逆パワハラとは?
事例・放置するリスク・予防策・
発生時の対処法などを分かりやすく解説!

契約ウォッチの2026年度版コンプライアンス概論研修資料です。弁護士監修でそのまま研修に使用できる資料です。無料でダウンロードできます。

資料を無料ダウンロード
✅ ハラスメント研修資料
この記事のまとめ

逆パワハラ」とは、部下上司に対するパワハラ(パワーハラスメント)を意味します。

パワハラの典型例としては、優越的な地位にある上司が、部下に対して不当な言動や取り扱いをすることが挙げられます。逆パワハラはこれと反対に、部下が上司に対して行うものです。
例えば部下が集団行動をする場合や、上司よりも部下の知見が上回っている場合などには、部下の上司に対する優越的な地位が生まれて逆パワハラに繋がることがあります。

逆パワハラを放置すると、職場における秩序の崩壊、上司のメンタル不調、損害賠償などのリスクが発生します。企業としては、逆パワハラの予防策を講じるとともに、万が一逆パワハラが発生したら迅速かつ適切に対処することが大切です。

この記事では逆パワハラについて、具体例・放置するリスク・予防策・発生時の対応などを解説します。

ヒー

隣の部署の人たち、課長に当たりが強いんですよね…。「そんなことも知らないんですか?」「指示の意味が分からないです」「忙しいので他の人に言ってください」など、見ていてハラハラします。

ムートン

それは行き過ぎると逆パワハラに当たるかもしれませんね。部下が上司に対して行う逆パワハラについて、理解を深めましょう。

※この記事は、2026年5月28日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • ・労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

逆パワハラとは

逆パワハラ」とは、部下上司に対するパワハラ(パワーハラスメント)を意味します。典型的な上司から部下に対するパワハラとは逆に、部下が上司に対して行うものであることに着目して「逆パワハラ」と呼ばれています。

逆パワハラ=部下の上司に対するパワハラ

「パワハラ」は上司から部下に対して行われるものというイメージが根強いですが、部下から上司に対してパワハラが行われるケースもあります。

例えば、部下が集団になって上司の言うことを無視したり、嫌がらせをしたりすることはパワハラに当たります。「逆パワハラ」と呼ばれているのは、このような部下の上司に対するパワハラです。

逆パワハラの要件

企業は逆パワハラを含めて、職場におけるパワハラを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じる義務を負っています(労働施策総合推進法30条の2第1項)。

パワハラ防止措置の対象となっているのは、次の要件をいずれも満たす行為です。そのうち、部下が上司に対して行うものを「逆パワハラ」と理解することができます。

① 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であること
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
③ その言動により、労働者の就業環境が害されること

逆パワハラの事例・具体例|裁判例も紹介

部下が上司に対して「優越的」な立場となるケースとしては、例えば次の場合が挙げられます。

・部下の方が上司よりも専門的な知識に優れており、部下の協力を得なければ業務を円滑に遂行できない場合
・部下が複数名で団結しており、上司が部下の行為に対して抵抗や拒絶をすることが困難な場合
など

このような状況において、部下が上司に対して嫌がらせをしたり、理不尽な要求をしたりすることは逆パワハラに当たります。

東京地裁平成21年5月20日判決では、食堂の運営などを行う企業の給食事業料理長としてY社に勤務していた従業員Xが、部下から逆パワハラを受けて自殺した事案が問題となりました。

Xは料理長として食堂の各店舗を巡回し、調理面のチェックや指導、メニューの決定などを行っていました。しかし、食堂の一つに勤務していた従業員Aは、自らの処遇に不満を持ち、Xらが次の不正行為をしている旨などを記載したビラを親会社であるZ社の労働組合に持ち込みました。

・Xが食券を再利用して売上げを着服している
・Xが管理している金庫から1万5000円を盗んだ
・Xが部下の女性職員に対してセクハラをした
・Xの部下が親会社の酒売場倉庫のビールを盗み、Xらが飲んだ
など

Xがしたとされる不正行為については、事実関係が認められなかったため、懲戒処分は行われませんでした。しかしY社は、親会社であるZ社との関係悪化などを背景として、Xを給食事業部からレストラン事業部に配置転換し、当面はY社直営のレストランでの研修を指示しました。
Xはその後、配置転換先の店舗に出勤することなく行方不明となり、自殺してしまいました。

Xの遺族は労災保険給付を請求したものの、労働基準監督署長は不支給決定を行ったため、遺族は東京地裁に訴訟を提起しました。

東京地裁は、Xに対する事情聴取の態様が相当に糾問的であったこと、Y社側の言動によってXがZ社との関係悪化の責任を感じさせられていること、AがXの家族への脅迫を疑わせる行動をしたことなどを指摘しました。
そのうえで、Xの業務と精神障害の発症および自殺との間の因果関係を肯定し、労災保険給付に関する不支給決定を取り消しました。

参考:明るい職場応援団ウェブサイト「【第4回】「部下の嫌がらせ・会社調査とパワハラ」 渋谷労基署長事件」

逆パワハラが発生する理由・起きやすいケース

逆パワハラが発生する背景には、ハラスメント意識の高まりによって上司が部下に対して強く指導しにくくなっている社会的な傾向が影響していると考えられます。管理職のマネジメント経験の不足や、部下側の過度な権利意識などが相まって、逆パワハラに発展してしまうケースがしばしばあります。

職場の構造も、逆パワハラの原因となる場合がある点に注意が必要です。例えば、部下が上司よりも年上である場合、業務に必要な専門的知識を部下だけが持っている場合などには、逆パワハラのリスクがあると考えられます。

また、部下の上司に対する言動もパワハラに当たり得ることは、特に若手従業員の間で正しく理解されていないケースが散見されます。「上司に対しては何を言ってもいい」などの誤った認識が、逆パワハラにつながることもあるので注意が必要です。

逆パワハラを放置した場合のリスク

職場で発生した逆パワハラを放置していると、企業は次のリスクなどを負ってしまいます。

① 職場における秩序の崩壊|モンスター社員の問題行動
② 上司のメンタルヘルス不調|休職や離職に繋がることも
③ 損害賠償責任|安全配慮義務違反・使用者責任

職場における秩序の崩壊|モンスター社員の問題行動

逆パワハラを放置すると、若手を中心とした従業員による暴言や業務命令の拒否、上司への過度な反発などが常態化し、職場全体の秩序が乱れるおそれがあります。

また、部下をコントロールできない上司を周囲も軽視するようになり、企業としての統制がとれなくなってしまい、業務効率やチームワークの悪化につながります。

上司のメンタルヘルス不調|休職や離職に繋がることも

逆パワハラを受けた上司は、自尊心の低下や自信の喪失などにより、精神的に厳しい状況に追い込まれてしまいます。

メンタルヘルス不調が深刻化すると、被害者である上司は休職離職をしてしまうかもしれません。企業としては、経験を積んだ管理職の休職や離職は大きなダメージとなります。

損害賠償責任|安全配慮義務違反・使用者責任

企業が逆パワハラの予防策や対応を怠ると、実際に逆パワハラの被害を受けた従業員に対し、安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

損害賠償請求への対応には労力とコストを要するうえに、最終的には数百万円以上の賠償金を支払うケースも少なくありません。特に中小企業においては、経済的にも人的リソースの観点からもおおきな痛手となってしまいます。

逆パワハラを予防するために企業がとるべき対策

職場における逆パワハラを未然に防ぐため、企業は次の対策などを適切に講じましょう。

① 上司と部下の相互理解の促進
② 逆パワハラ防止の方針の明確化・周知啓発
③ 逆パワハラに関する相談・対応体制の整備

上司と部下の相互理解の促進

逆パワハラを防ぐためには、上司と部下が互いの立場や役割を理解し、円滑にコミュニケーションをとれる環境を整えることが重要です。

例えば、定期的に1on1ミーティング部署内ミーティングを実施し、業務上の悩みや不満を気軽に共有できる場を作ることが考えられます。また、上司には部下に対する適切な指導マネジメント、部下には組織内で求められる協調性報連相(報告・連絡・相談)の重要性などを教育することが、逆パワハラの防止につながります。

逆パワハラ防止の方針の明確化・周知啓発

上司から部下に対するパワハラだけでなく、部下から上司に対する逆パワハラも許さないという姿勢を、企業として明確に示すことも大切です。問題点や違法性を十分に周知することが、逆パワハラの抑止に効果を発揮します。

例えば、就業規則ハラスメント防止規程に逆パワハラの禁止を明記する、従業員研修や社内広報によって具体例を挙げながら逆パワハラの問題点を解説するといった方法が考えられます。

逆パワハラに関する相談・対応体制の整備

逆パワハラを早期に発見・解決するためには、相談窓口や対応フローを整備することが重要です。

相談窓口を設ける際には、従業員が相談しやすい体制を整える必要があります。
匿名相談を受け付ける、相談したことを理由に不利益に取り扱われないことを保障する、相談担当者の習熟度を高めるための研修を行うといった方法を検討しましょう。

実際に逆パワハラが発生したケースに備えて、調査や対応の手順もあらかじめ決めておきましょう。どのような対応が必要になるのかは、次の項目で解説します。

職場で逆パワハラが発生した場合に企業がとるべき対応

職場で逆パワハラが疑われる事案が発生したときは、状況に合わせて次の対応を行ってください。

① 事実関係の確認|被害者・加害者双方からの聞き取りなど
② 被害者に対する配慮
③ 加害者に対する処分
④ 紛争解決援助制度の利用
⑤ 再発防止措置

事実関係の確認|被害者・加害者双方からの聞き取りなど

まずは、逆パワハラの被害者や加害者とされている人、周囲の同僚などに対して聞き取りを行い、事実関係の正確な把握に努めましょう。聞き取りに当たっては、被害者の心情に十分配慮することや、中立・公平な視点から話を聞くようにすることが大切です。

逆パワハラを裏付ける客観的な証拠を確保できれば、その後の対応がしやすくなります。チャットログや業務メールの内容などを調べてみましょう。

被害者に対する配慮

逆パワハラの被害者に対しては、精神的な負担を軽減するためのケアを行うことが重要です。

配置転換や在宅勤務の切り替えなどを行い、加害者から被害者を速やかに引き離しましょう。被害者がメンタルヘルス不調に陥っているときは、産業医やカウンセラーとの連携も大切になります。

加害者に対する処分

逆パワハラの事実が認められる場合は、加害者に対する処分を検討しましょう。

加害者に対する処分の内容としては、上司や人事部などによる注意・指導や、懲戒処分などが挙げられます。
特に懲戒処分を行う際には、加害者の行為の性質や態様などに見合った内容としなければなりません。重すぎる懲戒処分は無効になってしまうので十分ご注意ください(労働契約法15条)。戒告など、比較的軽い懲戒処分から段階的に行うことをお勧めします。

紛争解決援助制度の利用

企業が逆パワハラの被害者から損害賠償を請求されたときは、まず和解交渉によって解決を図りますが、被害者との間で合意が得られないこともあります。

この場合、労働審判や訴訟といった裁判手続きを利用することも考えられますが、労働施策総合推進法に基づく紛争解決援助を利用することも選択肢の一つです。都道府県労働局の職員による助言や、中立の調停委員のサポートにより、早期かつ穏便に逆パワハラのトラブルを解決できる可能性があります。

参考:厚生労働省ウェブサイト「職場でのトラブル解決の援助を求める方へ」

再発防止措置

逆パワハラの再発を防ぐため、経験した事案の教訓を生かして次のような再発防止措置を講じましょう。

・逆パワハラが発生した原因の検証、分析
・上司と部下が相互に理解を深めるための取り組みの強化
・発生した逆パワハラの状況に関する周知、注意喚起
・逆パワハラをした者に対する処分の強化
など

再発防止措置を講じたら、その内容を従業員に対して十分に周知し、逆パワハラの防止に対する意識を高めることが大切です。

資料を無料ダウンロード
✅ ハラスメント研修資料
【2026年度版】コンプライアンス概論研修資料
ムートン

最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

明るい職場応援団ウェブサイト「【第4回】「部下の嫌がらせ・会社調査とパワハラ」 渋谷労基署長事件」

厚生労働省ウェブサイト「職場でのトラブル解決の援助を求める方へ」