ケアハラスメント(ケアハラ)とは?
育児介護休業法のルール・事例・リスク・
予防策・対応などを分かりやすく解説!

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- この記事のまとめ
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「ケアハラスメント(ケアハラ)」とは、働きながら家族の介護をする従業員に対して嫌がらせをしたり、介護休業などの制度の利用を妨害したりすることをいいます。
企業は、職場においてケアハラスメントが発生しないように、必要な措置を講じる責務を負っています。ケアハラを放置すると職場環境が悪化し、従業員の休職・離職や損害賠償責任などのリスクを生むため、適切に予防策を講じることが大切です。
万が一ケアハラスメントが発生したら、当事者や関係者へのヒアリングなどを経て、被害者への配慮や加害者の処分、再発防止策などを実践してください。この記事ではケアハラスメント(ケアハラ)について、具体例・リスク・予防策・発生時の対応などを解説します。
※この記事は、2026年5月28日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・育児介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
目次
ケアハラスメント(ケアハラ)とは
「ケアハラスメント(ケアハラ)」とは、働きながら家族の介護をする従業員に対して嫌がらせをしたり、介護休業などの制度の利用を妨害したりすることをいいます。
ケアハラスメントの要件|育児介護休業法のルール
育児介護休業法では事業主に対し、労働者が介護休業の申出をしたこと、または実際に介護休業をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることを禁止しています(同法16条)。
「介護休業」とは、育児介護休業法の規定に基づき、要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業です(同法2条2号)。
「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます(同条3号)。
「対象家族」とは、労働者本人と次のいずれかの続柄にある者をいいます。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母
- 子
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
- 配偶者の父母
上記のとおり、育児介護休業法が禁止しているケアハラスメントは、要介護状態の対象家族を介護する労働者に対するものに限られます。
ただし本記事では、育児介護休業法上の要件を厳密には満たしていないケースも含めて、働きながら家族の介護(看護)をする従業員に対する嫌がらせや不当な取り扱いを幅広く「ケアハラスメント」と捉えることにします。
ケアハラスメントの具体例・事例
ケアハラスメントに当たる言動としては、次の例などが挙げられます。
- ケアハラスメントの例
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・介護休業の取得を申し出た従業員に対し、「周囲に迷惑がかかる」などと言って申出を取り下げるよう説得する。
・介護を理由に時短勤務や在宅勤務を利用している従業員に対し、「楽をしている」「特別扱いだ」などと発言する。
・介護のために早退や欠勤をする従業員に対して嫌味を言う。
・「家族の介護より仕事を優先すべきだ」などと言って、自分の価値観を一方的に押し付ける。
・介護をしていることを理由に、昇進や重要業務の対象から外す。
・家族の介護について相談した従業員に、「施設に入れればいいだろう」などと配慮を欠いた対応をする。
・介護休業を取得したことを理由に、退職を促す。
・介護休業を取得したことを理由に、人事上不当に低い評価をする。
など
ケアハラスメントが発生する理由・原因
ケアハラスメントが発生する主な原因としては、介護休業に関する法制度に対する理解不足が挙げられます。
育児介護休業法では、介護休業の取得が労働者の権利として定められています。要件を満たす労働者が介護休業を取得することは、何ら非難されるべきではありません。しかし、上司や同僚がそのことを十分に理解していないと、「自分たちに負担を押し付けるのか」などという感情が先行してケアハラスメントに発展することがあります。
ケアハラスメントを放置した場合のリスク
職場において発生したケアハラスメントを放置すると、企業は次のリスクを負うことになってしまいます。
① 仕事と介護の両立が困難になる|休職や離職に繋がることも
② 職場全体に不満が広がる|連携・パフォーマンスの悪化
③ 損害賠償責任|安全配慮義務違反・使用者責任
仕事と介護の両立が困難になる|休職や離職に繋がることも
ケアハラスメントが放置されると、介護を担う従業員が強い精神的負担を抱え、仕事との両立が困難になるおそれがあります。
例えば、介護による早退や欠勤について嫌味を言われたり、介護休業の取得をためらわせるような言動を受けたりすると、従業員は孤立感や罪悪感を抱きやすくなります。その結果として心身の不調を来し、休職や離職に追い込まれてしまうケースも少なくありません。企業にとっては貴重な人材の流出により、競争力や成長性の低下につながるおそれがあります。
職場全体に不満が広がる|連携・パフォーマンスの悪化
ケアハラスメントが見過ごされる職場では、従業員の間で不公平感や不信感が広がりやすくなります。また、介護休業や育児休業などの制度を安心して利用できないという空気が生まれ、介護や育児に取り組む従業員の職場における満足度が下がります。
その結果、職場全体に不満や萎縮が広がり、チームワークや業務の効率が悪化して、企業組織全体の生産性の低下につながってしまいます。
損害賠償責任|安全配慮義務違反・使用者責任
ケアハラスメントの防止措置を怠ったことが原因で、従業員がケアハラスメントの被害を受けたときは、企業は安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。
従業員から損害賠償請求を受けると、企業はその対応のために多大な人的リソースやコストを割かなければなりません。また、最終的には数百万円以上の損害賠償責任を負うケースもあり、特に中小規模の企業にとっては大きな痛手となってしまうでしょう。
ケアハラスメントを予防するために企業がとるべき対策
事業主は、職場におけるケアハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じる義務を負っています(育児介護休業法25条1項)。
また、介護休業を取得しようとする従業員が、ケアハラスメントの被害に遭わないようにすることは、使用者である企業の安全配慮義務の一環であると考えられます(労働契約法5条)。
職場におけるケアハラスメントをできる限り予防するため、企業は次の予防策などを適切に講じましょう。
① 介護休業などに関するルール・制度の周知
② ケアハラスメント防止の方針の明確化・周知啓発
③ ケアハラスメントに関する相談・対応体制の整備
介護休業などに関するルール・制度の周知
ケアハラスメントを防ぐためには、介護休業などの介護をサポートする法制度や社内制度について、従業員に十分周知することが重要です。制度の内容や利用条件などの正しい理解を促すことが、ケアハラスメントの抑止につながります。
具体的には、就業規則やハラスメント防止規程などの社内規程を整備したうえで、従業員研修や説明会などを通じて継続的に周知を行うことが求められます。介護休業の取得は従業員の正当な権利であることを明確に伝え、介護と仕事を両立しやすい職場環境を整えましょう。
ケアハラスメント防止の方針の明確化・周知啓発
介護を理由とした嫌がらせや不利益な取り扱いを許容しない姿勢を、企業として明確に示すことも重要です。企業が発信した強い理念やメッセージは、従業員全体に行動規範として浸透し、ケアハラスメントの防止につながります。
例えば、ハラスメント防止規程などにおいて、ケアハラスメントに該当する行為を具体的に示し、禁止事項として位置付けることが効果的です。管理職に対しては、研修などを通じて介護休業の取得希望者に対する配慮やマネジメントの方法を周知しましょう。
ケアハラスメントに関する相談・対応体制の整備
ケアハラスメントを早期に把握して適切に対応するためには、相談窓口や対応フローを整備しておくことが必要不可欠です。
相談窓口の設置に当たっては、ケアハラスメントの被害者が相談しやすい環境を整えることが大切になります。各部署から相談窓口を独立させるとともに、相談担当者に対しては、被害者への配慮を十分に行うことができるように研修を行いましょう。
また、匿名での相談を受け付けると、被害者の相談に対する心理的障壁を緩和することができます。相談したことによって不利益な取り扱いを受けることがない旨も、従業員全体に対して十分に周知しておきましょう。
実際に相談を受けた際の対応についても、あらかじめルール化しておくことが望ましいです。調査担当者や調査手順、被害者に対して行う配慮の内容や加害者に対する処分の基準などを明確化しておきましょう。
ケアハラスメントが発生した場合に企業がとるべき対応
ケアハラスメントが疑われる事案を把握したら、企業は状況に応じて次の対応を行ってください。
① 事実関係の確認|当事者や関係者からの事情聴取など
② 被害者への配慮
③ 加害者に対する処分
④ 紛争解決援助制度の利用
⑤ 再発防止策の検討・実践
事実関係の確認|当事者や関係者からの事情聴取など
まずは事実関係を正確に把握することが先決です。ケアハラスメントの被害者や加害者とされている人、その他の関係者に対して事情聴取を行い、多面的な視点で何が真実なのかを把握しましょう。
ケアハラスメントを裏付ける客観的な資料があれば、その後の対応に役立ちます。チャットログや業務メールなどを調べて、ケアハラスメントに当たる言動が記録されているかどうかを確認しましょう。
被害者への配慮
ケアハラスメントの被害者に対しては、精神的な負担を軽減するための配慮を行うことが大切です。相談窓口の担当者を中心に、被害者に寄り添って対応しましょう。
被害者の心の安定を確保するためには、被害者と加害者を引き離すことが重要になります。配置転換や在宅勤務への切り替えなどを行い、被害者が安心して働ける状況を確保しましょう。
被害者がメンタルヘルス不調を訴えているときは、産業医やカウンセラーと連携してケアを行います。もし被害者が休職を希望しているなら、無理をさせずに休職させて心身の回復をサポートしましょう。
加害者に対する処分
ケアハラスメントが実際に行われていたことが判明したときは、加害者に対する処分を検討します。
処分の内容は、加害者の言動の内容や過去の行動などに見合ったものとしなければなりません。いきなり重すぎる懲戒処分を行うと、懲戒権の濫用として無効になってしまうおそれがあるので注意が必要です(労働契約法15条)。懲戒処分を行うとしても、戒告などの軽いものから段階的に行うことをお勧めします。
紛争解決援助制度の利用
ケアハラスメントの被害者である従業員から損害賠償を請求されたときは、まず和解交渉を行いますが、交渉がまとまらないこともあります。労働審判や訴訟によって解決を目指すことも考えられますが、早期かつ穏便に解決したいなら法令に基づく紛争解決援助制度の利用も選択肢の一つです。
ケアハラスメントについては、育児介護休業法に基づく紛争解決援助の対象となります。具体的には、都道府県労働局の職員から解決に向けた助言を得たり、調停委員に解決案を作成してもらったりすることができます。
再発防止策の検討・実践
ケアハラスメントの再発を防ぐため、自社に合った再発防止策を検討・実践してください。具体的には、次のような再発防止策を講じることが考えられます。
・ケアハラスメントが発生した原因の検証、分析
・介護休業などの制度に関する従業員向けのさらなる周知、啓発
・ケアハラスメントをした者に対する処分の強化
など
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参考文献
厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」












