営業におけるコンプライアンスとは?
違反例・注意すべき法令・
違反防止の取り組みなどを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

企業が営業活動を行う際には、コンプライアンスを徹底することが求められます。

不適切な取引条件の設定、取引先や顧客に対する説明不足や虚偽の説明、営業秘密の不正使用などの営業担当者によるコンプライアンス違反が発生すると、企業としての評判が大きく損なわれるほか、損害賠償責任や契約解除などのリスクも生じるので要注意です。

営業活動に関するルールの明文化、複数人による営業活動のチェック、内部通報制度の導入・運用、コンプライアンス研修などを通じて、営業に関するコンプライアンス違反のリスクを防ぎましょう。

この記事では営業におけるコンプライアンスについて、違反の具体例や営業担当者が特に注意すべき法令、企業に求められる違反防止の取り組みなどを解説します。

ヒー

営業部にコンプライアンス研修をしてほしいという依頼がありました。特有のリスクや注意すべきことはありますか?

ムートン

商品や契約条件の説明、顧客情報の管理など、日々の営業活動にも注意点があります。コンプライアンスのポイントを確認しましょう。

※この記事は、2026年10月29日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • ・独占禁止法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
  • ・取適法…製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
  • ・特定商取引法…特定商取引に関する法律
  • ・個人情報保護法…個人情報の保護に関する法律
  • ・景品表示法…不当景品類及び不当表示防止法

営業におけるコンプライアンスとは

営業におけるコンプライアンスとは、営業活動を法令・社内規程・企業倫理などの社会規範に沿って適切に行うことをいいます。営業担当者には売上目標の達成だけでなく、顧客や取引先に対して適切な説明を行うなどして、公正・公平な関係を築くことが求められます。

例えば契約にない追加料金の請求、虚偽の説明、顧客情報の目的外利用などの不適切な営業活動を行うと、違法な取引や重大な信用失墜につながるおそれがあります。
法務・コンプライアンス部門と連携しつつ、適用される法令やその他の社会規範を遵守し、適切に営業活動を行いましょう。

営業担当者によるコンプライアンス違反の具体例

営業担当者によるコンプライアンス違反の例としては、次のような行為が挙げられます。

  • 顧客に著しく不利な契約条件を押し付ける。
  • 契約上の根拠も顧客の同意もないまま、追加料金を請求する。
  • 商品の性能や契約条件について事実と異なる説明をする。
  • 根拠のない「業界No.1」などの広告表現で顧客を誘引する。
  • 顧客の個人情報を、本人の同意なしにあらかじめ特定した利用目的以外の目的に利用する。
  • 前職の顧客名簿や取引先の営業秘密を、無断で持ち出して営業活動に利用する。
  • 架空の売上を計上する。
  • 会社の許可を得ることなく値引きをして、ポケットマネーで埋め合わせる。
  • 接待費を不適切な形で支出する。

これらの行為は、法律上違法となり得るだけでなく、顧客との信頼関係の破綻や社会的評価の失墜などにもつながります。不適切な営業行為の背景には、無理な売上目標や不適切な評価制度などが存在する場合もあるため、会社として組織的な検証を行うことが重要です。

営業担当者が特に注意すべき法令

営業担当者が注意すべき主な法令としては、次の例が挙げられます。各法令につき、営業上問題になりやすいポイントを解説します。

① 独占禁止法
② 取適法
③ 消費者契約法・特定商取引法
④ 景品表示法
⑤ 個人情報保護法
⑥ 不正競争防止法

独占禁止法

独占禁止法は、公正で自由な競争を確保するため、私的独占や不当な取引制限、不公正な取引方法などを規制する法律です。

営業活動においては、競合他社と協議して販売価格などを取り決めるカルテルや、取引上の優越した立場を利用して不当に相手方に不利益を与える優越的地位の濫用などが問題になります。
競合他社との情報交換を行う場合や、自社よりも小規模な取引先との間で取引条件を定める場合などには、法務部門に確認を求めることが望ましいです。

取適法

取適法は、中小受託取引の公正化と中小受託事業者の利益保護を目的とする法律です。
一定の種類の取引(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託)のうち、当事者の資本金または従業員数に関する要件を満たすものに適用されます。

取適法が適用される場合、委託事業者(発注者)には取引条件の明示、書類等の記録・保存、支払期日の適切な設定などが義務付けられます。
また委託事業者には一定の禁止行為が課されており、受領拒否・代金の減額・支払遅延・協議に応じない一方的な代金決定などが禁止されます。

特に営業活動の場面では、価格交渉に関して取適法違反が生じるケースがあるので注意を要します。

例えば、顧客から受注した制作業務の一部を外部の制作会社に委託するなど、営業担当者が外注先との価格交渉に関わる場合があります。中小受託事業者(受注者)から原材料費や人件費の上昇を理由に価格協議を求められたときは、必要な説明を行いながら誠実に協議することが重要です。

価格交渉の申出を拒否して一方的に価格を決定すると、取適法違反に当たるおそれがあります。最終的に相手方が代金額などに同意したとしても、取適法違反の責任を免れるとは限らない点に留意してください。

消費者契約法・特定商取引法

消費者契約法は、消費者と事業者の間に情報や交渉力の格差があることを踏まえ、消費者を保護するための規制を定めた法律です。事業者が不当な勧誘を行った場合の契約取消しや不当な契約条項の無効などを定めています。

営業活動においては、商品・サービスの内容や価格、契約条件などについて正確に説明することが重要です。事実と異なる説明や、将来の不確実な事項についての断定的な説明などによって消費者を誤認させた場合は、消費者契約法に基づく契約取消しの対象となることがあります。

特定商取引法は、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売などの特定の取引類型について、消費者を保護するための法律です。
規制対象となる取引については、不適切な勧誘行為の禁止やクーリングオフなどの規定が定められている点に留意しつつ、顧客に対する説明等を行うことが求められます。

景品表示法

景品表示法は、不当な景品類の提供や不当表示を防止し、一般消費者の自主的・合理的な選択を確保するための規制を定めた法律です。

景品表示法では、商品・サービスの品質や価格などについて、消費者を誤認させる不当表示を禁止しています。
実際の商品・サービスや競合他社のものに比べて、品質等を著しく優良だと誤認させる優良誤認表示、価格などの取引条件を著しく有利だと誤認させる有利誤認表示が禁止されています。また、広告であることを分かりにくくするステルスマーケティングなども不当表示に該当します。

景品表示法による規制の対象は、広告やSNS投稿だけでなく、営業資料や提案書などにも及ぶことがあります。営業担当者は、商品・サービスの品質や価格などについて、消費者に誤解を与える説明をしないよう注意しなければなりません。
特に「絶対」「最安値」「No.1」などの表現を使用する際は、客観的な根拠の有無や比較対象・調査条件などを十分に確認しましょう。

個人情報保護法

個人情報保護法は、顧客などの個人情報について、取得・利用・管理・第三者提供などのルールを定めた法律です。

営業担当者が顧客から個人情報を取得する際には、個人情報保護法のルールを遵守しなければなりません。
例えば、個人情報の目的外利用をしないことや、会社が定めた方法に従って安全管理を行うことなどが挙げられます。個人データを第三者に提供する場合には、法定の例外に当たる場合などを除き、原則として本人の同意が必要です。

また、電子メールの誤送信やPCの紛失などの人為的ミスによる個人情報の漏えいについても、できる限り防ぐよう努めなければなりません。万が一、個人情報が漏えいしてしまったおそれがあることに気づいたときは、速やかに社内の個人情報管理を担当する部署へ報告しましょう。

不正競争防止法

不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を確保することなどを目的とした法律です。営業秘密の不正な取得・使用・開示などを規制しています。

例えば営業活動を行うに当たり、前職の会社から不正に持ち出した顧客リストを利用して営業を行うと、不正競争防止法違反に該当することがあります。会社としても、転職を経験した従業員に対して、前職の顧客情報を利用することなどを求めてはいけません。

営業に関するコンプライアンス違反が発生した場合に、企業が負うリスク

営業活動に関してコンプライアンス違反が起きると、企業は次に挙げるリスクなどを負ってしまいます。

① 損害賠償
コンプライアンス違反による顧客や取引先の損害を賠償する責任を負うことがあります。

② 契約解除
契約違反に該当する場合は、顧客や取引先に契約を解除されることがあります。

③ 行政処分、行政指導
監督官庁から違反の是正を求められたり、違反の事実を公表されたりすることがあります。

④ 刑事罰
悪質な法令違反は、刑事罰の対象となることがあります。

⑤ 信用の失墜
営業上のコンプライアンス違反が社会に周知されると、企業としての信用を失い、業績に悪影響が及んでしまうことがあります。

⑥ 対応のコスト
違反に関する調査・対応や再発防止などにつき、多大な費用がかかることがあります。

これらのリスクを最小限に抑えるためには、日頃から営業上のコンプライアンス強化に取り組み、できる限り違反が生じないようにすることが大切です。また、コンプライアンス違反が発生した場合の対応手順なども明確化しておきましょう。

営業担当者によるコンプライアンス違反を防ぐため、企業が取り組むべきこと

営業担当者によるコンプライアンス違反を防ぐ観点からは、次に挙げる対策によって効果を得られることがあります。自社の状況に合わせて、適切にコンプライアンス強化の取り組みを行いましょう。

① 営業活動に関するルールを明文化する
② 過度な評価制度やノルマを見直す
③ 営業活動の内容を複数人でチェックする
④ 内部通報窓口を導入・運用する
⑤ 営業担当者向けのコンプライアンス研修を実施する

営業活動に関するルールを明文化する

営業活動において守るべきルールを具体的な業務手順に落とし込み、従業員に周知しましょう。

例えば、次の事項などを明記した社内規程や業務マニュアルを整備することが考えられます。上司や法務・コンプライアンス部門、経営陣との連携が確保できるような仕組みも整えましょう。

  • 値引きなど、契約条件の変更に必要な承認の手続き
  • 営業上の表現に関するルール
  • 顧客に対して説明すべき事項
  • 顧客情報の管理方法
  • 接待や贈答の基準
  • コンプライアンス違反が疑われる場合の報告先

過度な評価制度やノルマを見直す

売上目標が過度に厳しいと、顧客に対する無理な勧誘など、不適切な営業活動につながるおそれがあります。売上高だけを評価するのではなく、別の観点からも営業担当者の能力や貢献を評価する仕組みを導入することが望ましいです。

例えば、契約条件の変更について必要な承認を得ているか、顧客への説明や苦情への対応を適切に行っているかなどを、営業記録や社内の報告内容に基づいて確認することが考えられます。
こうした項目を人事評価に取り入れることで、売上目標の達成を優先するあまり、法令や社内ルールを軽視することを防ぎやすくなります。

営業担当者に対して課すノルマについても、労働時間や個々の能力などを踏まえて適切な範囲内に収めることが重要です。ノルマ達成が難しい従業員に対する威圧的な指導は避け、目標設定が実態に合っているかどうかを定期的に見直しましょう。

営業活動の内容を複数人でチェックする

高額な契約・例外的な値引き・新しい広告表現など、リスクの高い営業活動については複数人によるチェックを行うと、コンプライアンス違反のリスクを抑えることができます。

営業部門内の上司だけでなく、内容に応じて法務・経理・情報管理部門などの確認を受ける仕組みを整えましょう。トラブルが発生した場合に備えて、検討の過程を記録に残しておくことも重要です。

内部通報窓口を導入・運用する

営業上のコンプライアンス違反を未然に防ぎ、または早期に発見して対処するためには「内部通報窓口」を導入することが効果的です。

内部通報窓口では、社内における不正行為などに関する従業員等の通報を受け付けます。通報者が不利益な取扱いを受けないよう保護して自発的な通報を促し、通常の業務報告では表面化しにくい不正行為の兆候を早期に把握して対処することが内部通報窓口の狙いです。

内部通報窓口を導入する際には、窓口の存在や通報者が不利益な取扱いを受けない旨を、社内広報や研修などを通じて従業員に周知しましょう。

営業担当者向けのコンプライアンス研修を実施する

営業上のコンプライアンスについて営業担当者の理解を深めるため、定期的にコンプライアンス研修を実施しましょう。

営業担当者向けのコンプライアンス研修では、営業上問題となりやすい違反の実例を取り上げ、自分の業務に即して理解を深められるようにすることが重要です。ケーススタディやディスカッションなどを取り入れると、受講者の積極的な参加を促すことができます。

法令改正や時事的な問題についても最新の知識を身に付けてもらうため、半年~1年に1回程度のペースで定期的にコンプライアンス研修を行うことが望ましいでしょう。

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