2024年に成立した法改正のまとめ!
ビジネスに関する重要法令のポイント・
施行時期などを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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2024年(令和6年)の国会では、さまざまな重要な改正法・新法が成立しました。
企業法務の担当者は、自社の事業に関連する法改正について、そのポイントや施行時期などの情報収集を行いましょう。この記事では、2024年に成立した重要な法改正の概要を解説します。
※この記事は、2024年7月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 特定秘密保護法…特定秘密の保護に関する法律
- 重要経済安保情報保護法…重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律
- 育児介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
- プロバイダ責任制限法…改正法による改正前の「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」
- 情報流通プラットフォーム対処法…改正法による改正後の「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」から題名変更)
- スマホソフトウェア競争促進法…スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律
- 流通業務総合効率化法…改正法による改正前の「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」
- 児童対象性暴力防止法…学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律
目次
2024年(令和6年)に成立した主な法改正一覧
2024年(令和6年)の通常国会では、さまざまな改正法・新法が成立しました。そのうち、企業にとって重要なものをご紹介します。
- 2024年に成立・公布された主な法令
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① 重要経済安保情報保護法(2025年5月までに施行)|セキュリティ・クリアランス制度の強化
② 産業競争力強化法等(2024年9月までに施行)|戦略的国内投資の拡大、中堅企業・スタートアップへの集中支援
③ 育児介護休業法(2025年4月1日施行)|育児休業・介護休業の拡充など
④ 雇用保険法等・子ども子育て支援法等(2025年4月1日等施行)|雇用保険制度の拡充・見直しなど
⑤ 情報流通プラットフォーム対処法(旧:プロバイダ責任制限法、2025年5月までに施行)|大規模プラットフォーム事業者に対する新規制
⑥ スマホソフトウェア競争促進法(2025年12月までに施行)|大手IT事業者への規制拡大
⑦ 消費生活用製品安全法等(2025年12月までに施行)|取引DPF規制・玩具等の子供用特定製品の安全確保
⑧ 建設業法等(2025年12月までに施行)|労働者の処遇改善など
⑨ 流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法(2025年5月までに施行)|物流事業の効率化・業務の適正化
⑩ 児童対象性暴力防止法(日本版DBS、2026年12月までに施行)|学校・教育保育等従事者の性犯罪歴確認
⑪ 民法(2026年5月までに施行)|家族法の見直し、離婚後の共同親権導入など
⑫ 政治資金規正法(2025年1月1日施行)|政治資金パーティ券の購入者公開基準引下げなど
⑬ 商業登記規則(2024年10月1日施行)|代表取締役等住所非表示措置の新設
重要経済安保情報保護法|セキュリティ・クリアランス制度の強化
「セキュリティ・クリアランス制度」とは、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報にアクセスする必要がある者に対し、その者の信頼性を調査・確認した上でアクセスを認める制度です。
従来は「特定秘密保護法」によってセキュリティ・クリアランス制度が定められていましたが、2024年の通常国会において新たに「重要経済安保情報保護法」が成立し、新たなセキュリティ・クリアランス制度が導入されることになりました。
重要経済安保情報保護法では、以下の各点を目的として、従来のセキュリティ・クリアランス制度がアップデートされています。
- Confidential級の機密情報にも対応する
- 調査機能を一元化して政府全体で統一的な対応を行う
- 調査の共通化を通じてセキュリティ・クリアランスを受ける者の利便性を向上させる
重要経済安保情報保護法は、2025年5月までに施行される予定です。
産業競争力強化法等|戦略的国内投資の拡大、中堅企業・スタートアップへの集中支援
産業競争力強化法は、中長期にわたる低迷状態から日本経済を再興させるため、国内企業の産業競争力の強化を促すことを目的とした法律です。
最近では、30年ぶりの高水準の賃上げや国内投資の活性化という「潮目の変化」が生じています。これらの動きを持続化することを目指して、2024年の通常国会で産業競争力強化法等の改正法が成立しました。
改正法は、特定分野の国内投資に関する優遇的税制措置や、中堅企業・スタートアップに対する集中支援等の措置を内容としています。
これらの措置は、戦略的国内投資の拡大と、国内投資拡大に繋がるイノベーション・新陳代謝の促進を目的とするものです。
産業競争力強化法等の改正法は、2024年9月までに施行される予定です。
育児介護休業法等|育児休業・介護休業の拡充など
男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、労働者を支援する措置を講じることを目的に、2024年の通常国会で育児介護休業法等の改正法が成立しました。
改正法には、大きく分けて以下の3点の変更が盛り込まれています。
① 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
② 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
③ 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
育児介護休業法の改正法は、一部の規定を除いて2025年4月1日から施行される予定です。
雇用保険法等・子ども子育て支援法等|雇用保険制度の拡充・見直しなど
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、労働者の学び直し(リ・スキリング)の支援および共働き・共育ての推進等を目的として、2024年の通常国会で雇用保険法等の改正法が成立しました。
また、子育て世帯に対する支援を目的として、出生時育児休業や育児のための短時間勤務に対する給付制度の新設などを内容とする、子ども・子育て支援法の改正法も成立しました。
雇用保険法等・子ども・子育て支援法の改正法は、主に2025年4月1日から施行される予定です。ただし、一部の規定については施行日が異なります。
情報流通プラットフォーム対処法(旧:プロバイダ責任制限法)|大規模プラットフォーム事業者に対する新規制
2024年の通常国会において、従来のプロバイダ責任制限法を「情報流通プラットフォーム対処法」へと改正する法律が成立しました。
情報流通プラットフォーム対処法には、インターネット上における誹謗中傷等の相談件数が高止まりする状況を踏まえて、大規模プラットフォーム事業者に対する新たな規制が盛り込まれています。
情報流通プラットフォーム対処法は、2025年5月までに施行される予定です。
スマホソフトウェア競争促進法|大手IT事業者への規制拡大
スマートフォンの利用に必要なモバイルOS・アプリストア・ブラウザ・検索エンジン(=特定ソフトウェア)は、少数の有力事業者による寡占状態にあり、当該事業者による競争制限的な行為が問題視されています。
こうした状況を踏まえ、特定ソフトウェアに関する競争を活性化させるため、2024年の通常国会において「スマホソフトウェア競争促進法」が成立しました。
スマホソフトウェア競争促進法は、特定ソフトウェア市場を寡占する事業者を指定した上で、禁止事項や遵守事項を課す内容となっています。
スマホソフトウェア競争促進法は、2025年12月までに施行される予定です。
消費生活用製品安全法等|取引DPF規制・玩具等の子供用特定製品の安全確保
ECサイトなどを通じて、国内の消費者が海外事業者から直接製品を購入する機会が増える中で、製品の安全確保や子ども用製品による事故の未然防止が課題となっています。
こうした状況を踏まえて、2024年の通常国会において消費生活用製品安全法等の改正法が成立しました。
改正法では、取引デジタルプラットフォーム(取引DPF)を通じて国内消費者に直接製品を販売する海外事業者に対し、日本国内における責任者を選任するなどの措置を求めています。
また、一定の子ども用製品(=子供用特定製品)については、製造・輸入業者に対して技術基準への適合などが課されています。
消費生活用製品安全法等の改正法は、2025年12月までに施行される予定です。
建設業法等|労働者の処遇改善など
建設業は他の産業よりも賃金が低く、就労時間も長いため、担い手の確保が困難であるという課題があります。このような課題を解決するため、2024年の通常国会において、建設業法等の改正法が成立しました。
改正法には、大きく分けて以下の3点の改正が盛り込まれています。
① 労働者の処遇改善(賃金引上げ)
② 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
③ 働き方改革と生産性向上(労働時間の適正化・現場管理の効率化)
建設業法等の改正法は、2025年12月までに完全施行される予定です。
流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法|物流事業の効率化・業務の適正化
物流業界では、「2024年問題」による物流停滞への懸念や、軽トラック運送業における死亡・重傷事故の増加が大きな課題となっています。
これらの課題に対処するため、2024年の通常国会において流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法の改正法が成立しました。
改正法には、物流効率化や軽トラック事故の抑制を目的とした新規制が盛り込まれています。なお、流通業務総合効率化法は「物資の流通の効率化に関する法律」へと題名が改められます。
流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法の改正法は、2025年5月までに施行される予定です。
児童対象性暴力防止法(日本版DBS)|学校・教育保育等従事者の性犯罪歴確認
保育所などにおける児童の性被害が相次いでいる状況を受けて、2024年の通常国会において新たに児童対象性暴力防止法が成立し、「日本版DBS」と呼ばれる制度が導入されます。
日本版DBSは、子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないかどうかを事業者が確認できる制度(小学校・中学校・高校、幼稚園・保育所などは義務)で、イギリスの制度を参考にしています。
児童対象性暴力防止法は、2026年12月までに施行される予定です。
民法|家族法の見直し、離婚後の共同親権導入など
2024年の通常国会において、親子に関する制度を大幅に変更する改正民法が成立しました。
改正民法には、離婚後の共同親権制度の導入をはじめとして、親子関係に関するさまざまな新制度が盛り込まれています。
改正民法は、2026年5月までに施行される予定です。
政治資金規正法|政治資金パーティ券の購入者公開基準引下げなど
政治家による公費の支出が不透明であることが社会的に大きな問題となっていることを受け、2024年の通常国会において、政治資金規正法の改正法が成立しました。
改正法では、政治資金パーティ券の購入者に関する公開基準の引下げなどが定められ、政治資金の流れの透明性向上が図られています。
政治資金規正法の改正法は、2025年1月1日に施行される予定です。
商業登記規則|代表取締役等住所非表示措置の新設
現行の商業登記規則では、株式会社の登記事項証明書において、代表取締役等の住所を番地まで全て記載することになっています。このような状況に対しては、代表取締役等のプライバシーへの配慮が欠けるとの批判がなされています。
こうした批判を受けて、商業登記規則が改正されました。改正後は、株式会社の登記簿において、代表取締役等の住所の一部を非表示とすることを選択できるようになります。
商業登記規則の改正は、2024年10月1日から施行される予定です。