検収とは?
納品との違い・手続きの流れ・
検収書の書き方・検収に関する契約条項の記載例
などを分かりやすく解説!

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ひと目でわかる要チェック条文 業務委託契約書編
この記事のまとめ

検収とは、納品物(成果物)品質・数量・仕様などが、発注内容に沿っているかどうか検査する手続きです。

業務委託契約製造物供給契約では、発注者側で成果物の検収を行います。

受注者が成果物を納品したら、発注者はその成果物について検査を行います。検査は合理的な基準に従って行われなければならず、理不尽な理由で不合格とすると下請法違反に当たり得るので注意が必要です。

成果物が検収に合格した場合、発注者は受注者に対して検収書を発行します。検収書には、納品が完了したことを明確化し、後のトラブルを防止するなどの役割があります。

検収手続きについては、発注者と受注者の間で認識を共有するため、契約書においてルールを定めておくとよいでしょう。

この記事では検収について、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

検収書に限らず、発注書・納品書など、業務の中ではいろいろな名前の書面を見かけますが、その書面がどういう意味をもつのか、整理できていないです。

ムートン

この記事では、検収の意味とともに、「検収書とあわせて覚えておきたいその他の書類」も解説していきますので、一緒に勉強していきましょう。

※この記事は2023年9月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 下請法…下請代金支払遅延等防止法

検収とは|意味や使い方を含め分かりやすく解説!

検収とは、納品物品質・数量・仕様などが、発注内容に沿っているかどうか検査する手続きです。

受注者が何らかの納品を行う契約においては、発注者が納品物検収を行います。

ムートン

ちなみに「納品物」のことを法律の世界では、「成果物」と呼びます。以下、本記事でも成果物という表現を使用します。

検収と納品の違い

納品」とは、受注者が発注者に対して、契約に基づき成果物を引き渡すことを意味します。例えば製造物供給契約では、受注者が製品を製造した上で、その製品を発注者に納品します。

これに対して「検収」は、成果物に問題がないかをチェックする発注者側の手続きです。発注者は、納品物が発注内容に沿っているかどうかを確認した上で、合格・不合格を受注者に通知します。合格であれば納品は完了となりますが、不合格であれば納品のやり直しとなります。

【納品から検収までの流れ】

検収の目的

検収の目的は、成果物の品質・数量・仕様などが、発注内容に沿っているかどうかを確認することです。

発注内容に従っていない納品は契約に適合していないため、受注者は納品をやり直す義務を負います。

ムートン

「成果物に不備があること」を法律の世界では、「契約不適合」といいます。

その一方で、納品の不適切な部分を発見して指摘することは、発注者の責任です。発注者は、納品を受けた後遅滞なく検収を行い、契約不適合を発見したら、納品のやり直しを指示しなければなりません。

発注者が検収を怠ると、たとえ不適切な部分があったとしても、その納品は合格したものとみなされ、受注者にやり直しを指示できなくなるおそれがあります。発注者は、適切な方法とタイミングによって成果物の検収を行いましょう。

検収を行うべき契約の例

検収を行う必要があるのは、何らかの納品が発生する取引・契約です。

例えば以下の契約については、受注者による納品が発生するため、発注者は検収を行う必要があります。

①以下の業務を内容とする業務委託契約
・コンテンツ(文章、音楽、動画、ウェブサイトなど)の制作
・プログラムの制作
製造物供給契約
③物品の売買契約
など

検収の手続きの流れ

ムートン

検収手続きは、以下の流れによって行います。

①受注者による納品
②発注者による検査
③検収不合格の場合は再納品・再検査
④検収完了・検収書の発行
⑤報酬の支払い

1|受注者による納品

受注者は、発注者に対して成果物を納品します。

成果物の品質・数量・仕様などは、契約(発注)の内容に従っていなければなりません。契約に適合していない成果物は、後の検収手続きにおいて不合格となり、発注者から納品のやり直しを指示されることがあります。

2|発注者による検査

発注者は、受注者が納品した成果物を検査します。

発注者による検査は、合理的な基準に従って行われなければなりません。理不尽な理由で不合格とすると、下請法違反に当たり得るので注意が必要です(詳細は「検収時に注意すべき下請法のルール」にて解説します)。

ムートン

トラブルを防ぐため、検査の基準はできる限り具体的に、発注者に対して事前に示しておくことが望ましいでしょう。

3|検収不合格の場合は再納品・再検査

納品物が契約内容に適合していない場合、発注者は検収不合格の旨を受注者に通知します。

受注者は、検収不合格の理由が合理的である限り、発注者の指示に従って納品をやり直さなければなりません。この場合、受注者は再納品を行い、発注者は再納品された成果物を再度検査します。

検収不合格の理由につき、受注者が異議を申し立てた場合は、発注者・受注者間で話し合って解決を模索しましょう。

話し合いが決裂した場合は、訴訟などに発展する可能性があります。訴訟などの対応には大きなコストがかかることを考慮して、できる限り話し合いによる解決を目指しましょう。

4|検収完了・検収書の発行

納品物に問題がなければ、発注者は検収合格の旨を受注者に通知します。

この場合、検収が完了したことの証として、発注者は受注者に検収書を交付することが望ましいです。検収書の詳細については、「検収書」で解説します。

5|報酬の支払い

検収に合格した成果物について、発注者は受注者に報酬を支払います。

報酬の金額・支払時期・支払方法などは、基本契約書または個別契約書に従います。

基本契約と個別契約

基本契約とは、ある取引先と継続的に取引を行うときに、全ての取引に共通する基本的な事項を定める契約をいいます。

個別契約とは、個々の取引に際して締結される契約をいいます。基本契約で定めていない事項や、基本契約から別途内容を更新したい事項などを記載します。

ムートン

基本契約・個別契約について、より詳細に知りたい方は、以下の記事を参照ください。

基本契約書と個別契約書の規定が異なっている場合は、契約で特段の定めがない限り、個別契約書の規定が優先されます。

検収書とは

検収書」とは、納品物が検収に合格したことの証として、発注者が受注者に交付する書面です。

検収書の役割

検収書には、主に以下の役割があります。

①納品が完了したことの明確化
納品物が検収に合格し、納品が完了したことを明確化して、発注者・受注者間のトラブルを防ぎます。

②売上を計上する時期の明確化
検収の完了をもって報酬が発生する場合は、検収書に記載された日付をもって、報酬(=受注者の売上)を計上する時期が決まります。

③請求書の代用
発注者側において、検収書をもって支払うべき報酬を把握し、受注者による請求書の交付を省略する場合があります。この場合、検収書が請求書の代わりになります。

※ただし2023年10月から施行されるインボイス制度において、検収書が適格請求書等として認められるためには、仕入明細書等の記載事項を網羅した上で、受注者側の確認を受ける必要がある点に注意が必要です。

参考:インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは?いつから始まるか・概要・留意点などを分かりやすく解説!

検収書の記載例(テンプレート)・記載事項

検収書の記載例(テンプレート)を紹介します。

検収書

発行日:○年○月○日

△△株式会社 御中

東京都○○区○○
○○株式会社
代表取締役 ×× ××

2023年×月×日付業務委託基本契約書に基づき、下記のとおり検収いたしました。
 
発注番号:○○○○○○
納品物:△△△△△△ 10個
報酬:1個当たり3万3,000円(税込) 合計33万円
発注年月日:2023年4月1日
納期:2023年4月21日
納品年月日:2023年4月20日
検収年月日:2023年4月25日
検収結果:合格

以上

ムートン

上記の記載例につき、ポイントを解説します。

①検収手続きについて定めた契約書を明記しましょう。
(例)2023年×月×日付業務委託基本契約書に基づき、下記のとおり検収いたしました。

②検収対象の納品物は、他の納品物と区別できるように記載しましょう。納品物の種類・名称・数量や納品年月日を記載すれば、おおむね納品物を特定できますが、混同が生じ得る事情がある場合は記載内容を工夫しましょう。

③検収年月日と、検収結果が合格である旨を明記しましょう。

検収書の保存期間・保存方法

検収書は、発注者・受注者のそれぞれにおいて、以下の期間にわたり保存しなければなりません。

個人事業主5年
法人7年
※青色申告書を提出し、かつ欠損金額が生じた事業年度、または青色申告書を提出せずに災害損失金額が生じた事業年度については、10年(2018年3月31日以前に開始した事業年度については9年)
※保存期間の起算日は、いずれも確定申告期限の翌日

紙で発行・受領した検収書は、紛失しないように整理して保管しましょう。後の税務調査に備えて、スムーズに提示できるようにしておく必要があります。

電子メールやPDFなどの電子データで発行・受領した検収書は、電子帳簿保存法に従って保存しなければなりません。

電子帳簿保存法では事業者に対して、電子帳簿・書類の保存につき、真実性および可視性を確保するための措置を義務付けています。適切に電子帳簿保存を行わないと、青色申告の承認が取り消されるなどの不利益を受けるおそれがあるので要注意です。

検収書を含めて、電子取引に関する書類の電子帳簿保存については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参照ください。

検収書とあわせて覚えておきたいその他の書類

成果物の納品に関しては、検収書以外にも、発注者と受注者の間で以下の書類が授受されることがあります(省略されることもあります)。それぞれの書類の概要を理解しておきましょう。

①納品書
受注者が発注者に対して、成果物を納品した際に併せて交付する書類です。

②受領書
発注者が受注者に対して、成果物を受領した際に交付する書類です。単に受領したことだけを意味する場合も、検収が完了したことを意味する場合もあります。

③請求書
報酬の支払いを請求するため、受注者が発注者に対して交付する書類です。

④支払通知書
報酬の支払いが完了したことを、発注者が受注者に対して通知する書類です。

⑤領収書
報酬を受け取ったことを証明するため、受注者が発注者に対して交付する書類です。

ムートン

なお上記の書類についても、電子データで交付または受領した場合は、電子帳簿保存法に従った保存が必要です。

検収に関する契約条項の記載例・記載事項

検収手続きについては、契約においてルールを定めておくことが望ましいです。

検収に関する契約条項の記載例を紹介します。

第○条 (検収)
1.発注者は、受注者から納品を受けた成果物(以下「納品物」という。)につき、受領後○日以内に検査を行う。検査の基準は、別途定める。
2.納品物が前項の検査に合格した場合、発注者は受注者に対して、速やかに合格の旨を通知するものとし、当該通知をもって当該納品物の検収が完了する。
3.納品物が第1項の検査に不合格となった場合、発注者は受注者に対して、不合格の具体的な理由を示した上で、修正又は納品のやり直しを求めることができる。受注者は、発注者との協議により定めた期限内に納品物を無償で修正し、又は再納品を行う。この場合、発注者は第1項に準じて検査を行う。
4.第1項に定める期間内に、発注者による検収の合否の連絡が受注者に到達しない場合には、納品物の検収が完了したものとみなす。

検収について注意すべき下請法

発注者および受注者の資本金の額によっては、検収手続きについて下請法が適用されることがあります。

下請法が適用される場合、理不尽な理由で検収不合格とすることは、発注者の下請法違反に当たる可能性があるので注意が必要です。

ムートン

下請法の詳細については、以下の記事を併せて参照ください。

下請法が適用される取引・事業者

下請法が適用されるのは、以下のいずれかに該当する取引であって、各当事者の資本金の額が対応する要件を満たすものです。

①以下の取引
・物品の製造委託
・修理委託
・情報成果物委託(プログラムの作成に限る)
・役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に限る)

<①の資本金要件>
親事業者が3億円超、かつ下請事業者が3億円以下(または個人事業者)
親事業者が1000万円超3億円以下、かつ下請事業者が1000万円以下(または個人事業者)

②以下の取引
・情報成果物委託(プログラムの作成を除く)
・役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管および情報処理を除く)

<②の資本金要件>
親事業者が5000万円超、かつ下請事業者が5000万円以下(または個人事業者)
親事業者が1000万円超5000万円以下、かつ下請事業者が1000万円以下(または個人事業者)

検収時に注意すべき下請法のルール

下請法が適用される取引について、親事業者(発注者)は、検収手続きに関して以下のルールに注意ください。

受領拒否の禁止(同法4条1項1号)
受注者の責に帰すべき理由がないのに、納品物の受領を拒んではいけません。

下請代金の支払遅延の禁止(同項2号)
下請代金(報酬)は、納品日から60日以内に定めた支払期日までに、全額支払う必要があります。検収が完了していなくても、支払期日が到来すれば報酬を支払わなければなりません。

下請代金の減額の禁止(同項3号)
受注者の責に帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金(報酬)を減額してはいけません。理不尽な理由で検収不合格として、発注者の独断で報酬を減額すると、下請法違反に該当する可能性が高いです。

返品の禁止(同項4号)
受注者の責に帰すべき理由がないのに、納品物を受注者に返品してはいけません。理不尽な理由で検収不合格として納品物を返品すると、下請法違反に該当する可能性が高いです。

不当な給付内容の変更および不当なやり直しの禁止(同条2項4号)
受注者の責に帰すべき理由がないのに、納品前に納品内容を変更させ、または納品のやり直しをさせてはいけません。発注後に納品内容や検収基準を変えたり、理不尽な理由で検収不合格にしたりすると、下請法違反に該当する可能性が高いです。

ムートン

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