債権とは?
債務や物権との違い・読み方・種類・
債権回収の方法などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

債権(さいけん)」とは、他人に対して何らかの行為を請求する権利です。

債権は、「債務(さいむ。他人のために何らかの行為をする義務)」と対になる言葉です。契約不法行為などに基づき、債権債務関係が発生します。

例えば、スーパーでりんご売ったら、りんごを売った側には、りんごの代金を請求する権利が発生します。これが債権です。一方、りんごの購入者側には、りんごの代金を支払う義務が発生しており、これが債務です。

また、債権は人に対する権利であるところ、物に対する権利である「物権」とも対比されます。

債権者は債務者に対して、弁済(=債務の履行)を請求できます。債務不履行が発生した場合(=債務が履行されなかった場合)には、損害賠償請求ができるほか、債権が契約に基づく場合は契約の解除も可能です。

この記事では債権について、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

債権債務のほか、覚えておきたい契約・法令用語はありますか?

ムートン

契約書で使われる用語を分かりやすく解説!」の記事で解説していますので、こちらも読んでみてください。

※この記事は、2023年9月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

債権とは

債権(さいけん)」とは、他人に対して何らかの行為を請求する権利です。

ムートン

物を売った際に発生する「代金を請求する権利」、お金を貸した際に発生する「お金の返済を請求する権利」などをイメージすると、理解しやすいですよ。

債権とあわせて覚えておきたい言葉として「債務」があります。

また、債権は人に対する権利であるところ、物に対する権利である「物権」とも対比されます。

債権と債務の違い

債務(さいむ)とは、他人のために何らかの行為をする義務をいいます。

ムートン

具体的には、物を買った際に発生する「代金を支払う義務」、お金を借りた際に発生する「借金を返済する義務」などが債務に該当します。

一方、「債権」は他人に対して何らかの行為を請求する権利で、債権を有する人を「債権者」といいます。

スーパーでの買い物(=売買契約)を例に挙げて考えてみましょう。売買契約が成立した場合、それぞれの立場に応じ、以下のように、債権と債務が発生します。

ムートン

このように債権と債務は、それぞれ権利と義務として対立する関係にあるのです。

債務と債権のまとめ

・債務=他人のために何らかの行為をする義務(例:代金を支払う義務・借金を返済する義務)
・債務者=債務を負っている者

・債権=他人に対して何らかの行為をすることを請求できる権利(例:購入した物を受け取る権利・利息の支払いを求める権利)
・債権者=債権を保有している者

債権と物権の違い

債権は、人に何かをしてもらう権利(=人に対する権利)です。

これに対して、物に対する権利は「物権といいます。物権の代表例は、所有権・地上権・質権・抵当権などです。

債権は物権との間でも、権利の客体(対象)の違いの観点から対比されることがあります。

債権と関連する用語

債権に関連する用語として、以下の4つの意味を理解しておきましょう。

①債権回収
②債権譲渡
③相殺
④相続

債権回収とは

債権回収」とは、期限どおりに履行されなかった債権を回収することを意味します。特に、期限どおりに支払われなかった金銭債務を回収する際に「債権回収」という言葉が用いられるのが一般的です。

債権回収は、内容証明郵便などにより請求書を送付するほか、訴訟などの法的手続きを通じて行われます。

債権譲渡とは

債権譲渡」とは、債権を他人に譲渡することをいいます。

債権は、その性質上許されないときを除いて譲渡できます(民法466条1項)。債権が譲渡されると、譲渡人に代わって譲受人が債権を行使できるようになります。

なお、債権者・債務者間で債権譲渡の禁止を合意することはできますが(=譲渡禁止特約)、原則として債権譲渡はその効力を妨げられません(同条2項)。

ただし、譲受人が譲渡禁止特約の存在を知り、または重大な過失により知らなかった場合には、債務者は債務の履行を拒むことができます(同条3項)。

相殺とは

相殺」とは、対立した同種の債権債務を互いに打ち消し合うことをいいます(民法505条1項)。

例えば、AがBに対して100万円を貸している状態で、BがAに対して100万円で物を売ったとします。この場合に、AがBに対して有する100万円の貸付債権と、BがAに対して有する100万円の売買代金債権を打ち消し合うのが「相殺」です。

相殺は、いずれかの当事者による単独の意思表示によって行うことができます。ただし相殺をする際には、自分が有する債権(=自働債権)の弁済期が到来していなければなりません。

相続とは

相続」とは、亡くなった人(=被相続人)の債権債務を相続人が承継することをいいます。

相続の対象となるのは、被相続人の死亡時において、被相続人の財産に属した一切の権利義務です(民法896条)。したがって、被相続人が有していた債権(例:貸したお金を返してもらう権利)や債務(例:借りたお金を返す義務)も、相続の対象となります。

債権の分類(種類)

債権の分類方法には、さまざまなパターンがあります。以下に挙げるのは、債権の種類の一例です。

①特定物債権
②種類債権
③金銭債権
④利息債権
⑤選択債権
⑥その他(約定債権・法定債権など)

種類1|特定物債権

特定物債権」とは、特定された物の引き渡しを受ける権利です。例えば、中古車販売店において車を指定して購入した場合、その車の引き渡しを受ける権利は特定物債権に当たります。

債務者は、債権者に対して特定物の引き渡しをするまでの間、善良な管理者の注意をもってその物を保存しなければなりません(民法400条)。

種類2|種類債権

種類債権」とは、種類や数量は決まっているものの、具体的には特定されていない物の引き渡しを受ける権利です。「不特定物債権」ともいいます。

例えば、「機械部品Xを10個」と指定して購入した場合、種類と数量は決まっていますが、どの機械部品Xであるかは具体的に特定されていないため、機械部品Xの引き渡しを受ける権利は種類債権に当たります。

なお、種類債権の目的物が具体的に特定された場合は、特定物債権に変化します。

種類3|金銭債権

金銭債権」とは、金銭の支払いを受ける権利です。貸したお金を返してもらう権利や、売買代金の支払いを受ける権利などが金銭債権に当たります。

金銭債権については、債務不履行時には法定利率による遅延損害金が自動的に発生するなどの特則が設けられています(民法419条。なお、約定利率が法定利率を超える場合は、約定利率に従います)。

種類4|利息債権

利息債権」とは金銭債権の一種で、利息の支払いを受ける権利です。貸したお金の返済時に上乗せられる利息を受け取る権利や、銀行預金の利息を受け取る権利などが利息債権に当たります。

なお、金銭消費貸借(=お金の貸し借り)に関する利息には、利息制限法上限利率が適用されます。

種類5|選択債権

選択債権」とは、その内容(目的)について選択肢が設けられている権利です。例えば、100万円か金のネックレスのどちらかをもらえる権利は選択債権に当たります。

選択債権の内容(目的)の選択権は、原則として債務者にあります(民法406条)。したがって上記のケースでは、債務者が100万円と金のネックレスのどちらをもらうか選べます。

ただし、債権者が相当の期間を定めて催告しても、債務者がその期間内に選択をしないときは、債権者に選択権が移転します(民法408条)。

その他の分類方法|約定債権・法定債権など

ムートン

債権の分類方法は、上記のほかにもさまざまなパターンがあります。

例えば「約定債権」は当事者の合意に基づいて発生する債権、「法定債権」は法令の規定に基づいて発生する債権を意味します。

債権債務関係の具体例

債権債務関係の具体例を3つ紹介します。

①売買契約における債権債務【双務契約の場合】
②使用貸借契約における債権債務【片務契約の場合】
③不法行為に関する債権債務

具体例1|売買契約における債権債務【双務契約の場合】

売買契約では、買主は売主に対して目的物の引き渡しを請求する権利(=債権)を有し、売主は買主に対して代金の支払いを請求する権利(=債権)を有します。

言い換えれば、売主は買主に対して目的物を引き渡す義務(=債務)を負い、買主は売主に対して代金を支払う義務(=債務)を負います。

売買契約のように、当事者双方が互いに債務を負い、双方の債務が対価関係にある契約を「双務契約」といいます。

具体例2|使用貸借契約における債権債務【片務契約の場合】

使用貸借契約では、借主は貸主に対して目的物を貸すように請求する権利(=債権)を有し、貸主は借主に対して目的物を返すように請求する権利(=債権)を有します。

言い換えれば、貸主は借主に対して目的物を貸す義務(=債務)を負い、借主は貸主に対して目的物を返す義務(=債務)を負います。

借主と貸主はそれぞれ債務を負いますが、双方の債務は対価関係にないため、使用貸借契約は双務契約に当たりません。

使用貸借契約のように、双務契約に当たらない契約を「片務契約」といいます。

具体例3|不法行為に関する債権債務

不法行為」とは、故意または過失により、他人の権利または利益を侵害して損害を与える行為です(民法709条)。

不法行為の被害者は、加害者に対して損害賠償請求権(=債権)を有します。一方加害者は、被害者に対して損害賠償を行う義務(=債務)を負います。

債権者が債務者に対してできること

債権者は債務者に対して「弁済(=債務の履行)」を請求できます。債務が履行されない場合は、引き続き弁済を請求するほか、損害賠償請求契約解除もできます。

弁済(=債務の履行)の請求

弁済(べんさい)」とは、債務を履行して債権を消滅させる法律行為です。例えば売買契約では、買主が売主に対して代金を支払うことや、売主が買主に対して目的物を引き渡すことが「弁済」です。

債権者は債務者に対して、債務の弁済を請求できます。ただし、売買契約などの双務契約の場合、債権者が債務の履行を提供するまでは、債務者は自己の債務の履行を拒むことができます(=同時履行の抗弁権。民法533条)。

ムートン

弁済についての詳細は、以下の記事を参照ください。

給付保持力

債権者は、債務者から受領した給付を適法に保持することができます。これを債権の「給付保持力」といいます。

例えば、AがBに対して300万円を支払うのと引き換えに、BがAに対して自動車を引き渡す売買契約を締結したとします。
この場合、AはBから引渡しを受けた自動車を、BはAから支払いを受けた300万円を、それぞれ適法に保持することができます。後に相手方から返還を求められたとしても、契約の無効・取り消し・解除などが生じない限り、返還する必要はありません。

これに対して、債権等の法的な権利に基づかない利益は「不当利得」に当たり、その利益によって損失を被った者に対して返還する義務を負います(民法703条、704条)。

訴求力

債務者が債務を履行しない場合、債権者は裁判所に訴訟を提起して、債務の履行を請求することができます。これを債権の「訴求力」といいます。

訴求力がなければ、債務者が任意に債務を履行することは期待できません。訴求力があるからこそ、拒否しても債務の履行を強いられるのだから、任意に債務を履行しようという考えが働きます。

なお、訴求力は「債務の履行を請求できる」点で、弁済を任意に請求できる「請求力」と共通します。そのため、(狭義の)請求力と訴求力を併せて「(広義の)請求力」と言うこともあります。

また、訴求力は「債権を強制的に実現できる」点で、後述する「執行力(=貫徹力・掴取力)」と共通します。そのため、訴求力と執行力を併せて「強制力」と言うこともあります。

貫徹力

債権者が訴求力に基づいて訴訟を提起し、給付判決(=債務の支払いを命ずる判決)を得て確定したものの、なお債務者が任意に債務を履行しない場合には、債権者は強制執行を申し立てることができます。これを債権の「執行力」といいます。

執行力には「貫徹力」と「掴取力」の2種類があります。

「貫徹力」とは、強制執行によって債権の内容をそのまま実現する力です。特定物の引渡しや特定の行為を目的とする債権には、貫徹力があります。

例えば、BがAの土地を不法占有しており、訴訟で明渡しを命ずる判決が確定したにもかかわらず、Bがその土地を明け渡さないとします。
この場合、Aは土地明渡請求権の貫徹力に基づき、Bにその土地の明渡しを強制する強制執行を申し立てることができます。

掴取力

「掴取力(かくしゅりょく)」とは、債務者の財産全体に対して強制執行を行い、債権を回収できる力です。金銭債権については、掴取力が認められています。

例えば、AがBに対して100万円を貸したところ、返済期限が到来しても、BがAに対して100万円を返さないとします。この場合、Aは貸金返還請求権の掴取力に基づき、Bの財産を特定して強制執行を申し立てることができます。

Aが有するのは100万円の金銭債権ですが、強制執行の対象とする財産は金銭に限らず、Bの財産全体から選ぶことができます。金銭以外の財産を強制執行の対象とする場合には、競売による換価等を経た上で、債権の弁済に充当されます。

損害賠償請求・契約解除(債務不履行が生じた場合)

債務不履行が生じた場合、債権者は債務者に対して損害賠償を請求できます(民法415条1項)。また、催告など一定の要件を満たすことを条件として、債権を発生させた契約を解除することも可能です(民法541条、542条)。

債務不履行とは

債務不履行」とは、契約によって約束した義務を果たさないこと(守らないこと)をいいます。履行遅滞・履行不能・履行拒絶・その他の債務不履行の4つに分類されます。

ムートン

債務不履行についての詳細は、以下の記事を参照ください。

金銭債務の不履行が発生した場合の債権回収の方法・流れ

金銭債務が支払われなかった場合は、以下の流れで債権回収を行いましょう。

①請求書の送付|内容証明郵便など
②支払督促の申立て
③訴訟の提起
④強制執行の申立て

①請求書の送付|内容証明郵便など

まずは債務者に対して、内容証明郵便などにより請求書を送付するのが一般的です。請求書には、請求金額に加えて支払い期限を明記し、速やかに支払いを行うよう債務者に求めます。

債務者から返答があれば、支払い方法などについて協議を行い、和解を目指しましょう。和解が成立すれば、早期に債権を回収できる可能性があります。

②支払督促の申し立て

金銭債権については、簡易裁判所に対して支払督促を申し立てることができます。

支払督促」とは、簡易裁判所から債務者に対して、金銭債務の支払いを督促してもらえる制度です。債務者から異議が申し立てられなければ「仮執行宣言支払督促」が発令され、強制執行の申し立てができるようになります。

③訴訟の提起

債務者が支払いに応じない場合は、裁判所に訴訟を提起しましょう。

訴訟は、裁判所の公開法廷で行われる紛争解決手続きです。債権者が債権の存在等を立証すれば、裁判所は債務者に対して支払いを命ずる判決を言い渡します。

訴訟の判決が確定すれば、債権者は強制執行を申し立てることができます。

④強制執行の申し立て

仮執行宣言付支払督促や確定判決など(=債務名義)を得た場合は、裁判所に強制執行を申し立てましょう。強制執行の対象となるのは、原則として債務者が有する全財産(例:不動産・預貯金・給与債権など)です。

強制執行手続きでは、債務者の有する財産を強制的に換価・処分し、債権の弁済に充当します。

強制執行の申し立てに当たって、債権者は債務者の財産を特定しなければなりません。自力で財産を特定することが困難な場合は、財産開示手続(民事執行法196条以下)や第三者からの情報取得手続(同法204条以下)を利用できます。

ムートン

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