リスクアセスメントとは?
やり方・書き方・事例などを厚生労働省の
指針に沿って分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「リスクアセスメント」とは、事業場における危険性や有害性を調査・評価したうえで、そのリスクを低減する措置を決定するまでの一連の手順です。
厚生労働省は「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」などを公表し、リスクアセスメントについて次の事項などを定めています。
・実施内容
・実施体制等
・実施時期
・対象の選定
・情報の入手
など事業者は厚生労働省の指針を参考にリスクアセスメントを行い、その結果に基づいてリスク低減措置を実施することが求められます。
この記事ではリスクアセスメントについて、職場の安全を守るために事業者が留意すべきポイントを解説します。
※この記事は、2026年8月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
リスクアセスメントとは
「リスクアセスメント」とは、事業場における危険性や有害性を調査・評価したうえで、そのリスクを低減する措置を決定するまでの一連の手順のことです。
製造業や建設業などを行う事業者には、リスクアセスメントの実施に努めなければならないものとされています。また、有害性の高い化学物質(ラベル表示・SDS交付等の対象となる物質)を取り扱う事業者には、業種を問わずリスクアセスメントの実施が義務付けられています。
リスクアセスメントの目的
リスクアセスメントの目的は、事業場における危険性や有害性を特定し、その影響を調査したうえでリスク低減措置を講ずることにより、労働者の安全を確保することです。
特に作業の性質や環境の特性上、業務によって労働者の健康が害されたり、労働者が事故に遭ったりするリスクが高い業種の事業主には、リスクアセスメントを実施する努力義務が課されています(労働安全衛生法28条の2第1項、労働安全衛生規則24条の11)。具体的な対象業種は後述します。
また、爆発性・発火性・引火性を有する化学物質などの有害物を取り扱う際には、業種を問わずリスクアセスメントの実施が義務付けられます(労働安全衛生法57条の3)。
リスクアセスメントに関する指針
厚生労働省は、リスクアセスメントに関する下記の指針を公表しています。
① 危険性又は有害性等の調査等に関する指針
一定の業種の事業主に努力義務が課されているリスクアセスメントにつき、基本的な考え方と実施事項が定められています。
https://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-1/hor1-1-56-1-2.html
② 機械の包括的な安全基準に関する指針
機械の設計・製造段階および使用段階において行われるリスクアセスメントにつき、製造業者や機械を労働者に使用させる事業主が実施すべき事項などが定められています。
https://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-48/hor1-48-36-1-4.html
③ 化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針
労働者の危険または健康障害を生ずるおそれのある化学物質や、化学物質を含有する製剤などのリスクアセスメントにつき、基本的な考え方や実施手順、実施上の留意事項などが定められています。https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-14/hor1-14-6-1-0.htm
各事業主には、業種や業務内容に応じた指針を参照し、リスクアセスメントを適切に実施することが求められます。
リスクアセスメントを実施すべきケース
労働安全衛生法では、一定の業種の事業主にリスクアセスメントを実施する努力義務を課すとともに、有害物を取り扱う事業主には業種を問わずリスクアセスメントの実施を義務付けています。
業種に応じたリスクアセスメントの努力義務
次の業種の事業主には、リスクアセスメントを実施する努力義務が課されています(労働安全衛生法28条の2第1項、労働安全衛生規則24条の11)。
- リスクアセスメントの努力義務の対象業種
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(a) 建設業
(b) 林業
(c) 鉱業
(d) 運送業
(e) 清掃業
(f) 製造業(物の加工業を含む)
(g) 電気業
(h) ガス業
(i) 熱供給業
(j) 水道業
(k) 通信業
(l) 各種商品卸売業
(m) 家具・建具・じゅう器等卸売業
(n) 各種商品小売業
(o) 家具・建具・じゅう器小売業
(p) 燃料小売業
(q) 旅館業
(r) ゴルフ場業
(s) 自動車整備業
(t) 機械修理業
上記の業種の事業主がリスクアセスメントを実施すべきなのは、次に掲げる時期です(労働安全衛生規則24条の11第1項)。設備やオペレーションなどを変更する際には、その都度リスクアセスメントを実施することが求められます。
- 一般的なリスクアセスメントの実施時期
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(a) 建設物を設置し、移転し、変更し、または解体するとき。
(b) 設備、原材料等を新規に採用し、または変更するとき。
(c) 作業方法または作業手順を新規に採用し、または変更するとき。
(d) (a)~(c)のほか、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、または作業行動その他業務に起因する危険性または有害性等について変化が生じ、または生ずるおそれがあるとき。
有害物に関するリスクアセスメントの義務
爆発性・発火性・引火性を有する化学物質などの有害物については、業種を問わずリスクアセスメントの実施が義務付けられています(労働安全衛生法57条の3)。
有害な化学物質等に関するリスクアセスメントを行う必要があるのは、次に掲げる時期です(労働安全衛生規則34条の2の7第1項)。リスクアセスメント対象物の取扱いを新規に開始する場合や、取扱方法を変更する場合などには、リスクアセスメントの実施が義務付けられます。
- 有害な化学物質等に関するリスクアセスメントの実施時期
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(a) リスクアセスメント対象物を原材料等として新規に採用し、または変更するとき。
(b) リスクアセスメント対象物を製造し、または取り扱う業務に係る作業の方法または手順を新規に採用し、または変更するとき。
(c) (a)(b)のほか、リスクアセスメント対象物による危険性または有害性等について変化が生じ、または生ずるおそれがあるとき。
リスクアセスメントの実施に当たって整えるべき体制
「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」では、リスクアセスメントを次に掲げる体制で実施することを求めています。
- リスクアセスメント実施の体制
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① 総括安全衛生管理者等、事業の実施を統括管理する者(事業場トップ)に調査等の実施を統括管理させること。
② 事業場の安全管理者、衛生管理者等に調査等の実施を管理させること。
③ 安全衛生委員会等(安全衛生委員会、安全委員会または衛生委員会をいう。)の活用等を通じ、労働者を参画させること。
④ 調査等の実施に当たっては、作業内容を詳しく把握している職長等に危険性または有害性の特定、リスクの見積り、リスク低減措置の検討を行わせるように努めること。
⑤ 機械設備等に係る調査等の実施に当たっては、当該機械設備等に専門的な知識を有する者を参画させるように努めること。
リスクアセスメントを担当する者に対しては、その実施のために必要な教育を実施することが求められます。また、リスクアセスメントの実施に当たって専門的な知識を必要とする場合などには、外部のコンサルタントの助力を得ることも差し支えありません。
有害な化学物質等に関するリスクアセスメントについても、体制整備に関する基本的な考え方は上記と同様です。ただし、化学物質管理者を選任して技術的事項を管理させることが必要とされています。
リスクアセスメントの対象の選定方法
労働者の就業に係る危険性または有害性による負傷・疾病の発生が合理的に予見可能であるものは、リスクアセスメントの対象とすることが求められます。
例えば過去に労働災害が発生した作業や、危険な事象が発生した作業については、リスクアセスメントを実施する必要があります。
ただし例外的に、明らかに軽微な負傷・疾病しかもたらさないと予想されるものは、リスクアセスメントの対象から除外して差し支えないものとされています。例えば、平坦な通路における歩行などについては、リスクアセスメントを実施する必要はありません。
なお、有害な化学物質等に関するリスクアセスメントは、事業場において製造しまたは取り扱うすべてのリスクアセスメント対象物を対象として実施することが義務付けられています。
リスクアセスメントの際に入手すべき情報
リスクアセスメントの実施に当たっては、次の資料等を入手し、その情報を活用することが求められます。
- リスクアセスメント実施時の資料
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① 作業標準、作業手順書等
② 仕様書、安全データシート(SDS)等、使用する機械設備、材料等に係る危険性または有害性に関する情報
③ 機械設備等のレイアウト等、作業の周辺の環境に関する情報
④ 作業環境測定結果等
⑤ 混在作業による危険性等、複数の事業者が同一の場所で作業を実施する状況に関する情報
⑥ 災害事例、災害統計等
⑦ その他、調査等の実施に当たり参考となる資料等
リスクアセスメントの実施手順
一般的なリスクアセスメントは、次の手順で実施します。
- リスクアセスメントの実施手順
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① 危険性または有害性の特定
② リスクの見積もり
③ リスク低減措置の検討・実施
④ 結果の記録
なお、有害な化学物質等に関するリスクアセスメントの実施手順も概ね上記のとおりですが、詳細な説明は割愛します。詳しくは厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」を参照してください。
危険性または有害性の特定
作業を段階ごとに分解し、各段階において危険性と有害性を特定します。
危険性・有害性の特定に当たっては、作業の内容はもちろん、労働者の疲労や単調作業の連続による集中力の欠如、深夜労働による居眠りなどの影響も考慮する必要があります。
リスクの見積もり
危険性・有害性により発生するおそれのある負傷や疾病の重篤度、およびそれらの発生の可能性をそれぞれ考慮してリスクを見積もります。
リスクの見積もりは、次の負傷・疾病の類型ごとに行うものとされています。それぞれ最悪のケースを想定して、労働者の負傷や疾病の対象者と内容を明確に予測しなければなりません。
(a) はさまれ、墜落等の物理的な作用によるもの
(b) 爆発、火災等の化学物質の物理的効果によるもの
(c) 中毒等の化学物質等の有害性によるもの
(d) 振動障害等の物理因子の有害性によるもの
リスク低減措置の検討・実施
法令で定められた事項に加えて、次に掲げる優先順位((a)→(b)→(c)→(d))でリスク低減措置の内容を検討し、実施します。
(a) 危険な作業の廃止・変更等、設計や計画の段階から労働者の就業に係る危険性または有害性を除去または低減する措置
(b) インターロック、局所排気装置等の設置等の工学的対策
(c) マニュアルの整備等の管理的対策
(d) 個人用保護具の使用
リスク低減措置の負担(コスト)が効果と比較して大幅に大きく、措置を講ずることが著しく合理性を欠くケースを除き、可能な限り高い優先順位のリスク低減措置を実施することが求められます。
また、死亡・後遺障害・重篤な疾病をもたらすおそれのあるリスクに対して、適切なリスク低減措置の実施に時間を要するときは、暫定的な措置を直ちに講じなければなりません。
結果の記録
リスクアセスメントに関して、実施年月日と実施者を明記したうえで、次の事項を記録します。作成した記録は、次回のリスクアセスメントの実施まで、最低3年間保管しなければなりません。
(a) 洗い出した作業
(b) 特定した危険性または有害性
(c) 見積もったリスク
(d) 設定したリスク低減措置の優先度
(e) 実施したリスク低減措置の内容(実施後に見込まれるリスクの見積もりも含む)
なお、中央労働災害防止協会安全情報センターのウェブサイトには、リスクアセスメントの記録の記載例が掲載されています。
また、有害な化学物質については、リスクアセスメントの結果等を対象業務に従事する労働者に周知することが義務付けられています。
リスクアセスメントの事例・具体例
厚生労働省が公表している資料では、リスクアセスメントの導入事例として次の2つが紹介されています。
- リスクアセスメントの事例・具体例
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<導入事例1>
事業の急拡大による若年層へのノウハウ継承不足や、新規設備の導入による労働環境の変化を背景に、経営トップが主導してリスクアセスメントを導入しました。
リスクアセスメントの進め方について研修を実施した後、各部門で危険性・有害性を評価し、その結果を踏まえてリスク低減措置を実施しました。その結果、危険を見つける意識やリスク排除への意識が向上し、職場での安全対策に関する対話も活発になりました。<導入事例2>
労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)にリスクアセスメントを組み込み、各階層(係員、工程責任者、係長、課長)の役割を明確にした全員参加型の仕組みを構築しました。また、リスクの見積もりがしやすく、評価者によるばらつきも小さく抑えられるように、リスクの評価基準を詳細に定めました。
その結果、工場全体で841件のリスクを洗い出し、高リスク(レベルⅢ以上)と判断された71件のうち24件をレベルⅡ以下に低減することに成功しました。
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参考文献
中央労働災害防止協会安全情報センターウェブサイト「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」
中央労働災害防止協会安全情報センターウェブサイト「機械の包括的な安全基準に関する指針」
中央労働災害防止協会安全情報センターウェブサイト「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」












