違約金とは?
損害賠償との違い・金額の決め方・
違約金条項の条文例・注意点などを
分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

違約金」とは、契約内容に違反した当事者が、事前の合意に従って相手方に支払う金銭です。
違約金は、損害賠償額の予定であるケースと、違約罰(=損害賠償に加えて支払うペナルティ)であるケースの2通りがあります。

違約金の額は、損害賠償の見込額を基準として定めるのが一般的ですが、不相当に高額過ぎなければ自由に定めることができます。
ただし、宅地建物取引業法消費者契約法利息制限法などの法令では違約金の上限が定められているほか、違約金を請求できないケースもあるので注意が必要です。

契約書における違約金条項には、主に違約金の発生条件・額(または計算方法)・支払方法などを定めます。当事者間における認識の齟齬を避けるため、これらの事項は明確に記載しましょう。

この記事では違約金について、損害賠償との違い・金額の決め方・違約金条項の条文例・注意点などを解説します。

ヒー

あれ? この契約書、損害賠償条項のほかに違約金条項もあります。どちらかだけでいいですよね?

ムートン

「違約金」は、損害賠償額の予定(≒損害補填)の場合と、違約罰(≒罰金)の場合があります。定め方にも注意が必要ですので、しっかり理解しておきましょう!

※この記事は、2024年6月18日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

違約金とは

違約金」とは、契約内容に違反した当事者が、事前の合意に従って相手方に支払う金銭です。

違約金の目的

違約金の目的は、契約当事者にその義務を適切に履行させることです。
契約違反のペナルティを明確化することで、当事者にはペナルティを避けようとする心理が働き、結果的に契約違反が発生するリスクを抑えられます。

2種類の違約金|損害賠償額の予定と違約罰

違約金の法的性質は、「損害賠償額の予定」であるケースと、「違約罰」であるケースの2通りがあります。

2種類の違約金

① 損害賠償額の予定
契約上の債務不履行が発生した場合に、違反者が相手方に対して支払う損害賠償の額をあらかじめ定めたものです。

② 違約罰
債務不履行を犯した者が、相手方に対して損害賠償に加えて支払うペナルティです。
違約金が違約罰である場合、違約金とは別に損害賠償を請求することができます。

なお、違約金は損害賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。
したがって、契約書において違約罰である旨が明記されていない限り、違約金は損害賠償額の予定として取り扱われる可能性が高いです。

違約金と損害賠償の違い

違約金が損害賠償額の予定である場合、違約金と損害賠償は同じものです。この場合、違反当事者に対して、違約金とは別に損害賠償を請求することはできません。

これに対して、違約金が違約罰である場合は、違約金と損害賠償は異なるものです。この場合、違反当事者に対して、違約金と損害賠償を両方請求することができます。

違約金の額はどのように定めるべきか|相場の考え方

違約金の額は、損害賠償の見込額を基準として定めるのが一般的ですが、不相当に高額過ぎなければ自由に定めることができます
ただし、宅地建物取引業法消費者契約法利息制限法などの法令では、違約金の上限が定められている点に注意が必要です。

損害賠償の見込額を基準に定めるのが一般的

違約金の額は、契約当事者の合意によって自由に定めることができます

違約金が損害賠償額の予定である場合は、損害賠償の見込額を基準として違約金の額を定めるケースが多いです。

違約金を請求する側としては、損害全額の補填を受けるために、想定される損害額以上の違約金を定めるべきでしょう。
これに対して、違約金の請求を受ける側としては、金額をできる限り抑えることが望ましいですが、想定される損害額を下回る金額設定を相手方に受け入れてもらうことは難しいと思われます。
したがって、多くの場合において最終的には、損害賠償の見込額に近い額の違約金が設定されることになるでしょう。

一方、違約金が違約罰である場合には、損害賠償の見込額を基準に違約金の額を定める必然性はありません。当事者による契約違反を効果的に防止し得るように、適切な金額の違約金を定めましょう。

なお、不相当に高額過ぎる違約金を定めると、公序良俗違反によって違約金の定めが無効になるおそれがあるので注意が必要です(民法90条)。

法律による違約金の額の上限

宅地建物取引業法消費者契約法利息制限法などの法令では、債務不履行や契約の解除に関する違約金について、一定の上限が設けられています。

宅地建物取引業者が売主となる宅地・建物の売買|売買代金額の20%まで

宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地・建物の売買契約において、当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う違約金を定めるときは、売買代金額の20%以内としなければなりません(宅地建物取引業法38条1項)。

上記の上限を超える違約金の定めは、売買代金額の20%を超える部分について無効となります(同条2項)。

消費者契約の解除・債務不履行|消費者契約法の上限まで

事業者が消費者と締結する契約(=消費者契約において違約金を定める場合は、違約金の発生事由に応じて、以下の上限を超えないようにしなければなりません。上限を超える部分の違約金の定めは無効となります(消費者契約法9条1項)。

① 消費者契約の解除に伴う違約金の上限
→解除の事由、時期等の区分に応じ、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額

② 消費者契約に基づいて支払うべき金銭を、支払期日までに支払わない場合における違約金の上限
→当該支払期日において支払うべき額のうち、未払いの額に対して年14.6%に相当する額

なお、消費者契約の解除に伴い、事業者が消費者に対して違約金の支払いを請求する場合において、消費者から説明を求められたときは、事業者は違約金の算定根拠の概要を説明するよう努めなければなりません(同条2項)。

金銭消費貸借の債務不履行|利息制限法の上限まで

金銭消費貸借上の債務不履行による違約金は、下表の上限を超えないようにしなければなりません。上限を超える違約金の定めは無効となります(利息制限法4条・7条)。

原則元本に対して以下の割合
(a) 元本の額が10万円未満の場合
→年29.2%
 
(b) 元本の額が10万円以上100万円未満の場合
→年26.28%
 
(c) 元本の額が100万円以上の場合
→年21.9%
営業的金銭消費貸借(=債権者が業として行う金銭を目的とする消費貸借)の場合年20%

違約金を請求できないケース

契約の解除に関して違約金が定められていたとしても、以下のいずれかに該当する場合には、解除された側は相手方に対して違約金を請求できません

① 消費者がクーリングオフをした場合
② 手付解除が行われた場合

消費者がクーリングオフをした場合

クーリングオフとは、契約締結後一定期間に限り、消費者の側から契約を自由に解除できる制度です。消費者が事業者に搾取されやすい類型の契約について、消費者に再考の機会を与えるためにクーリングオフ制度が設けられています。

クーリングオフができる主な取引とクーリングオフ期間は、下表のとおりです。

取引の種類クーリングオフ期間
訪問販売(キャッチセールスを含む)契約締結書面の受領日を含めて8日間
電話勧誘販売契約締結書面の受領日を含めて8日間
特定継続的役務提供
※エステ、語学教育、学習塾等、家庭教師等、パソコン教室等、結婚相談所のサービス提供契約
契約締結書面の受領日を含めて8日間
個別信用購入あっせん契約締結書面の受領日を含めて8日間
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地・建物の売買契約クーリングオフができる旨の告知を受けた日を含めて8日間
※引渡しと代金の支払いが済んでいる場合は、クーリングオフ不可
契約金額が50万円以上のゴルフ会員権契約契約締結書面の受領日を含めて8日間
保険契約クーリングオフに関する事項が記載された書面の受領日と、契約申込日のいずれか遅い日を含めて8日間
投資顧問契約契約締結書面の受領日を含めて10日間
現物まがい商法契約締結書面の受領日を含めて14日間
連鎖販売取引(マルチ商法)契約締結書面の受領日を含めて20日間
業務提供誘引販売取引契約締結書面の受領日を含めて20日間

クーリングオフが行われた場合、事業者は消費者に対して、損害賠償違約金などを請求することはできません。また、消費者が事業者に対して返品等を行うに当たり費用がかかるときは、その費用を事業者が負担しなければなりません。

手付解除が行われた場合

売買契約その他の有償契約では、買い手側が売り手側に対して手付金(てつけきん)を交付することがあります。
この場合、買い手側は手付金を放棄し、売り手側は手付金の倍額を現実に提供すれば、契約を解除することができます(民法557条1項・559条。ただし、相手方が契約の履行に着手した後は、手付解除はできません)。

手付解除が行われた場合は、解除された側は相手方に対して損害賠償や違約金などを請求できません(民法557条2項・545条4項)。

契約書における違約金条項の定め方

契約書における違約金条項について、定めるべき事項と条文例を解説します。

違約金条項に定めるべき事項

契約書における違約金条項には、主に以下の事項を定めましょう。

① 違約金の発生条件
どのような条件が満たされれば違約金が発生するのかを、明確な文言で記載しましょう。
債務不履行全般を発生条件とするケースも、一部の債務不履行のみを発生条件とするケースもあります。

② 違約金の額または計算方法
違約金の額を具体的に定めるか、またはその計算方法を定めましょう。
特に金銭債務の不履行に関する違約金は、不履行の額に応じて計算するのが一般的です。

③ 違約金の支払方法
銀行振込みなど、違約金の支払方法を明記しましょう。

④ 損害賠償額の予定・違約罰のどちらであるか
違約金の性質を明確化するために、損害賠償額の予定または違約罰のどちらであるかを明記しましょう。

違約金条項の条文例

損害賠償額の予定である違約金条項の条文例

① 具体的な金額を定める場合
甲が本契約に違反したときは、乙に対して、違約金として金○○万円を支払う。なお、本条に基づく違約金は、賠償額の予定とする。

② 計算方法を定める場合
甲が乙に対する発注を行った後に、当該発注を取り消す場合は、乙に対して、違約金として当該発注に係る金額の20%に相当する額の金員を支払う。なお、本条に基づく違約金は、賠償額の予定とする。

違約罰である違約金条項の条文例

甲が本契約に違反したときは、乙に対して、違約金として金○○万円を支払う。なお、本条に基づく違約金は違約罰とし、甲が乙に対して、別途損害賠償を請求することを妨げない。

契約に違約金条項を定める場合の注意点

契約において違約金条項を定める場合には、以下の各点に注意しましょう。

① 損害賠償額の予定・違約罰のどちらであるかを明確にする
② 金額や計算方法の妥当性を検討する
③ 発生条件を明確に記載する

損害賠償額の予定・違約罰のどちらであるかを明確にする

違約金が損害賠償額の予定または違約罰のどちらであるかは、違約金とは別途の損害賠償請求が許容されるかどうかを左右します。

債務不履行等が発生した際の解決方法を明確化するため、違約金が損害賠償額の予定または違約罰のどちらであるかを、必ず違約金条項に明記しましょう。

金額や計算方法の妥当性を検討する

違約金の額については、その法的性質を踏まえつつ、当事者による契約違反を効果的に防止し得る水準とすべきです。
特に違約金を損害賠償額の予定とする場合は、想定される損害額を適切に見積もった上で、それを目安として適切に違約金の額を定めましょう。

なお、高額過ぎる違約金の定めは、公序良俗違反によって無効となるリスクがあります。
無効になる可能性が高い違約金条項は、当事者による契約違反を抑止する効果を十分に発揮しません。違約金の額が高ければ高いほど、違反抑止効果が高いとは限らない点に注意が必要です。

発生条件を明確に記載する

違約金の発生条件が不明確だと、実際に債務不履行や契約の解除などが発生した際に、違約金を支払うべきなのか、それとも一般的な損害賠償で処理すべきなのかが分からなくなるおそれがあります。

契約の解釈を巡るトラブルは、泥沼化・長期化しやすい傾向にあります。違約金条項についても、どのようなケースにおいて適用されるのかを明確化して、契約当事者間のトラブルの防止に努めましょう。

ムートン

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