勤怠とは?勤怠管理の重要性や方法などを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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勤怠とは、労働者の出退勤状況を示す記録のことをいいます。
・勤怠管理は、適正な給与計算・法令遵守・労働者の健康管理・生産性向上の4つの観点において重要です。
・勤怠管理すべき項目は8項目あります。
・勤怠を適切に管理するには自社に合った方法を選ぶことが重要です。本記事では、勤怠について、基本から詳しく解説します。
※この記事は、2025年6月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 個人情報保護法…個人情報の保護に関する法律
- 働き方改革関連法…働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律
目次
勤怠とは
勤怠とは、労働者の出勤・退勤を含めた労働者の勤務状況を示す記録や状態のことをいいます。なお、法令上の厳密な定義ではなく、実務や人事労務の現場で広く使われている一般的な用語です。企業には、労働者の勤怠を適切に管理する義務があります。
管理義務については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」においても、労働時間を客観的に把握することが使用者の義務として明記されています。
勤怠と勤務の違い
勤怠とは、労働者の出勤・退勤の状況を示す記録や状態のことをいいます。一方、勤務とは実際に業務に従事する行為をいいます。
勤怠を正確に管理することで、企業は適正な労務管理や給与計算が可能です。
勤怠管理の重要性
勤怠管理は、適正な給与計算・法令遵守・労働者の健康管理・生産性向上の4つの観点から、企業経営において重要な業務です。
働き方改革関連法の施行により、労働時間の客観的把握義務化や時間外労働の上限規制、年5日の年次有給休暇取得義務化など、企業が遵守すべき法的要件が厳格化されています。
不正確な勤怠管理は、給与計算ミスや労働基準法違反、未払い残業代請求、労働基準監督署からの指導などにつながるため注意が必要です。
勤怠管理の目的
勤怠管理は単なる労働時間の記録にとどまらず、以下のような目的があります。
- 正確な給与計算
- 労働者の健康管理
- 労働基準法32条の遵守
- ワークライフバランスの改善
以下では、企業が勤怠管理を行う目的を具体的に見ていきましょう。
正確な給与計算
勤怠管理は、労働者の勤務時間を正確に把握し、賃金を適切に支給することが基本的な目的です。勤怠データは給与計算の基礎となり、出勤・退勤時刻や時間外・深夜・休日労働などの情報から給与が決定されます。
労働基準法では、時間外労働25%以上、深夜労働に25%以上、休日労働に35%以上の割増賃金の支払いが義務付けられています。そのため、正確な労働時間の記録が不可欠です。
労働者の健康管理
勤怠管理は、労働者の健康を守るための重要な手段です。働き方改革関連法の施行により、時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が設けられ、企業には労働者の長時間労働を防止する義務があります。
勤怠データを分析し、時間外・休日労働が月80時間を超える労働者や、連続勤務が続く労働者を早期に把握することが、健康障害リスクの防止につながります。
なぜなら、脳・心臓疾患の労災認定基準において、発症前2〜6か月間の平均で月80時間を超える時間外労働が「過労死ライン」とされているためです。
労働基準法32条の遵守
労働基準法32条では、法定労働時間を1日8時間、1週40時間と定めており、企業は規定を遵守する法的義務があります。
2019年4月から(中小企業は2020年4月から)施行された働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が罰則付きで法制化されました。違反した場合、労働基準法119条にもとづき、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
なお、2024年4月からは、適用が猶予されていた建設業、運送業、医師についても上限規制が適用されています。
また、労働時間の客観的把握義務により、企業はすべての労働者の労働時間をタイムカード、ICカード、パソコンのログなど客観的な方法での記録が必要です。
ワークライフバランスの改善
適切な勤怠管理は、労働者のワークライフバランス向上と働きがいのある職場環境の実現に直結します。テレワークやフレックスタイム制などの導入には、正確な労働時間の把握が不可欠です。
労働者のライフスタイルに合わせた柔軟な勤務体系を提供することは、人材の獲得・定着においても重要な要素です。
勤怠管理を行うべき項目
適切に勤怠管理を行うためには、どの項目を管理すべきかを明確にすることが重要です。勤怠管理を行うべき項目は、主に以下のとおりです。
- 出勤・退勤時間
- 労働時間
- 休憩時間
- 残業時間
- 深夜労働時間
- 休日労働時間
- 早退・遅刻・欠勤
- 有給休暇
以下では、各項目について見ていきましょう。
出勤・退勤時間
出勤・退勤時間の記録は、勤怠管理の最も基本的な項目です。出勤と退勤の時刻は労働時間の算出に直結するため、正確な記録が不可欠です。
労働基準法では、労働時間の客観的把握が義務付けられており、出退勤記録が法令遵守の根拠となります。勤怠打刻の際は、始業時刻と終業時刻を正確に記録し、後の労働時間計算や給与計算の基礎データとして活用します。
労働時間
労働時間の正確な把握は、法定労働時間の遵守と適正な賃金支払いの基盤となる項目です。労働基準法では、1日8時間・週40時間を超える労働は時間外労働とされ、割増賃金の支払いが必要です。
出退勤時刻と休憩時間をもとに実労働時間を算出し、法定内残業と法定外残業を区別することが求められます。
休憩時間
休憩時間の適切な管理は、労働時間の正確な算出と労働者の健康確保に必要な項目です。労働基準法34条では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が義務付けられています。
休憩時間は労働時間に含まれないため、実労働時間を正しく計算するには休憩時間の除外が必要です。
休憩時間については、下記の記事で詳しく解説しているためあわせてご覧ください。
残業時間
残業時間の管理は、働き方改革の時間外労働上限規制遵守と割増賃金の適正支払いに直結する項目です。働き方改革関連法により、36協定を締結しても時間外労働は月45時間・年360時間以内が原則とされ、違反には罰則が科される可能性があります。
法定時間外労働には原則25%以上の割増賃金の支払いが必要です。また、1か月に60時間を超える法定時間外労働については、50%以上の割増率となります(中小企業も2023年4月より適用)。
勤怠計算では、所定労働時間と法定労働時間を超えた時間を区別して管理する必要があります。
深夜労働時間
深夜労働時間の管理は、法定の割増賃金支払いと労働者の健康保護のために必要不可欠な項目です。
労働基準法37条では、午後10時から午前5時までの深夜時間帯での労働には25%以上の割増賃金支払いが義務付けられています。深夜労働と時間外労働が重複する場合は、割増率を合計して50%以上の割増賃金となり、計算の複雑さから給与計算ミスが発生しやすい項目でもあります。
交代制勤務や24時間営業の企業では、深夜労働の管理が重要です。
休日労働時間
休日労働時間の管理は、法定休日の特定と35%以上の割増賃金支払いのために重要な項目です。
労働基準法35条では、使用者は労働者に毎週少なくとも1日、または4週間で4日以上の休日を与える義務があります。法定休日での労働には35%以上の割増賃金が必要で、所定休日での労働とは区別して管理する必要があります。
また、振替休日との違いも重要です。事前に休日を振り替える場合、割増賃金は不要ですが、代休の場合は休日労働後の代休付与でも35%の割増賃金支払いが必要です。
早退・遅刻・欠勤
早退・遅刻・欠勤の正確な記録は、給与計算と人事評価、労務管理の基盤となる重要な項目です。
所定労働時間に満たない場合は、ノーワーク・ノーペイの原則にもとづき、控除額を算出します。遅刻や早退の場合は、不足した労働時間分を給与から控除し、欠勤の場合は日給相当額を控除するのが一般的です。
電車遅延による遅刻など、やむを得ない理由の場合は、遅延証明書の提出により不可抗力として考慮することもあります。
有給休暇
有給休暇の管理は、労働者の権利保護と企業の年5日取得義務履行のために必須の重要項目です。
労働基準法39条では、入社から6カ月経過した労働者に対して継続勤務期間に応じた年次有給休暇の付与が義務付けられています。2019年4月からは年10日以上付与される労働者に対して年5日の時季指定取得が企業の義務となり、違反した場合は30万円以下の罰金が科される可能性があります。
有給休暇の管理では、付与日数、取得日数、残日数の正確な把握が必要で、取得率の向上も重要な課題です。2019年4月より「年次有給休暇管理簿」を作成し、年次有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後5年間(当分の間、3年間)保存することが義務化されました。
有給休暇については、下記記事でも解説しているためぜひご覧ください。
勤怠管理の方法
勤怠管理の方法は、主に以下のとおりです。
- 紙の出勤簿
- タイムカード・エクセル
- ICカード
- 勤怠管理システム
以下では、各勤怠管理の方法を見ていきましょう。
紙の出勤簿
紙の出勤簿は、労働者が手書きで出勤・退勤時刻を記録する勤怠管理方法です。初期費用が少なく、小規模な事業所でも導入しやすいことが特徴です。
しかし、自己申告に依存するため、改ざんや虚偽申告のリスクがあり、労働時間の客観的把握の法的要件を満たしにくいという課題があります。
また、月末の勤怠計算では、手書きの記録をエクセルに転記する作業が必要となり、人事・労務担当者の負担が大きくなる点も懸念点です。
タイムカード・エクセル
タイムカードは、厚生労働省のガイドラインが示す「労働時間の客観的な記録」の原則的な方法のひとつです。
しかし、タイムカードの記録をエクセルへ手作業で転記する運用の場合、入力ミスや計算ミスが発生するリスクがあり、集計後のデータの信頼性については課題が残ります。
エクセルのテンプレートを活用することで、勤怠の計算や集計作業もある程度効率化できます。
ICカード
ICカードを活用した勤怠管理は、社員証や交通系ICカードを利用して打刻する方法です。
ICカードには個人情報が記録されており、代理打刻などの不正を効果的に防止できます。勤怠データは自動的にシステムに記録され、手作業による転記が不要になるため、集計作業の効率化と正確性の向上を実現できます。
ただし、ICカードリーダーの設置費用やシステム構築費用など、初期投資が必要です。また、ICカードの紛失や故障時の対応など、運用面での課題もあります。
勤怠管理システム
勤怠管理システムは、スマホアプリによる打刻や位置情報管理、ICカードや生体認証などの打刻方法に対応した勤怠ツールです。
労働時間の自動集計機能により手作業での計算が不要で、勤怠計算の精度向上と大幅な業務効率化を実現できます。また、残業時間のアラート機能や有給休暇の自動管理など法令遵守に必要な機能も提供されています。
クラウド型は、初期費用が無料のものも多く、無料トライアルが提供されている場合もあり、自社の規模や必要な機能に応じたコストパフォーマンスの検証が可能です。
勤怠管理システムを導入するメリット
勤怠管理システムを導入することで企業が得られる具体的なメリットは、以下のとおりです。
- 業務効率化の実現
- 適切な労働時間の管理
- 労働基準法違反の防止
- 法改正への対応
勤怠管理システムを有効活用するためにも、各メリットを確認していきましょう。
業務効率化の実現
勤怠管理システムの導入により、手作業による集計・確認作業が自動化され、大幅な業務効率化を実現できます。
勤怠管理システムでは、打刻データが自動的に集計され、労働時間や残業時間の計算が瞬時に完了します。
業務負担を大幅に軽減し、正確でスピーディな勤怠管理を実現するには勤怠管理システムの導入が効果的です。
適切な労働時間の管理
勤怠管理システムによる労働時間の可視化とリアルタイム監視機能により、労働者の健康管理と働き方改革を効果的に推進できます。
従来のアナログ勤怠管理では、労働者の労働実態の把握が困難で、長時間労働の見逃しが課題でした。
しかし、勤怠管理システムでは、個人別・部署別の労働時間を一覧で確認でき、月80時間超の残業などにアラートで即時対応が可能です。
労働基準法違反の防止
勤怠管理システムの法令遵守機能では、労働基準法違反のリスクを軽減し、企業のコンプライアンス体制を強化できます。
勤怠管理システムでは、時間外労働の上限超過や有給休暇の未取得が懸念される場合、自動アラートによって管理者が事前に対応可能です。
また、特別条項の上限(年720時間以内、月100時間未満、複数月平均80時間以内)も自動監視されるため、法令違反を未然に防止します。
下記の記事では、労働基準法違反に当たるケースを紹介しているため、ぜひご覧ください。
法改正への対応
クラウド型勤怠管理システムの自動アップデート機能により、継続的な法令遵守を低コストで実現できます。
従来の勤怠管理では、法改正による計算式の修正や設定変更に専門知識が必要で、対応漏れのリスクもありました。
クラウド型勤怠管理システムでは、システムベンダーが法改正に対応したアップデートを自動配信するため、企業側での個別対応が不要になります。
勤怠管理システムを導入する手順
勤怠管理システムを導入する際は、以下の手順に沿って対応することが重要です。
- 既存の勤怠管理データの洗い出し
- 勤怠システムの選定
- 労働者へ周知
正しく導入するためにも、以下では各手順を詳しく解説します。
1.既存の勤怠管理データの洗い出し
勤怠管理システムを導入するには、現在の勤怠管理方法とデータの全体像を正確に把握する必要があります。
打刻方法や集計作業の手間、ミスの頻度などを定量的に確認しましょう。また、就業規則や労働時間制度、労働者の働き方も整理が必要です。
給与計算ソフトとの連携方法や勤怠データの保管期間なども確認すれば、勤怠管理システム選定時の要件定義が明確になり、自社に最適なシステムを選ぶ基準が見えてきます。
2.勤怠システムの選定
勤怠管理データを洗い出した後は、自社の課題合った勤怠システムの選定が重要です。選定時は機能面・価格面・サポート体制・セキュリティの4つの観点から比較検討しましょう。
機能面では、打刻方法や残業時間のアラート機能、有給管理機能、給与計算ソフトとの連携機能などを確認します。価格面では初期費用と月額料金を比較し、労働者数に応じたコストパフォーマンスを検証することが大切です。
3.労働者へ周知
勤怠管理システムを導入するには、労働者への周知と教育が不可欠です。
導入前に労働者への予告を行い、導入の目的とメリットを明確に伝えることが重要です。タイムカードから勤怠管理アプリへの移行は、年配の労働者にとって不安要素となる場合があるため、操作説明会の実施やマニュアルを作成しましょう。
導入初期は従来システムとの並行運用期間を設け、トラブル発生時の対応体制も整備しておくことが大切です。
勤怠管理システムを導入する注意点
勤怠管理システムを導入して、有効活用するためには下記の注意点を事前に確認しておきましょう。
- 情報漏えい・データ改ざんのリスク
- 正しく打刻できないトラブル
- 導入・運用のコスト
- 定期的なシステムメンテナンスが必要
以下では、各注意点について詳しく解説します。
情報漏えい・データ改ざんのリスク
勤怠管理システムでは、機密性の高い個人情報を扱うため、厳格なセキュリティ対策が不可欠です。個人情報の漏えい等が発生し、個人情報保護委員会からの改善命令にも従わない場合など、悪質なケースでは個人情報保護法違反として法人に最大1億円以下の罰金が科される可能性があります。
個人情報が外部に漏えいした場合、個人情報保護委員会から改善命令などの措置が出されます。命令に従わなかったり、虚偽の報告や調査拒否など悪質な行為があったりした場合、個人情報保護法違反となり、法人に対して最大1億円以下の罰金が科される可能性があります。
クラウド型勤怠管理システムでは、インターネット経由でアクセスできるため、不正アクセスのリスクも存在します。リスクを軽減するには、信頼性の高いベンダーの選定や二段階認証など事前対策が重要です。
情報漏えいについては、下記の記事で解説しているため参考にしてみてください。
正しく打刻できないトラブル
勤怠管理システムは、ネットワークやスマホなどの技術に依存しており、トラブル時に打刻できないリスクがあります。
トラブルが継続すると、正確な勤怠記録ができず、給与計算や労働時間管理に支障をきたします。
対策として、システムダウン時の代替打刻手段の準備や操作方法の周知、ICカードとスマホアプリの併用など、トラブル発生時の対応策が重要です。
導入・運用のコスト
勤怠管理システムの導入・運用には、初期費用とランニングコストが発生するため、事前のコスト試算と予算計画が欠かせません。
勤怠管理システムは月額利用料に加え、初期設定費用や既存データの移行作業費用、機器の設置費用、労働者への研修費用なども発生します。さらに、運用継続には、専任の管理者の人件費やメンテナンスコストも必要です。
コストを把握せずに導入すると、予算オーバーや運用継続の困難などのリスクがあるため、ROI(投資対効果)の算出と長期的な視点での費用対効果の検討が不可欠です。
定期的なシステムメンテナンスが必要
勤怠管理システムの安定稼働には、定期的なメンテナンスと継続的な管理体制の構築が不可欠です。
クラウド型勤怠管理システムでも、月次のメンテナンスによる一時的なサービス停止や法改正に伴う設定変更が発生することがあります。企業側でも、アカウント管理や勤務設定の更新、データ管理などの作業が必要です。
安定した運用を継続するには、専任管理者の配置やベンダーとの情報共有体制の整備が重要です。
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参考文献
監修












