的をもって行われたおそれがある行為(ハッキングなど)によって漏えい等が生じた場合
- 対象となる本人の数が1,000人を超える場合
個人情報保護委員会に対しては、漏えい等の発覚後、速やかに(3~5日以内が目安)、把握している限りの情報をまとめて報告(速報)を行いましょう。
その後改めて、確定した情報の報告を行います。確報の期限は原則として、報告対象となる事態を知った日から30日以内です(不正目的による漏えい等については60日以内)。
本人への通知も、状況に応じて速やかに行わなければなりません。
コンプライアンス研修では、漏えい等のおそれを認識した時点で速やかに所定の部署へ報告すべき旨などを伝えましょう。
第三者提供
個人情報取扱事業者が個人データを第三者へ提供する際は、法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意を得る必要があります(法27条1項)。また、個人データの提供時および受領時には、法定の記録作成や確認が必要になる場合があります(法29条・30条)。
なお、外国にある第三者への提供には別途のルールが適用されます(法28条)。
コンプライアンス研修では、特に顧客情報を社外に送付したり、クラウドサービス上にアップロードしたりする際、事前に確認すべき事項や社内承認の手順などを確認しましょう。
開示請求等への対応
個人情報取扱事業者が本人から保有個人データの開示を請求されたときは、法定の不開示事由に該当する場合を除き、原則として遅滞なく開示する必要があります(法33条)。
また、保有個人データの内容が事実でない場合の訂正等や、利用停止・消去、第三者提供の停止の請求にも、一定の要件を満たす場合には対応しなければなりません(法34条・35条)。
企業としては、保有個人データの開示請求等に関する窓口を設けるとともに、その担当者に対して、対応の手順や注意点に関する研修を行いましょう。
個人情報の漏えい等が発生した場合に、企業が負うリスク
個人情報の漏えい等が起きた場合、企業は行政処分等や民事上の責任、信用低下などのリスクに直面します。
個人情報保護委員会は、個人情報の取扱いについて問題が認められる事業者に対し、報告徴収や立入検査、指導や助言、勧告や命令などを行うことがあります。これらの行政指導や行政処分を受けたときは、速やかに必要な対応を講じなければなりません。
個人情報の漏えい等によって本人に損害が生じた場合には、企業が損害賠償を求められることもあります。特に漏えい等の規模が大きい場合は、総額で多額の損害賠償責任を負う可能性もあるので要注意です。
さらに、個人情報等の管理が不適切であったことが社会的に広まると、企業としての信頼を失い、取引先との関係などに悪影響が及ぶことも懸念されます。
こうしたリスクを防ぐためにも、日頃から適切に個人情報を管理し、漏えい等の予防に努めることが大切です。
個人情報の漏えい等を防ぐため、企業が取り組むべきこと
個人情報保護に関するコンプライアンスを強化するため、企業は次の取り組みなどを行いましょう。
① 個人情報の取扱いに関する社内規程を整備する
② 個人情報保護に関する従業員研修を行う|分かりやすく伝える
③ 取るべき行動を伝える|誤送信・紛失に気付いたら隠さずすぐに報告
④ 委託先における個人情報の取扱方法を確認する
個人情報の取扱いに関する社内規程を整備する
個人情報の取扱いに関する社内の統一的なルールを定めるため、社内規程を整備しましょう。
取得・利用・保管・持出し・第三者提供・廃棄などの場面ごとに、個人情報を取り扱う担当者が守るべきルールや手順を明確化します。個人情報の重要度に応じ、アクセス権限や持出しの承認手続き、保存期間や廃棄方法なども適切に定めましょう。
個人情報保護に関する従業員研修を行う|分かりやすく伝える
個人情報保護の重要性や方法に関する従業員の理解を深めるため、定期的に従業員研修を実施しましょう。
実際の業務を想定したケーススタディやロールプレイなどを盛り込みながら、従業員にとって分かりやすい形で情報を伝えることが大切です。受講後の理解度を確認するため、eラーニングを通じた確認テストを実施することも考えられるでしょう。
従業員研修は、取り扱う業務の内容に応じて実施するのが効果的です。特に個人情報を日常的に取り扱う従業員や、問い合わせ窓口となる従業員に対しては、追加的な研修を行うことも考えられます。
取るべき行動を伝える|誤送信・紛失に気付いたら隠さずすぐに報告
個人情報の取扱いに関する誤送信や紛失などの人為的ミスを、完全になくすことはできません。重要なのは、ミスしたかもしれないと気付いたら速やかに適切な行動をとり、漏えい等のリスクを最小限に抑えることです。
従業員研修や日常の業務の中で、個人情報の漏えい等が懸念される事態に直面したとき、どのような行動をとるべきかを確認しておきましょう。
特に、個人情報管理を所管する部署へ速やかに報告することや、自分だけの判断で記録を消さないことなどを十分に周知することが大切です。
委託先における個人情報の取扱方法を確認する
個人データを取り扱う業務を外部に委託する際は、委託先における個人情報の取扱方法に問題がないことを確認する必要があります。
業務委託契約などを締結するに当たっては、個人情報の利用目的や目的外利用の禁止、安全管理措置、再委託の可否や条件など、漏えい等を防止するための規定を設けることが望ましいです。
実際の個人情報の取扱方法についても、質問票などによって確認しておくとよいでしょう。また、業務委託の開始後も必要に応じて個人情報の取扱状況を確認し、継続的に監督を行うことが大切です。
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参考文献
個人情報保護委員会ウェブサイト「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
個人情報保護委員会ウェブサイト「漏えい等の対応とお役立ち資料」
個人情報保護委員会ウェブサイト「LINEヤフー株式会社に対する個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について(令和6年3月28日)」












