就業規則の意見書とは?
様式・記載事項・記入例・
押印の要否などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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就業規則の意見書とは、就業規則の作成または変更に関する、労働者の代表の意見を記載した書面です。
会社が就業規則を作成または変更する際には、労働者の代表の意見を聴き、就業規則意見書としてまとめた上で、就業規則などとともに労働基準監督署へ届け出なければなりません。
就業規則の意見書の様式は、労働局のウェブサイトなどで入手可能です。
会社は就業規則の意見書の内容に従う義務を負いませんが、働きやすい職場環境を整える観点からは、できる限り労働者側の意見を尊重することが望ましいでしょう。
この記事では就業規則の意見書について、様式・記載事項・記載例・注意点などを分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年4月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
就業規則の意見書とは
就業規則の意見書とは、就業規則の作成または変更に関する労働者の代表の意見を記載した書面です。就業規則の作成・変更時には、「就業規則(変更)届」と(変更後の)就業規則に加えて意見書も労働基準監督署へ提出する必要があります。
就業規則とは
「就業規則」とは、賃金・労働時間などの労働条件や職場内の規律などについて定めた規則集であり、社内規程の一種です。
就業規則に記載される内容は、大きく以下の3つに分類されます。
絶対的必要記載事項 | 就業規則に必ず記載しなければならない事項(労働時間や賃金など) |
相対的必要記載事項 | 制度として実施する場合には、記載しなければならない事項(退職手当や制裁など) |
任意記載事項 | 就業規則に定めても定めなくてもよい事項 ※会社が自由に内容を決められる。就業規則以外の社内規程で定めることも可能 |
就業規則は労働基準監督署への届け出が必要|就業規則の意見書を添付する
就業規則を作成または変更した場合、使用者は労働基準監督署にその内容を届け出なければなりません(労働基準法89条)。
また、就業規則の変更を労働基準監督署へ届け出る際には、労働者の代表の意見を聴いた上で、その内容をまとめた意見書を添付しなければなりません(同法90条2項)。
労働者の代表とは、事業場ごとにみて、
・労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労働組合
・労働組合がない場合や労働組合があってもその組合員の数が事業場の労働者の過半数を占めていない場合には、「労働者の過半数を代表する者」
をいいます。
届け出時に労働者の代表の意見書の添付が必要とされているのは、就業規則の内容について労働者に関心をもたせ、内容を確認させる機会を与えるためです。
就業規則は労働条件に直接影響を与える重要な社内規程であるため、労働者側に対する周知を徹底するとともに、労働者の意見を就業規則へ反映することを奨励するため、労働者側の意見書の添付が求められています。
就業規則の意見書の書き方のポイント
就業規則の意見書については、都道府県労働局のウェブサイトなどで様式が公表されています。必ずしも様式に従わなくてもよいですが、特段の事情がなければ様式を用いて作成するのが便利です。
就業規則の意見書の書き方について、様式・記載事項・記入例などを解説します。
就業規則の意見書の様式・記載事項
就業規則の意見書の様式は、都道府県労働局のウェブサイトなどで公表されています。以下の様式は東京労働局が公表しているものですが、他の地域に所在する事業場でも利用できます。
就業規則の意見書の記載事項は、以下のとおりです。
①作成日
意見書の作成日を記載します。
②宛名
使用者の名称を記載します。
(例)「○○株式会社 代表取締役 ○○殿」「○○ 殿」
③意見を求められた日
使用者から就業規則の作成・変更について意見を求められた日付を記載します。
④意見の内容
作成・変更される就業規則について、労働者側としての意見内容を記載します。
⑤労働組合の名称または労働者の過半数を代表する者の職名・氏名
意見書の作成者が誰であるかを明記します。
(例)「○○労働組合」「一般従業員 A野B郎」
⑥労働者の過半数を代表する者の選出方法
労働者の過半数を代表する者が意見書を作成する場合は、その者を選出した方法を記載します。労働組合が意見書を作成する場合は不要です。
意見書の日付は「代表者が意見書を作成した日」
意見書の冒頭に記載する日付は、労働組合または労働者の過半数代表者が実際に意見書を作成した日付とします。
これに対して、宛名の下部に記載する日付は、使用者から意見を求められた日付とします。即日で意見を述べる場合を除き、両者は別の日付となる点に注意ください。
就業規則の意見書への署名・押印は不要
就業規則の意見書には、従来は作成者の署名・押印が必要とされていました。
しかし、行政手続きのデジタル化・効率化を図るため、2021年4月1日以降は署名・押印が廃止されています。したがって、就業規則の意見書に署名・押印をするかどうかは任意です。
就業規則の意見書の記入例
就業規則の意見書の記入例を紹介します。
2023年4月10日 ○○株式会社 代表取締役 ○○殿2023年4月1日付をもって意見を求められた就業規則案について、下記のとおり意見を提出します。 (例①) 「今回の改定事項について、特に意見はありません。」 (例②) 「今回の改定は、従業員にとって有利な内容であるため、特に意見はありません。」 (例③) 「今回の改定事項について、次のとおり要望します。その他の事項については異存ありません。 ……」 (例④) 「原則として賛成しますが、下記の事項につきましては、今後ご検討をお願い申し上げます。 (1)第○条については、…… (2)第○条については、…… 労働組合の名称又は労働者の過半数を代表する者の職名:一般従業員 氏名:A野B郎 労働者の過半数を代表する者の選出方法:投票による選挙 |
就業規則の意見書に関する注意点
就業規則を作成・変更するにあたり、労働者側に意見書を求める際には、以下の各点に注意ください。
①就業規則の意見書は事業場ごとに提出する
②労働者の過半数代表者を会社が選ぶことはできない|管理監督者もNG
③会社は就業規則の意見書に拘束されない
④就業規則の意見書の提出を拒否された場合の対処法
⑤届け出(就業規則意見書の添付を含む)を欠く就業規則も有効
就業規則の意見書は事業場ごとに提出する
就業規則の意見書は、就業規則の作成義務がある事業場(=常時10人以上の労働者を使用する事業場)ごとに提出する必要があります。
- 事業場とは
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事業場とは、「組織的な作業を行うことができる場所」を意味します。
同一の場所にあるものは、原則として一個の事業場とされますが、場所的に分散しているものであっても、出張所・支所などで、それぞれの規模が著しく小さく、組織的関連や事務能力等を勘案して一つの事業という程度の独立性がないものについては、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱われます。
会社全体では雇用する労働者が10人以上であるとしても、事業場単位で9人以下のところでは、就業規則の作成義務がありません。あくまでも労働者10人以上が所属する事業場のみ、就業規則の作成義務が生じます。
就業規則の意見書も、常時10人以上の労働者を使用する事業場ごとに、それぞれ提出する必要があります。会社全体で共通の就業規則を用いている場合でも、常時10人以上の労働者を使用する事業場ごとに意見書を提出する必要がある点に注意ください。
労働者の過半数代表者を会社が選ぶことはできない|管理監督者もNG
就業規則の意見書を(労働組合ではなく)労働者の過半数代表者が作成する場合、その過半数代表者を会社の意向に基づき選出することはできません(労働基準法施行規則6条の2第1項2号)。
同様の理由で、監督または管理の地位にある労働者(=管理監督者)についても、労働者の過半数代表者として就業規則の意見書を作成することはできません(同項1号)。管理監督者は、経営者(会社)と一体的な地位にあるものと解されているためです。
労働者の過半数代表者は、就業規則の作成・変更について意見を述べる者を選ぶことを明らかにした上で、投票・挙手などの方法によって選出する必要があります(同項2号)。労働者側において、最大限民主的なプロセスによって選出することが期待されています。
なお、労働者が
- 過半数代表者であること
- 過半数代表者になろうとしたこと
- 過半数代表者として正当な行為をしたこと
を理由として、会社がその労働者を不利益に取り扱ってはなりません(同条3項)。
また、会社は過半数代表者がその事務を円滑に遂行できるように、必要な配慮を行わなければなりません(同条4項)。
会社は就業規則の意見書に拘束されない
就業規則の作成・変更時には労働者側の意見を聴かなければなりませんが、会社は労働者側の意見に従う必要はありません。労働基準法上はあくまでも、会社は労働者側の意見を聴くだけでよく、従うことまでは義務付けられていないためです。
ただし就業規則は、労働条件に直接影響を与える重要な社内規程です。
就業規則の意見書の提出を拒否された場合の対処法
労働者側が意見書の提出を拒否している場合でも、使用者が労働者側の意見を聴いたことが客観的に証明できれば、就業規則(変更)届は受理されます(昭和23年5月11日基発735号、昭和23年10月30日基発1575号)。
もし労働者側に就業規則の意見書の提出を拒否されたら、労働基準監督署には「意見書不添付理由書」を提出しましょう。
意見書不添付理由書 2023年4月10日 ○○労働基準監督署長 殿東京都○○ 今般、就業規則(変更)届を提出いたしましたが、当該届に係る変更につき、当社が雇用する労働者の過半数で組織する労働組合が意見書の提出を拒否しているため、意見書を添付することができない旨をご報告申し上げます。 以上 |
また、労働基準監督署によって意見聴取を行ったことを確認される可能性がありますので、労働者側とのやりとりの記録などを保存しておきましょう。
届け出(就業規則意見書の添付を含む)を欠く就業規則も有効
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の届け出義務があります。しかし、就業規則の届け出(就業規則意見書の添付を含む)はその効力要件ではなく、届け出を欠いた就業規則も有効であるというのが通説・実務です。
したがって、労働者側から「届け出をしていない就業規則は無効だ」と主張されても、会社としてはその有効性を主張できます。
ただし、就業規則の届け出は労働基準法上の義務であり、違反した場合には罰則の対象となるので、適切に行いましょう。
使用者が意見聴取を実施しないときの罰則
就業規則の作成・変更の際に労働者の意見を聴くことは使用者の義務であり、違反した場合には「30万円以下の罰金」に処されます(労働基準法120条1号)。
労働者の意見を聴くべき立場にある人(代表取締役など)が、労働基準法の規定に従って就業規則の作成・変更に関する意見を聴かなかった場合は、会社に対しても「30万円以下の罰金」が科されます(同法121条1項)。
労働基準法違反で刑事罰を受けると、会社のレピュテーションの悪化が懸念されますので、注意しましょう。
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