休職とは?
主な休職理由・欠勤や休業との違い・
給与・手当・手続き・注意点などを
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この記事のまとめ

休職」とは、労働者側の個人的な事情によって、雇用契約を維持したまま、会社から労働の義務を免除されることを意味します。労働義務のある日に仕事を休む「欠勤」や、会社側の都合や法令の規定によって仕事を休む「休業」とは異なります。

休職期間中の労働者に対しては、会社は給与(賃金)を支払う義務を負いません。その一方で、労働者は健康保険の傷病手当金をはじめとして、各種の手当を受給できる場合があります。

労働者を休職させる際には、会社の制度に照らして休職要件を検討し、最終的には会社が休職命令を発します。

休職期間中の労働者は、定期的に報告を行う義務を課すなどして管理しましょう。復職が困難な労働者については解雇することも考えられますが、その場合は解雇権の濫用に当たらないようにご注意ください。

この記事では休職について、主な休職理由・欠勤や休業との違い・給与・手当・手続き・注意点などを解説します。

ヒー

「心身の不調から休職を検討している社員がいる」と人事担当者が言っていました。法務から伝えておくべきことはありますか?

ムートン

休職のルールは企業によってさまざまです。社内規程のどのような定めがあるか、どのような手続きを踏むかなどは、よく確認しておきましょう。以下では幅広い「休職」について紹介していきます。

※この記事は、2023年9月28日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 育児介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

休職とは

休職」とは、労働者側の個人的な事情によって、雇用契約を維持したまま、会社から労働の義務を免除されることを意味します。労働義務のある日に仕事を休む「欠勤」や、会社側の都合によって仕事を休む「休業」とは異なります。

休職と欠勤の違い

休職の場合は、会社が労働者の労働義務を免除します。これに対して欠勤は、労働義務はあるものの、何らかの事情で労働者が仕事を休むことを意味します。

一般的には、休職は計画的に行われるのに対して、欠勤は突発的な事情によって発生することが多いです。

休職と休業の違い

休職は労働者の個人的な事情を理由としますが、休業は会社側の都合や法令の規定を理由とする点が異なります。休業した労働者に対しては、生活保障等の目的で各種の手当給付が用意されています(後述)。

以下に挙げるのは、法令上認められている休業の一例です。

・使用者の責に帰すべき事由による休業(労働基準法26条)
・産前産後休業(同法65条1項)
・業務上の負傷または疾病による休業(同法75条以下)
・育児休業(育児介護休業法5条1項)
・介護休業(同法11条1項)
など

主な休職理由の種類

労働者が休職する理由には、さまざまなパターンがあります。以下に挙げるのは、主な休職理由の一例です。

(1) 私傷病休職

(2) 私傷病以外の休職
①自己都合休職
②留学による休職
③公職就任による休職
④事故欠勤による休職
⑤起訴による休職
⑥組合専従による休職
⑦出向による休職

種類1|私傷病休職

私傷病休職」とは、業務や通勤以外の原因による病気やケガを理由とする休職です。

(例)
・プライベートの登山中に重傷を負い、長期間の入院が必要となったため休職する場合
・業務や通勤とは関係がない車の運転中に、交通事故に遭って重傷を負い、長期間の入院が必要となったため休職する場合
・家族や友人との関係が原因でうつ病を患い、長期間の療養が必要となったため休職する場合
など

種類2|私傷病以外の休職

私傷病以外の休職理由としては、以下の例が挙げられます(重複するものもあります)。

① 自己都合休職
② 事故欠勤による休職
③ 留学による休職
④ 公職就任による休職
⑤ 起訴による休職
⑥ 組合専従による休職
⑦ 出向による休職

業務が原因の傷病の場合は労災となる

業務上の原因による負傷または疾病を理由に休職する場合は、労働災害(労災)として取り扱われます。

労災に当たる負傷・疾病の治療に当たっては、健康保険が適用できません。その代わりに、労災病院または労災保険指定医療機関では無償で治療を受けられます。
その他の医療機関で治療を受けた場合には、治療費全額がいったん自己負担となりますが、労働基準監督署へ請求すれば、治療にかかった費用全額の償還を受けられます。

労災によって被災労働者が受けた損害については、使用者である企業が一定の範囲で災害補償の義務を負いますが(労働基準法75条以下)、実際の支払いは労災保険給付によってカバーされます。
ただし、安全配慮義務違反(労働契約法5条)または使用者責任(民法715条1項)が認められる場合には、災害補償の範囲を超えて損害賠償義務を負うので注意が必要です。

また、労災の原因を作った者は業務上過失致死傷罪(刑法211条)の責任を問われ得るほか、事業場は労働基準監督署による行政処分等を受けるおそれがあります(労働安全衛生法98条等)。

①自己都合休職

私傷病に当たる病気やケガに限らず、個人的な都合を理由とする休職は、広く「自己都合休職」と呼ばれます。

②事故欠勤による休職

事故欠勤」とは、私傷病以外の自己都合による欠勤を意味します。欠勤ではあるものの、会社が認めることにより休職扱いとなる場合があります。

(例)
・親の介護が必要となったため、落ち着くまで長期間休職する場合
など

なお、留学公務就任など、会社にもメリットがあると考えられる理由による休職は、事故欠勤による休職としては取り扱われないのが一般的です。

③留学による休職

自己研鑽や仕事のスキル向上のために労働者が留学を希望する場合、会社は休職を認めることがあります。

④公職就任による休職

労働者が国や地方公共団体の公務を経験すれば、会社は後にその経験や人脈を活用できるようになり、メリットを得られる可能性があります。
そのため、会社は公務への就任を希望する労働者の休職を認めるケースも多いです。

⑤起訴による休職

犯罪の疑いで労働者が起訴された場合は、刑事処分が確定するまでの間、休職扱いとするケースが多いです。
この場合、刑事処分の確定を待って懲戒処分等を行う、休職期間中に労働者と交渉して任意退職を促すなどの対応が考えられます。

⑥組合専従による休職

労働組合の業務に専念すること組合専従)を理由として、会社が労働者の休職を認めることがあります。組合専従による休職は、労働組合が使用者に対し、団体交渉の一環として要求するケースが多いです。

⑦出向による休職

出向」とは、会社と労働者の雇用関係を維持したまま、労働者が別の会社で働くことです。出向した労働者は、元の会社を休職したものと取り扱われることがあります。

休職中の給与(賃金)・社会保険料・税金

休職している労働者につき、給与社会保険料税金の取り扱いを解説します。

休職中の給与の取り扱い

休職中の労働者に対して、会社は給与を支払う義務を負いません。給与は労働の対価であるところ、労働していない労働者に対して給与を支払う必要はないからです(=ノーワーク・ノーペイの原則)。

ただし、労働契約などによって休職中の給与に関するルールが定められている場合には、その規定に従います。

休職中の社会保険料の取り扱い

休職中の労働者についても、社会保険料の負担は免除されません。したがって会社は、労働者に代わって社会保険料を納付する必要があります。

社会保険料の負担は、会社と労働者の折半とされています。労働者の負担分は給与から天引きするのが一般的ですが、休職中は給与が発生しないため、社会保険料の天引きができないことが多いです。
そのため、休職中の社会保険料の徴収方法について、あらかじめ労働者との間で合意しておきましょう。

休職中の税金(所得税・住民税)の取り扱い

休職によって給与が発生しない場合、所得税源泉徴収を行う必要はありません。源泉徴収額は、給与の支給額によって決まるためです。

これに対して、会社が住民税の特別徴収をしている場合は、ほとんどのケースにおいて、休職期間中も特別徴収をする必要があります。住民税の金額は前年の所得を基に決まるため、給与を支給しない期間についても、住民税の納税義務は発生することが多いからです。

社会保険料と同様に、住民税についても給与から天引きするのが一般的ですが、給与を支給しない休職期間中は天引きができません。住民税の徴収方法についても、あらかじめ労働者との間で合意しておきましょう。

休職に期限はあるか

休職の期限は、会社と労働者の合意または社内規程などによって決まります。

休職は法律に基づく制度ではなく、会社と労働者が締結する雇用契約に従って認められるものです。そのため、期限を含めた休職に関するルールは、会社と労働者の合意契約)または社内規程などによって定められます

一般的には、数か月から3年程度の範囲内で上限を定めるケースが多いですが、会社によって千差万別です。なお、休職の期限を経過した労働者については、解雇などの対応を検討することになります。

企業が休職制度を設ける義務はあるか

法令上義務付けられている場合を除いて、企業が休職制度を設ける義務はありません。ただし、労働者にとって働きやすい魅力的な職場となるように、福利厚生の観点から適宜休職制度を設けることが望ましいでしょう。

特に私傷病休職については、労働者が突発的なケガや病気に見舞われた際に、労働者の復職を支援する観点から有益と考えられます。長く労働者に定着してほしいと考える企業は、私傷病休職制度の導入を検討するとよいでしょう。

また、産前産後休業・育児休業・介護休業や年次有給休暇などの法令上義務付けられている休業・休暇については、各種法令の定めに従って適切に付与しましょう。

休職・休業中に受給できる手当

休職または休業中の労働者は、会社から給与を受け取ることができません。

その一方で、以下の手当給付)を受給できる場合があります。

① 健康保険の傷病手当金
② 会社の規定に従った手当
③ 労災保険給付
④ 出産手当金
⑤ 育児休業給付金
⑥ 介護休業給付金

手当1|健康保険の傷病手当金

健康保険の傷病手当金は、病気やケガのために仕事を休み、会社から十分な報酬を受けられない場合に支給されます。

傷病手当金が支給されるのは休業4日目から最長1年6カ月で、支給金額は給与額の約3分の2です。給与が支払われている場合や、労災保険の休業補償給付などを受給している場合は、その金額が傷病手当金から控除されます。

手当2|会社の規定に従った手当

休職制度に関する社内規程では、休職中の労働者に対しても一定の手当を支給する旨を定めていることがあります。

この場合、労働者は社内規程などの定めに従って、受給要件に該当する手当を受け取れます。

手当3|労災保険給付

業務上の原因により、または通勤中に生じたケガや病気などを理由に休業する場合は、労災保険給付を受給できます。

労災保険給付には以下の種類があり、労働基準監督署への請求などによって給付を受けられます。

① 療養(補償)給付
② 休業(補償)給付
③ 傷病(補償)年金
④ 障害(補償)給付
⑤ 介護(補償)給付
⑥ 遺族(補償)給付
⑦ 葬祭料(葬祭給付)
⑧ 二次健康診断等給付

手当4|出産手当金

産前産後休業をする労働者は、健康保険の出産手当金を受給できます。

出産手当金が支給されるのは、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内のうち、会社を休んで給与の支払いがなかった期間で、支給金額は給与額の約3分の2です。

手当5|育児休業給付金

育児休業をする労働者が雇用保険の被保険者である場合は、育児休業給付金を受給できます。

育児休業給付金の支給額は、育児休業開始から180日目までは給与額の約3分の2181日目以降は給与額の約2分の1です。ただし、支給額には上限が設けられています。
支給期間は原則として子どもが1歳に達するまでですが、保育所に入れないなどの事情がある場合には、子どもが2歳に達するまで受給を延長できます。

手当6|介護休業給付金

2週間以上にわたって常時介護が必要な家族を介護するため、介護休業を取得した労働者は、介護休業給付金を受給できます。

介護休業給付金の支給額は、給与額の約3分の2です。ただし、支給額には上限が設けられています。支給期間は、対象家族1人につき93日までとされています。

休職の手続き

労働者を休職させる場合の手続きの流れは、以下のとおりです。

休職させる場合の手続き

① 労働者からの申出
会社所定の手続きに従い、労働者が休職を申し出ます。なお、労働者の申出がない場合でも、社内規程などに定める要件に該当する場合は、会社の判断で労働者を休職させることができます。

② 休職要件の検討
労働者の申出を受けて、会社が社内規程などに定める休職要件に該当するかどうかを検討します。休職要件に該当しない場合でも、労働者の合意によって休職させることはできます。

③ 会社による休職命令
休職要件に該当する場合、または労働者と合意した場合には、会社が休職命令を発して労働者を休職させます。

労働者を休職させる際の注意点

会社が労働者を休職させる際には、特に以下の3点にご注意ください。

休職させる際の注意点

① 定期的に状況を報告させる
② 復職の判断について
③ 復職できない労働者の取り扱い(解雇権の濫用に要注意)

注意点1|定期的に状況を報告させる

休職中の労働者について、会社は復職を見据えて健康状態その他の状況を確認しなければなりません。また、社会保険料の納付や住民税の特別徴収は休職中も続くため、労働者の所在を把握しておく必要があります。

ヒー

住所と電話番号を把握しているだけではダメですか?

ムートン

休職中は実家などに身を寄せる場合があるので、実際の居所を確認しましょう。

会社としては、休職中の労働者に対して、レポート等で近況を定期的に報告させましょう。

注意点2|復職の判断について

休職中の労働者を復職させるかどうかは、社内規程の定めや労働者との合意内容に照らして判断しなければなりません。

特に精神疾患を理由とする休職の場合は、無理に復職の時期を早めると、再び精神の不調を訴えて休職に戻ってしまう可能性が高いです。復職の判断は、労働者の健康状態などを見極めて慎重に行いましょう

注意点3|復職できない労働者の取り扱い(解雇権の濫用に要注意)

復職の見込みが立たない労働者については、解雇することも考えられます。ただし、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇無効となってしまう点に注意が必要です(解雇権濫用の法理。労働契約法16条)。

休職中の労働者の解雇が認められるかどうかは、以下の要素を総合的に考慮して慎重に判断しましょう。

・休職の期間
・休職の理由となった事態(例:健康状態の悪化など)が解消する見込み
・会社と労働者の間の連絡状況
など

ムートン

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