示談とは? メリット・デメリット・
示談金額の決め方(相場)・ 手順・
示談書の作り方・注意点などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

示談」(じだん)とは、トラブルの当事者同士が互いに譲歩して、争いをやめる合意をすることをいい、民法上の「和解」に当たります。例えば交通事故刑事事件契約違反(債務不履行近隣トラブルなどについて、当事者間で示談が行われることがあります。

示談のメリットは、トラブルを早期かつ円満に解決できる点です。その一方で、訴訟によって裁判所の判断を受ける機会を失うので、示談の条件が適切かどうかは事前に十分検討しなければなりません。

示談金額は、実際の損害額を基準として決めるのが原則です。ただし、早期に示談を成立させることを重視して、被害者側が実際の損害額よりも低い金額で妥協するケースもよくあります。

示談を行う際には、まず示談交渉において当事者間で条件を話し合います。合意ができたら示談書を締結し、その内容に従って示談金を精算します。

示談書には示談金額のほか、加害者側の被害者側に対する謝罪や、紛争の蒸し返しを防止するための清算条項などを定めるのが一般的です。
示談に応じるかどうかは、客観的な損害額を踏まえつつ、相手方の提示額が合理的かどうかを判断して決めましょう。その際には、訴訟に発展した際のリスクを踏まえて検討することが大切です。

この記事では示談について、メリット・デメリット・示談金額の決め方・手順・示談書の作り方・注意点などを解説します。

ヒー

社用車がぶつけられました。「示談は保険会社に任せてある」と総務が言っていましたが、示談って何ですか? 訴訟ではないのですか?

ムートン

交通事故の場合、被害者側と加害者側が示談金を受け取る/払うことにより、争いについて和解することです。訴訟をすると時間も費用もかかるので、示談で済ませるケースも多くありますよ。

※この記事は、2024年1月29日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

示談とは

示談」(じだん)とは、トラブルの当事者同士が互いに譲歩して、争いをやめる合意をすることをいいます。契約の種類としては、民法で定められた「和解」に当たります。
例えば交通事故刑事事件契約違反債務不履行)、近隣トラブルなどについて、当事者間で示談が行われることがあります。

示談=民法上の「和解」

示談は、法律トラブルの当事者同士で話し合った上で、金銭の精算などの解決内容を合意する手続きです。

民法では、「和解」について以下の条文が定められています。示談は、当事者が互いに譲歩をして争いをやめることを約束するものであるため、まさに民法上の和解に該当します。

民法
(和解)
第695条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

示談が行われるケースの例

示談が行われるケースとしては、以下の例が挙げられます。

示談が行われるケースの例

① 交通事故
加害者の被害者に対する損害賠償について、示談により解決することがあります。加害者が任意保険に加入している場合には、任意保険会社と被害者の間で示談を行います。

② 刑事事件
被疑者・被告人(加害者)による被害弁償として、被害者との間で示談を行うことがあります。示談が成立して被害弁償が行われれば、起訴・不起訴や量刑の判断において有利な事情として考慮されるため、被疑者・被告人側から積極的に示談が提案される傾向にあります。

③ 契約違反(債務不履行)
契約に関して、いずれかの当事者が債務不履行を起こした場合に、相手方が被った損害の賠償や契約の解除などについて示談が行われることがあります。

④ 近隣トラブル
越境・騒音・悪臭・物品の損壊などの近隣トラブルについて、住民同士の間で示談が行われることがあります。

など

示談のメリット・デメリット

示談のメリットは、トラブルを早期かつ円満に解決できる点です。その一方で、訴訟によって裁判所の判断を受ける機会を失うので、示談の条件が適切かどうかは事前に十分検討しなければなりません。

示談のメリット

示談が成立すると、その時点で紛争が終了します。示談書には清算条項(=紛争をやめることを約束する条項。後述)が定められるので、その後に訴訟などへ発展することもありません。
当事者にとっては、紛争が長引くと対応の労力・コスト・ストレスなどが増えてしまいます。したがって、示談によって早期に紛争を解決できることは大きなメリットです。

また、示談は当事者の合意によって成立するため、紛争解決の結果が許容範囲内に収まる点もメリットといえます。訴訟の判決などにおいて、予期せぬ不利な結果が示されるリスクを回避するためには、適切な落としどころで示談に応じることも検討すべきでしょう。

示談のデメリット

示談書を締結すると、その紛争について訴訟を提起することはできなくなります。すなわち、裁判所による客観的な判断を受ける機会を失うということです。

相手方が提示する不相当な示談条件を受け入れてしまうと、客観的に相当な解決内容よりも不利益な結果を甘受することになってしまいます。錯誤・詐欺・強迫があった場合などを除いて、示談書を取り消すことは認められません。

トラブルについて示談をする際には、示談の内容が適切であるかどうかを、あらかじめ慎重に検討しましょう。

示談金額の決め方・目安・相場|金額を左右する要素は?

示談金額は、実際の損害額を基準として決めるのが原則です。ただし、早期に示談を成立させることを重視して、被害者側が実際の損害額よりも低い金額で妥協するケースもよくあります。

実際の損害額を基準とするのが原則

示談金額は原則として、被害者が実際に受けた損害額を基準に決めるのが適切と考えられます。

被害者としては、訴訟を提起すれば実損害額の賠償を受けられるので、それよりも大幅に低い金額で示談に応じるべきではありません。したがって、示談金額も必然的に、被害者の実損害額に近い水準で落ち着くケースが多いです。

ただし、被害者側にも何らかの過失がある場合は、過失相殺(民法418条・722条2項)の考え方を反映して示談金額を調整するのが一般的です。

例えば交通事故に関する損害賠償について、

被害者の実損害額:1000万円
過失割合:被害者2割・加害者8割(2:8)

上記の場合は、実損害額の8割に当たる800万円を基準に示談金額を定めます。

早期妥結のために妥協して割り引くことも

加害者側が責任の有無や損害額などについて争ってくる場合は、実損害額を基準とする示談金額を提示しても、加害者側がすんなり支払いに応じる可能性は低いです。この場合、早期に紛争を解決することを重視して、被害者側が加害者側に歩み寄って請求額を下げることがあります。

加害者側もある程度歩み寄った結果、実損害額よりも低い金額で示談が成立するケースもよく見られるところです。最終的な示談金額は、実損害額を基準としつつも、当事者の交渉によって適宜調整される点にご留意ください。

示談の手順・流れ

トラブルについて示談を行う際の大まかな流れは、以下のとおりです。

① 示談交渉を行う
② 示談書(和解合意書)を締結する
③ 示談金の精算を行う

示談交渉を行う

まずは、トラブルの当事者同士で示談交渉を行います。示談交渉の主眼は示談金額を決めることですが、それ以外の付随的な示談条件謝罪清算条項など)についても適宜交渉します。

各当事者はそれぞれの立場で、相手方に対して提示する示談金額を検討します。客観的・法的な責任内容を基準に提示額を決めるのが適切ですが、実際には各当事者の思惑により、被害者側は高めの金額を、加害者側は低めの金額を提示するケースが大半です。

示談交渉をまとめるためには、当事者双方の歩み寄りが必要不可欠です。自社の主張の合理性を主張しつつも、相手方の主張にも耳を傾けて、状況に応じた譲歩を検討しましょう。

示談書(和解合意書)を締結する

示談金額を含む条件の交渉がまとまったら、その内容をまとめた示談書和解合意書)を締結します。示談書は当事者の数と同数の原本を作成し、各当事者が保管しましょう。

示談書のテンプレート・記載例・記載事項については、後述します。

示談金の精算を行う

示談書の締結が完了したら、その規定に従って示談金の精算を行います。

示談書に支払期限が定められていれば、その期限までに精算を行わなければなりません。支払期限の定めがなければ、債権者が債務者に対して催告(請求書の送付など)を行い、相当の期間内に精算します。

示談金の支払いが遅れた場合は、遅れた期間に応じた遅延損害金が発生するほか(民法419条)、訴訟などによって債務名義を得た後に強制執行を申し立てることができます。

示談書の作り方

示談書のテンプレート記載例記載事項を紹介するので、実際に示談書を作成する際の参考としてください。

示談書のテンプレート・記載例

示談書

○○(以下「甲」という。)と△△(以下「乙」という。)は、○○に関する紛争(以下「本件」という。)の解決について、以下のとおり合意した。
 
第1条(紛争の経緯および謝罪)
乙は次の各事実を認め、甲に対して謝罪する。
(1)……
(2)……
 
第2条(示談金の支払い)
乙は甲に対し、本件の示談金として金○○円を、○年○月○日までに、甲が別途指定する銀行口座に振り込む方法によって支払うものとする。振込手数料は乙の負担とする。
 
第3条(遅延損害金)
前条に定める示談金の支払いを怠った場合、乙は甲に対し、未払金額に対して年20%の割合による遅延損害金を支払うものとする。
 
第4条(清算条項)
甲および乙は、本書に定めるほか、本件に関して甲乙間に何らの債権債務が存在しないことを確認し、慰謝料その他の名目の如何を問わず、本件に対して互いに何らの請求を行わないことを確約する。
 
第5条(合意管轄)
本書に関連して甲乙間に生じた一切の訴訟については、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
 
○年○月○日
 

【住所】
【氏名】 印
 

【住所】
【氏名】 印

示談書の主な記載事項

示談書に記載すべき主な条項は、以下のとおりです。

示談書の記載事項の例

① 紛争の経緯および謝罪
トラブルに関する事実関係について認識を共有した上で、被害者が加害者に対して謝罪の意を表する旨を定めた条項です。被害者側の被害感情を鎮めるという側面が強く、事案の内容や交渉の状況によっては定めないこともあります。

② 示談金の支払い
支払うべき示談金額と、支払期限および支払方法を明記します。

③ 遅延損害金
期限までに示談金が支払われなかった場合に、発生する遅延損害金の利率を定めます。遅延損害金を定めない場合は、法定利率(年3%)が適用されます。

④ 清算条項
示談書の締結をもって紛争を終わらせるため、当事者間に債権債務関係が存在しない旨、および互いに請求を一切行わない旨を規定します。

⑤ 合意管轄
示談書に関して紛争が発生し、訴訟を提起することになった場合の提訴先となる裁判所を定めます。

示談を検討する際の注意点

トラブルについて示談を検討する際には、以下の各点に十分注意して対応しましょう。

① 客観的な損害額を適切に計算する
② 相手方の交渉態度を観察する
③ 訴訟に発展した際のリスクを踏まえて対応する

客観的な損害額を適切に計算する

適正な示談金額を設定するためには、客観的な損害額を把握する必要があります。

特に被害者側は、自身(自社)に生じた損害額を漏れなく積算して、根拠とともに相手方に対して提示しましょう。損害の把握漏れがあると、十分な額の示談金を請求できないのでご注意ください。

相手方の交渉態度を観察する

示談交渉をまとめるためには、ある程度の歩み寄りは避けられませんが、どの程度歩み寄るべきかについては相手方の交渉態度も観察した上で決めるべきです。

相手方の提示額言動などを総合的に考慮して、合意が得られるとすればどの程度の金額か、自身(自社)の許容範囲に収まるのかどうかを予想し、状況に応じて駆け引きを行いましょう。

訴訟に発展した際のリスクを踏まえて対応する

示談の大きなメリットは、労力やコストのかかる訴訟を回避できる点です。特に訴訟が長期化しそうな場合や、訴訟になれば敗訴する可能性が高い場合などには、できる限り早期の示談を目指すべきでしょう。

これに対して、訴訟で比較的容易に請求が認められそうな場合や、客観的な損害額に相手方の提示額が遠く及ばない場合などには、訴訟も辞さない姿勢を示し、安易な示談に応じるべきではありません。

仮に訴訟に発展したらどのくらいの負担が生じるのか、どの程度の損害賠償が認められるのかなどを検討しながら、示談交渉の方針を適切に定めましょう。

ムートン

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