診断書なしで休職はできる?
従業員から希望された場合の
対応方法と手順を解説!
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- この記事のまとめ
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診断書なしで休職できるかどうかは、法律では定められていないため、会社の制度によって異なります。
・そもそも休職制度について、法律には定めがありません。
・診断書なしで休職できるかどうかは、会社ごとの就業規則をもとに判断します。
・診断書は、休職の客観的な根拠となり、企業の安全配慮義務の観点からも従業員の提出を求めることが推奨されます。本記事では、診断書なしでの休職について詳しく解説します。
※この記事は、2025年7月31日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
診断書なしで休職できるのか
診断書なしで休職ができるかどうかの法的・制度的背景について解説します。
法律に休職制度に関する定めはない
法律に休職制度に関する定めはなく、制度の内容や運用ルールは企業ごとに異なります。そのため、診断書なしで休職できるかどうかに関しても、法律には定めがありません。
会社ごとの就業規則が判断基準
診断書なしで休職できるかどうかは、各企業の就業規則によって異なります。就業規則に「診断書の提出が必要」と明記されていれば、原則として診断書が必要です。
一方、「診断書の提出を求めることができる」といった表現であれば、会社の判断で提出を省略することも可能です。また、診断書に休職についての記載がない場合は、個別の事情を踏まえて対応する必要があります。
まずは、就業規則の内容を確認し、従業員にも分かりやすく説明することがスムーズな対応につながります。
診断書は労務提供義務を免除する正当な根拠
労働契約において、従業員は会社に対して労務を提供する義務があります(労働契約法3条4項)。診断書は、体調不良により就労が難しいことを医師が客観的に証明する書類であり、その義務を一時的に免除する正当な根拠となります。
特に精神的不調などにおいては、外見では判断しにくいため診断書による医学的な裏付けが重要です。なお、産業医の面談によって「就労困難」と判断される場合は、診断書と同様に取り扱われることもあります。
休職の申し出時に診断書の提出を従業員に求めたほうがよい理由
従業員の休職申し出時に、診断書の提出を求めたほうがよい理由は以下のとおりです。
- 休職の客観的な根拠を証明するため
- 従業員の健康を守る安全配慮義務があるため
- 業務の調整・手続きをスムーズに行うため
それぞれの理由について解説します。
休職の客観的な根拠を証明するため
診断書は、休職の必要性や期間について医師が医学的な知見から判断した内容を記載した書類です。従業員の「体調が悪い」という申し出だけでは、休職が本当に必要かどうかを企業側が判断するのは困難な場合があります。
診断書の提出により、休職が必要な理由や見込み期間を客観的に確認でき、適切な対応につながります。また、診断書は万が一トラブルが生じた際に、会社側の対応が正当であったことを示す根拠にもなるため、リスク管理の面でも重要な書類です
従業員の健康を守る安全配慮義務があるため
企業には、従業員の安全と健康に配慮する安全配慮義務があります(労働契約法5条)。体調不良の申し出があった場合は、無理に働かせることで症状を悪化させてしまうリスクを避ける必要があります。
診断書があれば、医学的な根拠に基づいた対応ができ、適切な休養や業務調整を行う判断材料となり、適切に安全配慮義務を履行する裏付けとなります。特に精神的な不調や妊娠など、外見から分かりにくいケースでは、診断書によってはじめて体調の詳細を把握できるため、従業員にとっても安心感のある対応が可能になります。
業務の調整・手続きをスムーズに行うため
診断書には、病名や症状、目安の休職期間が記載されるため、業務の引き継ぎや代替人員の確保などを計画的に進める手掛かりとなります。体調不良がいつまで続くのか分からない状態では、現場の混乱や他の従業員への負担が大きくなるおそれがあります。
診断書をもとに休職から復職までのスケジュールを組むことで、業務の継続性を保ちながら、休職者本人にも無理のないサポート体制を整えることが可能です。
診断書なしで休職を希望された場合の対応方法
従業員から診断書なしで休職の申し出があった場合の、適切な対応手順は以下のとおりです。
- 産業医による面談を実施する
- 医療機関への受診を促す
- 必要に応じて受診命令を出す
- 診断書を提出してもらう
- 休職に関する面談を行う
各手順について詳しく解説します。
産業医による面談を実施する
診断書がない場合や医療機関を受診していない場合でも、まずは産業医との面談を通じて従業員の健康状態を把握することが重要です。産業医の意見をもとに、休職の必要性や職場での配慮事項を検討できます。また、産業医は必要に応じて医療機関の受診を促します。
なお、従業員50人未満の企業で産業医がいない場合は、地域の産業保健センターを活用する方法もあります。
医療機関への受診を促す
心身の不調により休職を申し出た従業員に対しては、医療機関の受診を促し、正確な診断を受けさせることが望まれます。特に精神面の不調や妊娠に関する体調の変化は、外見からの判断が難しく、本人の申告だけでは対応が限られます。
心療内科や精神科、産婦人科など適切な医療機関を案内し、必要に応じて通院の配慮も検討します。企業側からの声かけにより、従業員が安心して受診しやすくなる環境を整えることが、早期の回復につながります。
必要に応じて受診命令を出す
従業員が体調不良を訴えているにもかかわらず受診を拒む場合は、業務への支障や安全面の観点から受診命令を検討する必要があります。
受診命令を直接認める法律は存在しないものの、就業規則や労働契約に「会社判断で医療機関の受診を求める旨」が記載されている場合は、受診命令が可能です。
また、就業規則に明記がない場合でも、状況に応じて命令を出すことはできます。ただし、従業員とのトラブルを避けるためには、就業規則にあらかじめ受診命令の根拠に関する規定を設けておくことが望ましいです。
診断書を提出してもらう
医療機関の受診後には、休職の判断に必要な診断書の提出を依頼します。診断書には、医師の見解として症状の内容や療養期間、就労可否などが記載されており、企業としても対応を検討するうえでの重要な資料となります。
休職に関する面談を行う
診断書が提出されたあとは、休職に入る前に従業員と面談を行い、休職期間中の各種対応や今後の見通しを共有します。具体的には、会社との連絡方法、給与や保険の対応、復職に向けたステップなどについて丁寧に説明することが重要です。
面談を通じて従業員の不安を軽減することで、安心して療養できる環境を整えられます。また、上司や産業医とも連携し、復職に向けた準備も含めた対応を検討しておくと、スムーズな職場復帰につながります。
診断書なしでの休職の申し出に対する休職以外の対応方法(うつ病、適応障害、妊娠中など)
従業員から診断書なしで休職の申し出があった場合に、休職以外で対応する方法について紹介します。
- 有給休暇で体調回復を図るよう促す
- 妊娠中のつわりは「母健連絡カード」を使用する
各対応方法について解説します。
有給休暇で体調回復を図るよう促す
診断書がない段階では、まず有給休暇の取得を提案し、短期間の休養を通じて体調の回復を促すことが選択肢として考えられます。有給休暇は労働者の権利であり、理由を問わず取得できるため、休むことに対して本人の心理的負担を軽減しやすいメリットがあります。
有給休暇後も体調の改善が見られない場合は、産業医による面談を実施し、その意見や勧告をもとに次の対応を検討します。産業医は従業員の健康状態を専門的に評価できる立場にあり、休職の必要性や勤務制限の必要性の有無について客観的に判断します。
例えば、うつ病や適応障害などのケースで、産業医が「就労困難」と記載した意見書は、診断書に準じた扱いが可能となります。
妊娠中のつわりは「母健連絡カード」を使用する
妊娠中の体調不良による休職希望には、医師が発行する「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を活用する方法があります。
母健連絡カードは、つわりや貧血、切迫流産などの症状に対して医師が就業上の配慮を指示するもので、診断書に代わる書類として有効です。母健連絡カードの提出を受けた企業側には、勤務時間の短縮や休憩の確保、業務内容の調整、休業など、記載された内容に基づいて適切な措置を講じる義務が生じます。
診断書なしで休職する場合の傷病手当金について
従業員が診断書なしで休職する場合の傷病手当金の取り扱いについて紹介します。傷病手当金は健康保険制度における給付制度で、病気や怪我によって一定期間会社を休んだ従業員が受け取れる手当です。
傷病手当金の申請に診断書の添付は不要
傷病手当金を申請する際、医療機関が発行する一般的な「診断書」を別途取得し、添付する必要はありません。例えば、全国健康保険協会では、診断書の提出では傷病手当金の受給はできず、代わりに「健康保険傷病手当金支給申請書」内に医師が労務不能と認める医学的な所見を記載する療養担当者記入欄があり、ここに担当医師の記入が必須です。
つまり、診断書なしで休職した場合も、申請書類において医師による証明があれば傷病手当金は受け取ることができます。
申請書に記入が必要な医師等の意見
傷病手当金の申請書の意見欄には、労務不能と判断される期間や病状の経過、治療内容などが具体的に記載されます。
内容が不十分だと審査が通らない可能性があるため、初診日や就労困難な理由、今後の見通しなどをしっかりと記載してもらうよう、従業員へ伝えることが重要です。継続申請の場合も同様で、前回からの変化や回復状況を確認する記載が求められます。
従業員を休職させる際の注意点
従業員を休職させる際に注意すべき点は、以下のとおりです。
- 定期的に連絡を取る
- 復職判断は慎重に行う
- 休職期間満了後の対応は就業規則による
適切な休職管理により、従業員の健康回復をサポートしながら、企業の法的リスクを最小限に抑えられます。
定期的に連絡を取る
休職期間中も、従業員と定期的に連絡を取り合うことが重要です。体調の経過や復職の見通しを共有することで、スムーズな職場復帰につながります。
月に1回程度を目安に、休業初期と復職の目処が立ったタイミングなどで頻度を柔軟に調整することが推奨されます。連絡はメールや電話で行い、体調の回復状況を確認し、復職の見通しが立てられるか整理します。
ただし、連絡は従業員の体調や希望に応じて頻度を調整するなど、プレッシャーにならないような配慮が必要です。信頼関係を保ちながら情報共有を続けることで、従業員が安心して療養できる環境づくりにもつながります。
復職判断は慎重に行う
復職の判断は、主治医の診断書や産業医の意見などをもとに慎重に行うことが求められます。復職後すぐに体調を崩してしまうことがないよう、就労可能かどうかだけでなく、職場環境との適合性や業務内容の負荷も含めて総合的に確認する必要があります。
場合により、短時間勤務や軽作業からスタートする段階的な復職プランを検討することも検討されます。職場の受け入れ体制を整えながら、従業員の健康と職場全体の安全を両立できる判断を心がけることが重要です。
休職期間満了後の対応は就業規則による
休職期間満了後に従業員が復職できない場合、就業規則の定めに従って対応するのが原則です。
例えば、「休職期間満了時にその事由が消滅せず、復職しなかったときは、休職期間満了日をもって自然退職とする」などの規定があるのであれば、自然退職として扱うことが可能です。
一方、就業規則に明確な規定がない場合には、普通解雇を検討せざるを得ませんが、不当解雇と判断されるリスクがあるため慎重な対応が求められます。対応方針を明確にするためにも、就業規則に休職期間満了後の扱いをあらかじめ整備しておくことが重要です。
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参考文献
監修者












