製造物供給契約(製作物供給契約)とは?
OEM契約との違い・規定すべき条項などを
分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

製造物供給契約」とは、委託者が受託者に対して、製品の製造・納品を委託する契約です。「製作物供給契約」と呼ばれることもあります。

製造物供給契約により、委託者は受託者側の調達・生産ラインやノウハウ・技術を活用し、自社が販売する製品を効率よく確保できます。受託者にとっても、生産ラインの余力を活用して収益を上げられるほか、大量受注が実現すれば売上が安定するメリットがあります。

製造物供給契約は「請負」と「売買」の性質を併せ持ち、民法の規定がどのように適用されるか不明確な部分があるため、契約書できちんとルールを定めることが重要です。製造物供給契約をレビューする際には、必要な条項が漏れていないか、自社にとって不当に不利益な条項が含まれていないかなどを慎重に確認しましょう。

この記事では、製造物供給契約について、契約の性質・規定すべき条項・レビューのポイントなどを解説します。

ヒー

製造物供給契約は、つまり、あるものを製造して引き渡す契約のことですね。よく「製造を委託する」と言いますが、そのことでしょうか?

ムートン

そのとおりです。例えば新商品を企画した際に、自社に製造設備などがなくても、製造に特化した企業に委託することで製品を製造できます。活用される製造物供給契約を、以下で勉強していきましょう。

※この記事は、2023年1月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・下請法…下請代金支払遅延等防止法

製造物供給契約(製作物供給契約)とは

製造物供給契約」とは、委託者が受託者に対して、製品の製造・納品を委託する契約です。「製作物供給契約」と呼ばれることもあります。

委託者としては、受託者の調達・生産ラインやノウハウ・技術などを活用して、効率的に自社製品などを製造できるメリットがあります。受託者としては、生産ラインの余力を収益化できる上に、もし大量受注できれば売上の安定につながります。
このような委託者・受託者の利害関係が合致した場合に、製造物供給契約が締結されることが多いです。

製造物供給契約とOEM契約の違い

製造物供給契約の一種として、自社製品の製造を他社に委託する「OEM契約」があります。「OEM」は”Original Equipment Manufacturing”の略称で、日本語では「自社製品の製造」という意味になります。

OEM契約は、受託者側が製造した製品を委託者に供給する点で、製造物供給契約の一種に位置づけられます。
これに対して製造物供給契約は、委託者の自社製品に限らず、製造物全般を対象とする点で、OEM契約よりも広義の概念です。例えば他社に納入する製品を製造する契約(下請け、孫請け)なども、製造物供給契約に当たります。

製造物供給契約は「請負契約」と「売買契約」の混合契約

製造物供給契約は、委託者の発注(注文)に従って受託者が商品等の製造を行う点では「請負契約」に該当しますが、報酬と引き換えに製造物を引き渡す点では「売買契約」に該当します。
したがって製造物供給契約は、請負契約売買契約の混合契約に当たり、民法における両契約の規定が適用されると解されています。

一般的には、製造の段階では請負に関する規定が、製造後の引渡しの段階では売買に関する規定が適用されると解されます。

しかし、民法における請負・売買の規定には異なる部分があり、実際に製造物供給契約に関する紛争が発生した際、どちらの規定が適用されるか不明確な部分も少なくありません。そのため、製造物供給契約書において、想定されるトラブル・リスクに関する手続き・ルールをきちんと定めることが重要です

ムートン

製造物供給契約の条項を定める際は、この点も意識しておくとよいでしょう。

製造物供給契約に定めるべき主な条項

製造物供給契約には、主に以下の条項を定めます。

・製造する製品の仕様
・発注・受注の方法
・製品の納期
・検収の手続き
・所有権・危険負担の移転時期
・報酬(代金)
・再委託の禁止
・契約不適合責任
・契約期間
・秘密保持
・反社会的勢力の排除
・契約の解除
・損害賠償

製造する製品の仕様

受託者が製造すべき製品の仕様については、できる限り具体的に定める必要があります。製造物供給契約において明示されている製品の仕様は、後述する契約不適合責任の範囲を決定する基準となるためです。製品の種類・備えるべき機能・満たすべき品質条件などを明確に定めておきましょう。

(例)
「受託者が製造すべき製品は、以下の条件を満たすものとする。
 (1)……
 (2)……」

なお、製造する製品の仕様は、基本契約である製造物供給契約では具体的に定めず、個別契約において定めるものとすることも考えられます。

(例)
「委託者は受託者に対し、個別契約で定める委託者の製品の製造および供給を委託し、受託者はこれを受託する。」

発注・受注の方法

委託者による発注と、受託者による受注をもって双方の権利義務が発生するので、発注・受注の方法を明確化することも大切です。どのような手続きで受注が成立するのかを、製造物供給契約において明記しておきましょう。

(例)
「個別契約は、委託者が受託者に対して、以下の事項を記載した注文書を交付し、受託者が委託者に対して、当該注文書に対する注文請書を交付することによって成立する。
 (1)製品名
 (2)数量
 (3)製造代金
 (4)納入期日
 (5)納品場所
 (6)製品が満たすべき仕様
……」

製品の納期

製品の具体的な納期については、個別契約で定めるとするのが一般的です。基本契約である製造物供給契約においては、納期遅れが発生した際の処理を定めておくのがよいでしょう。

(例)
「受託者は、個別契約で定められた納入期日に、委託者の指定する方法によって本製品を納品しなければならない。」
「受託者が納品期日までに本製品を納品しなかった場合、委託者は以下のいずれかの処理を選択することができる。
 (1)個別契約を解除し、委託者が被った損害全額を受託者が賠償する。
 (2)納品期日の翌日から起算して1日毎に、当初の製品代金の○%に相当する金額(1円未満切り上げ)を減じる。」

検収の手続き

受託者が納品した製品について、委託者による検収の手続きを定める必要があります。検収基準・検収期間・不合格時の処理などを明確に定めておきましょう。

(例)
「委託者は、受託者によって本製品が納品された後、その仕様・品質・数量の検査を行う。当該検査は、納品された製品が個別契約に適合しているか否かの観点から行われるものとする。」
「本製品が前項の検査に合格した場合、委託者は受託者に対して検収通知を交付する。」
「本製品が前項の検査に不合格となった場合、委託者は受託者に対してその旨を通知する。この場合、受託者は委託者の合理的な指示に従い、補修、修正その他の方法により、本製品の納品をやり直さなければならない。」
「委託者が受託者に対して、本製品の納品後○日以内に検収通知または不合格通知を発しないときは、本製品の納品時に検収通知が交付されたものとみなす。」

所有権・危険負担の移転時期

製品の所有権が委託者から受託者に移転する時期についても、製造物供給契約において明記しましょう。検収完了時とするのが一般的ですが、納品時とすることもあり得ます。
なお、危険負担の移転時期については、所有権の移転時期と揃えるのが一般的です。

(例)
「本製品の所有権および危険負担は、委託者から受託者に対して検収通知が交付された時点で、受託者から委託者に移転する。」
「本製品の所有権および危険負担は、受託者が委託者に対して本製品を納品した時点で、受託者から委託者に移転する。」

報酬(代金)

製造物供給の報酬(代金)については、個々の発注内容に応じて決める必要があるため、個別契約で定めるのが一般的です。基本契約である製造物供給契約においては、締め日や支払方法などを定めておきましょう。

(例)
「委託者は、毎月末日までに検収が完了した本製品の代金を、翌月末日までに、受託者が別途指定する預貯金口座に振り込む方法によって支払う。なお、本製品の代金は個別契約で定める。」

再委託の禁止

受託者による再委託については、認めない場合・条件付きで認める場合・無条件で認める場合の3パターンがあります。

(例)
<再委託を認めない場合>
「受託者は、本製品の製造を第三者に再委託することができないものとする。」

<再委託を条件付きで認める場合>
「受託者は、委託者の書面による事前承諾を得た場合に限り、本製品の製造を第三者に再委託することができる。」
「受託者は、以下の条件をすべて満たす場合に限り、本製品の製造を第三者に再委託することができる。
 (1)……
 (2)……」

<再委託を無条件で認める場合>
「受託者は、本製品の製造を第三者に再委託することができる。」

契約不適合責任

納品された製品の種類・数量・品質が製造物供給契約に適合していない場合、受託者は委託者に対して契約不適合責任を負います(民法562条以下)。契約不適合責任の追及方法は、以下の4つです。

①履行の追完請求(民法562条)
②代金減額請求(民法563条)
③損害賠償請求(民法564条・415条1項)
④契約の解除(民法564条・541条・542条)

事業者間の契約では、契約の定めによって契約不適合責任を免責し、または責任期間を短縮することができます(消費者契約の場合、消費者契約法による制限あり)。反対に、契約不適合責任の期間を延長することも可能です。

(例)
<免責する場合>
「受託者は委託者に対して、契約不適合責任を負わないものとする。」

<責任期間を短縮する場合>
「委託者が受託者に対して検収通知を発した時点以降は、当該本製品につき、受託者は委託者に対して契約不適合責任を負わないものとする。検収通知を発する前の期間における契約不適合責任の取り扱いは、民法に規定に従う。」

<責任期間を延長する場合>
「委託者が受託者に対して検収通知を発したか否かにかかわらず、受託者は委託者に対して、本製品の納品から2年間契約不適合責任を負う。」

※事業者間の契約の場合、法律上の契約不適合責任の期間は、引渡し(納品)から6カ月以内(商法526条2項)

契約期間

契約期間については始期と終期に加えて、自動更新や解約申し入れの手続き、契約終了後も存続する条項なども必要に応じて定めましょう。

(例)
「本契約の有効期間は、2023年2月1日から2024年1月31日までの1年間とし、有効期間満了の1カ月前までに、いずれかの当事者の書面による本契約終了の意思表示がなければ、さらに同一条件で1年間更新され、以降も同様とする。」
「第○条、第○条……の規定は、本契約の有効期間満了後も、なお依然としてその効力を有するものとする。ただし、第○条に定める秘密保持義務については、本契約終了後1年間に限る。」

秘密保持

顧客情報やノウハウなどの営業秘密の流出を防ぐため、秘密保持について以下の事項を定めておきましょう。

・秘密情報の定義
・秘密情報の開示・漏えいの禁止
・秘密情報の開示を認める例外的な場合
・秘密情報の目的外利用の禁止
・契約終了時の秘密情報の返還・破棄
など

反社会的勢力の排除

コンプライアンスの観点から、反社会的勢力やその周辺との取引を避けるため、以下の事項を定めておきましょう。

・反社会的勢力に該当しない旨の表明、確約
・反社会的行為をしない旨の確約
・違反した場合の無催告解除権
・違反した場合の損害賠償

契約の解除

相手方が契約違反を犯した場合などには、必要に応じて取引を打ち切ることができるように、契約の解除に関する要件・手続きを定めましょう。

(解除事由の例)
・納品遅れなどの契約違反(治癒期間や違反回数を設定することも考えられます)
・支払停止
・倒産手続きの開始
・合併、買収などによる会社支配権の異動
など

損害賠償

相手方の契約違反により、自社が損害を被る事態に備えて、損害賠償範囲を明確化しておきましょう。民法のルールに揃えるケースが多いですが、異なる範囲を定めることもあります。

(例)
<民法に揃える場合>
「本契約に違反した当事者は、民法の規定に従い、当該違反によって相手方に生じた損害を賠償する責任を負う。」

<責任を加重する場合>
「本契約に違反した当事者は、故意又は過失の有無にかかわらず、当該違反によって相手方に生じた一切の損害を賠償する責任を負う。」

<責任を軽減する場合>
「本契約に違反した当事者は、故意又は過失がある場合に限り、当該違反によって相手方に直接生じた損害(通常損害に限る)を賠償する責任を負う。」

製造物供給契約をレビューする際のポイント

製造物供給契約をレビューする際には、下請法製造物責任法の規定にも留意しながら確認を行いましょう。

下請法の適用の有無を確認する

製造物供給契約については、以下のいずれかに該当する場合に下請法が適用されます。

委託者の資本金額が3億円を超え、かつ受託者の資本金額が3億円以下
委託者の資本金額が1000万円を超え3億円以下、かつ受託者の資本金額が1000万円以下

下請法が適用される場合に対応すべきこと

下請法が適用される場合、親事業者に当たる委託者には、以下の行為が禁止されます(下請法4条)。

✅ 受領拒否
✅ 支払遅延(納品から最長60日以内の支払いが必要)
✅ 下請代金の減額
✅ 返品
✅ 買いたたき
✅ 親事業者が指定する物品の購入、サービスの利用の強制
✅ 不当な経済的利益の提供要請
✅ 不当な給付内容の変更、やり直し

委託者としては、上記の行為を避けるように注意しなければなりません。受託者としては、委託者が上記の不当な行為をしていないかをチェックし、発見したら速やかに是正を求めましょう。

製造物供給契約上も、上記の違反行為を認めるような規定が残っていないかをチェックすることが大切です。

製造物責任に留意する

受託者が製造・納品した製品は、委託者や第三者によって市場で販売されることになります。市場に出回った製品の欠陥によって、消費者などが損害(ケガなど)を被った場合、製造業者である受託者も「製造物責任」を負う可能性があるので注意が必要です(製造物責任法3条)。

受託者としては製造物責任のリスクを抑えるため、製造ラインの定期的な点検・見直しを行いましょう。また、製造物供給契約において、委託者との間で製造物責任の分担を図ることも考えられます。

この記事のまとめ

製造物供給契約の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

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