【東京高判令和6年4月24日】
弁護士に対して顧客情報を有償で提供する
業務委託契約が公序良俗違反により
無効とされた事例
- この記事のまとめ
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東京高裁令和6年4月24日判決では、インターネット上で債務整理案件を集客する事業を営むX1社とX2社が、弁護士Yに対して業務委託契約に基づく未払委託手数料の支払いを求めた事案が問題になりました。
東京高裁は、X1社・X2社が相談希望者の顧客情報等を弁護士Yに有償で提供し、これによって初めてYは債務整理案件の受任が可能となっていたという関係が認められると指摘したうえで、X1社・X2社の行為が弁護士法72条後段によって禁止されている「周旋」に当たると認定しました。
そして弁護士法72条後段の趣旨に鑑み、かかる違法な周旋を前提とする本件業務委託契約は公序良俗違反により無効であると判断し、X1社・X2社の控訴を棄却しました。弁護士の集客をサポートする事業者は、サポートの内容が弁護士法違反の「周旋」に当たらないように注意する必要があります。本判決の要点を踏まえつつ、弁護士法のルールを正しく理解し、適正に事業を運営することが求められます。
| 裁判例情報 東京高裁令和6年4月24日判決(判例タイムズ1537号100頁) |
※この記事は、2026年6月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
事案の概要
インターネット上で債務整理案件を集客する事業を営むX1社とX2社が、弁護士Yに対して業務委託契約に基づく未払委託手数料の支払いを求めた事案です。
Yは、知人であるAの紹介を受け、2017年5月22日に、X1社との間で業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という)を締結しました。業務委託契約に基づいて行われた事業(以下「本件事業」という)の枠組みは、次のとおりです。
| ① B社が債務整理の依頼者を集客するため、「街角法律相談所」というウェブサイト(以下「本件サイト」という)を運営する。本件サイトには法律事務所の広告が掲載されており、アクセスした者は相談を希望する法律事務所を選択して、氏名・住所・連絡先・負債総額・債権者数などを登録することができる。B社は、登録されたこれらの顧客情報(以下「顧客情報等」という)を取得する。 ② B社はX1社との間で、Yの法律事務所(以下「Y事務所」という)の広告掲載に係る契約を締結する。X1社は同契約および本件業務委託契約に基づき、Y事務所の広告を本件サイトに掲載できるほか、B社が取得した顧客情報等を1件1万5000円で買い取ることができる。 ③ X1社は、B社から買い取った顧客情報等を、Yに対して有償で提供する。さらにX1社は、Yに対して運転資金800万円を無利息で貸付け、事務所を賃貸し、労働者派遣契約を締結してY事務所に事務員を派遣する。 ④ Yは、X1社から提供を受けた顧客情報等に基づいて、相談希望者と面談等を行った後に委任契約を締結し、破産・個人再生・任意整理などの債務整理手続きを進める。 ⑤ Yは、依頼者から受領した着手金・成功報酬から、事務所賃料と人件費をX1社に支払う。さらに一定の経費を控除した残額から30万円(後に40万円に増額)を受領し、残りの額の90%(後に80%に減額)を広告報酬としてX1社に支払う。X1社は、そのうちの一部をAに支払う。 |
その後YとX1社は、X2社を含めた3者で本件事業を協力して行うことを合意し、広告に関する業務はX2社が担当するようになりました。
しかし、X1社・X2社・Yの関係が悪化したため、2020年8月21日に本件業務委託契約は合意解除され、本件事業に関する協力関係は解消されました。X1社とX2社は、Yに対して未払委託手数料の支払いを求め、東京地裁に訴訟を提起しました。
東京地裁は、X1社とX2社の行為が弁護士法72条後段によって禁止される「周旋」に当たることを理由に、本件業務委託契約を公序良俗違反により無効とし、X1社とX2社の請求を棄却しました。X1社とX2社はこれを不服として、東京高裁に控訴を提起しました。
控訴審においても、本件業務委託契約が公序良俗違反によって無効となるか否かが主な争点となりました。












