ドローン規制とは?
規制の全体像・飛行のルール・資格・
手続きの内容を分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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ドローンなどの「無人航空機」の飛行については、主に航空法によって規制が設けられています(=ドローン規制)。
無人航空機を飛行させる際には、必ず無人航空機登録原簿に登録を受けなければなりません。また、ドローンの飛行カテゴリーは3つに分類されており、該当するカテゴリーに応じた規制を遵守する必要があります。
この記事ではドローン規制について、規制の全体像やルール・手続きの内容を幅広く解説します。
※この記事は、2024年8月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 法…航空法
- 規則…航空法施行規則
目次
ドローン規制とは
「ドローン規制」とは、ドローンなどの「無人航空機」の飛行について設けられた法律上の規制です。無人航空機の墜落等の事故により、人の生命・身体・財産などに危害が生じるリスクを最小限に抑えることを目的としています。
航空法におけるドローン規制の全体像
ドローン規制は、主に航空法によって定められています。
航空法におけるドローン規制の全体像は、以下のとおりです。
- 航空法のドローン規制
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① ドローン(無人航空機)の登録制度
② ドローンの飛行カテゴリー
※カテゴリーⅢ、Ⅱ、Ⅰの3種類に分類③ 機体・操縦者に関するルール
※機体認証と技能証明、カテゴリーⅢとカテゴリーⅡに適用(一部を除く)④ 飛行許可・承認、飛行計画の通報
※カテゴリーⅢとカテゴリーⅡに適用⑤ 安全確保措置・立入管理措置
※カテゴリーⅢとカテゴリーⅡに適用⑥ 無人航空機の飛行に関する基本的な遵守事項
※全てのカテゴリーに適用⑦ 無人航空機の事故等の報告・負傷者の救護等
※全てのカテゴリーに適用⑧ 飛行日誌の備付け・記載
※カテゴリーⅢとカテゴリーⅡに適用
ドローン(無人航空機)の登録制度
無人航空機は、無人航空機登録原簿に登録を受けたものでなければ、ごく一部の例外を除いて航空の用に供してはならないものとされています(法132条の2)。
「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機・回転翼航空機・滑空機・飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるものをいいます(法2条22項)。ドローンは、無人航空機に当たるものの代表例です。
ただし、重量が100グラム未満のものは無人航空機に該当しないので(規則5条の2)、航空の用に供するに当たって登録を受ける必要はありません。
無人航空機の登録の有効期間は原則として3年で、期間ごとに更新を受けなければ効力を失います(法132条の6、規則236条の8)。
登録無人航空機は、登録期間を通じて、登録の要件を満たした状態を維持しなければなりません。
登録要件を欠くことになった登録無人航空機については、その所有者または使用者に対して是正命令が行われた後、是正されなければ登録が取り消されることがあります(法132条の9・132条の10)。
ドローンの飛行カテゴリー
航空法では、「特定飛行」に当たるかどうかおよび特定飛行のエリアに応じて、ドローンを含む無人航空機の飛行カテゴリーを3段階(Ⅲ、Ⅱ、Ⅰ)に分類しています。
無人航空機の飛行がどのカテゴリーに該当するのかによって、適用される法規制の内容が異なります。
国土交通省ウェブサイト「無人航空機の飛行許可・承認手続」
特定飛行とは
「特定飛行」とは、以下のいずれかに該当する飛行をいいます(法132条の87)。
① 以下のいずれかに該当する空域における飛行
・空港等の周辺
・人口集中地区の上空
・150m以上の上空
・緊急用務空域(=捜索や救助などの緊急用務を行う航空機の飛行の安全を確保する必要がある空域)
② 以下のいずれかに該当する方法による飛行
・夜間での飛行
・目視外での飛行
・人または物件と距離が確保できない飛行
・催し場所上空での飛行
・危険物の輸送
・物件の投下
カテゴリーⅢ|第三者の上空における特定飛行
カテゴリーⅢに該当するのは、特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じないで行う飛行です。
立入管理措置を講じないため、無人航空機が飛行している真下を第三者が通行する可能性があります。したがって、カテゴリーⅢは事故リスクの高い飛行形態であるため、航空法によって厳格な規制が設けられています。
カテゴリーⅡ|第三者の上空を飛行しない特定飛行
カテゴリーⅡに該当するのは、特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じた上で行う飛行です。
立入管理措置を講じるため、無人航空機が飛行している真下を第三者が通行することはありません。しかし、本来的には人が通行し得るエリアを飛行することになるので、カテゴリーⅢに準じて厳格な規制が適用されます。
また、立入管理措置の方法等に関して、カテゴリーⅡ特有の規制が設けられています。
カテゴリーⅠ|特定飛行に該当しない飛行
カテゴリーⅠに該当するのは、特定飛行に当たらない飛行です。
カテゴリーⅠは、カテゴリーⅢやカテゴリーⅡに比べて事故リスクが低いと考えられるため、飛行許可や承認申請が不要とされているなど、適用される規制が比較的緩やかになっています。
機体・操縦者に関するルール
航空法では「機体認証」と「技能証明」の制度が設けられています。
カテゴリーⅢの飛行を行う場合は、第一種機体認証および一等操縦者技能証明を有する必要があります。
その一方で、機体認証または技能証明を有する場合は、無人航空機の飛行に関して適用される規制が緩和されることがあります。
機体認証とは|ドローンの安全性に関する認証
「機体認証」とは、特定飛行を目的とする無人航空機の強度・構造・性能について、設計・製造過程・現状が安全基準に適合するか検査した上で、国土交通大臣が行う安全性の認証です(法132条の13)。
機体認証には、第一種機体認証と第二種機体認証の2種類があります。
カテゴリーⅢの飛行を行う無人航空機については、第一種機体認証を取得しなければなりません(法132条の85第1項)。
その一方で、第二種機体認証以上および二等操縦者技能証明以上をいずれも有する場合には、カテゴリーⅡに該当する飛行の一部について、飛行許可・承認が不要となります(後述)。
なお、量産する航空機の設計や製造過程について「型式認証」を受けた型式の無人航空機については、機体認証に関する検査の一部が省略されます(法132条の13第5項・6項)。
技能証明とは|ドローン操縦者に必要な資格
「技能証明」とは、無人航空機を飛行させるのに必要な知識と能力を有することについて、国土交通大臣が行う証明です(法132条の40)。
技能証明には、一等操縦者技能証明と二等操縦者技能証明の2種類があります。
カテゴリーⅢの飛行を行う場合は、操縦者が一等操縦者技能証明を有しなければなりません(法132条の85第1項)。
その一方で、第二種機体認証以上および二等操縦者技能証明以上をいずれも有する場合には、カテゴリーⅡに該当する飛行の一部について、飛行許可・承認が不要となります(後述)。
飛行許可・承認、飛行計画の通報|カテゴリーⅢとカテゴリーⅡに適用
無人航空機の飛行の安全性を確認するため、カテゴリーⅢまたはカテゴリーⅡに該当する無人航空機の飛行については、飛行許可または飛行方法に関する承認の取得、および飛行計画の通報が求められています。
飛行許可・承認を申請する
カテゴリーⅢに該当する無人航空機の飛行を行う際には、事前に国土交通大臣の飛行許可または飛行方法に関する承認を受けることが必須とされています(法132条の85第2項・132条の86第3項)。
カテゴリーⅡに該当する無人航空機の飛行についても、原則としてカテゴリーⅢと同様に、事前に国土交通大臣の飛行許可または飛行方法に関する承認を受けなければなりません。
ただし、以下の要件を全て満たすカテゴリーⅡの飛行については、例外的に飛行許可・承認が不要とされています。
① 無人航空機の総重量が25kg未満でること
② 飛行が以下のいずれにも該当しないこと
・空港等の周辺
・150m以上の上空
・催し場所の上空
・危険物の輸送
・物件の投下
③ 第一種機体認証または第二種機体認証を有すること
④ 一等操縦者技能証明または二等操縦者技能証明を有すること
⑤飛行マニュアルの作成など、無人航空機の飛行の安全を確保するために必要な措置を講じること
飛行計画の通報を行う
無人航空機の特定飛行(=カテゴリーⅢまたはカテゴリーⅡ)を行う場合には、あらかじめ、当該特定飛行の日時や経路などを記載した飛行計画を国土交通大臣に通報しなければなりません(航空法132条の88)。
ただし、システム障害によって飛行計画を通報する手段がない場合は、特定飛行を開始した後でも、国土交通大臣に飛行計画を通報することができます。
安全確保措置・立入管理措置
カテゴリーⅢとカテゴリーⅡに該当する無人航空機の飛行を行う際には、飛行マニュアルに沿った安全確保措置を講じる必要があります。
また、カテゴリーⅡに該当する無人航空機の飛行を行う際には、航空法所定の立入管理措置を講じる必要があります。
安全確保措置|カテゴリーⅢとカテゴリーⅡに適用
カテゴリーⅢとカテゴリーⅡの飛行について、飛行許可または飛行方法に関する承認を受ける際には、飛行マニュアルの作成が求められます。
また、飛行許可または飛行方法に関する承認が免除されるカテゴリーⅡの飛行についても、免除の要件として飛行マニュアルの作成が求められます。
飛行マニュアルは、安全確保措置を含めた必要な事項を盛り込んで作成し、遵守する必要があります。
したがって、カテゴリーⅢまたはカテゴリーⅡの飛行に当たっては、飛行マニュアル所定の安全確保措置を講じなければなりません。
なお、飛行マニュアルは飛行の実態に即して作成する必要がありますが、国土交通省が公表している「航空局標準マニュアル」を利用することも可能です。
立入管理措置|カテゴリーⅡに適用
カテゴリーⅡに該当する無人航空機の飛行を行う際には、立入管理措置を講じなければなりません。
「立入管理措置」とは、補助者の配置、立入りを制限する区画の設定その他の適切な措置をいいます(規則236条の70)。
また、立入管理措置を講じた上で行うカテゴリーⅡの飛行において、飛行中の無人航空機の下に人の立入りまたはそのおそれのあることを確認したときは、直ちに飛行を停止して、飛行経路の変更や安全な場所への着陸などの措置を講じなければなりません(法132条の87)。
無人航空機の飛行に関する基本的な遵守事項|全てのカテゴリーに適用
無人航空機を飛行させる際には、全てのカテゴリーを通じて、以下の事項を遵守しなければなりません(航空法132条の86第1項)。
- 遵守事項
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① アルコールまたは薬物の影響により、無人航空機の正常な飛行ができないおそれがある間において飛行させないこと。
② 以下の事項を確認した後において飛行させること。
・無人航空機の飛行に支障がないこと
・無人航空機の状況
・無人航空機を飛行させる空域およびその周囲の状況
・飛行に必要な気象情報
・燃料の搭載量またはバッテリーの残量
・リモートID機能の作動状況(一部の飛行については不要)③ 航空機または他の無人航空機との衝突を予防するため、以下の方法により飛行させること。
・飛行中の航空機を確認し、衝突のおそれがあると認められるときは、無人航空機を地上に降下させるなどの適当な方法を講じること。
・飛行中の他の無人航空機を確認したときは、安全な間隔を確保して飛行させること。それができず衝突のおそれがあると認められるときは、無人航空機を地上に降下させるなどの適当な方法を講じること。④ 飛行上の必要がないのに高調音を発し、または急降下し、その他他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと。
無人航空機の事故等の報告・負傷者の救護等|全てのカテゴリーに適用
以下の無人航空機に関する事故が発生した場合には、直ちに当該無人航空機の飛行を中止し、負傷者の救護その他の危険を防止するために必要な措置を講じなければなりません(法132条の90第1項)。
- 無人航空機による人の死傷または物件の損壊
- 航空機との衝突または接触
上記の事故については、関連する事項を国土交通大臣に報告することが義務付けられています(同条2項)。
また、実際に事故が発生していなくても、事故が発生するおそれがあると認められる以下の事態が生じた場合には、国土交通大臣に対する報告が義務付けられます(法132条の91)。
- 無人航空機による人の負傷(人の死傷を除く)
- 無人航空機の制御が不能となった事態
- 無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る)
飛行日誌の備付け・記載|カテゴリーⅢとカテゴリーⅡに適用
無人航空機の特定飛行(=カテゴリーⅢまたはカテゴリーⅡ)を行う場合には、飛行日誌を備えなければなりません(法132条の89)。
飛行日誌としては、飛行記録・日常点検記録・点検整備記録を備える必要があり、それぞれ記載事項が航空法施行規則によって定められています(規則236条の84)。
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