譲渡とは?
「贈与」「売却」との違い・具体例・
手続き・税金などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

譲渡(じょうと)」とは、有償・無償を問わず、財産や権利などを他人に移転することです。譲渡の中でも、無償で行われるものは「贈与」、有償で行われるものは「売却」と呼ばれています。
譲渡の具体例としては、物の譲渡、知的財産権の譲渡、株式の譲渡、事業譲渡などが挙げられます。

譲渡は、まず契約を締結し、その後契約に基づいて実行するのが一般的です。譲渡の実行後は、速やかに目的である物や権利の名義変更を行います。

譲渡に当たっては、譲渡人において譲渡所得への課税が行われることがあるほか、譲渡価格が安すぎる場合には、譲受人において贈与税が課されることがあるので注意が必要です。

この記事では譲渡について、具体例・手続き・税金などを分かりやすく解説します。

ヒー

「会社資産の譲渡契約書を作ってほしい」と依頼がありました。売買の契約書を元にするのではまずいでしょうか…?

ムートン

適正な対価を受け取る取引であれば、売買と大きな違いはありません。「譲渡」について確認していきましょう。

※この記事は、2024年2月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

譲渡とは

譲渡(じょうと)」とは、有償・無償を問わず、財産や権利などを他人に移転することを意味します。

譲渡と贈与・売却との違い

譲渡の中でも、無償で行われるものは「贈与」、有償で行われるものは「売却」と呼ばれています。言い換えれば、贈与も売却も譲渡の一種です。

贈与と売却(売買)は、いずれも民法に基づく典型契約であり、適用されるルールが異なります。

民法
(贈与)
第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

(売買)
第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

譲渡の具体例

譲渡の対象は、有形・無形を問わずさまざまです。

よく行われている譲渡としては、以下の例が挙げられます。

譲渡の具体例

① 物の譲渡
② 知的財産権の譲渡
③ 株式の譲渡
④ 債権譲渡
⑤ 事業譲渡

物の譲渡

を贈与したり売却したりすることは、譲渡の最もよくあるパターンです。

物の譲渡の例

・店舗が顧客に対し、代金と引き換えに商品を譲渡した。
・祖母が孫に対して、洋服をプレゼントした。
・父が子に対して、住宅を購入するための資金を贈与した。

知的財産権の譲渡

特許権著作権などの知的財産権も、原則として譲渡が可能です。

知的財産権の譲渡の例

・A社がB社に対して、特許権を譲渡した。
・著作者CがD社に対して、著作権を譲渡した。
・E社がF社から設定を受けた特許権の通常実施権を、F社の承諾を得た上でG社に譲渡した。

ただし、著作者人格権については譲渡が認められていません(著作権法59条)。

株式の譲渡

会社の株式についても、他人に譲渡することができます。

株式の譲渡の例

・創業者Aが後継者Bに対して、保有する全株式を贈与した。
・創業者Cが、M&A仲介業者から紹介された経営者Dに対して、保有する全株式を売却した。

なお、会社の株式については、譲渡の際に会社の承認を要する旨の定め(=譲渡制限)を設けることができます。

譲渡制限が設けられている場合は、まず譲渡を承認するかどうかの決定を会社に請求する必要があります(会社法136条)。
承認された場合には、予定していた買主に対して株式を譲渡できます。一方、不承認の場合は会社または指定買取人が株式を買い取ることになります(会社法140条)。

債権譲渡

他人(他社)に対して有する債権も、原則として譲渡が可能です(民法466条1項)。

債権譲渡の例

・A銀行がB社に対して有する貸付債権を、債権回収会社であるC社に譲渡した。
・D社がE社に対して有する売掛金債権を、ファクタリング業者であるF社に譲渡した。

事業譲渡

会社が営む事業は、財産・債務・契約などの集合体です。個々の財産・債務・契約などを切り離すことなく、事業全体を一括して譲渡することは「事業譲渡」と呼ばれます。

事業譲渡の例

・A社の事業全部をB社に対して譲渡した。
・C社の事業のうち、医薬品の製造に関するものをD社に対して譲渡した。

譲渡の手続き

物や権利などの譲渡を行う際には、以下の流れで手続きを行います。

① 譲渡に関する契約の締結
② 譲渡の実行
③ 名義変更

譲渡に関する契約の締結

譲渡人と譲受人の間で譲渡の条件に関する交渉を行い、合意した内容をまとめた契約書を締結します。

譲渡に関する契約書には、主に以下の事項を定めておきましょう。

・目的物
・対価(無償の場合はその旨)
・譲渡実行日
・譲渡の実行前提条件(書類の交付など)
・目的物に関する表明保証
・譲受人における容認事項
など

譲渡の実行

事前に締結した契約書に定めた譲渡実行日において、譲渡を実行します。

譲渡対価を設定している場合は、目的物の引渡しと対価の支払いを同時履行とするのが一般的です。また、目的物に関連する書類等については、譲渡人において事前に準備し、譲渡実行日において譲受人に引き渡します。

名義変更

譲渡の実行後は、速やかに対抗要件具備の手続き(=いわゆる「名義変更」)を行いましょう。

一般的な動産については、引渡しをもって対抗要件具備が完了するので(民法178条)、名義変更の手続きは特に必要ありません。

これに対して、不動産・知的財産権・株式・債権・事業を譲渡する際には、以下の対抗要件具備の手続きが必要になります。

譲渡する財産の種類対抗要件具備の手続き
不動産所有権移転登記(民法177条)
知的財産権対応する知的財産法で定められた手続き
※例えば特許権の譲渡については、承継人(譲受人)による特許出願(特許法34条1項)
株式株主名簿への記載・記録(会社法130条1項)
債権(a) 債務者対抗要件
譲渡人の債務者に対する通知または債務者の承諾
(b) 第三者対抗要件
確定日付のある証書による譲渡人の債務者に対する通知もしくは債務者の承諾、または債権譲渡登記
事業個々の財産・権利等について対抗要件具備が必要

譲渡に関して課される税金

物や権利などの譲渡に当たっては、譲渡人と譲受人のそれぞれについて税金が課されることがあります。譲渡の際には、事前に課税の取り扱いを確認しておきましょう。

譲渡人に課される税金

譲渡人においては、譲渡価格が目的である物や権利の取得価格および譲渡費用の合計額を上回っている場合に、その差額について課税が行われます。

譲渡人における課税の対象となる金額

課税対象額=譲渡価格-取得価格-譲渡費用

譲渡人が個人の場合は所得税および住民税、法人の場合は法人税等が課されます。
他の所得(利益)と合算して課税されるのが原則ですが(=総合課税)、個人が株式等を譲渡した場合には、他の所得と区別して譲渡所得を申告します(=申告分離課税)。

参考:国税庁ウェブサイト「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」

譲受人に課される税金

譲受人においては、譲渡が無償である場合(=贈与)に税金が課されます。また、譲渡価格が市場相場などに照らした適正価格を下回っている場合には、その差額について税金が課されることがあります。

上記の場合において、譲受人に課される税金の種類は以下のとおりです。

譲渡人譲受人譲受人に課される税金の種類
個人個人贈与税
個人法人法人税等
法人個人所得税・住民税(一時所得として課税される)
法人法人法人税等
ムートン

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