男女雇用機会均等法とは?
いつ制定されたか・禁止される性差別・
ハラスメント防止措置などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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男女雇用機会均等法とは、雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保を図ることなどを目的とした法律です。
男女雇用機会均等法では、主に
・性別を理由とする差別の禁止
・セクシュアルハラスメント(セクハラ)およびマタニティハラスメント(マタハラ)防止措置
についてのルールが定められています。事業主は、労働者を性別によって差別せず、かつ各種のハラスメント防止措置を適切に講じなければなりません。
この記事では男女雇用機会均等法について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年8月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 男女雇用機会均等法、法…雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
- 規則…雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則
目次
男女雇用機会均等法とは|いつ施行されたかを含め分かりやすく解説!
男女雇用機会均等法とは、「雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保」を図ることなどを目的とした法律です。
男女雇用機会均等法の目的・基本的理念・制定背景
男女雇用機会均等法の目的・基本的理念
男女雇用機会均等法の目的は、以下の2点です(法1条)。
- 雇用の分野における、男女の均等な機会および待遇の確保を図ること
- 女性労働者の就業に関して、妊娠中・出産後の健康確保措置等を推進すること
労働者が性別により差別されることなく、また女性労働者の母性を尊重しつつ、充実した職業生活を営めるようにすることが、男女雇用機会均等法の基本的理念とされています(法2条1項)。
男女雇用機会均等法が制定された年・背景
男女雇用機会均等法が制定されたのは、1985年のことです(翌1986年に施行)。
1960年代の高度経済成長期以降、労働市場への女性参加が大きく進んだものの、実際には女性を単純・補助的な業務に限定するなど、男性とは異なる取り扱いをする企業が多くみられました。
その一方で、1979年に女性差別撤廃条約が採択されるなど、連合を中心に男女の機会均等を目指す動きが活発化しました。
日本では、1980年に女性差別撤廃条約を批准するに当たり、雇用の分野における男女の均等な機会と待遇を確保するため、国内法の整備を行うことになりました。その一環として制定されたのが男女雇用機会均等法です。
男女雇用機会均等法の改正の沿革(あらまし)
男女雇用機会均等法は、社会の性別役割分担意識が変化していったことに合わせ、施行以来、度々改正が行われてきました。
【主要な男女雇用機会均等法改正の年表】
1986年 | 男女雇用機会均等法施行 ・募集・採用、配置・昇進につき、女性を男性と均等に取り扱う努力義務 ・教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇につき、女性に対する差別的取り扱いの禁止 など |
1999年 | ・募集・採用、配置・昇進につき、女性を男性と均等に取り扱う努力義務が義務に ・事業主に対するセクハラ防止措置の義務化 ・ポジティブ・アクションに対する国の支援 ・母性健康管理措置の義務化 ・行政指導に従わなかった場合の企業名公表制度 など |
2007年 | ・男女双方に対する差別の禁止 ・差別規定の強化、間接差別の禁止の導入 ・妊娠、出産等を理由とした不利益取り扱いを禁止 など |
2017年 | ・妊娠、出産等を理由とした不利益取り扱いを防止するための措置を講じることが義務化 など |
2020年 | ・セクハラ防止対策の強化 など |
男女雇用機会均等法のポイント1|性別を理由とする不合理な差別の禁止
男女雇用機会均等法の1つ目のポイントは、性別を理由とする不合理な差別が禁止されている点です。
不合理な差別には、大きく以下の2種類あります。
- 直接差別
- 間接差別
禁止される差別1|直接差別(性別を理由とする差別)
直接差別とは、性別を直接の理由とした差別をいいます。
募集時・採用時
事業主は、労働者を募集・採用する際、性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならず、性別を直接の理由として差別してはいけません(法5条)。
性別を直接の理由として、均等な機会を与えていない例としては、以下のようなケースが挙げられます。
①募集・採用の対象から男女のいずれかを排除すること ②募集採用に当たっての条件を男女で異なる内容にすること など |
採用後
また、採用後も、以下の事項につき、労働者の性別を理由とする差別的な取り扱いが禁止されています(法6条、規則1条)。
①労働者の配置(業務の配分および権限の付与を含む)、昇進、降格および教育訓練
②以下の福利厚生措置
・住宅資金の貸し付け
・生活資金、教育資金その他労働者の福祉の増進のために行われる資金の貸し付け
・労働者の福祉の増進のために定期的に行われる金銭の給付
・労働者の資産形成のために行われる金銭の給付
・住宅の貸与
③労働者の職種および雇用形態の変更
④退職の勧奨、定年および解雇ならびに労働契約の更新
禁止される差別2|間接差別
間接差別とは、形式的には中立にみえるが、事実上性差別につながり得るような措置をとることをいいます。
具体的には、以下の措置は間接的に性差別につながり得るため、合理的な理由がなければ講じてはならないとされています(法7条、規則2条)。
①労働者の募集・採用について、身長・体重・体力に関する事由を要件とするもの
②労働者の募集・採用、昇進・職種の変更について、住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
③労働者の昇進について、異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの
女性労働者に係る措置に関する特例(アファーマティブ・アクション)について
性別を理由とする差別の禁止に関する規定は、雇用の分野における男女の機会・待遇の均等確保の支障となっている事情を改善するために、女性労働者に関して行う措置を妨げるものではないとされています(法8条)。
①男女雇用機会均等法は、「性別を理由とする不合理な差別を禁止」している(法5~6条)
②ゆえに、例えば、女性のみを採用などの対象としたりする措置は、女性を優遇しているという観点で、法5~6条違反になる可能性がある
③しかし、法8条は、職場に事実上生じている男女間の格差を解消する目的であれば、女性を優遇することは、法5~6条には当たらない、と特例的に認めている
女性を優遇するということは、男性の観点からは、不合理な差別に見えるかもしれません。しかし、女性の社会進出が男性よりも後れている実態があり、この状況を改善するために特別に認められているのです(=アファーマティブ・アクション)。
禁止される差別3|婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱い
婚姻・妊娠・出産等を理由として、事業主が女性労働者を不利益に取り扱うことは、以下のとおり制限されています(法9条)。
①婚姻・妊娠・出産を退職理由として予定する定めの禁止 |
②婚姻を理由とする解雇の禁止 |
③妊娠・出産等を理由とする解雇その他の不利益な取り扱いの禁止 |
④妊娠中または出産後1年を経過しない女性労働者の解雇を原則禁止 |
男女雇用機会均等法のポイント2|ハラスメント対策
男女雇用機会均等法の2つ目のポイントは、
に関する規制です。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは
セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場における性的な言動により、被害者の労働者に対して不利益を与える行為です。
以下の①②をいずれも満たす言動がセクハラに当たります(法11条1項)。
- セクハラの要件
-
①職場において行われる性的な言動であること
②以下のいずれかに該当すること
(a)労働者の対応により、当該労働者が労働条件について不利益を受けること(=対価型セクハラ)
(b)労働者の就業環境を害する言動であること(=環境型セクハラ)
マタニティハラスメント(マタハラ)とは
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、女性労働者が、妊娠・出産・育児に関し、
- 妊娠・出産したこと
- 産前産後休業・育児休業などの制度利用を希望したことや、これらの制度を利用したこと
などを理由として、同僚や上司等から嫌がらせなどを受け、就業環境を害されることです。
以下の①②をいずれも満たす言動がマタハラに当たります(法11条の3第1項)。
- マタハラの要件
-
①職場において行われる、女性労働者に対する以下の事項に関する言動であること
・妊娠
・出産
・健康管理措置の請求、または当該措置を受けたこと
・妊娠を理由とする就業制限
・軽易な業務への転換
・時間外労働の制限
・休日労働の制限
・深夜労働の制限
・産前産後休業の請求、取得
・育児時間の請求、取得
・妊娠または出産に起因する症状により、労務の提供ができず、または労働能率が低下したこと②女性労働者の就業環境を害する言動であること
事業主が講ずべきハラスメント防止措置
事業主には、セクハラおよびマタハラの防止に関して、以下の措置を講じることが求められています。
1|ハラスメント防止方針の明確化・周知・啓発
2|ハラスメントに関する相談・対応体制の整備
3|ハラスメント発生時の迅速・適切な対応
4|その他のハラスメント防止に関する措置・取り組み
事業者が講ずべき措置1|ハラスメント防止方針の明確化・周知・啓発
社内全体でハラスメント防止に取り組むため、職場におけるハラスメントに関する方針を明確化した上で、労働者にその周知・啓発を行うことが求められます。
- ハラスメント防止方針の明確化・周知・啓発に関する措置
-
・ハラスメントの内容と禁止する旨の明確化
・ハラスメントをした者に対する厳正対処の方針や内容を規定
・管理監督者を含む労働者への周知、啓発
など
事業者が講ずべき措置2|ハラスメントに関する相談・対応体制の整備
ハラスメントを早期に発見して適切に対応するため、相談・対応体制の整備が求められます。
- 相談・対応体制の整備に関する措置
-
・相談対応窓口の設置、労働者への周知
・窓口担当者に対する教育(マニュアルの作成等を含む)
など
事業者が講ずべき措置3|ハラスメント発生時の迅速・適切な対応
実際にハラスメントが発生した際には、迅速かつ適切に対応することが求められます。
- 迅速・適切なハラスメント対応に関する措置
-
・事実関係の迅速、正確な把握
・ハラスメント被害者に対する配慮措置の実施
・ハラスメント行為者に対する適切な措置
・ハラスメントに関する方針の再周知・再啓発などの再発防止措置
など
事業者が講ずべき措置4|その他のハラスメント防止に関する措置・取り組み
そのほか、社内におけるハラスメントを防止するため、以下のような措置や取り組みを行うことが求められます。
- その他の措置・取り組み
-
・相談者・行為者などのプライバシー保護
・ハラスメント相談を理由とする、労働者に対する不利益な取り扱いの禁止
・(マタハラについて)原因や背景となる要因を解消するための措置
など
男女雇用機会均等法のポイント3|労働者と事業主との間に紛争が生じた場合の救済措置
男女雇用機会均等法の3つ目のポイントは、労使間(労働者と企業間)の紛争に関する救済措置の規定です。
男女雇用機会均等法に関する労使紛争は自主的な解決が原則とされています(法15条)。しかし、当事者が自力では紛争を解決できない場合に備えて、都道府県労働局長に対する
- 援助請求(法17条1項)
- 調停申し立て(法18条1項)
などが認められています。
男女雇用機会均等法に違反した事業主に対する罰則(行政処分など)
男女雇用機会均等法に違反した事業主は、以下のペナルティを受ける可能性があります。
- 報告要求・助言・指導・勧告
- 勧告に従わない事業者の公表
報告要求・助言・指導・勧告
厚生労働大臣は、男女雇用機会均等法の施行に関して必要があると認めるときは、事業主に対して報告を求め、または助言・指導・勧告をすることができます(法29条)。
報告要求があったにもかかわらず報告をせず、または虚偽の報告をした者は「20万円以下の過料」に処されます(法33条)。
助言・指導・勧告は行政指導に当たるため、法的拘束力はありません。ただし、勧告に従わない場合は公表処分の対象となります。
勧告に従わない事業者の公表
厚生労働大臣から勧告を受けたにもかかわらず、これに従わなかった事業主は、厚生労働大臣によってその旨が公表される可能性があります(法30条)。
厚生労働大臣による公表は、厚生労働省ウェブサイトにて行われます。
女性に関する規定があるその他の法令(労働基準法・女性活躍推進法など)
女性労働者には、男女雇用機会均等法以外にも、主に以下の法律が関係します。企業の人事担当者は、各法律についての理解を深めておきましょう。
①労働基準法
労働条件の最低ラインを定めた法律です。
労働基準法とは?賃金・残業・休憩・休日・有給休暇などのルールを分かりやすく解説!
②育児・介護休業法
※正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
育児休業の取得などに関するルールを定めた法律です。
育児介護休業法とは? 制度概要・改正の沿革・企業がとるべき対応を分かりやすく解説!
③女性活躍推進法
※正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
職業生活における女性の活躍の推進に関して、事業主の行動計画の策定や、行政の支援措置などを定めた法律です。
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