労災保険の休業補償とは?
支給要件や支給期間、金額の計算方法、
申請手続きの流れを分かりやすく解説!
| 無料で資料をダウンロード ✅ 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 > ✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント > |
- この記事のまとめ
-
労災保険の休業補償とは、従業員が業務上の怪我や病気で休業した際に、労災保険から支給される給付です。
・休業(補償)給付は、「業務災害や通勤災害による負傷・疾病で療養が必要」「労働することができない」「賃金を受けていない」という3つの要件を満たす場合に支給されます。
・休業(補償)給付が支給される期間は休業4日目から治癒するまでです。
・休業の必要がなくなった場合や症状固定になった場合は、休業(補償)給付が打ち切られます。本記事では、労災の休業補償について、基本から詳しく解説します。
※この記事は、2025年10月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
労災保険の休業補償とは
労災保険の休業補償とは、従業員が業務災害や通勤災害により休業した際に、労災保険から支給される給付です。休業中も一定の収入が保障されるため、治療に専念できる点がメリットです。
また、年次有給休暇を使わずに欠勤した場合でも、治療費とは別に給付を受け取れます。
休業補償と休業手当の違い
休業補償と休業手当は名称が似ていますが、支給要件や支払元が異なる制度です。
休業補償とは、業務災害や通勤災害など、仕事や通勤が原因で怪我や病気をして働けなくなった場合に、国が労災保険から支給する給付です。休業補償の目的は、労働者災害補償保険法に基づき、被災した労働者の生活を保護することにあります。
一方、休業手当は、経営上の理由など使用者の責に帰すべき事由で労働者を休業させる場合に、会社が支払う賃金の一部(手当)です。例えば、コストカットのために店舗を閉店し、その店員である労働者を休ませるといったケースで支払われます。労働基準法26条に基づき、会社に平均賃金の60%以上を休業手当として支払う義務が課せられています。
また、税金の扱いにも違いがあり、労災の休業(補償)給付は、非課税所得ですが、休業手当は給与として扱われるため、所得税・住民税の課税対象です。
休業(補償)給付の3つの支給要件
休業(補償)給付には、以下の3つの支給要件を満たす必要があります。
- 業務災害や通勤災害による負傷・疾病で療養が必要
- 労働することができない
- 賃金を受けていない
なお、業務災害の場合は「休業補償給付」、通勤災害による場合は、「休業給付」と名称が異なりますが、給付を受けるための3つの要件はどちらも同じです。
以下では、それぞれの要件について詳しく解説します。
業務災害や通勤災害による負傷・疾病で療養が必要
労災の休業(補償)給付を受け取るための一つ目の要件は、怪我や病気の原因が「仕事または通勤にある」と認められ、医師によって「療養が必要」と判断されることです。
業務災害に該当するかどうかは、「労働者が事業主の支配・管理下にあったか(業務遂行性)」と、「その支配下にあることに伴う危険が現実化したといえるか(業務起因性)」によって判断されます。
つまり、業務との因果関係が客観的に認められ、医師が治療の必要性を証明できることが、給付を受けるための基本条件です。
労働することができない
二つ目の要件は、業務上の怪我や病気により労働できない状態であると客観的に認められることです。判断は自己申告ではなく、治療を担当する医師の医学的見解が必要です。最終的には、医師の意見などを基に、所轄の労働基準監督署が労働不能であると認定することで要件が満たされます。
休業補償の申請で提出する請求書(様式第8号または第16号の6)には、「診療担当者の証明」欄があります。該当箇所に通院した病院または診療担当者が必要事項を記載することによって、証明を行います。
賃金を受けていない
三つ目の要件は、療養のために休業した日に「賃金を受けていない」ことです。給付を受けるには、休んだ日が給与計算上「欠勤」として扱われ、無給であることが前提です。
例えば、有給休暇を取得した日は賃金が支払われるため、休業補償の対象外です。また、休業初日から3日間の待期期間を有給休暇で処理した場合も、期間中は労災給付は発生しません。
休業(補償)給付の支給期間は休業4日目から治癒まで
休業(補償)給付は、原則として休業して賃金の支払いを受けられなくなった日の4日目から治癒するまで支給されます。支給開始から1年6カ月が経過しても治癒しない場合は、「傷病の状態等に関する届」の提出が必要です。
届に基づき労働基準監督署が傷病の程度を審査し、その結果、障害の程度が一定の要件を満たすと判断した場合は、給付内容が休業(補償)給付から「傷病(補償)年金」へ切り替わります。
休業初日から3日目までは支給されない
労災による休業が始まっても、すぐに休業(補償)給付が支給されるわけではありません。労働者災害補償保険法では、休業を開始した日から3日間は「待期期間」と定められており、待期期間中は労災保険の給付対象外です。
待期期間の3日間は営業日に限らず、会社の公休日や土日祝日であっても、療養のために働けない状態であれば含まれます。待期期間のカウントは、被災当日の扱いにより異なります。
- 被災当日に早退した場合:その日が休業1日目となる
- 被災当日に終業まで勤務した場合:その日は休業日数に含めず、翌日が休業1日目となる
例えば、金曜日に被災して早退した場合、金・土・日の3日間が待期期間となり、月曜日以降の休業日が支給対象となります。一方、金曜日の終業まで働いた場合は、土・日・月の3日間が待期期間となり、火曜からが支給対象となります。
待期期間中(初日〜3日目)は企業に補償義務がある
休業(補償)給付が支給されない最初の3日間について、所得の補償がどうなるかは災害の種類によって扱いが異なります。
業務災害の場合、労働基準法76条に基づき、会社には休業補償の支払い義務があります。労働基準法上の休業補償額は、原則として平均賃金の60%です。
一方、通勤災害の場合、会社に補償義務はありません。就業規則に特別な定めがない限り、待期期間の3日間は業務災害のような会社からの補償が行われません。そのため、従業員は有給休暇を利用して収入を確保するか、無給で休むかを選ぶ必要があります。
労災の休業補償が打ち切りになるケース
労災による休業(補償)給付の支給が打ち切られる主なケースは、以下のとおりです。
- 休業の必要がなくなった場合
- 症状固定になった場合
休業の必要がなくなった場合
怪我や病気が治癒し、医師が「休業の必要はなく、就労可能」と判断した場合は、休業補償が打ち切りになります。
症状固定になった場合
労災保険における「治癒」とは、完全に回復することだけを指すのではありません。治療を続けても症状が改善されない症状固定になった場合、療養期間は終了したとみなされ、休業補償が打ち切られます。これは、症状が残っていて仕事に復帰できない場合でも同様です。
症状固定と診断された時点で後遺障害が残っている場合、保障がそこで途切れるわけではありません。その場合は、残った障害の程度に応じて「障害(補償)給付」へと手続きを切り替え、年金または一時金として受け取ることが可能です。
したがって、従業員の療養が長期化し、症状固定の診断を受けた場合は、速やかに次の制度への案内が必要になります。
休業(補償)給付の金額の計算方法
休業(補償)給付の計算方法は、「給付基礎日額×80%×休業日数」です。給付基礎日額は、原則として災害が発生した日の直前の賃金締切日から遡った3カ月間に支払われた賃金総額を、その期間の暦日数で割って算出します。80%の内訳は、基本の休業(補償)給付60%と、休業特別支給金20%の合計です。
例えば、月20万円の賃金を受け取り、賃金締切日が毎月月末で事故が10月に発生した場合は、「20万円×3カ月÷92日(7月:31日、8月:31日、9月:30日)=6,521.73円」が給付基礎日額です。
給付基礎日額が6,522円の場合の計算方法は、以下のとおりです。
- 休業(補償)給付:6,522円×60%=3,913.2円→3913円
- 休業特別支給金:6,522円×20%=1,304.4円→1,304円
このとき、計算過程で1円未満の端数が生じた場合は、すべて切り捨てて計算します。つまり、合計「3,913円+1,304円=5,217円」となり、1日あたり5,217円が支給されることとなります。
労災に伴う休業補償の申請手続きの流れ
労災による休業補償は、以下の流れで申請手続きを行います。
- 【企業が対応】労災発生を報告する
- 【企業が対応】労災申請に必要な情報を整える
- 【企業が対応】休業(補償)給付支給請求書(様式第8号または様式第16号の6)を準備する
- 【企業または労働者が対応】労働基準監督署に申請する
- 【労働者が対応】事故や疾病の詳細を記録する
それぞれの手順について解説します。
【企業が対応】労災発生を報告する
労災が発生した際、企業には労働安全衛生法に基づき「労働者死傷病報告」を作成し、所轄の労働基準監督署へ提出する義務があります。これは、労働者が労災によって死亡した場合、または休業した場合に必要となる会社の重要な初期対応の一つです。
【企業が対応】労災申請に必要な情報を整える
労災が発生した際、報告とは別に被災労働者が休業(補償)給付を受けるために、法定義務である「労働者死傷病報告」の作成・提出します。
作成にあたっては、災害の発生日時や状況などの事実を整理し、被災者本人や目撃者から正確な情報を聴取します。あわせて、休業補償の金額算定に必要な直前3カ月分の賃金台帳や出勤簿の準備も必要です。
【企業が対応】休業(補償)給付支給請求書(様式第8号または様式第16号の6)を準備する
次に企業担当者が行うのが、休業(補償)給付の申請書である「休業(補償)給付支給請求書(様式第8号)または休業給付支給請求書(様式第16号の6)」の準備と、会社が証明すべき箇所の記入です。
請求書は、労働者・医師・事業主の三者がそれぞれ記入する形式で、会社の証明がなければ申請は受理されません。
事業主証明欄には、労働保険番号や事業所情報、平均賃金、休業日数、災害発生状況などを、賃金台帳や出勤簿の記録をもとに正確に記載します。
【企業または労働者が対応】労働基準監督署に申請する
労働者本人・医師・事業主の証明がそろった「休業(補償)給付支給請求書(様式第8号または第16号の6)」は、会社所在地を管轄する労働基準監督署へ提出します。
申請は原則として被災した労働者が行いますが、実務上は企業の労務担当者が委任を受けて代行することも少なくありません。提出後、労働基準監督署で審査が行われ、支給が決定すると、本人名義の金融機関口座に給付金が振り込まれます。
【労働者が対応】事故や疾病の詳細を記録する
企業が手続きを進める場合でも、被災した労働者本人が事故の状況や治療の経過を記録しておくことが重要です。時間の経過とともに記憶は薄れるため、労働基準監督署の調査や申請内容の確認時に、正確な情報が求められる場面があるためです。
特に、発生日時・場所・作業内容・目撃者の有無などの事故詳細や、初診日・通院先・診断内容・会社への報告内容を時系列でメモしておくことが重要です。
労災の休業補償に関するよくある質問
労災の休業補償に関するよくある質問をまとめました。以下では、各質問に答えていきます。
- 労災の休業補償の会社負担分はある?
- 労災の休業補償の会社負担分は課税対象ですか?
- パートやアルバイトは休業補償の対象ですか?
Q. 労災の休業補償の会社負担分はある?
会社が休業補償を負担するのは、仕事が原因の業務災害による休業のうち、最初の3日間に限られます。労働基準法では、この期間に会社が平均賃金の60%を支払うことが義務付けられています。これは、事業主の管理下で発生した災害に対する責任を果たすための措置です。
一方、通勤途中の事故による通勤災害は、事業主の管理下で起きたものではないため、待期期間中の補償義務はありません。
Q. 労災の休業補償の会社負担分は課税対象ですか?
労災による休業中に会社が従業員へ支払う金額が課税対象になるかは、その支払いが労働基準法に基づく「補償」なのか、会社独自の「任意の上乗せ給付」かにより異なります。
まず、非課税となるのは、業務災害の休業開始から3日間の待期期間中に、労働基準法76条に基づき支払う「休業補償」(平均賃金の60%)です。この支払いは、給与ではなく損害を補填する性質を持つ「補償金」のため、所得税や住民税は課税されません。
一方、会社の就業規則に基づいて任意で支払われる「上乗せ給付」も、労働基準法上の給付では補填されない部分に対する民法上の損害賠償に相当するものとして、原則非課税所得となります。
Q. パートやアルバイトは休業補償の対象ですか?
雇用形態を問わず、全ての労働者が休業補償の対象です。パートタイマーやアルバイト、派遣社員、日雇い労働者であっても、仕事中や通勤中のケガや病気で休業補償の要件を満たせば、正社員と同じように補償を受けられます。
| 無料で資料をダウンロード ✅ 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 > ✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント > |
参考文献
厚生労働省「労災保険 休業補償等給付 傷病補償等年金の請求手続」
監修者












