航空法とは?
航空機・無人航空機(ドローンなど)に
適用される規制の全体像を分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「航空法」とは、航空機や無人航空機(ドローン・ラジコン機など)の航行の安全を確保するための規制を定めた法律です。
航空機や無人航空機を航行させる際には、航空法の規制を遵守しなければなりません。2022年に施行された改正では、無人航空機の「レベル4」飛行が可能になるなど、注目の内容もあります。
この記事では、航空機・無人航空機に適用される規制の全体像を解説します。
※この記事は、2023年8月14日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 法…航空法
- 令…航空法施行令
目次
航空法とは
「航空法」とは、航空機や無人航空機(ドローン・ラジコン機など)の航行の安全を確保するための規制を定めた法律です。
航空法の目的
航空法の目的は、航空機を運航する事業の運営を適正化・合理的し、航空機による輸送の安全を確保するとともに、利用者の利便性を増進することにあります。
そのために、航空機の航行の安全、および航空機の航行に起因する障害の防止を図る規制が定められています。
また、無人航空機(ドローン・ラジコン機など)の飛行の安全を図ることも、航空法の目的の一つです。航空法では、無人航空機の飛行における遵守事項なども定められています。
航空法による規制の全体像
航空法における規制は、「航空機」に関する規制と「無人航空機」に関する規制の2つに大別されます。
- 「航空機」と「無人航空機」に関する規制
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① 航空機に関する規制
「航空機」とは、人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船などの機器をいいます(法2条1項)。航空機に関しては、以下の規制が定められています。
・航空機の登録(第2章)
・航空機の安全性(第3章)
・航空従事者(第4章)
・航空路、空港等および航空保安施設(第5章)
・航空機の運航(第6章)
・航空運送事業等(第7章)
・外国航空機(第8章)
・危害行為の防止(第9章)② 無人航空機に関する規制
「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船などの機器であって、人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるものをいいます(法2条22項)。無人航空機については、機体の登録制・航行時の遵守事項・安全性に関する機体認証等・操縦者の技能証明などの規制が定められています(第11章)。
航空機に関する規制
航空法で定められた航空機に関する規制につき、以下の各項目の概要を解説します。
- 航空機の登録(第2章)
- 航空機の安全性(第3章)
- 航空従事者(第4章)
- 航空路、空港等および航空保安施設(第5章)
- 航空機の運航(第6章)
- 航空運送事業等(第7章)
- 外国航空機(第8章)
- 危害行為の防止(第9章)
航空機の登録
航空機は、国土交通大臣の登録を受けることによって日本の国籍を取得します(法3条・3条の2)。
航空機が日本の国籍を有することは、国土交通大臣による耐空証明を受けるための要件とされています(法10条2項)。
耐空証明を受けなければ、日本の領空において航空機を航空の用に供することができません(法11条1項)。したがって、日本の領空で航行させる航空機については、外国航空機として離発着の許可を受ける場合を除き、国土交通大臣の航空機登録を受ける必要があります(一部例外あり)。
国土交通大臣の航空機登録を受けられるのは、
✅ 日本国籍を有する人または日本法準拠の法人が所有する航空機
に限られます。
法人所有の場合は、
✅ 日本国籍を有する人または日本法準拠の法人が代表者であり、かつこれらの者で役員および議決権の3分の2超を占める
ものとされています(法4条1項)。
また、すでに外国の国籍を有する航空機については、国土交通大臣の航空機登録を受けられません(同条2項)。
航空機の安全性
航空機の安全性は、「耐空証明」と「型式証明」の2つの制度によって担保されています。
耐空証明とは
「耐空証明」とは、日本の領空において航空機を飛行させるために必要な証明です。有効な耐空証明を受けている航空機でなければ、原則として日本の領空において航空の用に供することができません(法11条1項)。
耐空証明の審査は、以下の基準に適合するかどうかの観点から行われます(法10条4項)。
- 耐空証明の審査基準
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① 安全性を確保するための強度、構造および性能
② 騒音(一定の要件を満たす航空機に限る)
③ 発動機の排出物(一定の要件を満たす航空機に限る)
耐空証明の申請は、国土交通大臣に対して行います。耐空証明を受けられるのは、日本の国籍を有する航空機のみです。
型式証明とは
「型式証明」とは、航空機の開発時に申請することのできる証明です(法12条1項)。
耐空証明の検査は個々の航空機に対して行いますが、型式証明の検査は航空機の設計や製造過程について行います。
型式証明を受けた型式の航空機については、耐空証明の審査において、設計・製造過程について検査の一部を省略できます(法10条5項1号)。
航空従事者
航空機に関する業務を行うためには、原則として国土交通大臣による業務内容に応じた資格の技能証明を受けなければなりません(法28条1項)。
技能証明は、以下の資格別に行われます(法24条)。
- 定期運送用操縦士
- 事業用操縦士
- 自家用操縦士
- 准定期運送用操縦士
- 一等航空士
- 二等航空士
- 航空機関士
- 航空通信士
- 一等航空整備士
- 二等航空整備士
- 一等航空運航整備士
- 二等航空運航整備士
- 航空工場整備士
航空路、空港等および航空保安施設
国土交通大臣は、航空機の航行に適する空中の通路を航空路として、告示により指定します(法37条1項・2項)。各航空機は、指定された航空路を航行することが推奨されます。
国土交通大臣以外の者が、以下の空港等または航空保安施設を設置しようとするときは、国土交通大臣の許可を受けなければなりません(法38条1項)。
① 空港等(法2条4項・6項、空港法2条)
・空港(公共の用に供する飛行場)
・その他の飛行場
② 航空保安施設(令4条)
・航空灯火(航空障害灯を除く)
・NDB(無指向性無線標識施設)
・VOR(超短波全方向式無線標識施設)
・タカン
・計器着陸装置
・DME(距離測定装置)
・衛星航法補助施設
完成した空港等・航空保安施設は、国土交通大臣による完成検査に合格した上で、国土交通大臣に供用開始の期日を届け出ることで、初めて供用が可能となります(法42条)。
空港等・航空保安施設の供用・管理に当たっては、航空法に定められる事項を遵守しなければなりません。
航空法による建築物の高さ制限
航空機が安全に離着陸するために、空港周辺においては、一定の高さを超える建物等を設置することはできません(法49条)。
この高さ制限は制限表面として、空港の滑走路からの距離や向きによって詳細に定められています。
航空機の運航
航空機の安全な運航を確保するため、航空法では運航に関する遵守事項が定められています。
- 航空機の運航に関する主な遵守事項
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・国籍等の表示(法57条)
・航空機登録証明書、耐空証明書、航空日誌などの備え付け(法58条・59条)
・航行の安全確保のための装置、運航状況を記録するための装置の備え付け(法60条・61条)
・救急用具の装備(法62条)
・一定量以上の燃料の携行(法63条)
・夜間航行時等の灯火(法64条)
・資格の技能証明を受けた航空従事者の乗り組み(法65条・66条)
・航空機乗組員に関する規制(法69条~71条)
・機長の要件、権限、遵守事項(法72条~76条の2)
・運航管理者の承認、資格要件(法77条・78条)
・航空機の運航中における規制(法79条~96条の2)
・飛行計画の通報、承認、変更(法97条)
・到着の通知(法98条)
航空運送事業等
航空運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません(法100条1項)。許可の審査に当たっては、事業計画の内容や申請者の能力などがチェックされます。
航空運送事業の許可を受けた者(=本邦航空運送事業者)は、航空機の運航・整備に先立ち、運航の安全の確保のために必要な施設(=運航管理施設等)について国土交通大臣の検査を受け、合格する必要があります(法102条1項)。
本邦航空運送事業者にはそのほか、安全管理規程の届出(法103条の2)や運航規程・整備規程・運送約款の認可(法104条・106条)、運航計画の届出(法107条の2)などが義務付けられています。
外国航空機
外国の国籍を有する航空機が、日本の空港に離発着する場合や、日本の領空を通過して航行する際には、国土交通大臣の許可を受けなければなりません(法126条1項・2項)。
ただし、国際民間航空条約の締約国たる外国の国籍を有する航空機に限り、国土交通大臣が告示で指定した航行路のみを航行する場合には、許可は不要です(法126条1項但し書き)。
また、外国の国籍を有する航空機は、国土交通大臣の許可を受けた場合を除き、日本の国内便として航行させることはできません(法127条)。
さらに外国の国籍を有する航空機については、軍需品輸送の原則禁止(法128条)が定められています。
危害行為の防止
国土交通大臣は、航空機の強取(いわゆるハイジャック)などの防止に関する施策の基本となるべき方針を策定し、その方針に基づいて必要な措置を講じるものとされています(法131条の2の2・131条の2の3)。
さらに航空法では、保安検査(法131条の2の5)や預入手荷物検査(法131条の2の6)に関する規制が定められています。
無人航空機(ドローン・ラジコン機など)に関する規制
航空法では、ドローンやラジコン機などの無人航空機に関する規制も定められています。
無人航空機の飛行におけるカテゴリー区分
無人航空機の屋外飛行は、「特定飛行」の有無を中心に、3つのカテゴリー(カテゴリーⅠ、カテゴリーⅡ、カテゴリーⅢ)に分類されます。
- 特定飛行とは
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(1) 空港周辺の空域、150m以上の上空、人口集中地区の上空、緊急用務空域の飛行
→飛行許可申請が必要
(2) 夜間飛行、目視外飛行、人または物件との距離30m未満の飛行、催し場所上空での飛行、危険物の輸送、物件の投下を行う方法での飛行
→飛行承認申請が必要
- カテゴリー区分
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カテゴリーⅠ:特定飛行に該当しない飛行
カテゴリーⅡ:特定飛行のうち、第三者の上空を飛行しない(立入管理措置を講じる)もの
カテゴリーⅢ:特定飛行のうち、第三者の上空を飛行するもの※カテゴリーⅡ飛行のうち一部の飛行許可・承認手続が不要になる場合あり。
国土交通省ウェブサイト「無人航空機の飛行許可・承認手続」
該当するカテゴリーによって、機体認証の要否・種類、操縦者技能証明の要否・種類、許可申請・飛行計画の通報・飛行日誌の作成の要否が異なります。
無人航空機の登録
無人航空機は、原則として国土交通大臣の登録を受けなければ、航空の用に供することができません(法132条の2)。
無人航空機の登録の可否は、航空機の航行の安全や、地上・水上の人や物件の安全が著しく損なわれるおそれがないかの観点から審査されます(法132条の3)。
無人航空機の飛行許可・承認
無人航空機につき、カテゴリーⅡまたはカテゴリーⅢに該当する飛行を行う場合は、事前に国土交通大臣の許可を受けなければなりません(法132条の85第2項)。
ただし、カテゴリーⅡに該当する飛行のうち、以下の要件をいずれも満たすものについては、国土交通大臣の許可は不要です。
① 空港周辺の空域・150m以上の空域・催し場所の上空の飛行、危険物の輸送、物件投下、総重量25kg以上での飛行をいずれも行わないこと
② 第二種以上の機体認証を受けていること
③ 二等以上の無人航空機操縦士が操縦すること
無人航空機の飛行計画の通報・飛行日誌の作成
無人航空機につき、カテゴリーⅡまたはカテゴリーⅢに該当する飛行を行う場合は、国土交通大臣に対して、原則として事前に飛行計画を通報しなければなりません(法132条の88第1項)。飛行日誌の作成も義務付けられています(法132条の89)。
無人航空機操縦者技能証明
無人航空機の操縦者については、一等および二等の技能証明制度が設けられています。
無人航空機につき、カテゴリーⅢに該当する飛行を行う場合は、一等無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が操縦しなければなりません(法132条の85第1項かっこ書き)。
二等無人航空機操縦士が操縦する場合は、カテゴリーⅡに該当する飛行のうち、以下の要件をいずれも満たすものについて国土交通大臣の飛行許可・承認が不要となります。
① 空港周辺の空域・150m以上の空域・催し場所の上空の飛行、危険物の輸送、物件投下、総重量25kg以上での飛行をいずれも行わないこと
② 第二種以上の機体認証を受けていること
無人航空機の機体認証・型式認証
無人航空機については、第一種および第二種の機体認証制度が設けられています。
無人航空機につき、カテゴリーⅢに該当する飛行を行う場合は、第一種機体認証を受けた無人航空機を用いなければなりません(法132条の85第1項かっこ書き)。
第二種機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合は、カテゴリーⅡに該当する飛行のうち、以下の要件をいずれも満たすものについて国土交通大臣の飛行許可・承認が不要となります。
①空港周辺の空域・150m以上の空域・催し場所の上空の飛行、危険物の輸送、物件投下、総重量25kg以上での飛行をいずれも行わないこと
②二等以上の無人航空機操縦士が操縦すること
【2022年施行】無人航空機のレベル4飛行が可能に
カテゴリーⅢに該当する無人航空機の飛行のうち、有人地帯における補助者なしの目視外飛行は「レベル4飛行」と呼ばれています。
国土交通省「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」
2022年12月15日以降、機体認証・操縦者技能証明・運航ルールの各制度が整備されたことに伴い、レベル4飛行が解禁されました。今後も法改正により、無人航空機に関する必要な規制が導入されるとともに、ドローンなどの利用可能な領域が拡大することが予想されます。
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