社会保険(健康保険)から国民健康保険への
切り替えに必要な手続きとは?
遅れた場合のリスクも分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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社会保険とは会社に勤める人が加入する健康保険、介護保険、厚生年金保険の総称で、退職するなど非雇用の立場を喪失する場合は脱退することになります。退職する従業員が希望する場合、会社は健康保険から国民健康保険への切り替えに必要な手続きを行います。
・国民健康保険への切り替えに必要な手続きには会社側が行うものと、退職者自身が行うものがあります。
・退職者は、国民健康保険とあわせて、国民年金の手続きも行う必要があります。
・切り替えに必要な手続きが遅れると、その分退職者の手続きも遅れ、病院受診時に負担が増えるなどのリスクがあります。
本記事では、健康保険から国民健康保険への切り替えに必要な手続きについて解説します。
※この記事は、2025 年9月13日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
社会保険と国民健康保険の違い
社会保険とは、賃金を得て働く人の生活保障を目的とした公的保険です。健康保険や介護保険、厚生年金保険が該当します。一方、国民健康保険とは、会社勤めではない人を対象とした公的医療保険です。健康保険や75歳以上が加入する後期高齢者医療保険に加入できない人が加入します。
「社会保険から国民健康保険への切り替え」というのは、厳密には健康保険から国民健康保険へ切り替えることを指します。
両者の主な違いは以下のとおりです。
- 保険料の算定基準
- 扶養の概念
健康保険の保険料は、給与を基に計算され、事業主と労働者自身で折半して負担します。一方、国民健康保険は、前年の所得や世帯の加入人数に応じて保険料が決定し、全額自己負担しなければなりません。
また、扶養の概念もそれぞれの公的保険で異なります。健康保険の被保険者は配偶者や子どもを自身の扶養に入れられます。しかし、国民健康保険には扶養の概念がなく、家族一人ひとりが被保険者となります。
社会保険から国民健康保険へ切り替える際の手続き
健康保険から国民健康保険へ切り替える際は、会社も退職する従業員も手続きが必要です。会社側の手続きと、退職者側の手続きについて解説します。
会社が行う手続き
退職にともなう、健康保険を含む社会保険の除外手続きとして、会社は従業員の退職日の翌日(資格喪失日)から5日以内に、年金事務所など加入する健康保険が指定する提出先へ「被保険者資格喪失届」を提出します。この手続きが、退職者による国民健康保険への切り替え手続きの前提となります。
被保険者資格喪失届の提出後は、退職者が退職後の手続きで使用する「健康保険資格喪失証明書」を交付します交付漏れがあると従業員の今後の生活にかかわるため、忘れずに送付してください。
退職者が行う手続き
会社の手続きと並行して、退職者自身も手続きを行います。主な手続きは以下のとおりです。
- 健康保険証の返却(所持している場合)
- 市区町村窓口での国民健康保険加入手続き
在職中に使用していた健康保険証は、任意継続ではない場合(任意継続の詳細は後述します)は退職日の翌日をもって効力が失われます。そのため、退職者は扶養親族のものも含めて返却する必要があります。回収した保険証は「被保険者資格喪失届」に添付して、加入する健康保険が指定する宛先に提出してください。なお、2024年12月2日から健康保険証の新規発行が終了しており、退職者がすでに保険証を返却済みの場合もあることは留意が必要です。
また、退職者は退職日の翌日から14日以内に、住民票のある市区町村の窓口で、国民健康保険への加入手続きをします。必要書類である「健康保険資格喪失証明書」は、前述のとおり会社が発行・交付します。
この際、年金の切り替え手続きをあわせて行うのが一般的です。退職前に健康保険と年金の手続きをまとめてするよう従業員に伝えておくのが望ましいです。
切り替え手続きに必要なもの
退職者が行う健康保険の切り替え手続きでは、以下の書類が必要です。
- 健康保険資格喪失証明書
- マイナンバーカード・通知カード※
- 基礎年金番号通知書
- 運転免許証やパスポートなどの本人確認書類
※ 通知カードは廃止済だが、住所等の記載事項に変更がない場合に証明書類として利用可能。
健康保険資格喪失証明書については、職場の健康保険を脱退したことが分かるものであれば、そのほかの書類でも手続きできる場合があります。離職票・退職証明書で代用できるか自治体に確認してみるのが望ましいです。
また、マイナンバーカードや通知カードは、加入対象となる人のものが必要です。健康保険の扶養に入っていた家族がいる場合、その家族も国民健康保険に加入するため、全員分のマイナンバー確認書類が必要です。
もし代理人が手続きする場合は、委任状と代理人自身の本人確認書類が必要です。退職する従業員に、切り替え手続きで必要な書類のリストを提供しておくと、退職者がスムーズに手続きを進められます。
退職前に社会保険から国民健康保険への切り替え手続きはできる?
従業員が退職する前に会社の健康保険から国民健康保険への切り替えに必要な手続きをすることはできません。国民健康保険の加入条件は「ほかの公的医療保険に加入していないこと」だからです。健康保険の資格を失ったことを証明する「健康保険資格喪失証明書」も、資格喪失の手続きが済んだ後に発行します。
一方、退職者が切り替える手続きをスムーズに進められるよう、必要書類を確認・用意する、任意継続と国民健子保険への切り替えを案内しておくといった事前準備をしておくことは問題ありません。
社会保険から国民健康保険の切り替え時には年金も変更手続きが必要
会社の健康保険から国民健康保険へ切り替える際は、あわせて年金の変更手続きもする必要があります。雇用主と退職者の手続きについて解説します。
雇用主は被保険者資格喪失届を提出
年金についても、退職日の翌日から5日以内に「被保険者資格喪失届」を年金事務所などの加入する健康保険の運営団体へ提出する必要があります。なお、会社員の社会保険は健康保険も年金も一体で管理されており、資格喪失届も一体の様式です。
この届出をもって、退職者は年金の切り替え手続きができるようになります。
空白期間がある場合は国民年金への切り替えが必要
退職後再就職までに空白期間がある場合には、国民年金への切り替え手続きが必要です。在職中は厚生年金に加入するため、国民年金は「第2号被保険者」として加入しています。しかし、退職すると個人事業主や無職の人が加入する「第1号被保険者」に切り替えなければなりません。
切り替え手続きの期限は、国民健康保険と同様、退職日の翌日から14日以内です。住んでいる市区町村の年金窓口で手続きします。必要な書類は以下のとおりです。
- 国民年金被保険者関係届書(申出書)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- マイナンバーカードまたは本人確認書類と通知カード
健康保険と年金は、セットで切り替えるよう退職する従業員に促してください。
切り替え手続きが遅れた場合のリスク
健康保険から国民健康保険への切り替えに必要な手続きが、退職日の翌日から14日以内にできず期限を過ぎてしまった場合、さまざまなリスクが発生します。それぞれのリスクが引き起こす弊害も含めて、詳しく解説します。
退職者の国民健康保険への加入が遅れる
切り替えに必要な手続きが遅れると、退職者の国民健康保険への加入が遅れてしまいます。
退職日の翌日から14日という期限を過ぎてしまっても、国民健康保険に加入することは可能です。しかし、手続きが遅れた際に病院で受診すると、退職者は医療費を一旦全額自己負担しなければなりません。後日、市区町村窓口で申請すれば、自己負担分を除く7割は払い戻されますが、一時負担する費用は高額です。
また、退職者は遅れた期間分の保険料を遡って支払うことになります。退職者に迷惑がかからないよう、会社は書類提出などを適切に済ませなければなりません。
退職者の国民年金への加入が遅れる
前述のとおり、健康保険と年金の資格喪失は、1つの書類で手続きします。そのため、国民健康保険の加入が遅れれば、国民年金の切り替え手続きも遅れてしまうのです。
国民年金への切り替え手続きが遅れた場合、保険料を支払わないことによる「未納期間」が発生します。この期間があると、保険料を追納しない限り、退職者の年金受給額が減ってしまいます。
この未納期間は、65歳から受け取れる老齢年金だけでなく、病気やケガで障害が残った場合に支給される障害年金の受給額にも影響します。
過誤納の恐れがある
過誤納とは、誤って保険料を納めたり、保険料を多く納め過ぎてしまったりすることを指します。
たとえば、退職者が一時的に国民健康保険に加入し、その後新しい勤務先の健康保険に入ったとします。国民健康保険の脱退手続きが遅れると、新しい勤務先の健康保険と国民健康保険の両方から社会保険料が差し引かれてしまう可能性があります。
この場合、退職者が還付請求をすれば払い過ぎた保険料は戻ってきますが、余計な手間が発生します。
社会保険から国民健康保険に切り替えない場合の選択肢
退職後の健康保険については、国民健康保険への切り替えのほかにも選択肢があります。主な選択肢は以下の2つです。
- 会社の健康保険の任意継続
- 家族の扶養に入る
状況次第では、国民健康保険へ加入するよりも保険料を抑えられるケースがあります。
会社の健康保険の任意継続
会社の健康保険の任意継続とは、退職後に以前の会社の健康保険に最長2年間加入し続けられる制度です。
前年の所得が高かった人や扶養する家族が多い人は、国民健康保険料が高額になる傾向にあります。一方、任意継続保険料は退職時の給与を基に算出されるため、給与金額によっては保険料が少なくなる可能性があります。また、国民健康保険料と異なり扶養の概念もなくならないため、引き続き親族を扶養に入れられます。
しかし、任意継続はこれまでの保険料よりも多い金額(最大で2倍)を納めなければなりません。会社が折半で負担した保険料が上乗せされるためです。また、加入する際は退職日の翌日から20日以内に申請しなければなりません。なお、期限については保険者により異なる場合があるので、所属している保険者に確認してください。
会社は、退職する従業員に対して、それぞれのおおよその保険料について加入する健康保険や自治体に確認するよう促すのが望ましいです。
配偶者の扶養に入る
条件を満たしていれば、配偶者の扶養に入ることが可能です。扶養に入れば、退職者自身の健康保険料は0円になります。扶養に入る場合は、扶養する配偶者が勤務先で手続きします。
ただし、扶養に入るには、年間収入または今後1年間の見込み年収が130万円未満であることが原則です(60歳未満の場合)。また、一般的に雇用保険の基本手当が日額3,612円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は5,000円未満)である必要もあります。
見込み年収の計算で特に注意したいのは、雇用保険の基本手当です。受給した手当は収入とみなされるため、日額要件を満たしていても、退職のタイミングや退職前の給与額、退職金額によっては、見込み年収が130万円以上となる場合があります。
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参考文献
監修者












