休日出勤した従業員に代休を与えないと違法?
法律のルールを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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「代休」とは、休日出勤をした従業員に対して、その代わりに労働日を休日とすることをいいます。前もって労働日と休日を入れ替える「振替休日」とは異なり、代休は休日出勤が行われてから事後的に与えられるものです。
法律上、休日出勤をした従業員に代休を取得させることは義務付けられていません。ただし、就業規則などによって代休の定めがあり、付与要件に該当している場合は、その定めに従って代休を与える必要があります。
そのほか、代休に関するルールは就業規則などの定めによります。企業ごとに異なるため、自社のルールを正確に把握したうえで対応しなければなりません。休日出勤や代休の運用に当たっては、そのルールを明確化したうえで従業員に周知することが大切です。また、36協定の締結や労働基準監督署への届出も怠らないようにしてください。
この記事では、休日出勤をした従業員に代休を与えないのは違法かどうかや、休日出勤と代休に関するその他の注意点などを解説します。
※この記事は、2025年10月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
休日出勤をした従業員に代休を与えないのは違法?
法律上、休日出勤をした従業員に代休を取得させることは義務付けられていません。ただし、就業規則などによって代休の定めがあり、付与要件に該当している場合は、その定めに従って代休を与える必要があります。
代休とは
「代休」とは、休日出勤をした従業員に対して、その代わりに労働日を休日とすることをいいます。
例えば、企業が休日と定めている10月26日(日)に、ある労働者が休日出勤をした場合を考えます。
実際に10月26日に休日出勤をした後、本来は労働日である10月29日(水)を休日にしたとします。この場合、10月29日が代休に当たります。
代休を与えると、労働者は休日出勤による疲労を回復する時間をとることができます。その結果、仕事のパフォーマンスの向上や健康被害の防止につながる効果が期待されます。また、代休日は原則として無給で構わないので、企業側にとっては代休を与えない場合と比較して人件費を抑制できるというメリットがあります。ただし、休日出勤をした日の割増賃金の支払い義務は残る点に注意が必要です。
代休を取得させる法律上の義務はない
労働基準法その他の法律では、使用者に対し、休日出勤をした労働者に代休を取得させることを義務付けていません。
したがって、36協定(労使協定)で定められた範囲内で休日出勤を指示しており、その時間数に応じた割増賃金を支払っていれば、代休を取得させなくても原則として違法ではありません。
就業規則などで定められていれば、代休を取得させる必要がある
法律上は代休の付与が義務付けられていなくても、就業規則や労働契約で定められていれば、その内容が雇用に関するルールとして適用されます。
一定の要件を満たせば代休を付与する旨が就業規則や労働契約に明記されているときは、使用者はその要件を満たす労働者に対し、代休を付与しなければなりません。
代休と振替休日の違い
休日出勤をした労働者に対して、その代わりに休日を与える制度としては、代休のほかに「振替休日」があります。「振替休日」とは、あらかじめ労働日と休日を入れ替える制度です。
例えば、企業が休日と定めている10月26日(日)に、ある労働者を出勤させる場合を考えます。
実際に10月26日に出勤させる前に、本来は労働日である10月29日(水)を休日に指定したとします。この場合、10月29日は振替休日に当たります。
振替休日は前もって労働日と休日を入れ替えますが、代休は休日出勤をした後で労働日を休日に変更します。
振替休日の代わりに出勤する日は労働日であるため、時間外労働をする場合を除いて割増賃金は発生しません。これに対して、代休の代わりに出勤する日は休日であるため、その全ての労働時間について割増賃金を支払う必要があります。
休日出勤をした場合の賃金の計算方法
休日出勤をした労働者に対して、使用者が支払うべき賃金額の計算方法を解説します。
休日出勤が法定休日だった場合と所定休日だった場合の違い
休日出勤をする日は「法定休日」と「所定休日」の2通りに分かれます。
① 法定休日
労働基準法によって付与が義務付けられている休日です。1週間につき1日、または4週間を通じて4日のみが法定休日となります。
② 所定休日
法定休日以外に、労働契約や就業規則などに従って付与される休日です。
法定休日と所定休日の振り分けは、以下のルールによります。
- 法定休日と所定休日の振り分け方
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<労働契約や就業規則などで振り分け方が定められている場合>
→そのルールによって振り分けられます。<労働契約や就業規則などに定めがない場合>
(a) 法定休日が1週間につき1日とされている場合
日曜から土曜までのうち、最も後ろに位置する休日が法定休日、その他の休日が所定休日となります。
(例)土日休みの場合
→土曜が法定休日、日曜が所定休日(b) 法定休日が4週間を通じて4日とされている場合
その4週間の休日のうち、後ろに位置する4日間が法定休日、その他の休日が所定休日となります。
(例)10月1日~28日の4週間のうち、13日~15日と24日~28日の8日間が休日である場合
→25日~28日が法定休日、13日~15日と24日が所定休日
法定休日および所定休日の労働に対しては、それぞれ以下の賃金を支払わなければなりません。
| 労働した休日 | 支払うべき賃金 |
|---|---|
| 法定休日 | 休日手当(通常の賃金の35%以上) |
| 所定休日 | 法定内残業手当(通常の賃金、割増なし) または 時間外手当(通常の賃金の25%以上) ※法定労働時間(原則として1日8時間・1週40時間)を超えない場合は法定内残業手当、超える場合は時間外手当を支払います。 ※時間外労働が月60時間を超える部分は、時間外手当が通常の賃金の50%以上となります。 |
代休を与えなかった場合の計算方法
休日出勤をした労働者に代休を与えなかった場合は、基本給に加えて、休日出勤日の賃金全額を支払う必要があります。計算式は以下のとおりです。
休日出勤日の賃金=1時間当たりの基礎賃金×割増率×時間数
「基礎賃金」とは、給与計算期間中に労働者に対して支給されたすべての賃金から、以下の賃金を除いたものをいいます(労働基準法37条5項、労働基準法施行規則21条)。
- 基礎賃金から除く賃金
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・法定内残業手当
・時間外手当
・休日手当
・深夜手当
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
例えば、1時間当たりの基礎賃金が2000円で、休日出勤日に8時間働いた場合を考えます。
休日出勤日が法定休日であれば、割増率35%が適用されるため、支払うべき賃金額は2万1600円(=2000円×1.35×8時間)です。
休日出勤日が所定休日で、その日の労働時間が全て時間外労働(月60時間以内)に当たる場合は、割増率25%が適用されるため、支払うべき賃金額は2万円(=2000円×1.25×8時間)となります。
代休を与えた場合の計算方法
休日出勤をした労働者に代休を与えた場合、代休日は無給で構いません。したがって、休日出勤日について支払うべき賃金額から、代休日の賃金額を差し引いた額を支払えば足ります。
例えば、1時間当たりの基礎賃金が2000円で、休日出勤日に8時間働き、その代わりに代休を取得したケースを考えます。1日の所定労働時間は8時間とします。
休日出勤日が法定休日であれば、割増率35%が適用されるため、支払うべき賃金額は2万1600円(=2000円×1.35×8時間)です。
他方で、代休日の賃金相当額1万6000円(=2000円×8時間)の支払いが不要となります。その結果、実際に支払うべき賃金額は5600円(=2万1600円-1万6000円)となります。
振替休日を与えた場合の考え方
代休ではなく振替休日とし、前もって労働日と休日を入れ替えた場合は、時間外労働をする場合を除いて割増賃金の支払いを要しません。
例えば、1時間当たりの基礎賃金が2000円で、あらかじめ同一週内で労働日と休日を入れ替えたうえで、労働日となった日に8時間働いたケースを考えます。なお、法定労働時間の基準となる1週間は日曜から土曜まで、1日の所定労働時間は8時間とします。
労働日となった日について支払うべき賃金は1万6000円(=2000円×8時間)です。割増率は適用されません。
他方で、振替休日の賃金相当額1万6000円(=2000円×8時間)の支払いが不要となります。その結果、賃金の精算は発生しません(0円)。
なお、別の週の労働日と休日を入れ替えた結果、法定労働時間を超過することになる場合は、時間外労働の割増賃金が発生するのでご注意ください。
従業員に指定された代休日を、企業側が変更することはできる?
代休日をいつにするかは、代休に関する就業規則や労働契約の規定に従って決まります。したがって、従業員が代休日を指定した場合に、企業側がそれを変更して別の日に代休を付与してよいかどうかも、代休に関する規定の内容次第です。
従業員とのトラブルを防ぐため、代休日の決定方法などはあらかじめ明確に定めておきましょう。
休日出勤をした従業員に、代休を強制的に取得させることはできる?
代休の取得が従業員の任意であるか、それとも強制的に取得させることができるのかについても、代休に関する就業規則や労働契約の規定に従って決まります。
代休に関するルールが曖昧だと、従業員との間でトラブルが生じやすいので、ルールの明確化に努めましょう。
代休から有給休暇への変更はできる?その逆は可能?
代休は原則として無給であるため、従業員は「代休ではなく有給休暇を取得したい」と希望するかもしれません。
有給休暇は原則として、労働者(従業員)の請求する時季に与えなければなりません(労働基準法39条5項本文)。
代休を有給休暇に変更すると、労働者にとっては賃金をもらえるというメリットがあります。そのために有給休暇取得の権利を行使することは、特段不合理とは言えないので、使用者としては代休から有給休暇への変更を認めるべきと考えられます。
なお、使用者には有給休暇の取得時季を変更する権利(=時季変更権)が認められることもあります。しかし時季変更権が認められるのは、労働者に請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に限られています(同項但し書き)。
元々代休を予定していた日については、その労働者がいなくても事業に支障は生じないと考えられるので、時季変更権が認められる可能性は低いでしょう。やはり使用者としては、代休から有給休暇への変更を柔軟に認めた方が賢明です。
休日出勤の指示自体が違法となるケース
代休を取得させるかどうかの問題以前に、以下の場合には休日出勤の指示自体が違法となるので十分ご注意ください。
① 36協定が締結されていない場合
② 36協定の上限時間を超過している場合
③ 割増賃金が適切に支払われていない場合
36協定が締結されていない場合
従業員に休日出勤をさせるには「36協定」を締結しなければなりません。36協定は、時間外労働や休日労働に関するルールを定めた労使協定です。事業場ごとに、使用者と労働組合または労働者の過半数代表者の間で締結します。
36協定が締結されていないのに、従業員に休日出勤を指示するのは違法なのでご注意ください。ただし、あらかじめ労働日と休日を入れ替える場合(=振替休日を与える場合)は、この限りではありません。
36協定の上限時間を超過している場合
従業員に休日出勤をさせる際には、36協定で定められた時間外労働と休日労働の上限時間を遵守しなければなりません。上限時間を超える休日出勤の指示は違法であり、労働基準監督署の是正勧告や刑事罰の対象となります。
休日出勤の賃金が適切に支払われていない場合
休日出勤をした従業員には、下表(再掲)の賃金を支払う必要があります。
| 労働した休日 | 支払うべき賃金 |
|---|---|
| 法定休日 | 休日手当(通常の賃金の35%以上) |
| 所定休日 | 法定内残業手当(通常の賃金、割増なし) または 時間外手当(通常の賃金の25%以上) ※法定労働時間(原則として1日8時間・1週40時間)を超えない場合は法定内残業手当、超える場合は時間外手当を支払います。 ※時間外労働が月60時間を超える部分は、時間外手当が通常の賃金の50%以上となります。 |
適切に賃金を支払っていない場合は違法となり、労働基準監督署の是正勧告や刑事罰の対象となります。
休日出勤や代休の運用について、企業が注意すべきポイント
休日出勤や代休の運用に当たり、企業としては特に以下のポイントに注意してください。
① ルールを明確化し、従業員に周知する
② 36協定の締結・届出を適切に行う
ルールを明確化し、従業員に周知する
休日出勤や代休に関するルールは、就業規則などに明記したうえで、従業員に対して十分に周知することが大切です。特に管理職の従業員には、部下に対する不適切な指示が行われないように、研修などを通じて丁寧にインプットを行いましょう。
36協定の締結・届出を適切に行う
従業員に休日出勤を指示する際には、労働組合または労働者の過半数代表者との間で36協定を締結することが必須です。
また36協定は、労働基準監督署に届け出なければ効力を生じません。厚生労働省ウェブサイトに掲載されている様式を参考にして、確実に届出を行いましょう。












