介護保険料の計算方法は?
徴収方法や注意点などを
分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

介護保険制度とは、40歳以上の全ての人が加入する公的な社会保険制度で、介護を社会全体で支える仕組みに変えるため創設されました。介護保険料の計算方法は、給与や賞与によって異なります。

・介護保険制度には、第2号被保険者(40歳~64歳)と第1号被保険者(65歳以上)の2種類があります。
・会社に勤務する第2号被保険者の保険料は、給与や賞与から天引きされ、会社と本人で折半して負担する仕組みです。
・介護保険料の計算には、標準月額報酬介護保険料率が用いられます。

本記事では、介護保険料の計算方法ついて、基本から詳しく解説します。

ヒー

介護保険料の計算方法について知りたいです。

ムートン

介護保険料の計算方法について、給与や賞与の計算方法、徴収方法などを詳しく見ていきましょう。

※この記事は、2025 年8月23日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

介護保険制度とは

介護保険制度とは、40歳以上の全ての人が加入する公的な社会保険制度です。2000年に創設され、それまで家族が担っていた介護を、社会全体で支える仕組みに変えるためにつくられました。

要介護・要支援と認定された人は、訪問介護やデイサービス、施設介護などを原則1〜3割の自己負担で利用でき、残りは保険料や公費で賄われるため経済的負担を抑えられるのが特徴です。

被保険者は年齢によって2号被保険者(40歳〜64歳)と1号被保険者(65歳以上)に区分され、全国共通の制度として運営されています。

人事担当者としては、従業員が40歳や65歳を迎える際に保険料の仕組みが変わる点を把握し、制度の基本を理解しておくことが重要です。

介護保険料の被保険者は2種類

介護保険の被保険者は、第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳~64歳)に分かれます。

第1号被保険者

65歳以上の人は第1号被保険者となり、介護保険料は市区町村が決定します。各自治体が保険料の基準額を定め、本人や世帯の所得段階に応じて算出される仕組みです。

2024〜2026年度(第9期)の全国平均基準額は月額6,225円で、地域によって差があり、同じ所得でも住む場所によって負担額が変わります。

保険料は、原則として年金からの特別徴収(天引き)で納めますが、年金額が一定額未満の場合や年金受給直後は納付書や口座振替による普通徴収となります。

第1号被保険者は、要介護認定または要支援認定を受けることで、原因を問わず介護サービスを利用可能です。

参考:厚生労働省「第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」

第2号被保険者

40歳から64歳の人は第2号被保険者となり、介護保険料は勤務先の健康保険を通じて納めます。

保険料は給与や賞与から天引きされ、会社と本人で折半して負担する仕組みです。徴収は満40歳に達した月(40歳の誕生日の前日が属する月)から始まり、満65歳に達した月(65歳の誕生日の前日が属する月)の前月まで続きます。

第2号被保険者が介護サービスを利用できるのは、要介護認定または要支援認定を受け、かつ加齢に伴って発症する特定疾病(16種類)に罹患している場合です。

【第2号被保険者が対象となる16種類の特定疾病】

  • がん(医師が回復不可能と判断したもの)
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病関連疾患
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

出典:厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」

第1号被保険者と異なり、原因が限定されている点が特徴です。

第2号被保険者の介護保険料の計算方法【会社の健康保険に加入している場合】

第2号被保険者として会社の健康保険に加入している従業員の、介護保険料の計算方法について解説します。

標準報酬月額の確認

介護保険料の計算は標準報酬月額を基準に行います。

標準報酬月額は給与明細や年金定期便、事業所の給与システムで確認できます。

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、従業員の毎月の給与を一定の幅で区切り、等級ごとに整理した金額です。

基本給や手当残業代など労働の対価として支払われる報酬を合算し、その平均額を基に設定されます。

実際の給与額は月ごとに変動するため、標準報酬月額を用いることで保険料計算が安定し、事務処理も簡略化されます。

介護保険料だけでなく、健康保険料や厚生年金保険料の算定基準にも使われる重要な指標です。

定時決定とは

定時決定とは、毎年7月に4〜6月の給与を基に標準報酬月額を見直す仕組みです。この決定により新しい標準報酬月額が確定し、9月から翌年8月まで適用されます。

対象となるのは固定的賃金を含む総支給額で、残業代や各種手当も対象です。

会社はこの期間の給与データを正確に集計し、日本年金機構へ算定基礎届を提出します。届出を怠ると保険料計算に誤差が生じ、従業員の不利益や是正指導につながる可能性があるため、毎年必ず対応すべき重要な手続きです。

随時改定とは

随時改定とは、昇給や降給など固定的賃金が変動し、標準報酬月額が2等級以上変わった場合に行う見直しです。

変動月から3カ月間の給与を平均し、4カ月目から新しい標準報酬月額が適用されます。一時的な残業増のみなどでは対象外ですが、継続的な給与変動がある場合には必ず届け出が必要です。

介護保険料率の確認

介護保険料率は、加入している健康保険によって異なります。

例えば、2025年度の料率は、協会けんぽは全国一律1.59%です。

健康保険組合の料率は各組合が独自に設定しており、一律ではありません。介護保険料率は毎年3月に公表され、4月給与から適用されます。

介護保険料を計算する際には、会社が加入している健康保険の介護保険料率を確認する必要があります。

参考:日本年金機構健康保険組合「令和7年度健康保険料率・介護保険料率に関するお知らせ」

給与にかかる介護保険料の計算

給与からの介護保険料は「標準報酬月額×介護保険料率」で計算します。

例えば、協会けんぽで標準月額報酬30万円の場合の、介護保険料の計算方法は以下のとおりです。

30万円×1.59%=4,770円

端数処理は50銭以下切り捨て、50銭を超える場合は切り上げが原則とされています。

賞与にかかる介護保険料の計算

賞与に対しても介護保険料がかかります。給与と同じ料率が適用されるため、賞与支給時の手取り額に影響する重要なポイントです。

標準賞与額とは

標準賞与額とは、支給された賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額で、介護保険料や健康保険料の賞与分を算出する際の基礎となります。

例えば、賞与が58万7,500円の場合、標準賞与額は58万7,000円となります。

また、年間累計の上限は573万円と定められており、超える部分には保険料がかかりません。高額賞与を受け取る場合でも、極端に大きな保険料負担にならない仕組みになっています。

計算方法

賞与からの介護保険料は、「標準賞与額×介護保険料率」で算出します。

例えば、協会けんぽで標準賞与額60万円の場合の、介護保険料の計算方法は以下のとおりです。

60万円×1.59%=9,540円

なお、標準賞与額の年間上限は573万円です。例えば、年間の累計賞与が600万円で、2回に分けて支給した場合、1回目300万円、2回目273万円として計算します。

算出した総額を労使折半

介護保険料は会社と従業員が折半します。

協会けんぽで標準月額報酬30万円・標準賞与額60万円の場合の、最終的な介護保険料は以下のとおりです。

【給与】
30万円×1.59%÷2=2,385円
【賞与】
60万円×1.59%÷2=4,770円

給与明細には従業員分のみ記載されます。

介護保険料の徴収方法

会社員の第2号被保険者は、毎月の給与や賞与から介護保険料が天引きされ、健康保険料と合わせて徴収されます。保険料の負担は労使折半で、給与明細に記載されるのは従業員負担分のみです。

満40歳に達した月(40歳の誕生日の前日が属する月)から徴収が始まり、満65歳に達した月(65歳の誕生日の前日が属する月)の前月まで続きます。

給与計算の仕組みに自動的に組み込まれているため、従業員は給与明細の「介護保険料」欄で控除額を確認できます。

介護保険料の計算に関するケース別の取り扱い

介護保険料は原則どおり計算されますが、年齢到達や資格取得・喪失時、給与変動などのタイミングでは特別な扱いが必要です。担当者はケースごとのルールを理解しておくことが重要です。

年齢到達月の取り扱い(40歳・65歳になるとき)

介護保険は、年齢到達月を基準に自動的に資格区分が変わります。

40歳になると、誕生日の前日が属する月から第2号被保険者となり、介護保険料が徴収されます。例えば、4月20日生まれの場合は、4月分給与から介護保険料が控除される仕組みです。

65歳になると、誕生日の前日の属する月で第2号被保険者資格を喪失し、その月から第1号被保険者に切り替わります。例えば、7月15日生まれの従業員は6月分までが給与天引き対象で、7月分からは市区町村に納付する仕組みへ移行します。

資格取得・喪失時の取り扱い

介護保険の資格を取得した場合は、その月から保険料徴収の対象となります。介護保険の資格を喪失した場合、資格喪失日の属する月の前月分まで保険料が発生します。保険料は月単位で徴収され、日割りは行いません。

例えば、40歳以上の従業員が入社した場合、その月から介護保険料が発生し給与から天引きされます。

月の途中で退職した場合、退職した月分の保険料はかかりません。ただし、月末(例:8月31日)に退職した場合、資格喪失日が翌月の1日となるため、退職した月(8月)分の保険料も徴収する必要がある点に注意が必要です。

随時改定(標準報酬月額の変更)時の取り扱い

昇給や降給で標準報酬月額が2等級以上変動した場合、変動後3カ月の平均給与を基に算出し、4カ月目から新しい介護保険料が適用されます。

例えば、4月に昇給があった場合、7月から新しい保険料に切り替わります。残業代の一時的な増減では随時改定の対象外ですが、継続的な給与変動には必ず対応が必要です。

給与明細と照合し、従業員への説明も含めて適切に手続きを進めることが求められます。

介護保険料の計算に関する注意点

介護保険料は定期的に見直されるため、常に最新情報を確認することと、滞納のリスクを理解しておくことが重要です。

介護保険料率は改定される

第2号被保険者(40歳〜64歳)の介護保険料率は毎年改定され、協会けんぽの場合は年度ごとに見直しがあります。

第1号被保険者(65歳以上)の基準額も3年ごとに改定される仕組みです。

高齢化による介護給付費増加に対応するためで、人事担当者は必ず毎年2月頃に発表される料率を確認し、4月給与から正しく反映する必要があります。更新漏れは誤徴収やトラブルの原因になるため注意が必要です。

介護保険料を滞納した場合のリスク

会社が介護保険料の納付を怠った場合、年金事務所から督促状が送付されます。督促状に記載された期限までに納付がなければ、延滞金(保険料額に一定の割合を乗じて計算)が発生します。

さらに、納付漏れが従業員に知られると「会社は社会保険を正しく処理していない」という不信感が生まれ、信頼の低下にもつながりかねません。最悪の場合、従業員の離職や採用へ悪影響を与える可能性があります。

人事担当者は毎月の納付状況を必ず確認し、期限内の処理を徹底することが重要です。

介護保険料に関するよくある質問

介護保険料は年齢や加入区分によって仕組みが異なるため、従業員からも多くの質問が寄せられます。ここでは特に問い合わせの多い内容を整理しました。

扶養家族の介護保険料はどうなる?

介護保険料は個人単位で発生します。

第2号被保険者(40〜64歳)は原則として「医療保険の被保険者本人」のみが対象であり、扶養家族(被扶養者)には介護保険料はかかりません

ただし、一部の健康保険組合では「特定被保険者制度」を設けており、40歳以上65歳未満の扶養家族(被扶養者)にも介護保険料がかかるケースがあります。加入先によって扱いが異なるため、所属する健康保険組合の規約を確認することが必要です。

65歳以上の家族は第1号被保険者として、市区町村を通じて個別に納付します。

介護保険料は控除の対象になる?

介護保険料は全額が社会保険料控除の対象です。給与天引き分は自動で控除され、年金からの天引きや納付書払い分も控除証明書を使って申告できます。

控除を活用すれば、所得税や住民税の負担軽減につながります。

参考:国税庁「No.1130 社会保険料控除」

産休・育休中の介護保険料はどうなる?

産前産後休業・育児休業中の介護保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同様に事業主・被保険者ともに免除されます。

産前産後休業・育児休業を取得している期間中、介護保険料は免除されます。免除期間は、休業を開始した日の属する月から、休業が終了する日の翌日が属する月の前月までです。復職後は、復職した月から保険料の徴収が再開されるため、事前に従業員へ説明しておくとよいです。

参考:
日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を取得したときの手続き」
日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き」
ムートン

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参考文献

厚生労働省「介護保険制度の概要」

監修

この記事を書いた人
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社会保険労務士
就業規則作成、社会保険手続き、給与計算、記事執筆及び監修