コンプライアンス違反のよくある事例とは?
主な発生原因や予防策などを
分かりやすく解説!

この記事のまとめ

コンプライアンス違反には、以下に挙げるようにさまざまなパターンがあります。
・欠陥品に対するクレーム
・違法な長時間残業
・ハラスメント
・個人情報の漏えい
・著作権侵害
・役員の異性トラブル
・補助金や助成金の不正受給
・SNSでの炎上
など

コンプライアンス違反が発覚すると、企業はブランドイメージの低下や損害賠償などのリスクを負ってしまいます。
コンプライアンス違反を未然に防ぐためには、チェック体制の整備、経営陣と現場の連絡手段の確保、コンプライアンス研修などを行いましょう。コンプライアンス研修を実施する際には、eラーニングの活用もご検討ください。

この記事ではコンプライアンス違反について、よくある事例・主な発生原因・予防策などを解説します。

ヒー

コンプライアンス研修の際に、危機感を持てるような事例を紹介したいのですが、どんなものがあるでしょうか?

ムートン

具体的な事例を用いて説明をすることはとても効果的ですね。例えば、最近だと以下のような事例がありますよ。

※この記事は、2025年1月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

コンプライアンス違反とは

コンプライアンス(compliance)」とは、事業者が法令などの社会的ルールを守ることを意味します。事業者が守るべきルールの種類としては、法令・ガイドライン・契約・社内規程・社会倫理などが挙げられます。

法令などの社会的ルールを逸脱することは「コンプライアンス違反」と呼ばれます。
コンプライアンス違反を犯して事業者は、さまざまなリスク(後述)を負うことになってしまいます。事業を安定的に運営するためには、コンプライアンス違反を避けるための努力が必要不可欠です。

コンプライアンス違反のよくある事例

コンプライアンス違反には、以下に挙げるようにさまざまなパターンがあります。

コンプライアンス違反の例

・欠陥品に対するクレーム
・違法な長時間残業
・ハラスメント
・個人情報の漏えい
・著作権侵害
・役員の異性トラブル
・補助金や助成金の不正受給
・SNSでの炎上
……など

ムートン

それぞれ、具体的な事例を挙げながら解説します。

欠陥品に対するクレーム

販売している商品に欠陥があることが判明すると、損害賠償リコールに発展するおそれがあります。事業者にとっては桁違いの支出が発生し、業績が大きく傾いてしまうことになりかねません。

最近では、自動車を製造・販売するダイハツ工業株式会社が、顧客からのクレームを受けて6車種19万台余りのリコールを届け出たことが報じられました。
同社においては、自動車に関する認証申請について不正行為がなされていたことが判明しています。

行政が設定している基準を守らず誤魔化すことは、重大なコンプライアンス違反です。リコールと不正行為の間の因果関係は現時点で不明ですが、コンプライアンス違反が大規模な不祥事に繋がり得るという教訓として捉えるべきでしょう。

参考:NHKウェブサイト「ダイハツ 6車種19万台余のリコール届け出」
   ダイハツ工業株式会社ウェブサイト「当社の認証申請における不正行為に関する公表情報」

違法な長時間残業

事業者が雇用する労働者に対して残業を指示できるのは、労働基準法および36協定(労使協定)で定められた時間内に限られます。
上限を超えて労働者に残業をさせた場合は、労働基準監督署による是正勧告や、刑事罰の対象となります。また、ブラック企業であるとの評判が広まり、人材の確保が難しくなるおそれもあるので要注意です。

2015年には、広告代理業を営む株式会社電通において、女性労働者が自ら命を絶つ事件が報道されました。女性労働者は、上限を超える長時間残業を指示されていました。同社は労働基準法違反の罪で起訴され、東京簡易裁判所によって罰金50万円の有罪判決を受けました。

参考:日本経済新聞ウェブサイト「電通に罰金50万円 違法残業事件で東京簡裁判決」

ハラスメント

ハラスメント(harassment)」とは、「いやがらせ」や「迷惑行為」などを指す言葉です。相手の嫌がることをして、不快感を覚えさせる行為全般がハラスメントに当たります。

職場における主なハラスメントの種類

・セクシュアルハラスメント
→性的な内容の迷惑行為

・パワーハラスメント
→優越的地位を背景としたいやがらせ

・マタニティハラスメント/パタニティハラスメント
→妊娠、出産、育児などに関連するいやがらせ

・ケアハラスメント
→家族の介護に関連するいやがらせ

近年では、ハラスメントに対する批判的な考え方が社会的に定着しています。職場においてハラスメントがなされたことが報道されると、ブラック企業であるとの評判が広まって、人材の確保が難しくなってしまうでしょう。

最近では、大手芸能事務所であったジャニーズ事務所の元代表者(故人)が、多数の所属タレントに対して性加害を行っていたことが大々的に報じられました。
同社は社名を変更し、被害者に対して多額の補償を続けています。また、多くの所属タレントが同社を離れ、独立する事態に発展しました。

参考:株式会社SMILE-UPウェブサイト

個人情報の漏えい

事業者が個人情報を取り扱うに当たっては、「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」のルールを遵守しなければなりません。特に、個人情報の漏えい等を防ぐため、安全管理措置を適切に講じることが大切です。

個人情報の漏えい等が発生すると、大規模な企業不祥事に発展してしまいます。対応に多大なコストがかかりますし、事業者としての信用も大きく失墜してしまうでしょう。

2024年10月には、飲食店業を営む株式会社サイゼリヤのサーバーに第三者が不正アクセスを行い、約6万件の個人情報の漏えい等が発生したことが判明しました。

参考:株式会社サイゼリヤ「不正アクセスによる個人情報漏えいのお詫びとご報告」

著作権侵害

音楽・動画・文章などのコンテンツには著作権が認められています。他人の著作権を侵害すると、差止請求損害賠償請求を受けることがあるほか、刑事罰が科されることもあり得るので注意が必要です。

2024年2月には、スマートフォンアプリなどでニュースを配信している「NewsPicks」において、新聞社やテレビ局の記事の写真・画像・イラストなどが無断で使用されていたことが報道されました。

参考:NHKウェブサイト「「NewsPicks」が著作権侵害 運営会社が謝罪 写真など無断使用」

役員の異性トラブル

異性とのトラブルは個人的な問題にも思われますが、有名企業の役員などが当事者である場合は、その適格性を疑われる要因になり得ます。
性加害セクシュアルハラスメントに当たるような行為はもちろんのこと、不倫などについても慎重に避けるべきです。

2023年12月に、再生可能エネルギー事業を行うジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(現:ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社)において、会長が女性に対してセクハラ行為をしたことが判明し、2024年2月付で会長職を解任された旨が報道されました。

参考:NHKウェブサイト「ENEOSホールディングス グループ会社会長 セクハラ行為で解任」

補助金や助成金の不正受給

受給要件を満たしていないにもかかわらず、満たしているかのように偽って補助金や助成を不正受給することは、詐欺罪(刑法246条1項)に該当する悪質な行為です。関与した役員や従業員は、逮捕・起訴されて刑事罰を科されるおそれがあります。

特に2020年以降、新型コロナウイルス感染症に関する助成金不正受給が相次いで報道されました。一例として、水戸京成百貨店の元総務部長は、約10億7000万円の雇用調整助成金を不正受給したことを理由に、詐欺罪で懲役3年の実刑判決を受けています。

参考:NHKウェブサイト「コロナ助成金詐欺の罪 水戸京成百貨店の元総務部長に実刑判決」

SNSでの炎上

現在では多くの企業が、SNSにおいて企業アカウントを運営しています。企業アカウントは広告・集客などの観点からメリットがありますが、不適切な内容の投稿をすると炎上し、企業としての評判を大きく落とす原因になり得るので注意が必要です。

2020年10月には、玩具メーカーである株式会社タカラトミーの公式アカウントが、人気商品である「リカちゃん」に関してTwitter(現:X)上で不適切な投稿を行い、多くの人々から批判を受ける事態に発展しました。

参考:株式会社タカラトミー「タカラトミー公式 Twitter(@takaratomytoys)の運用に関するお詫びとご報告」

コンプライアンス違反が発覚した企業が負うリスク

コンプライアンス違反が発覚すると、企業は以下のようなリスクを負うことになってしまいます。

  • ブランドイメージが低下し、信用を失う
  • 人材の確保が困難になる
  • 損害賠償責任を負う
  • 行政処分を受ける
  • 役員などが刑事罰を受ける

ブランドイメージが低下し、信用を失う

コンプライアンス違反に当たる行為をした企業には、ルールを守らない」「弱者から搾取する」「あくどいことをしている」などのネガティブなイメージが付きまといます。
その結果、企業としてのブランドイメージが低下し、取引先からの信用を失ってしまうことになりかねません。そうなれば、売上などの業績にも悪影響が生じてしまうでしょう。

人材の確保が困難になる

違法な長時間残業やハラスメントなどが判明すると、社会的にブラック企業として認知されてしまいます。
その結果、既存の労働者の退職が相次いだり、新規採用に応募する人が大幅に減ったりして、人材の確保が困難になってしまうおそれがあります。

損害賠償責任を負う

コンプライアンス違反によって他人(他社)に損害を与えた企業は、その損害を賠償しなければなりません
コンプライアンス違反の内容や規模によっては、損害賠償の額が億単位に及び、業績が大きく傾いてしまうおそれがあります。

行政処分を受ける

コンプライアンス違反に当たる行為は、行政処分の対象となることもあります。行政処分の事実や内容は公表されることが多く、企業としての評判に大きな悪影響が生じてしまいかねません。

役員などが刑事罰を受ける

コンプライアンス違反が犯罪行為に当たる場合は、役員などの関係者が刑事罰を受ける可能性があります。
企業において重要な役割を担う人が刑事罰を受けると、企業経営において大きな穴が開いてしまうほか、報道によって評判が大きく損なわれてしまうおそれがあります。

コンプライアンス違反が発生する主な原因

コンプライアンス違反が発生する背景には、主に以下のような原因が存在するケースが多いです。

  • チェック体制が不十分である
  • 経営陣が現場のことを知らない
  • コンプライアンスに関する知識や意識が乏しい

チェック体制が不十分である

社内のチェック体制が不十分である場合は、コンプライアンス違反を見逃したまま放置してしまいやすくなります。
特に、一人の担当者だけでチェックしている業務領域については、コンプライアンス違反が発生するリスクが高いと考えられるので要注意です。

経営陣が現場のことを知らない

コンプライアンス違反は、現場の従業員の独断的な行動によって発生することがしばしばあります。
経営陣が現場のことをよく分かっておらず、現場担当者に任せきりにしていると、コンプライアンス違反のリスクが高くなってしまいます。

コンプライアンスに関する知識や意識が乏しい

法令ガイドラインなどのルールが分かっていない、どのような言動が不適切であるかの判断がつかないなど、知識不足がコンプライアンス違反の原因となるケースがよくあります。
また、知識はあったとしても「どうせバレないだろう」と高を括っていた結果、思いがけないところから不正行為が発覚して大規模な不祥事へ発展するケースもあります。

役員や従業員において、コンプライアンスに関する知識や意識が乏しい状態にあると、企業不祥事のリスクが高まってしまいます。

コンプライアンス違反を防ぐための対策

コンプライアンス違反の発生を防ぐため、企業においては以下のような対策に努めましょう。

  • 慎重なチェックができる体制を整備する
  • 経営陣と現場の連絡手段を確保する
  • コンプライアンス研修を実施する

慎重なチェックができる体制を整備する

コンプライアンス違反は、複数の担当者がチェックすることによって発生しにくくなり、仮に発生したとしても是正しやすくなります。
ダブルチェックトリプルチェックの体制を整備して、コンプライアンス違反を見逃さないようにしましょう。

経営陣と現場の連絡手段を確保する

経営陣が現場のことをよく理解し、適切に監視の目を及ぼすことができれば、コンプライアンス違反の効果的な予防策となります。
そのためには、経営陣現場の間の連絡手段を確保して、緊密にコミュニケーションをとるように努めましょう。

コンプライアンス研修を実施する

役員や従業員のコンプライアンスに対する意識を向上させるためには、繰り返してコンプライアンス研修を実施することが効果的です。
情報セキュリティ・ハラスメント・労働法・知的財産法など、コンプライアンスが問題になりやすい事項をテーマに取り上げて、定期的に研修を実施しましょう。

コンプライアンス研修にはeラーニングの活用を

コンプライアンス研修を実施する際には、eラーニングを活用するのが便利です。準備された講座の中から選択して、最小限のリソースでコンプライアンス研修を実施できます。

ヒー

さまざまな研修が必要ですが、一から準備するには人手が足りません…。

Legal Learning」の「コンプライアンス推進プラン」は、コンプライアンス研修にも活用できるeラーニングサービスです。「Legal Learning」の活用には、以下のようなメリットがあります。

✅ 研修を最小限のリソースで実施できる
✅ 研修のネタ探しが不要になる
✅ コンプライアンス推進体制を素早く構築できる

コンプライアンスを強化したい企業は、「Legal Learning」の活用をご検討ください。

ムートン

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