ジェンダーハラスメントとは?
具体例・リスク・企業の防止の取り組みなどを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「ジェンダーハラスメント」とは、性別を理由とする偏見を押し付けることにより、相手を不当に取り扱ったり、相手に対して不快感を与えたりする言動をいいます。「男らしく」「女らしく」といった性差別的な考え方は、しばしばジェンダーハラスメントに繋がることがあります。
職場においてジェンダーハラスメントが発生すると、労働者のモチベーションの低下や離職、男女雇用機会均等法違反による公表処分、損害賠償などのリスクが生じます。
企業としては、性差別的意識を解消するための方針の明確化や周知・啓発、相談窓口の設置などを通じて、ジェンダーハラスメントの防止に取り組むことが求められます。この記事ではジェンダーハラスメントについて、具体例・リスク・企業が取り組むべき防止の取り組みなどを解説します。
※この記事は、2026年4月14日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- ・男女雇用機会均等法…雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
目次
ジェンダーハラスメントとは
「ジェンダーハラスメント」とは、性別を理由とする偏見を押し付けることにより、相手を不当に取り扱ったり、相手に対して不快感を与えたりする言動をいいます。
ジェンダーハラスメントの主な要因
ジェンダーハラスメントは、性別に関する固定観念(ステレオタイプ)が主な原因となって発生します。「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」といった思い込みが根強いと、それに反する言動を否定したり、軽視したりする動きが生まれやすくなります。
実際には、性別によるイメージや役割を押し付けられることに抵抗を覚える従業員も多く存在します。特に近年では、男女共同参画の考え方が十分に浸透しているため、性差別的な言動は強い反発を招く可能性が高いです。
ジェンダーハラスメントとセクシュアルハラスメントの違い
ジェンダーハラスメントは、性別に基づく固定観念や役割意識を押し付ける言動を指します。必ずしも性的な言動(わいせつな事柄や異性との交遊関係などに関するもの)を伴うとは限りませんが、「男性(女性)はこうあるべき」という固定観念が背景にあります。
これに対して「セクシュアルハラスメント」は、性的な言動に対する反応によって相手を不利益に取り扱ったり、相手に不快感を与えたりすることを意味します。
相手に対して直接性的な言動を浴びせたり、職場で公然と性的な写真や画像などを見せたりすることがセクシュアルハラスメントに当たります。男女の役割というよりは、性的な言動そのものに焦点を当てているのがセクシュアルハラスメントの特徴です。
ジェンダーハラスメントの具体例
ジェンダーハラスメントに当たる行為としては、次の例などが挙げられます。
- ジェンダーハラスメントの具体例
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① 正当な理由なく、性別によって担当業務を割り振ること
(例)
・女性にはサポート業務、男性には営業を担当させる。② 結婚・出産・育児休業などについて、性別による偏見を押し付けること
(例)
・男性なのに育児休業を取るのはおかしい。
・女性は結婚したら仕事を辞めた方がいい。③ 昇進について、性別を理由に差別をすること
(例)
・女性は責任ある仕事に向いていないので、管理職には昇進させない。④ 会議などの場で、性別を理由に意見を軽視したり、発言機会を与えなかったりすること
(例)
・女性をターゲットとする商品の企画会議なので、男性従業員を参加させる必要はない。
・女性は数字に弱いはずなので、数値目標について議論する会議では、女性の意見を参考にすべきでない。⑤ 性別に関する固定観念に基づき、服装や振る舞いなどについて干渉すること
(例)
・男性なのに髪が長いのはおかしい。顧客に接しない従業員も含めて、男性は全員短髪にすべきだ。
・女性はパンツスーツを着用すべきでなく、スカートを履くべきだ。
ジェンダーハラスメントに関する裁判例
東京高裁令和5年9月7日判決では、女性警察官が同僚の男性警察官から、卑猥な言動や性差別的な言動を受けた事案が問題となりました。東京地裁は男性警察官に対し、慰謝料30万円および弁護士費用3万円の支払いを命じました。
本件では、男性警察官による次のような言動が認定されています。
「女性は違うやろ。優しさちゅうのもあるやろ。」
「女性はかわいいとか、やさしいとかあるやん。それぞれの特長を生かして仕事もせな。」
「(女性警察官も)かわいいとことかあるやん。」
東京高裁はこれらの言動につき、性差別的な一定の価値観を押し付けるもの(=ジェンダーハラスメント)であり、損害賠償の対象になると指摘しました。
「優しい」「かわいい」といった、女性につきまといがちなイメージにたびたび言及し、それを女性警察官に押し付けようとした点が強く問題視されたと考えられます。
ジェンダーハラスメントが発生した場合に企業が負うリスク
職場においてジェンダーハラスメントが発生した場合、企業は次のリスクなどを負うことになります。これらのリスクを防ぐためには、ジェンダーハラスメントの予防に繋がる取り組みを行わなければなりません。
① 労働者のモチベーションの低下や離職に繋がる
② 男女雇用機会均等法違反によって公表される
③ 被害者に損害賠償を請求される
労働者のモチベーションの低下や離職に繋がる
ジェンダーハラスメントが発生すると、被害を受けた従業員はもちろん、周囲の従業員にも不信感や不安が広がり、職場全体のモチベーションが低下します。
特に能力ではなく、性別によって評価や役割が決められていると多くの従業員が感じるようになると、仕事への意欲や組織への帰属意識が大きく損なわれてしまいます。その結果、優秀な人材が相次いで離職し、企業としての生産性が大幅に低下してしまうかもしれません。
労働者のモチベーションを維持するには、ジェンダーハラスメントの原因になり得る不当な偏見(アンコンシャス・バイアス)を取り除き、公正な人事評価を行うことが大切です。
男女雇用機会均等法違反によって公表される
男女雇用機会均等法では、雇用の分野における男女の均等な機会・待遇を確保するための規制が定められています。
具体的には、事業主は次の規制などを遵守しなければなりません。
(a) 性別を理由とする差別の禁止(同法5条、6条)
労働者の募集および採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければなりません。また、配置・昇進・降格・教育訓練や福利厚生、職種や雇用形態の変更、退職などに関して、性別を理由として差別的な取扱いをしてはなりません。
(b) 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(同法9条)
女性労働者が婚姻・妊娠・出産したことを、退職理由として予定する定めをしてはなりません。また、婚姻を理由とする解雇や、妊娠・出産・育児休業の取得などを理由とする解雇その他不利益な取扱いは禁止されています。
(c) セクシュアルハラスメントの防止措置(同法11条)
セクシュアルハラスメントの発生を防止するため、相談・対応体制の整備など、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
(d) マタニティハラスメントの防止措置(同法11条の3)
女性労働者の妊娠・出産・育児休業の取得などを理由とするハラスメント(=マタニティハラスメント)を防止するため、相談・対応体制の整備など、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
ジェンダーハラスメントは、労働者の募集・採用や昇進などに関する差別的な取扱いに繋がることがしばしばあります。また、性的な言動を伴う場合はセクシュアルハラスメントにも当たるほか、妊娠・出産・育児休業等に関する差別的な言動はマタニティハラスメントにも該当します。
これらの場合、ジェンダーハラスメントは男女雇用機会均等法違反に当たる可能性があります。
男女雇用機会均等法に違反した事業主は、厚生労働大臣から報告を求められ、さらに助言・指導・勧告を受けることがあります(同法29条)。
勧告を受けたにもかかわらず、勧告に従った是正措置を講じなかったときは、その旨が公表されてしまいます(同法30条)。公表を受けると、企業としての対外的な評判が大幅に毀損されてしまうおそれがあるので要注意です。
男女雇用機会均等法の規制を踏まえて、企業はジェンダーハラスメントの防止に取り組むことが求められます。
被害者に損害賠償を請求される
ジェンダーハラスメントによって精神的な苦痛を受けた従業員は、加害者や企業に対して損害賠償を請求する可能性があります。
加害者本人だけでなく、雇用主である企業も、安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償責任を負うことがあるので注意が必要です。
損害賠償を巡る従業員とのトラブルは、訴訟に発展するケースも想定されます。訴訟となれば、企業は対応に大きな労力やコストを負担するうえに、報道やSNS投稿などによって企業イメージが低下することにもなりかねません。
企業としてはできる限り予防に取り組みつつ、万が一ジェンダーハラスメントが発生してしまったときは、被害者と誠実に向き合って対応し、穏便な事態の収拾を目指しましょう。
ジェンダーハラスメントを防止するために企業が行うべき取り組み
ジェンダーハラスメントを防止するため、企業は次の取り組みなどを行いましょう。
① 性差別的意識を解消するための方針の明確化および周知・啓発
② ハラスメントに関する相談窓口の設置
③ ハラスメントが発生した場合の迅速・適切な対応
性差別的意識を解消するための方針の明確化および周知・啓発
ジェンダーハラスメントを予防するためには、性別による不当な差別を許さないという方針を明確化し、社内全体に浸透させることが大切です。就業規則や行動規範に性差別的意識の解消に関する方針を明記し、研修や社内広報などを通じて全従業員に周知しましょう。
特に管理職に対しては、部下の指導や評価に当たって性差別的な意識を持たないようにするため、マネジメント研修にジェンダーハラスメント予防の項目を盛り込むことが考えられます。
継続的に周知・啓発を行うことが、ジェンダーハラスメントを許容しない企業文化を育てることに繋がります。
ハラスメントに関する相談窓口の設置
ジェンダーハラスメントの問題を早期に把握して適切に対応するためには、従業員が安心して相談できる窓口を整備することが欠かせません。社内窓口のほか、外部弁護士などに依頼して社外窓口を設置することも考えられます。
相談窓口の担当者は、相談内容の秘密を守ること、相談者の心情に寄り添うこと、必要に応じてコンプライアンス担当者と連携することなどが求められます。特に社内窓口を設置する際には、従業員が安心して相談できるように、窓口担当者の研修や対応マニュアルの整備などを行いましょう。
なお、ハラスメント相談窓口を設置していても、その存在が従業員にあまり知られていないというケースが散見されます。従業員研修や社内広報などを通じて、相談窓口の存在や目的、秘密厳守で相談できる旨などを十分周知し、利用を促しましょう。
ハラスメントが発生した場合の迅速・適切な対応
ジェンダーハラスメントが発生した場合には、事実関係を迅速に調査したうえで、事態の収拾に向けて適切に対応することが求められます。
まずは、被害者の安全確保と心身のケアに取り組みましょう。配置転換によって被害者と加害者を離したり、被害者に対するカウンセリングを行ったりすることが考えられます。
ジェンダーハラスメントに関する事実関係は、社内メールなどの資料の確認や、当事者および関係者に対するヒアリングなどによって行います。加害者とされている従業員には弁明の機会を与え、公正な手続きによって調査を行いましょう。
実際にジェンダーハラスメントが行われたことが分かったときは、加害者の懲戒処分を検討しましょう。ただし、重すぎる懲戒処分は無効となることがあるので、行為の性質や態様に見合った処分を行うことが大切です。
ジェンダーハラスメントの再発防止に取り組むことも重要です。実際に起こってしまった事案の原因や経緯などを分析したうえで、何が問題だったのか、改善するためにはどうすればいいのかなどを議論したうえで、再発防止策を講じましょう。
再発防止策の立案や実施に当たっては、法務担当者やコンプライアンス担当者に主導的な役割を果たすことが求められます。
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