IT法務とは?
主な業務内容・求められる能力・
担当者のスキルを高める方法などを
分かりやすく解説!

この記事のまとめ

IT法務」とは、コンピュータやインターネットなどの通信技術に関連する事業について、法令契約などの観点から検討やチェックを行う業務です。

IT法務担当者は、一例として以下のような業務を行います。
・契約書や利用規約の作成やチェック
・顧客のクレームへの対応
・知的財産権に関する調査や検討
・個人情報や秘密情報の管理
・AIなどの革新的領域に関する検討
・訴訟への対応
など

IT法務担当者には、法令や契約に関する知識に加えて、IT領域に関する基本的な知識も求められます。また、エンジニアなどと適切にコミュニケーションをとることができる能力も必要です。

IT法務担当者のスキルを高める方法としては、外部のセミナーへの参加やエンジニアとの交流を促すこと、IT法務に関する研修を実施することなどが挙げられます。IT法務担当者として業務に必要な知識を獲得するためには、eラーニングの活用をご検討ください。

この記事ではIT法務について、主な業務内容・求められる能力・担当者のスキルを高める方法などを解説します。

ヒー

IT業界に対応できる法務の需要が増えていると聞きました。IT法務にはどんな特徴がありますか?

ムートン

法務担当者はITに限らず、契約書チェックや社内の情報管理・研修などを行いますが、IT領域はAIやテクノロジーなど、新しいことを幅広く学ぶ必要があることがポイントです。チェックしていきましょう!

※この記事は、2025年1月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 個人情報保護法…個人情報の保護に関する法律

IT法務とは

IT法務」とは、コンピュータやインターネットなどの通信技術に関連する事業について、法令契約などの観点から検討やチェックを行う業務です。

インターネット上で事業を行う企業においては、ITに関する法令や契約に関して、さまざまな検討やトラブルへの対応が発生します。IT法務の役割は、経営陣や営業担当者・開発担当者などが行う検討や対応をサポートすることです。

IT法務を充実させることによって、自社がコンプライアンス違反を犯したり、予期せぬトラブルによって大きな損害を被ったりするリスクが低くなり、企業経営の安定につながります。

IT法務の主な業務内容

IT法務の内容は多岐にわたり、具体的には以下のような業務が含まれます。

・契約書や利用規約の作成やチェック
・顧客のクレームへの対応
・知的財産権に関する調査や検討
・個人情報や秘密情報の管理
・AIなどの革新的領域に関する検討
・訴訟への対応
など

契約書や利用規約の作成やチェック

インターネット事業を営む中では、取引先との間で契約書を締結するケースがあります。契約書のドラフトを作成したり、取引先が作成した契約書の内容をチェックしたりすることは、IT法務の中でも基本的な業務の一つです。

また、インターネット上でサービスをリリースする際には、ユーザーに適用される利用規約を作成するのが一般的です。利用規約のドラフトを作成した上で、その内容がサービスの実態や法令などに照らして問題ないかどうかをチェックすることも、IT法務の重要な役割の一つと言えます。

顧客のクレームへの対応

インターネット上でリリースしているサービスについては、顧客(ユーザー)からクレームを寄せられることもあります。

顧客のクレームに対しては、適切に対応しなければ、多額の損害賠償やSNSでの炎上などの大規模なトラブルに発展してしまいかねません。
クレーム対応を適切に行い、企業にとってのリスクを最小限に抑えることは、IT法務担当者の重要な責務です。

知的財産権に関する調査や検討

インターネット上で音楽・動画・記事などのコンテンツをリリースする際には、他人(他社)の著作権侵害しないように注意する必要があります。
また、商品やサービスの名称ロゴなどを決める際には、商標権侵害にも注意しなければなりません。

IT法務担当者には、自社の行為が知的財産権侵害に該当しないように、営業担当者や開発担当者などのサポートを行うことが求められます。

具体的には、著作権や商標権などの知的財産権について調査を行った上で、営業担当者や開発担当者とコミュニケーションをとり、侵害に該当するおそれがある場合は修正を提案するなどのサポートを行います。

個人情報や秘密情報の管理

情報セキュリティは、インターネット事業を行う企業にとって重要な課題の一つです。顧客の個人情報や、取引先から得た秘密情報などが流出すると、企業としての評判が大きく失墜してしまいます。

個人情報については個人情報保護法、秘密情報については秘密保持契約(NDA)などの規定を踏まえつつ、漏えい等が発生しないように細心の注意を払って管理しなければなりません。

IT法務担当者は、実際に個人情報や秘密情報を管理する従業員に対して、その管理方法についてアドバイスを行ったり、情報管理に関する社内規程を整備したりする役割を担います。
また、情報セキュリティに関する従業員研修を行う際には、IT法務担当者が主導的な役割を果たす例がよく見られます。

AIなどの革新的領域に関する検討

インターネット事業に関しては、速いスピードで次々と新しい技術やサービスが登場しています。

近年における生成AIの発展は、その代表例の一つです。生成AIについては、著作権などの観点から法的議論が盛んに行われており、IT領域における重要な関心事項となっています。
IT法務担当者は、生成AIを含む革新的な技術やサービスに関して、最新の法的議論にキャッチアップし、その知見を社内に共有する役割を担います。

ヒー

生成AIの活用や、AI規制がどうなっていくのかは、IT法務担当者としてとても気になります。

また、実際に革新的な技術を自社サービスへ導入するに当たっては、IT法務担当者もチームに参加するケースがあります。
IT法務担当者においては、法的な観点から経営陣や担当者に対して助言を行うなど、具体的なサービスの設計などを協力して検討することが求められます。

訴訟への対応

インターネット事業に関しては、企業が訴訟の当事者となることもあり得ます。
特に知的財産権の侵害に関しては、訴える側にも訴えられる側にもなる可能性があります。大きな金額を巡る争いになるケースが多く、訴訟の結果は業績に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

IT法務担当者は、外部の弁護士と連携して訴訟対応に当たります。自ら法的な検討を行うことに加えて、経営陣と弁護士の間の連絡役を担い、適切な形で訴訟の準備を整えられるようにサポートを行います。

IT法務担当者に求められる能力・素養

IT法務担当者には、前述の業務をきちんとこなすことができるように、主に以下の能力素養が求められます。

  • 法令や契約に関する知識や理解力
  • IT領域に関する基本的な知識
  • コミュニケーション能力

法令や契約に関する知識や理解力

IT法務担当者の業務の大半には、法令契約が関係します。そのため、法令や契約について基本的な知識を備えていることが必要不可欠です。
民法・会社法・個人情報保護法・著作権法などのよく問題になる法令や、自社において準備している契約書テンプレート(自社ひな型)の内容については、特にきちんと勉強しておくことが求められます。

馴染みのない法令や契約に関しても、条文や書籍を読んでスムーズにポイントを押さえることができれば、IT法務における業務を十分にこなすことができます。
多くの法令や契約に触れて理解力を養っておくことも、IT法務担当者に期待されることの一つです。

IT領域に関する基本的な知識

IT法務担当者は、主にインターネット事業に関する業務を取り扱います。そのため、法律や契約に関する知識だけでなく、IT領域に関しても理解しておくに越したことはありません。

エンジニアや営業担当者ほど深く理解するのは難しいですが、少なくともこれらの人たちと会話が成り立つ程度には、自社が関わるIT領域について基本的な知識を備えておくことが求められます。

ムートン

分からないことはしっかり聞いて、自分でも学んでいきましょう!

コミュニケーション能力

IT法務担当者は、社内外における調整役としての働きを求められることが多いです。

例えば契約書の作成やチェックに当たっては、サービスの内容や担当者の要望などを聞き取り、それを契約書へ適切に反映することが求められます。
訴訟対応に当たっては、経営陣と外部弁護士の間のコミュニケーションを仲介し、経営陣において適切に意思決定ができるようにサポートしなければなりません。

こうした役割を全うするためには、社内外の人と適切にコミュニケーションをとることができる能力が必要になります。
特に、法令や契約のルールや想定されるリスクなどを分かりやすく説明する能力や、必要十分な報告・連絡・相談ができる能力は、IT法務担当者に求められる能力の中でも非常に重要です。

ヒー

社内のミーティングに積極的に参加したり、事業部の人と交流することも大切ですね。

IT法務担当者のスキルを高める方法

IT法務担当者のスキルを高めることができれば、トラブルへの耐性強化につながります。以下に挙げる取り組みなどを通じて、IT法務担当者として求められるスキルの獲得・向上を目指しましょう。

  • IT法務に必要な業務知識を身に付ける
  • 外部のセミナーに参加する
  • IT法務担当者とエンジニアの交流を行う

IT法務に必要な業務知識を身に付ける

IT法務担当者には、自らのスキルを高めるため、業務に関する知識を絶えず獲得する努力が求められます。

IT法務に必要な業務知識の具体例

① 法令に関する知識
・民法
・会社法
・個人情報保護法
・著作権法
・不正競争防止法
……など

② 契約に関する知識
・利用規約
・秘密保持契約(NDA)
・業務委託契約
・開発委託契約
……など

③ IT事業やIT技術に関する知識
・webマーケティング
・広告事業
・コンテンツ制作事業
・生成AI
……など

上記に挙げたのは一例で、IT法務担当者に求められる知識はこれらに限りません。自社の事業内容や、普段から取り扱っている業務の内容などを踏まえた上で、必要と思われる知識を貪欲に獲得していくことが期待されます。

外部のセミナーに参加する

IT法務に関しては、企業法務系の大手法律事務所や、IT領域を専門的に取り扱う法律事務所などがセミナーを開催しています。特に最近では、注目されている生成AI関連のセミナーが増えている印象です。

外部のセミナーに参加すると、社内では得られない知識を得られたり、新しく勉強すべきテーマに気付けたりするなど、多くの収穫があるかもしれません。
関心のあるテーマや、自社の業務に関係がありそうなテーマについてセミナーが開催される場合は、積極的に参加するとよいでしょう。

企業としても、自社のIT法務担当者が外部のセミナーに参加したいと申し出てきたら、参加費を補助するなどのサポートを行うことが望ましいです。IT法務担当者の積極的な自己研鑽を奨励すれば、得られた知識が社内に還元され、ITコンプライアンスの強化につながります。

IT法務担当者とエンジニアの交流を行う

IT法務担当者とエンジニアの間で定期的に交流の機会を持つと、お互いの領域に対する理解や知識を深めることにつながります。

特にIT法務担当者は、普段の業務の中でも、エンジニアと適切にコミュニケーションをとることが求められます。その際には、IT技術やエンジニアの業務内容などについてよく理解していると、円滑にコミュニケーションをとることができるようになります。

社内において定期的に交流会を開催すれば、エンジニアから直接話を聞くことができるため、IT法務担当者にとって有意義な機会になるでしょう。
また、社内での交流会に限らず、業界横断的な交流会に参加することも効果的です。社内だけでは得られない知識やきっかけを得る良い機会になります。

IT法務担当者のスキルを高めるには、eラーニングの活用を

IT法務担当者が業務に必要な知識を獲得するためには、eラーニングを活用するのが効果的な方法です。

eラーニングを活用すれば、日々の業務の合間を縫って、柔軟な日程や時間帯で講義を受講することができます。講義の内容が充実しているeラーニングサービスを導入すれば、IT法務担当者に求められる知識を手軽に幅広く獲得することが可能です。

Legal Learning」は、法務担当者間の知識のばらつきをなくし、強い法務組織を作ることを支援するために生まれたオンライン学習支援サービスです。

「Legal Learning」を活用すれば、IT法務の実務に役立つ知識を体系的に学ぶことができます。最新の法改正情報についても速やかにアップデートされるため、最先端のIT法務体制を構築するのに最適です。

ヒー

利用規約やプライバシーポリシーのポイントも学べるし、情報セキュリティの研修講座などもあるんですね。

強固なIT法務体制を素早く整えたいIT企業・担当者は、「Legal Learning」の導入をご検討ください。

ムートン

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