食品偽装とは?
主なパターン・事件・法的責任・
予防対策などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

食品偽装」とは、食品について虚偽の情報を表示することをいいます。産地偽装原材料偽装消費期限または賞味期限の偽装などが、食品偽装の典型例です。

食品偽装をした事業者は刑事罰の対象となるほか、民事上の差止請求損害賠償請求を受ける可能性があります。また、食品表示法違反によって行政処分を受け、営業に大きな支障を来してしまうおそれもあるので注意が必要です。

食品偽装の発生を予防するためには、食品の生産・加工の状況を正確に把握することや、食品表示に関する法令・基準を正しく理解することが大切になります。

この記事では食品偽装について、主なパターン・法的責任・予防のポイントなどを解説します。

ヒー

食品の産地偽装や原材料の偽装をニュースで見ました。食品偽装はどう予防したらよいのでしょうか?

ムートン

ルールを理解して徹底することや、それを現場レベルで変えられないようにすることが大切ですね。以下では、過去の食品偽装事件なども確認しておきましょう。

※この記事は、2024年4月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

食品偽装とは

食品偽装」とは、食品について虚偽の情報を表示することをいいます。

食品の産地原材料製造の時期などは、一般消費者が一目見ただけでは通常分かりません。そのため、一般消費者は食品を購入する際、その食品に表示された情報を参考にしています。

食品について表示された情報が虚偽である場合、消費者は安心して食品を購入できません。
一度食品偽装が発生すると、食に対する信頼全体が損なわれ、その食品だけでなく別の食品についても買い控えが起こるなどの悪影響が生じるおそれがあります。また、粗悪な食品が販売された結果、実際に健康被害を引き起こしてしまうリスクもあります。

こうした悪影響やリスクを防ぐため、食品表示法などの法律では、食品について正しく適切な表示を行うことを事業者に義務付けています。
食品偽装を行った事業者は、刑事・民事・行政上の重大なペナルティを受けることになります。

ムートン

自社と消費者だけでなく、取引先や同業他社にも多大な迷惑をかけ、事業に大きく影響することを常に意識すべきです。

食品偽装の主なパターン・事件

食品偽装の主なパターンとしては、以下の例が挙げられます。いずれの偽装も、過去に大規模な不祥事として報道されたことがあります。

① 産地偽装
② 原材料偽装
③ 消費期限・賞味期限の偽装

産地偽装

水産物野菜などの生鮮食品については、産地偽装がしばしば行われます。生鮮食品は産地によって価値に大きな差が出ることが多く、少しでも高く売ろうとして産地偽装が行われることがあります。

例えば2022年には、生鮮水産物冷凍めばちまぐろの原産地が中国であったのに「台湾」と表示するなど、事実と異なる表示をした例が問題になりました。

参考:
農林水産省「築地魚市場株式会社における生鮮水産物の不適正表示に対する措置について」(2022年7月15日)

原材料偽装

加工食品については、使用されている原材料の種類・割合・産地などの偽装が行われることがあります。

例えば2024年には、菓子店がマーガリンを「バター」と表示するなど、不適切な原材料の表示をした事案が問題となりました。

参考:
朝日新聞デジタル「マーガリンをバター、外国産を国産… 菓子店が原材料を不適正表示」

消費期限・賞味期限の偽装

在庫商品の廃棄を免れるため、消費期限賞味期限を延長する偽装が行われるケースも見られます。

例えば2021年には、老舗ベーカリーショップが業務用冷凍パンの賞味期限を最大2カ月延ばして販売した事案が問題となりました。

参考:
朝日新聞デジタル「京都の老舗ベーカリー進々堂が賞味期限を偽装 「冷凍だから大丈夫」」

食品偽装をした事業者が負う法的責任

食品偽装をした事業者は刑事罰の対象となるほか、民事上の差止請求損害賠償請求を受ける可能性があります。
また、食品表示法違反によって行政処分を受け、営業に大きな支障を来してしまうおそれもあるので注意が必要です。

刑事責任|食品表示法違反・不正競争防止法違反・詐欺罪など

食品表示基準によって表示すべきとされている原産地(原材料の原産地を含む)について虚偽の表示がされた食品を販売した者は、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」に処されます(食品表示法19条)。

また、食品の原産地・品質内容・製造方法などについて誤認させるような表示をする行為は「不正競争」に該当します(不正競争防止法2条1項20号)。
違反者は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(同法21条3項5号)。法人に対しても「3億円以下の罰金」が科されます(同法22条1項3号)。

さらに、食品偽装によって相手方を騙し、食品を購入させて代金の交付を受けた場合には「詐欺罪」が成立します(刑法246条1項)。詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。

民事責任|差止請求・損害賠償請求

食品偽装が行われた食品は、適格消費者団体による差止請求の対象となります(食品表示法11条)。差止請求が認められれば、食品の回収や販売停止を行わなければなりません。

また、食品偽装がなされた食品を購入した結果、健康被害などの損害を受けた人は、違反者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法709条)。

行政上の責任|措置命令・業務停止命令・公表処分など

適切な食品表示を行っていない事業者に対しては、内閣総理大臣または農林水産大臣が、食品表示基準に定められた表示事項の表示または遵守事項の遵守を指示することができます(食品表示法6条1項・3項)。
指示を受けた者が、正当な理由なくその指示に係る措置をとらなかったときは、内閣総理大臣がその者に対して措置命令を行うことができます(同条5項)。措置命令に従わない場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処されます(同法20条)。

また、食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項について、食品表示基準に従った表示がされておらず、消費者の生命・身体に対する危害の発生・拡大の防止を図るため緊急の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は措置命令または業務停止命令を行うことができます(同法6条8項)。

この場合、不適切な表示をした時点で「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(同法18条)。法人にも「1億円以下の罰金」が科されます(同法22条1項2号)。
さらに、措置命令に違反したときは「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されます(同法18条)。法人にも「3億円以下の罰金」が科されます(同法22条1項1号)。

加えて、上記の指示・命令を受けた場合は、その旨が公表されます(同法7条)。公表が行われれば、会社のレピュテーションにも大きな悪影響が生じるでしょう。

食品偽装の発生を防ぐための対策・ポイント

食品偽装の発生を防ぐためには、以下の各点に留意して日々の食品管理に取り組むことが大切です。

① 食品の生産・加工状況を正しく把握する
② 食品表示に関する法令・基準を正しく理解する

食品の生産・加工状況を正しく把握する

食品偽装は、現場担当者の判断で行われるケースがよくあります。
経営者管理者としては、現場担当者からのヒアリング・視察・データチェックなどを通じて、食品の生産・加工状況に関する実態を正しく把握し、現場主導の食品偽装が行われないように監視しなければなりません。

食品表示に関する法令・基準を正しく理解する

適切な食品表示を行うためには、食品表示に関する法令のルールを正しく理解することが求められます。

消費者庁のウェブサイトには、食品表示法を含む食品表示に関する法令の情報がまとめられています。食品の製造・販売に関する管理者は、これらの情報に目を通しておきましょう。
また、現場担当者に対しても研修を行うなどして、法令・基準に定められた事項のうち重要なものをインプットしましょう。

参考:
消費者庁ウェブサイト「食品表示法等(法令及び一元化情報)
ムートン

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参考文献

消費者庁ウェブサイト「食品表示法等(法令及び一元化情報)」