【2026年4月施行】
高年齢者労働災害防止の「努力義務化」と、
企業が取るべき具体的な取り組みとは?
指針・ガイドラインを踏まえて分かりやすく解説!
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2026年4月施行の改正労働安全衛生法により、高年齢労働者の安全確保対策が企業の「努力義務」となりました。
働く高齢者の増加に伴い、転倒や腰痛などの労働災害が多発しており、迅速な職場環境の改善が求められています。
企業は「高年齢者の労働災害防止のための指針」に基づき、安全衛生管理体制の確立や環境改善など5つの措置を講じる必要があります。
設備改修などの費用負担の軽減には、国の「エイジフレンドリー補助金」の計画的な活用が有効です。この記事では、高年齢労働者の安全確保対策の努力義務化と企業の実務対応についてわかりやすく解説します。
※この記事は、2026年4月21日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
2026年4月、労働安全衛生法改正と「努力義務化」の背景
2026年4月1日より、改正労働安全衛生法が施行されました。これにより、企業は、高年齢の従業員が安全に働けるよう、その特性に配慮した作業環境の改善や作業管理その他の必要な措置を講ずることが、労働安全衛生法上の「努力義務」と位置付けられます。
厚生労働省は、これまでも「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン。2026年4月1日廃止)を通じて職場環境の改善を推奨してきました。
今回の改正を受けて、このガイドラインの考え方を踏まえつつ、事業者が講ずべき事項を示した「高年齢者の労働災害防止のための指針」が新たに公表されました。
こうした法整備の背景には、「高齢者の労働災害防止をもっと急がなければ」という国の強い危機感があります。
政府は「2027年までに対策に取り組む事業場を50%以上にする」という目標を掲げています。しかし、現状では取り組みが十分に広がっておらず、対策の加速が求められています。
企業は「まだ先のこと」と後回しにするのではなく、早急かつ具体的な実務対応を進める必要があります。
高齢者が安心して働ける環境づくりは、全ての企業にとって待ったなしの重要なステップです。今のうちからしっかりと準備を進めていきましょう。
なぜ今、対策が必要なのか? 高年齢労働者の労働災害の現状
なぜ今、国を挙げて高年齢労働者の安全確保が急務となっているのでしょうか。 その理由は、急速な高齢化に伴う労働力構成の変化と、労働災害データの実態に明確に表れています。
現在、働く高齢者は増加の一途をたどっており、60歳以上の雇用者数もこの10年で大きく増加しています。この変化に伴い、高齢の従業員が業務中にケガをする割合も年々増え続けています。労働局が公表した最新のデータにおける労働災害の推移を見てみると、休業4日以上の死傷災害のうち、60歳以上の労働者が占める割合は年々上昇を続け、現在では全体の30.0%にまで達しています。つまり、労働現場における死傷災害の「約3人に1人が60歳以上の高年齢労働者」という、決して見過ごせない深刻な状況です。
また、高年齢労働者は、加齢による身体機能(筋力、視力、バランス感覚等)の低下等の要因から、若年層と比較して労働災害の発生率が相対的に高くなる傾向があります。加えて、一度被災すると回復に時間を要し、休業期間が長期化しやすい点も企業の労務管理上、大きな課題となっています。
事故の類型を見ると、高年齢労働者は若年層に比べて「転倒災害」や「墜落・転落災害」の発生率が高く、とりわけ女性においてその傾向が顕著に表れています。事実、労働局のデータでも労働災害の中で最も多いのが「転倒」となっています。何もない平坦な場所でつまずく、わずかな段差で転倒して骨折するといった、日常的な動作やこれまで危険と認識されにくかった環境要因が、重大な労働災害に直結しているのが労働現場のリアルな実態なのです。
高年齢者の労働災害防止のための指針とは|指針で事業者に求められる「5つの措置」
2026年4月の法改正に合わせて、国から新たに「高年齢者の労働災害防止のための指針」が公表されました。
この指針では、企業が具体的に取り組むべき対策として、次の「5つの柱」が示されています。
- 高年齢者の労働災害防止の5つの柱
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・安全衛生管理体制の確立等
・職場環境の改善
・高年齢者の健康や体力の状況把握
・高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応
・安全衛生教育
企業は、これら5つの柱を基本としつつ、自社の職場の実情に応じた対策を、計画的かつ体系的に進めていくことが求められます。
引用元|厚生労働省「「高年齢者の労働災害防止のための指針」について」8頁(基発 0210 第1号。2026年2月10日)














