契約解除通知書とは?
ひな形(クーリング・オフ時などのテンプレート)・書き方・
契約解除合意書との違いなどを分かりやすく解説!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ Legal Learningのサービス資料 |
- この記事のまとめ
-
「契約解除通知書」とは、契約を解除する旨を相手方に通知する書面です。クーリング・オフ、債務不履行解除、手付解除などを行う際に、相手方に対して契約解除通知書を送付します。
契約解除通知書の記載事項は、解除する旨および解除の理由・法的根拠などです。契約解除の種類に応じて、契約解除通知書の記載内容を適切に調整しましょう。
契約解除通知書の作成・送付は、契約上の解除手続きを確認したうえで、その内容に沿って行う必要があります。また、手付解除およびクーリング・オフについては、契約上または法令上の期限内に行わなければなりません。
通知の内容および通知を行った事実を後から証明できるように、内容証明郵便で発送するのがよいでしょう。
この記事では契約解除通知書について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2024年4月18日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 特定商取引法…特定商取引に関する法律
目次
契約解除通知書とは
「契約解除通知書」とは、契約を解除する旨を相手方に通知する書面です。
意思表示は原則として、その通知が相手方に到達した時から効力を生ずるものとされています(民法97条1項)。
解除権を有する者による契約の解除は、相手方に対する意思表示によって行います(民法540条1項)。
契約解除の通知を口頭でも行うことができますが、解除通知をしたことの証拠が残らないのが難点です。後で契約解除の有無等を巡ってトラブルが生じるおそれもあります。
そのため実務上、契約の解除を行う際には、相手方に対して契約解除通知書を送付するのが一般的です。
契約解除通知書と契約解除合意書の違い
契約解除通知書による解除は、解除権を有する者から一方的に行うものです。この場合、相手方の意思表示を要することなく、解除通知が相手方に到達した時をもって契約が解除されます。
他方で、契約は当事者の合意によって解除することもできます。当事者の合意によって契約を解除する際には、「契約解除合意書」を締結するのが一般的です。契約解除合意書は、当事者双方が署名・押印等により調印することで効力を生じます。
契約解除通知書による解除の場合、解除に関する条件を当事者間ですり合わせることはできません。多くの場合、解除権者が一方的に解除日を指定することになります。
これに対して、契約解除合意書による解除の場合は、解除に関する条件を事前に当事者間で取り決めることになります。
契約解除通知書を作成・送付するケース
契約解除通知書を作成・送付するケースとしては、主に以下の例が挙げられます。
- クーリング・オフ
- 債務不履行解除
- 手付解除
クーリング・オフ
「クーリング・オフ」とは、契約の申し込みや締結から一定期間内であれば、無条件で、書面により、契約の申し込みの撤回または解除ができる制度です。
特定商取引法その他の法律において、消費者保護の観点から、特定の類型の取引につきクーリング・オフが認められています。
クーリング・オフの対象取引 | クーリング・オフの期間 |
---|---|
訪問販売(キャッチセールスを含む) | 契約締結書面の受領日を含めて8日間 |
電話勧誘販売 | 契約締結書面の受領日を含めて8日間 |
特定継続的役務提供(エステティック、美容医療など) | 契約締結書面の受領日を含めて8日間 |
個別信用購入あっせん | 契約締結書面の受領日を含めて8日間 |
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地・建物の売買契約 | クーリング・オフができる旨の告知を受けた日を含めて8日間 |
ゴルフ会員権契約(50万円以上) | 契約締結書面の受領日を含めて8日間 |
保険契約 | クーリング・オフに関する事項が記載された書面の受領日と申込日のいずれか遅い日を含めて8日間 |
投資顧問契約 | 契約締結書面の受領日を含めて10日間 |
現物まがい商法 | 契約締結書面の受領日を含めて14日間 |
連鎖販売取引(マルチ商法) | 契約締結書面の受領日を含めて20日間 |
業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法等) | 契約締結書面の受領日を含めて20日間 |
クーリング・オフによって契約を解除する際には、消費者が事業者に対して契約解除通知を行う必要があります。その際には、契約解除通知書を送付するのが一般的です。
契約解除通知書を発送した時点でクーリング・オフの効力が生じ、契約が解除されます(特定商取引法9条2項等)。
クーリング・オフによる契約の解除につき、事業者は消費者に対して損害賠償や違約金の支払いを請求することができません(同条3項等)。
また、すでに商品の引き渡しや権利の移転がなされているときは、その引き取り・返還に要する費用は事業者負担となります(同条4項等)。
債務不履行解除
債務不履行とは、契約によって約束した義務を果たさないこと(守らないこと)をいいます。
相手方が債務不履行を起こした場合には、相当の期間を定めて履行の催告をしたうえで、その期間内に履行がないときは契約を解除できます(=催告解除。ただし、債務不履行が軽微であるときを除きます。民法541条)。
また、債務の履行が全部不能であるときや、債務者が債務全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときなどには、債権者は催告をすることなく直ちに契約を解除できます(=無催告解除。民法542条)。
手付解除
売買契約などの有償契約については、商品やサービスの買い手が、売り手に対して手付(契約締結時に、当事者の一方から渡される金銭のこと)を交付することがあります。
買い手は手付の放棄、売り手は手付の倍額償還を行えば、損害賠償責任を負うことなく契約を解除できます(=手付解除。ただし、相手方がすでに契約の履行に着手している場合を除きます。民法557条1項)。
契約解除通知書のひな形(テンプレート)|書き方も解説
契約解除通知書のひな形(テンプレート)と書き方を紹介します。実際に契約解除通知書を作成・送付する際の参考としてください。
クーリング・オフの契約解除通知書
クーリング・オフの契約解除通知書には、解除する契約の内容を特定するに足る情報を記載しましょう。
また、商品の交付を受けている場合はその商品を引き取るべき旨も記載します。
さらに、クーリング・オフ通知は発した時に効力を生ずるので、契約解除通知を発した日を明記することも大切です。
○○株式会社御中 次の契約を解除します。 契約年月日:○年○月○日 商品・役務名:○○○○ 契約金額:○○円 販売会社名:○○株式会社○○営業所 (担当者名):○○ ○○ 私が貴社に対して支払った代金○○円を速やかに返金し、商品を引き取ってください。 本通知を発した日:○年○月○日 住所:東京都…… 氏名:○○ ○○ |
債務不履行解除の契約解除通知書
債務不履行解除の契約解除通知書は、
- 催告解除の場合
- 無催告解除の場合
で記載内容が異なります。
催告解除の契約解除通知書
催告解除の場合は、不履行(未履行)となっている債務の内容を、契約書名・金額・支払期限などの情報によって特定する必要があります。
さらに、催告期限および期限の経過をもって契約を解除する旨を記載します。
○○株式会社御中 貴社と当社が締結した○年○月○日付業務委託契約書(以下「本契約」といいます。)に基づき、貴社が当社に対して支払うべき○○円の報酬債務(支払期限:×年×月×日)が、支払期限を経過した現在において未履行となっております。 つきましては、△年△月△日までに、当該報酬全額のお支払いをお願いいたします。同日までに当社にて当該報酬全額のお支払いが確認できないときは、改めて貴社に対する通知を行うことなく、本契約を解除します。 ○年○月○日 東京都…… △△株式会社 代表取締役 ○○ ○○ |
無催告解除の契約解除通知書
無催告解除の場合は、債務不履行(契約違反)の内容を特定したうえで、それが無催告解除事由に該当する旨、および無催告解除する旨を記載します。
○○株式会社御中 貴社と当社が締結した○年○月○日付業務委託契約書(以下「本契約」といいます。)に基づき、貴社が当社に対して△年△月△日付で納入した映像著作物「○○」が、××株式会社の有するコンテンツ「○○」の著作権を侵害していることが判明しました。 つきましては、本契約第○条第○項の規定に基づき、本書をもって本契約を無催告解除します。 ○年○月○日 東京都…… △△株式会社 代表取締役 ○○ ○○ |
手付解除の契約解除通知書
手付解除の契約解除通知書には、契約の情報および授受が行われた手付の内容を特定したうえで、手付の放棄または倍額償還を行って手付解除する旨を記載します。
買い手による手付解除の契約解除通知書
○○株式会社御中 当社は、貴社と当社が締結した○年○月○日付売買契約書(以下「本契約」といいます。)に基づき、貴社に対して手付金○○円を差し入れたところ、本書をもって当該手付金を放棄し、本契約を解除します。 ○年○月○日 東京都…… △△株式会社 代表取締役 ○○ ○○ |
売り手による手付解除の契約解除通知書
○○株式会社御中 貴社は、貴社と当社が締結した○年○月○日付売買契約書(以下「本契約」といいます。)に基づき、当社に対して手付金○○円を差し入れたところ、当社は当該手付金の倍額である○○円を貴社に償還し、本契約を解除します。 なお、上記償還金はすでに下記口座へ振り込みましたので、ご確認ください。 銀行・支店名:○○銀行○○支店 口座種別:普通 口座番号:○○○○○○○ 口座名義人:○○ 以上 ○年○月○日 東京都…… △△株式会社 代表取締役 ○○ ○○ |
契約解除通知書を作成・送付する際の注意点
契約解除通知書を作成・送付する際には、以下の各点に注意しましょう。
- 契約上の解除手続きを確認する
- クーリング・オフ、手付解除については期限を確認する
- 通知の証拠が残るように、内容証明郵便を利用する
契約上の解除手続きを確認する
解除に関する要件や手続きは民法で定められていますが、契約に別段の定めがあれば、その定めに従うことになります。契約解除通知書の作成・送付方法についても、契約に定めがあれば、その内容に沿わなければなりません。
クーリング・オフ、手付解除については期限を確認する
クーリング・オフについては、契約の種類に応じて期限が設けられています。
契約書面の受領日がクーリング・オフ期間の起算日となっているケースが多く(異なる場合もあります)、期間内に契約解除通知書を発送しなければ、クーリング・オフが認められなくなってしまいます。
手付解除については、契約において期限が設けられていることがあります。また、相手方が契約の履行に着手した後では、手付解除は認められません。
なお、クーリング・オフとは異なり、手付解除の契約解除通知書は、期限同日までに相手方へ到達させる必要があります(発送しただけでは効力を生じません)。
通知の証拠が残るように、内容証明郵便を利用する
契約解除通知書を送付する際には、通知を行った事実を後で立証できるように、内容証明郵便を利用するのが一般的です。内容証明郵便を利用すれば、郵便局に差出人・宛先・差し出し日時・内容を証明してもらえます。
特にクーリング・オフや手付解除など、解除の期限が設けられている場合には、解除の意思表示の時期を明確化する必要があるため、内容証明郵便による送付が事実上必須です。
なお、内容証明郵便のオプションとして配達証明を付ければ、相手方に契約解除通知書が到達した日時についても郵便局に証明してもらえます。
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ Legal Learningのサービス資料 |