始末書とは?
書き方・ひな形(フォーマット)・
顛末書や反省文との違い・
提出させる際の注意点などを解説!
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- この記事のまとめ
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「始末書」とは、社内で不祥事やトラブルを起こした従業員に提出させる書面です。問題を発生させたことについて反省の意を示し、再発防止を誓約させるために始末書を提出させることがあります。
従業員に始末書を提出させるケースには、
・業務命令による場合
・懲戒処分による場合
の2種類があります。業務命令によって始末書を提出させる場合は、その必要性と合理性があるかをあらかじめ確認すべきです。不必要または不合理なかたちで始末書を提出させると、パワハラの責任を問われるおそれがあります。
懲戒処分の一環として始末書を提出させる場合は、懲戒処分の要件を満たしているかを確認しなければなりません。
この記事では始末書について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年12月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
始末書とは
「始末書」とは、社内で不祥事やトラブルを起こした従業員に提出させる書面です。
始末書を提出させる目的
始末書の目的は、不祥事やトラブルを起こした従業員に反省を促し、再発防止を誓約させることです。
始末書を自ら作成することで、従業員は不祥事やトラブルの経緯、および自分の責任などを改めて見つめ直すことができます。
また、始末書を作成することについて精神的な苦痛を感じた従業員は、二度と同じような問題を起こさないようにしようと決意するでしょう。従業員の意識改革によって再発防止を促すことも、始末書の提出によって期待される効果の一つです。
始末書を提出させるべきケースの例
始末書を提出させるべきなのは、従業員に責任がある不祥事やトラブルについて、その従業員に反省や再発防止を促したい場合です。
例えば以下のようなケースでは、従業員に始末書を提出させるのがよいと考えられます。
・従業員が遅刻を繰り返した場合
・従業員が貸与物や備品を紛失した場合
・従業員が交通事故を起こした場合
など
なお、会社全体として対応すべき重要なトラブルや不祥事については、始末書だけでなく「顛末書」(後述)も併せて提出させた方がよいでしょう。始末書を兼ねて顛末書を提出させることも考えられます。
始末書と顛末書・反省文の違い
始末書と同じく、不祥事やトラブルに関与した従業員に提出させる書面として「顛末書」や「反省文」があります。
顛末書とは、社内で発生した問題の経緯・原因・解決策・再発防止策などをまとめた書面です。不祥事やトラブルなどに関する反省を社内で共有し、適切な解決や今後の再発防止に役立てることを目的として提出させることがあります。
始末書は従業員の反省を促すことに主眼があるのに対して、顛末書は不祥事やトラブルに関する情報共有・解決・再発防止に主眼がある点が異なります。
反省文は、始末書と実質的に同じです。いずれも不祥事やトラブルに関して、従業員の反省を促すことを目的として提出させることがあります。
始末書の書き方|例文・ひな形(フォーマット)
始末書を作成する際の参考として、以下の場合における始末書の例文を紹介します。
①遅刻に関する始末書
②貸与物や備品を紛失したときの始末書
③交通事故を起こしたときの始末書
例文・ひな形1|遅刻に関する始末書
○○部 ○○部長 殿 始末書 ○年○月○日 この度は○年○月○日に開催された会議に遅刻してしまい、誠に申し訳ございませんでした。 遅刻の原因は、乗車していた鉄道車両の遅延により、当初の想定よりも会社への到着時間が遅れたことにあります。代替的な交通手段を探して会社へ向かいましたが、結果的に○○の開始時刻に30分程度遅刻してしまいました。 私は以前にも同様の理由で○○に遅刻したことがあり、今回が2度目の遅刻となります。再発防止を徹底できていなかったことにつき深く反省し、関係者の皆様には心よりお詫び申し上げます。 今後は同様の遅刻を犯さないように、交通情報を随時確認した上で、スケジュールに余裕をもって行動するよう努めて参ります。誠に申し訳ございませんでした。 |
例文・ひな形2|貸与物や備品を紛失したときの始末書
○○部 ○○部長 殿 始末書 ○年○月○日 この度は会社から貸与を受けていた○○を紛失してしまい、誠に申し訳ございませんでした。 紛失の原因は、自席における○○の管理方法が不適切だった点にあります。○年○月○日に、私は○○を自席の机上に置いたまま数時間にわたって離席した後、席に戻ると○○がなくなっていました。自席の周辺を探し、周囲の同僚にも○○の行方について質問しましたが、見つけることはできませんでした。 ○○が会社からの貸与物であることに鑑みると、自席の机上に置いたまま数時間にわたって離席することは不適切でした。鍵のかかるキャビネットに入れて保管するなど、紛失を防止する措置を講ずべきであったと反省しております。 今後は貸与物を紛失しないように、特に離席時の管理方法について慎重を期すよう、強く留意して参ります。誠に申し訳ございませんでした。 |
例文・ひな形3|交通事故を起こしたときの始末書
○○部 ○○部長 殿 始末書 ○年○月○日 この度は社用車の運転中に交通事故を起こしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。 交通事故の原因は、私の運転中における前方不注意にあります。脇を通行する自転車の動きに気を取られてしまい、前方への注意が疎かになったため、信号待ちの車に気づかず追突してしまいました。 従前ご相談のとおり、被害者の方には個人的に謝罪をいたしました。今後も被害者の方からの叱責を真摯に拝聴し、謝罪と再発防止に努めて参ります。 また、今回の交通事故は社用車によるものだったため、会社にも運行供用者責任および使用者責任を発生させてしまいました。被害者対応に伴うコストや労力、保険等級への悪影響などによってご迷惑をおかけいたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。 今後は社用車の運転機会を限定し、高度の必要がない限り社用車を運転しないようにいたします。どうしても社用車を運転する必要がある場合は、交通安全の徹底に努め、交通事故を二度と発生させないように十分注意いたします。誠に申し訳ございませんでした。 |
始末書の書き方|記載すべき事項・注意点
始末書の一般的な記載事項と、作成時の注意点を解説します。各事項の記載要領については、上記の例文を併せてご参照ください。
始末書に記載すべき事項
始末書には、以下の事項を記載するのが一般的です。
始末書に記載すべき事項|①事実の詳細と謝罪
だれが、いつ、どこで、どのようなトラブルなどを起こしたかといった事実を、具体的に明記する必要があります。
また、ミスなどを起こしてしまったことについての謝罪も併せて記載します。
始末書に記載すべき事項|②ミスなどの原因と、それに対する反省
ミスが起こってしまった原因を分析したうえで記載し、それに対する反省を述べましょう。
始末書に記載すべき事項|③対応の状況
ミスによって発生した損害などについて、これまでどのような対応を行い、今後どのような対応が見込まれるのかについて記載します。
始末書に記載すべき事項|④今後の再発防止に関する決意
ミスなどが発生したことを踏まえて、自分自身の行動を今後どのように改めるのかを具体的に記載し、徹底して再発防止に努めることを述べましょう。
始末書を作成する際の注意点
始末書の目的に鑑みると、ミスなどに関する謝罪や反省を述べることは当然必要ですが、それだけでなく、ミスなどに対する受け止め方を具体的に記載することが大切です。
例えば、
- なぜミスが発生したのかを自分なりに分析して記載する
- 今後の対応および再発防止策を明示する
などが求められます。
起こしてしまったミスと真摯に向き合い、誠実に始末書を作成しましょう。
従業員に始末書を提出させる際の注意点
会社が従業員に対して始末書を提出させるケースには、
- 業務命令による場合
- 懲戒処分による場合
の2パターンがあります。
業務命令によって始末書を提出させる場合は、その必要性と合理性があるかをあらかじめ確認すべきです。
懲戒処分の一環として始末書を提出させる場合は、懲戒処分の要件を満たしているかを確認しなければなりません。
業務命令として提出させる場合|必要性・合理性を確認する
業務命令によって始末書を提出させる場合は、雇用契約に基づく指揮命令権限の行使として、必要性と合理性が認められるかどうかがポイントになります。
不必要または不合理なかたちで始末書を提出させると、パワハラの責任を問われるおそれがあるので注意が必要です。パワハラについては、会社も従業員に対し、安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償責任を負うことがあります。
懲戒処分として提出させる場合|懲戒処分の要件を検討する
始末書は、戒告や譴責などの懲戒処分に伴って提出を指示するケースもあります。
懲戒処分の一環として始末書を提出させる場合は、以下の懲戒処分の要件を全て満たさなければなりません。
①始末書の提出を内容とする懲戒処分が、就業規則において定められていること
②就業規則に定められた懲戒事由のいずれかに該当すること
③懲戒権の濫用(労働契約法15条)に当たらないこと
要件を満たしていないのに懲戒処分を行うと、従業員からその無効を主張されてトラブルになるおそれがあるので要注意です。
始末書を提出した従業員へのその後の対応
始末書を提出した従業員に対しては、その後も継続的に改善指導を行いましょう。改善が見られない場合にはさらなる懲戒処分を検討すべきですが、懲戒処分の要件についてはその都度慎重な検討が求められます。
問題行動が改善されているかどうかをチェックする
始末書を提出させるのは、従業員に問題行動を改善してほしいからです。会社としては、始末書を提出させて終わりではなく、その後も継続的に改善指導を行うべきでしょう。
改善指導に当たっては、外資系企業などで見られる「業務改善計画(Performance Improvement Plan)」が参考になります。上司などと従業員本人が話し合って改善目標を設定し、定期的にその進捗確認をするというものです。
問題行動が見られる従業員については、始末書の提出と併せて業務改善計画の作成・実施を課すと、その後の改善状況を会社側がモニタリングできます。
改善が見られない場合は、さらなる懲戒処分を検討する
始末書を提出させたにもかかわらず、従業員の問題行動に改善が見られない場合は、さらなる懲戒処分を行うことも検討すべきです。
懲戒処分を行う際には、前述の懲戒処分の要件を満たさなければなりません。特に従業員の行為の性質・態様に照らして重すぎる懲戒処分が行われた場合には、懲戒権の濫用について従業員とのトラブルになりやすいので注意が必要です。
従業員の問題行動に改善が見られないとしても、いきなり重い懲戒処分を行うのではなく、軽い懲戒処分から段階的に行うことをおすすめします。例えば、まずは戒告や譴責を行い、それでも改善が見られなければ減給、出勤停止……と引き上げていくのがよいでしょう。
また、単に懲戒処分を行うだけでなく、並行して従業員に対する改善指導を粘り強く続けていくことも大切です。改善指導をやめてしまうと、その後に行う懲戒処分が無効と判断されるリスクが高くなるのでご注意ください。
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