OEM契約とは?ライセンス契約との違いや契約書に記載すべき条項などを解説!

この記事のまとめ

「OEM契約」とは、ある企業(委託者)が自社ブランド製品の製造を他社(受託者)に委託する契約をいいます。

自社製品の製造を他社が行う点で、OEM契約はライセンス契約と少し似ています。しかし、OEM契約が製造のみを委託するのに対して、ライセンス契約はライセンシー(権利の許諾を受けた者)に対して製造・販売を包括的に許諾する点などが異なります。

OEM契約により製品の製造を委託・受託することには、委託側・受託側の双方にメリット・デメリットが存在します。OEM契約を締結する際には、取引の特徴を十分踏まえたうえで、必要な契約条項を漏れなく盛り込みましょう。

この記事では「OEM契約」について、ライセンス契約との違い、委託側・受託側のそれぞれから見たメリットやデメリット、OEM契約に含めるべき重要な契約条項などを解説します。

前から思っていたのですが、OEM契約の「OEM」って何ですか?

「Original Equipment Manufacturing」の略称で、日本語では「自社製品の製造」という意味です。

(※この記事は、2022年3月4日時点の法令等に基づいて作成されています。)

OEM契約とは?意味を解説

「OEM契約」とは、ある企業(委託者)が自社ブランド製品の製造を他社(受託者)に委託する契約をいいます
「OEM」は「Original Equipment Manufacturing」の略称で、日本語では「自社製品の製造」という意味になります。

OEM契約を通じて、委託者は受託者の製造ラインを活用して生産効率を高められる一方、受託者は安定した収益を確保できるなど、双方にとってメリットがあります。

OEM契約とライセンス契約の違い

OEM契約は、自社ブランド製品の製造を他社が行うなど、ライセンス契約と似ている部分があります。しかし、OEM契約とライセンス契約は、以下のとおり、契約内容が異なっています。

OEM契約|製造のみ委託(販売は自社)・委託料を受託者に支払う

OEM契約では、委託者が受託者に対して、自社ブランド製品の製造を委託します。基本的には、委託者のニーズに基づく発注ありきの契約であり、受託者側は「下請」という位置づけです。

OEM契約による委託の対象は「製造」のみであり、販売については委託者が自分で行います。受託者に対しては、製造業務の対価として委託料が支払われます。

ライセンス契約|製造と販売を許諾・ライセンス料を徴収する

ライセンス契約では、ライセンサー(権利をもっている者)がライセンシー(権利の許諾を受ける者)に対して、指定されたエリアにおける自社ブランド製品の製造・商標の使用・販売などを、包括的に許諾します。

多くの場合、「ライセンサーの技術やブランド力を活用したい」というライセンシー側の要望が先にあり、それに応じてライセンサーが契約に応じるという流れを取ります。この点は、委託者のニーズが先に立つOEM契約とは逆の構造です。

ライセンスの内容は契約によりますが、基本的には特定のエリアにおける製造・販売などを一括許諾することになります。ライセンシーが販売も行う点が、OEM契約との大きな違いです。

またライセンス契約では、ライセンシーがライセンサーに対してライセンス料を支払います。この点もOEM契約とは反対であり、各契約における当事者の立場の違いが表れたポイントといえるでしょう。

OEM契約のメリット

OEM契約は、委託者・受託者のそれぞれが、以下に挙げるメリットを享受できます。

委託側から見たOEM契約のメリット

委託側から見たOEM契約のメリット

✅  製造コストを削減できる
→自社で設備投資を行って製造ラインを確保するよりも、委託料を支払って受託者に自社ブランド製品の製造を委託するほうが、結果的に製造コストを削減できるケースが多いです。

✅  自社のキャパシティを超えて生産能力を確保できる
→自社の製造ラインに加え、委託者の製造ラインを活用することで生産能力を確保・拡大できます。

✅  自社の人員を製造以外の業務に割ける
→外部の製造ラインを活用することで、自社の人員を製造部門に大きく割く必要がなくなり、他の部門の人員を充実させることができます(新製品の開発・販路開拓等)。

受託側から見たOEM契約のメリット

受託側から見たOEM契約のメリット

✅  安定した収益を得られる
→大口の発注を長期間にわたって確保できるため、収益の安定につながります。

✅  委託側からノウハウの提供を受け、技術力の向上につなげられる
→委託者が保有する製造ノウハウの提供を受けられるため、自社の技術力を向上させることができます。ただし、秘密保持義務には注意が必要です。

OEM契約のデメリット

上記のメリットの一方で、OEM契約には、委託者・受託者の双方にとってデメリットもあります。

委託側から見たOEM契約のデメリット

委託側から見たOEM契約のデメリット

✅  製造ラインを監視・監督しにくい
→他社において製造が行われるため、製造ラインを十分に監視・監督しにくい傾向にあります。

✅  納期遅れや品質不良が発生するリスクがある
→製造ラインへの監視・監督が不十分となった結果、納期遅れや品質不良などの頻度が上がり、委託者側に損害が発生するおそれがあります。

✅  自社の製造技術が中長期的に低下するおそれがある
→製造ラインの外注・自社の製造部門の人員削減などにより、自社の製造ノウハウが十分に承継されず、中長期的に技術力の低下を招くおそれがあります。

✅  自社の製造ノウハウが流出するおそれがある
→受託者に提供した自社の製造ノウハウが、受託者の別の事業に転用されたり、他社に流出したりするおそれがあります。

受託側から見たOEM契約のデメリット

受託側から見たOEM契約のデメリット

✅  受託者の自社ブランド製品として販売できない
→製造した製品は、委託者のブランド製品として委託者が販売するため、受託者の自社ブランド製品として販売できません。

✅  委託側に対する立場が弱い傾向にある
→OEM契約では、委託者が発注量等をコントロールする立場にあります。そのため、委託者に対して売上を依存する割合が大きいほど、受託者側の立場が弱くなる傾向にあります。

OEM契約書に記載すべき条項

OEM契約に最低限盛り込むべきと考えられる、重要な条項の概要を解説します。

製造する製品の仕様

OEM契約では、受託者に既存の自社ブランド製品をそのまま作ってもらう必要があります。したがって、製造する製品の仕様については、OEM契約の中で細かく決めておかなければなりません。

決めておくべき仕様の内容は、製品の種類や製造ポリシーなどによりますが、例えば以下の内容をまとめた仕様書を、OEM契約書に添付しておくとよいでしょう。

最低発注量

OEM契約では、受託者にとっての受注の安定性をある程度確保するため、最低発注量が設定されるケースがあります。

最低発注量を設定する場合は、以下の事項をOEM契約の条項で定めておきましょう。

製品の納期

委託者が製造スケジュールの管理を行うに当たっては、製品の納期を明確に決めておくことが重要です。

受注からどのくらいの期間内に納品する必要があるのか、OEM契約書の中に明記しましょう。

契約不適合責任

発注の内容と納品物の間に不適合がある場合、受託者は委託者に対して「契約不適合責任」を負います(民法559条、562条以下)。この場合、委託者は以下の4つの方法によって、受託者の契約不適合責任を追及できます。

契約不適合責任の責任期間は、原則として委託者が不適合を知った時から1年以内です(民法566条)。

ただし、契約不適合責任は任意規定のため、特約による変更が認められています。

「任意規定」とは何ですか?

任意規定とは「当事者間の合意(契約)によって上書きできる規定」のことです。対になる言葉に「強行規定(当事者の意思に関係なく、強制的に適用される規定)」があります。

契約不適合責任を排除する場合や、責任期間を延長する場合には、OEM契約における特約の規定が必要です。

契約不適合責任のレビューポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

検査

委託者は、受託者から納品されてきた製品について検査を行います。検査に関するルールも、OEM契約の中で定めておきましょう。

具体的には、以下の事項を定めておきます。

なお、検査のルールを定める際には、後述する下請法の規定に留意する必要があります。

委託料の額・支払方法等

委託料については、以下の事項をOEM契約で定めておきましょう。

なお、継続的な発注が予定される場合には、OEM契約書本体には委託料に関する細かい規定を置かず、個別の発注書等によって定めることも考えられます。

製造物責任

「製造物責任」とは、製品の欠陥によって人の生命・身体・財産に損害が生じた場合に、製造業者等が被害者に対して負う責任で、製造物責任法に基づいて発生します。

OEM契約の場合、製造を担当した受託者は、常に製造物責任を負います(製造物責任法2条3項1号、3条)。また、委託者が製造業者として企業名等を表示している場合には、委託者も製造物責任を負います(製造物責任法2条3項2~3号、3条)。

製造物責任に関して、OEM契約で定めるべきは、主に以下の2点です。

どちらがメインでクレーム対応を行うか、損害賠償金をどのように分担するかなどを、明確に規定しておきましょう。

再委託の可否

製品の製造を受注した受託者が、さらに別の業者に対して製造を再委託できるかどうかについても、OEM契約で規定しておきましょう。

委託者の立場からは、再委託を認めると、製造ラインに対する監視・監督を行うことがさらに難しくなります。そのため、特段の事情がない限り、再委託は認めるべきではないでしょう。

仮に再委託を認める場合でも、再委託先の責任により損害が生じた場合には、一切の責任を受託者に負わせる旨を、規定しておく必要があります。

契約期間

OEM契約は、中長期的な製造ラインの外注を想定しているケースが多いため、契約期間もある程度長くなる傾向にあります。

一般的には、「契約期間が長い=受託者に有利」、「契約期間が短い=委託者に有利」です。どの程度の期間に設定するかは、発注単価などと併せて、契約交渉により決定されます。

秘密保持

OEM契約では、委託者は受託者に対して、自社の製造ノウハウ等を提供します。その一方で、受託者は委託者に対して、製造ラインの情報等を提供します。

いずれの情報も、各当事者にとって営業秘密に該当するため、OEM契約の中では、必ず秘密保持義務についてのルールを規定しておきましょう。具体的には、以下の内容を定めておくのが一般的です。

損害賠償

いずれかの当事者の責に帰すべき事由によって、相手方に損害が発生した場合に、いかなる範囲で損害賠償を行うべきかを規定します。

民法の原則どおりであれば、「相当因果関係の範囲内で損害を賠償する」という内容になります。そのほか、「一切の損害を賠償する」という形で損害賠償の範囲を広げたり、反対に「直接発生した損害に限り賠償する」などと狭めたりすることも考えられます。 また、損害賠償の上限を設定することもあり得るでしょう。

損害賠償の範囲をどのように設定するかは、契約交渉により決定されます。

危険負担

当事者のいずれかに発生した損害について、いずれの当事者にも責任がない場合に、その損害をどちらが負担するかについてのルールを「危険負担といいます。

現行民法では、危険負担については「債務者主義」が原則とされており(民法536条1項)債務が履行されなかった場合には、債権者は反対給付の履行を拒めます。 OEM契約でいえば、受託者による納品がなかった場合には、たとえそれが受託者の責任でなくても(天災地変など)、委託者は委託料を支払う義務を負いません。

ただし、OEM契約によって、委託者が受託者に対して何らかの補償を行う旨を定めることも可能です。危険負担のルールについては、具体的に想定されるリスクを分析したうえで、当事者同士が契約交渉によって詰めていくことになります。

OEM契約には下請法も適用される場合がある

OEM契約には、「下請代金支払遅延等防止法」(通称:下請法)が適用される場合があります。

下請法は、親事業者と下請事業者の間の取引に関して、下請事業者を保護するための法律です。下請事業者は、親事業者に対して弱い立場にあるケースが多いため、親事業者による搾取等を防ぐ目的で、下請法による規制が行われています。

下請法による、親事業者に対する主な規制内容は、以下のとおりです。

下請法上の親事業者に対する主な規制

✅  成果物の受領拒否の禁止
✅  下請代金の支払遅延の禁止
✅  下請代金の減額の禁止
✅  成果物の返品の禁止
✅  買いたたきの禁止
✅  購入、利用の強制の禁止
✅  経済的利益の提供要請の禁止
✅  給付内容の変更、やり直しの禁止
✅  下請事業者に対する書面交付義務
など

下請法の適用を受ける場合は、上記の下請法が定める義務を遵守しなければなりません。

下請法の詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。

この記事のまとめ

OEM契約の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

日本貿易振興機構ウェブサイト「OEM契約とライセンス契約の違い:日本」