景品表示法とは?
広告表示や景品のルール・
禁止行為・罰則などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「景品表示法」とは、一般消費者を保護することを目的に制定された法律で、正式名称は、「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。
事業者による不当な広告や表示を禁止したり、景品(プレゼント)の提供などの制限・禁止することなどにより、消費者が自主的・合理的に商品やサービスを選べるように規制がされています。
事業者は、広告にどのような文言を使えるか、また、イベントで景品を渡したり、プレゼント企画を行う際に、どのような制約や禁止事項があるかなどについて、景品表示法のルールを理解しておく必要があります。
この記事では「景品表示法」について、景品表示法の目的や禁止される行為、事業者が講ずべき措置などについて、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年8月23日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名等を次のように記載しています。
・景品表示法・景表法…不当景品類及び不当表示防止法
目次
景品表示法(景表法)とは
景品表示法とは、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。
正式名称の通り、過大な景品類を提供することや、商品やサービスの品質、内容、価格などを偽って表示を行うことを規制することにより、消費者が自主的かつ合理的に商品やサービスの選択を行える環境を確保し、一般消費者の利益を保護することを目的としています。
景品表示法の概要│消費者保護のための2つのルール
景品表示法は、主に以下の2つの行為を禁止しています。
①不当表示の禁止
消費者が商品やサービスを選択する際の重要な判断要素となる品質や価格などについて、実際よりも優良または有利であると見せかける表示がなされると、消費者の自主的かつ合理的な選択が阻害されることとなります。
そのため、景品表示法では、
優良誤認表示:商品・サービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示
有利誤認表示:商品・サービスの価格、その他の取引条件についての不当表示
指定告示:不当表示として内閣総理大臣が指定するもの
が禁止されています。
②景品類の制限および禁止
景品類の提供は、上記の不当表示とは異なり、その手法自体が否定されるべきものではありません。しかし、事業者が過大な景品を提供すると、消費者は過大な景品に惑わされ、自主的かつ合理的な判断が可能であれば購入しないような商品やサービスを買わされてしまうおそれがあります。
そのため、景品表示法では、一般懸賞、共同懸賞、総付景品それぞれについて、景品類の総額や最高額を規制しています。
①不当表示の禁止
まず、不当表示として禁止される各表示類型(優良誤認表示、有利誤認表示、指定告示)について、具体的に解説します。違反の具体例については「違反事例」もご参照ください。
優良誤認表示
優良誤認表示とは、商品・サービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示のことです。
景品表示法5条1号は、商品・サービスの内容に関する表示のうち、
① 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
② 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものを禁止しています。
具体的には、
① 商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽る表示
例)中古車を「走行距離3万km」と表示していたのに、実際には走行距離10万kmのメーターを巻き戻していた
② 競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽る表示
例)「大学合格実績No1」と表示していたのに、実際には他校と異なる方法で数値化して適正な比較をしていなかった
が優良誤認表示に該当します。
また、優良誤認表示に該当するのは、商品・サービスの「内容」に関する表示です。「品質」や「規格」は、商品・サービスの「内容」の具体例で、商品・サービスの「内容」には、品質、規格に間接的に影響を及ぼすもの(例:原産地、製造方法、考案者、受賞の有無、保証の有無、有効期限、他社からの評価など)も含まれます。
有利誤認表示
有利誤認表示とは、商品・サービスの価格、その他の取引条件についての不当表示のことです。
景品表示法5条2号は、商品・サービスの取引条件に関する表示のうち、
① 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
② 競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものを禁止しています。
具体的には、
① 商品・サービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽る表示
例)「○○円」だけを支払えば歯列矯正をできるかのように表示していたのに、実際には矯正装置の費用が必要だった
② 競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけではないのに、あたかも著しく安いかのように偽る表示
例)携帯電話通信の料金を「自社が最も安い」かのように表示していたのに、実際には他社の割引サービスを除外した料金比較をしていた
が有利誤認表示に該当します。
また、有利誤認表示に該当するのは商品・サービスの「取引条件」に関する表示です。「取引条件」とは、商品・サービスの価格や料金のほか、数量、支払条件、アフターサービスなどを含みます。
指定告示
景品表示法では、上記の通り、優良誤認表示および有利誤認表示が禁止されています。しかし、これらのルールだけでは、急速に変化を続ける現代社会において、消費者が不当な表示に十分に対応できない場合があります。
そのため、景品表示法5条3号では、内閣総理大臣に、優良誤認表示および有利誤認表示以外の不当であると考えられる表示を指定する権限が与えられました。
現在、景品表示法5条3項に基づいて不当表示と指定されているものは、以下の7つです。
✅ 無果汁の清涼飲料水等についての表示(昭和48年公取委告示第4号)
✅ 商品の原産国に関する不当な表示(昭和48年公取委告示第34号)
✅ 消費者信用の融資費用に関する不当な表示(昭和55年公取委告示第13号)
✅ 不動産のおとり広告に関する表示(昭和55年公取委告示第14号)
✅ おとり広告に関する表示(平成5年公取委告示第17号)
✅ 有料老人ホームに関する不当な表示(平成16年公取委告示第3号)
✅ 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年内閣府告示第19号)
②景品類の制限および禁止
次に、景品類に関する規制について、具体的に解説します。
まず、そもそも「景品類」とは何かについて解説をした後、一般懸賞、共同懸賞、総付景品それぞれについて、景品類の総額や最高額の制限などについて解説します。
景品類とは
「景品類」の定義について、景品表示法2条3項および定義告示(不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件)は、
顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品または役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、次に掲げるもの(値引きまたはアフターサービスと認められるものおよび商品・サービスに附属すると認められる経済上の利益は含まない)
・物品および土地、建物その他の工作物
・金銭、金券、預金証書、当せん金附証票および公社債、株券、商品券その他の有価証券
・供応(映画,演劇,スポーツ、旅行その他の催物などへの招待または優待を含む。)
・便益、労務その他の役務
と定めています。
また、公正取引委員会は、上記景品類の定義をさらに明確にするため、「景品類等の指定の告示の運用基準について」を公表しています。
内容についての詳細な解説は控えますが、この資料では「景品類」の定義を、
① 「顧客を誘引するための手段として」
② 「事業者」
③ 「自己の供給する商品または役務の取引」
④ 「取引に付随して」
⑤ 「物品、金銭その他の経済上の利益」
の5項目に分類して、それぞれの解釈や考え方について詳細に説明しています。
一般懸賞
下記の方法によって、景品類の提供の相手方または提供する景品類の価格を定めることを「懸賞」といい、「共同懸賞」で解説する共同懸賞以外のものを「一般懸賞」といいます。
✅ くじその他偶然性を利用して定める方法
例)抽選券を用いる方法/商品のうち、一部のものにのみ景品類を添付し、購入の際には消費者がいずれの商品に景品が添付されているかを判別できないようにしておく方法/宝探し、じゃんけんによる方法 など
✅ 特定の行為の優劣または正誤によって定める方法
例)応募の際に明らかでない情報について予想を募集し、その回答の優劣または正誤によって定める方法/商品などの改良の工夫などを募集し、その優劣によって定める方法/パズル、クイズなどの回答を募集し、その正誤によって定める方法/競技、演技または遊技などの優劣によって定める方法 など
参考元|消費者庁「『懸賞による景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」
一般懸賞における景品の最高額について、広告制限告示(懸賞による景品類の提供に関する事項の制限)では、
✅ 懸賞による取引価格が5,000円未満の場合は取引価格の20倍
✅ 懸賞による取引価格が5,000円以上の場合は10万円
と定められています。
また、景品の総額については、懸賞に係る売上予定総額の2%と定められています。
共同懸賞
多数の事業者が共同して実施する懸賞のうち以下の3つの類型に該当するものは、「共同懸賞」とよばれています。
✅ 一定の地域における小売業者またはサービス業者の相当多数が共同して行う場合
✅ 一の商店街に属する小売業者またはサービス業者の相当多数が共同して行う場合
✅ 一定の地域において一定の種類の事業を行う事業者の相当多数が共同して行う場合
共同懸賞について、広告制限告示(懸賞による景品類の提供に関する事項の制限)では、景品の最高額は30万円、景品の総額は懸賞に係る取引の予定総額の3%と定められています。
なお、ここでは、内容についての詳細の解説は控えますが、公正取引委員会「『懸賞による景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」では、上記の類型における「一定の地域」や「相当多数」などの内容についての考え方を詳しく示しています。
総付景品
事業者が一般消費者に対して懸賞によらないで提供する景品類は、「総付景品」とよばれています。
具体的には、商品またはサービスの購入者に対して(購入額に応じて、あるいは多少を問わないで)もれなく景品を提供する場合や、店舗の入店者に対して商品の購入を条件とせずもれなく景品を提供する場合などがあります。
総付景品告示(一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限)では、総付景品について、景品類の最高額を、
✅ 取引価格が1000円未満の場合は200円
✅ 取引価格が1000円以上の場合は取引価格の20%
と制限しています。
ただし、総付景品告示(一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限)では、以下に該当するものについては、一般消費者に対して総付景品として提供する場合でも、上記の制限は適用されないとしています。
✅ 商品の販売もしくは使用のためまたは役務の提供のため必要な物品またはサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
例)重量家具の配送/講習の教材/交通の不便な場所にある旅館の送迎サービス/劇場内で配布する筋書などを書いたパンフレット など
✅ 見本その他宣伝用の物品またはサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
例)食品や日用品の小型の見本・試供品/化粧品売場におけるメイクアップサービス/スポーツスクールの一日無料体験/社名入りのカレンダーやメモ帳 など
✅ 自己の供給する商品または役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
✅ 開店披露、創業記念などの行事に際して提供する物品またはサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
業種別景品告示
特定の業種については、上記の懸賞制限告示や総付制限告示などの一般的な景品規制に加え、景品表示法4条の規定に基づいて、提供される景品類について追加的な制限が設けられています。
現在は、以下の業種における景品類の提供について、告示により制限が設けられています。詳細は以下の告示をご確認ください。
✅ 新聞業(新聞業における景品類の提供に関する事項の制限)
✅ 雑誌業(雑誌業における景品類の提供に関する事項の制限)
✅ 不動産業(不動産業における一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限)
✅ 医療品医薬品業、医療機器業および衛生検査所業(医療用医薬品業,医療機器業及び衛生検査所業における景品類の提供に関する事項の制限)
景品表示法に関するガイドライン
消費者庁は、景品表示法の文言に関する詳細な定義や、景品表示法の規定の運用基準などを定めたガイドラインを公開しています。
- 消費者庁のガイドラインの例
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・「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」
・「景品類等の指定の告示の運用基準について」
・「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」※消費者庁ウェブサイト「景品表示法関係ガイドライン等」にまとめられています
景品表示法に違反した場合
景品表示法に違反する表現や景品類の提供などが行われていることが疑われる場合、消費者庁等は、必要な調査を行います。
調査の結果、景品表示法に違反する行為があったと認められた場合、内閣総理大臣は、事業者に対し、措置命令(行為の差止め、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項など)や課徴金納付命令をすることができます。
また、措置命令や課徴金納付命令をするに当たって必要があると認められる場合、内閣総理大臣は、事業者に対し、必要な資料の提出や報告などを命じることができます。
違反の具体例
具体的にどのような場合に景品表示法に違反したと判断されるのでしょうか。以下では、上記で解説した表示規制(優良誤認表示・有利誤認表示)に違反する場合の具体例を紹介します。
優良誤認表示
✅ 「本品に含まれるビタミンCは、100%天然アセロラ由来です」などと表示していた
→ 実際には商品に含まれているビタミンCの大部分がアセロラ由来ではなかった場合
✅ 国産有名ブランド牛の肉であるかのように表示して販売していた
→ 実際にはブランド牛ではない国産牛肉だった場合
✅ 金運上昇を標榜する財布に関するチラシなどに写真付きの多数の体験談や購入者のほとんどが効果を実感したとの体験談を記載していた
→ 体験談が虚偽であった場合
有利誤認表示
✅ 基本価格を記載せずに、「今なら半額!」と表示していた
→ 実は50%割引とは認められない料金で仕事を請け負っていた場合
✅ 通信販売において、「送料無料」などと表示していた
→ 実際にはあらかじめ商品の価格を送料相当額引き上げていた場合
✅ 「高級貝パールネックレスが当たる特売セール」と表示していた
→ 実際に提供する景品は市価400円程度の人造真珠ネックレスであった場合
命令に違反した場合の罰則
内閣総理大臣による措置命令に違反した場合、事業者は2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます。
また、内閣総理大臣からの資料の提出や報告などの命令に違反した(虚偽の報告や虚偽の物件の提出などをした)場合、事業者は1年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます。
事業者がしなければいけないこと
事業者は、景品表示法22条1項において、景品表示法を遵守するために必要な措置を講ずることが義務付けられています。そして、同条2項において、内閣総理大臣が、事業者が講ずべき措置に関して必要な指針を定めるものとされており、実際に、「事業者が講ずべき景品類の提供及び管理上の措置についての指針」(以下「管理措置指針」)が公開されています。
管理措置指針では、事業者が講ずべき措置の内容として、以下の7つの事項を挙げています。
① 景品表示法の考え方の周知・啓発
② 法令遵守の方針などの明確化
③ 表示などに関する情報の確認
④ 表示などに関する情報の共有
⑤ 表示などを管理するための担当者などを定めること
⑥ 表示などの根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
⑦ 不当な表示などが明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
ここでは詳細な解説は控えますが、管理措置指針では、上記7つの事項のそれぞれについて、具体例などを挙げながら詳細な説明がされています。
この記事のまとめ
景品表示法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!