アンガーマネジメントとは?
ハラスメント防止の効果・方法・6秒ルール・
企業の取り組みや研修などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

「アンガーマネジメント」とは、怒りの感情を適切にコントロールすることをいいます。

怒りの感情はパワーハラスメント(パワハラ)などにつながりやすいところ、各従業員にアンガーマネジメントを促すことはハラスメントの防止につながります。従業員研修の実施や相談窓口の設置、風通しのよい職場環境の整備などを通じて、アンガーマネジメントによるハラスメントの防止を図りましょう。

この記事ではアンガーマネジメントについて、ハラスメント防止の効果や具体的な方法、企業に求められる取り組みなどを解説します。

ヒー

部下を指導するとき、つい感情的になってしまうのを防ぐ方法はありますか?

ムートン

怒りに任せた言動をとらないために、アンガーマネジメントが役立ちます。怒りを無理に我慢するのではなく、適切な対処方法を学びましょう。

※この記事は、2026年10月29日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • ・労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

ハラスメント防止におけるアンガーマネジメントの重要性

怒りへの対処方法を学ぶアンガーマネジメントは、職場におけるハラスメントの防止に役立ちます。感情的な言動を抑える術を身に付けることは、部下への指導方法や、怒りが生じやすい職場環境などを見直すきっかけにもなります。

企業としては、従業員個人の努力だけに任せず、研修や相談体制の整備などと組み合わせてアンガーマネジメントの促進に取り組みましょう。

ハラスメントとは|怒りの気持ちはパワハラに注意!

ハラスメントとは、相手の尊厳を傷つけたり、働く環境を害したりする言動などを指します。職場においてはさまざまな種類のハラスメントが問題になり得るところ、企業はパワハラ・セクハラなどの防止のために雇用管理上必要な措置を講ずる義務を負います。

怒りを相手にぶつける行為は、特に「パワーハラスメント(パワハラ)」に該当するおそれがあります。

パワーハラスメント(パワハラ)とは、次の3つの要件を満たす言動です(労働施策総合推進法30条の2)。

① 職場における優越的な関係を背景とした言動であること
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えること
③ 労働者の就業環境が害されること

例えば、部下のミスに腹を立て、大声で人格を否定する言動をすればパワハラに当たる可能性が高いと考えられます。

従業員の問題行動を改善させるための適正な業務指導まで、パワハラに当たるわけではありません。しかし、業務上必要な範囲を超える過度な指導はパワハラに該当し得るため、言葉遣い・場所・時間・頻度などに注意することが大切です。

アンガーマネジメントとは|怒りを我慢することではない

アンガーマネジメントとは、怒りの感情を理解し、状況に応じて適切な行動を選択するための考え方や技術です。怒らないことや、怒りを無理に我慢することが目的ではありません。

怒りは、危険を察知したり不当な扱いに気付いたりする際にも生じる自然な感情であって、無理やり抑え込むべきものではありません。重要なのは、怒りの感情に任せて人を傷つける言動をとってしまうのを防ぐことです。そのために、自分の心や行動を適切にコントロールすることがアンガーマネジメントの主眼となります。

アンガーマネジメントがパワハラ防止につながる理由

アンガーマネジメントを実践すれば、怒りに任せた過度な叱責を避け、業務上必要かつ相当な範囲での指導を行いやすくなるため、パワハラの防止につながると考えられます。
部下がミスをした場合にも、怒鳴ったり人格を否定したりすることなく、ミスの原因や改善すべき点を具体的に伝えることができます。

また、自分が怒りやすい状況を把握して客観的に分析することは、職場環境を改善するきっかけにもなり得ます。業務負担の偏りや人員不足、従業員間のコミュニケーション不足などの問題点を見出し、その改善に取り組むことで、パワハラの生じにくい職場環境の構築へとつなげることができます。

アンガーマネジメントの具体的な方法

業務の中で役立つアンガーマネジメントには、怒りを感じたその場で使える方法や、平時から怒りの原因を減らす方法などがあります。

具体的なアンガーマネジメントの方法としては、次の例が挙げられます。自分に合う方法を組み合わせて実践しましょう。

① 怒りをすぐに行動へ移さず、落ち着く時間を設ける|6秒ルールの考え方
② 怒りの原因を分析し、とるべき行動を整理する
③ 怒りを相手にぶつける前に、伝え方・叱り方を考える
④ 規則正しい生活を送り、体調を整える
⑤ 業務量を調整して、忙しすぎる状況を避ける
⑥ メンターなどと話す機会を設ける

怒りをすぐに行動へ移さず、落ち着く時間を設ける|6秒ルールの考え方

業務の中で強い怒りを感じたときには、すぐに発言や返信をせず、少し間を置きましょう。深呼吸をする、その場で水を飲む、落ち着いてから面談をするなどの方法が考えられます。

怒りをすぐに行動へ移さず、落ち着く時間を設けるためには、いわゆる「6秒ルール」という考え方が有用です。怒りを感じた直後の反射的な行動を避けるため、6秒程度の短い時間を置くという考え方です。
6秒待てば怒りが必ず消えるという科学的な法則ではありませんが、感情が高ぶった瞬間に相手を叱責しないためには一つの方法として役立つでしょう。

怒りの原因を分析し、とるべき行動を整理する

怒りを感じた場面を振り返り、何が引き金になったかを分析してみましょう。それまでの出来事や、自分が感じたことを書き出してみると、怒りの原因を分析しやすくなります。

例えば「期限を守らなかったこと」に腹を立てたのか、「事前の相談がなかったこと」に不満を感じたのかでは、求める改善策が異なります。自分の中で怒りの原因を整理すれば、とるべき行動が明確になるでしょう。

怒りを相手にぶつける前に、伝え方・叱り方を考える

相手に対する注意や叱責が必要なときでも、怒りの感情をそのままぶつけては、かえって相手の反発を招くなど逆効果になりかねません。改善すべき点を建設的に伝えられるように、伝え方や叱り方を工夫することが大切です。

「どうしていつもできないんだ」「やる気がない」などと決めつけるのではなく、「○○が問題だと思う。~のように改善してほしい」などと、問題点と改善に向けた要望を具体的に伝えましょう。相手に言い分があれば耳を傾け、話し合いながら合理的な解決策を検討します。必要以上に声を荒らげたり、人前で長時間叱ったりすることは避けましょう。

改善点については、細分化して具体的に指摘することが効果的です。例えば、資料の誤記が続く場合は「確認が不十分だ」などと抽象的に責めるのではなく、チェックすべき項目や提出前の確認方法を具体的に提案しましょう。

規則正しい生活を送り、体調を整える

睡眠不足や疲労、体調不良などが重なると、普段なら気にならない出来事にも強く反応しやすくなります。怒りの感情をコントロールするためには、規則正しい生活を送って体調を整えましょう。睡眠時間の確保、休憩、適度な運動などは、アンガーマネジメントの一環として重要な取り組みといえます。

会議や対応すべき業務が途切れることなく続きがちな場合は、休憩やリフレッシュの時間を取れるような予定の組み方を意識しましょう。心身の不調が続く場合は、医療機関の受診も検討してください。

業務量を調整して、忙しすぎる状況を避ける

過重な業務や納期・ノルマに対する強いプレッシャーは、怒りやいらだちを生じさせる要因になり得ます。業務量が多すぎないか、厳しい納期やノルマに追われていないかをセルフチェックし、問題があれば速やかに人事部門や上司などへ相談しましょう。

管理職としては、部下が過酷な業務状況に陥っていないかについて常に気を配ることが求められます。こまめに面談を行うなどして、部下の業務状況をタイムリーに把握しましょう。

会社全体としても、特定の従業員に業務の負担が偏らないように、状況に応じて適切な人員配置や人員の増強などを検討すべきです。

メンターなどと話す機会を設ける

怒りを感じた出来事を信頼できる第三者に話すと、自分の受け止め方を客観視しやすくなります。

特に、悩みや課題について相談に乗り、助言や支援を行うメンターに相談すると、怒りの感情をうまくコントロールする方法のアドバイスを受けられるかもしれません。経験豊富な従業員をメンターとして配置する制度を会社として設けることも、従業員のアンガーマネジメントを促す観点から効果的な場合があります。

従業員にアンガーマネジメントを促すため、企業が取り組むべきこと

従業員の間でアンガーマネジメントの意識を定着させるためには、企業による継続的な支援が欠かせません。次の取り組みなどを行い、アンガーマネジメントの行き届いた働きやすい職場を作っていきましょう。

① アンガーマネジメント研修を実施する
② 相談窓口を設置する
③ 管理職向けのメンター制度を設ける
④ ストレスチェックを実施する
⑤ 風通しのよい職場環境を整える

アンガーマネジメント研修を実施する

アンガーマネジメントの考え方や具体的な実践方法を、十分に理解していない従業員もいると考えられます。企業としてアンガーマネジメントを促進するためには、研修を通じて基本的な知識を伝え、実際の業務で活用できるように支援することが重要です。

研修では、怒りが生じるプロセスや感情との向き合い方、怒りを感じた際の対処方法などをテーマとして取り上げましょう。例えば、部下が期限までに報告をしなかった、取引先から厳しい要求を受けたといったストレスのかかる具体的場面を設定し、どのように怒りに対処するかを考える内容を盛り込むと、実践的な対応力を養うことができます。

特に管理職に対しては、適切な業務指導とパワハラの違いや、感情的な叱責を避けて改善を促す方法などを重点的に伝えましょう。

アンガーマネジメント研修は一度限りで終わらせず、定期的に実施しましょう。研修で学んだ内容を日々の業務で実践し、その結果を振り返る機会を設けることで、知識や技術の定着を図ることができます。

相談窓口を設置する

従業員が業務の中で怒りやストレスを感じた際に、気軽に相談できる窓口を設置しましょう。例えば、ハラスメントに関する相談窓口を設けたうえで、感情への対処や職場環境に関する相談も受け付ける方法などが考えられます。

従業員に早期の相談を促すためには、相談内容の秘密を守ることや、相談を理由として不利益な取扱いを受けないようにすることが重要です。その旨を従業員に対して周知するとともに、相談担当者が適切に対応できるように研修やマニュアル整備などを行いましょう。

管理職向けのメンター制度を設ける

部下の育成や評価を担う管理職は、悩みを一人で抱え込みやすい立場です。経験豊富な管理職や外部の専門家などをメンターとして配置し、指導上の悩みや職場内の対立について定期的に話せる仕組みを設けましょう。

考え方や答えを一方的に押し付けるのではなく、対話を通じて状況の整理や対応策の検討などを支援するのがメンターの役割です。社内にメンター制度を設ける場合は、メンターとなる人に対して、傾聴の重要性や適切な助言の方法などを周知しましょう。

ストレスチェックを実施する

「ストレスチェック」とは、従業員自身がストレスの状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度です。常時50人以上の労働者を使用する事業場では定期的なストレスチェックの実施が義務付けられており、2028年4月1日からは50人未満の事業場にも義務付けられます。

ストレスチェックは、従業員が自分のストレス状態に気付くきっかけになるとともに、職場環境の改善にも役立ちます。

例えば、部署ごとのストレスの傾向を集団分析によって把握すれば、業務負担が大きい部署や、職場の人間関係に問題を抱えている可能性のある部署などを見つけやすくなります。分析結果を踏まえて業務量や勤務時間、相談体制などを見直すことで、従業員の怒りやストレスが生じにくい職場環境の整備につなげられます。

なお、ストレスチェックの結果を取り扱う際は、プライバシーの保護に十分配慮してください。

参考:厚生労働省ウェブサイト「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」

風通しのよい職場環境を整える

従業員同士が、自分の考えや気持ちを率直かつ冷静に伝えられる環境を整えましょう。怒りの原因となる問題を早期に共有し、話し合いによって解決できれば、感情的な言動を防ぎやすくなります。

企業が具体的にとるべき対応としては、定期的な従業員アンケートや個別面談、意見を匿名で投稿できる仕組みを設けることなどが挙げられます。従業員から寄せられた意見等を踏まえて、業務分担や指示方法、人間関係などの問題点の改善に取り組みましょう。

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参考文献

厚生労働省ウェブサイト「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」