監査役とは?
誰がなれるのか・役割・選任方法などの
基本を分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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監査役とは、取締役の職務執行を監査する機関のことをいいます。
監査役の選任・解任に当たっては、経営陣からの独立性を確保するために、取締役等とは異なる独自のルールが設けられています。
また、監査役の監査機能に実効性をもたせるために、調査・報告・是正等の観点から、監査役にはさまざまな権限が認められています。
この記事では、監査役について、定義・設置すべき会社・選任・終任・役割・権限などを解説します。
※この記事は、2023年9月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
監査役とは
監査役の定義
監査役とは、取締役の職務執行を監査する機関のことをいいます(会社法381条1項)。取締役の職務執行が適法・適正に行われているかを調査し、必要に応じ、報告・是正をしていくことになります。
監査役の設置が必要な会社
取締役会設置会社および会計監査人設置会社では、監査役を設置しなければなりません(会社法327条2項本文・327条3項)。
取締役会設置会社では、株主総会の権限が限定されるため(会社法295条2項参照)、代わりに取締役の職務執行を監査する機関が必要ですし、会計監査人設置会社では、会計監査人の経営陣からの独立性を確保するために、その選任等について監査役の関与が必要ですので(会社法344条・399条1項・2項)、それぞれ、監査役を設置しなければならないこととされています。
もっとも、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社では、監査等委員会や監査委員会が監査業務を行うため、監査役は設置できないこととされています(会社法327条4項)。
また、非公開で会計参与を置く取締役会設置会社では、(会計監査人を設置しない限り)監査役を設置しなくても問題ありません(会社法327条2項ただし書)。
監査役の選任
監査役の資格
以下の者は、監査役になることができません(会社法335条1項・331条1項各号)。
① 法人(1号)
② 会社法等の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わりまたは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者(3号)
③ ②以外の法令の規定に違反して禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたは執行を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中の者は除く)(4号)
なお、公開会社(会社法2条5号)では、監査役を株主のみに制限することはできませんが、非公開会社であれば、監査役を株主のみに制限することも可能です(会社法335条1項・331条2項)。
監査役の兼任制限
監査役は、以下の職務を兼任することができません(会社法335条2項)。
× 会社の取締役、使用人
× 子会社の取締役、使用人、会計参与、執行役
これらの職務を兼務している場合、監査する人と監査される人が同じ人物となってしまい、十分な監査が期待できなくなるためです。
監査役の選任方法
監査役は、株主総会の普通決議により選任されます(会社法329条1項・341条)。
監査役の選任のための普通決議では、①議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上の割合を定めることも可能)を有する株主が出席して、②出席した株主の議決権の過半数(定款で過半数を上回る割合を定めることも可能)により決議を行います。
なお、取締役は、監査役の選任議案を株主総会に提出する場合には、現任監査役(監査役が2人以上いる場合にはその過半数)の同意を得なければなりません(会社法343条1項)。
また、監査役は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすることや監査役の選任議案を株主総会に提出することを請求できるとされています(同条2項)。
加えて、監査役は、株主総会において、監査役の選任について意見を述べることができることともされています(会社法345条4項・1項)。
監査役の任期
監査役の任期は、原則として4年です(選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。会社法336条1項)。
そのため、取締役とは異なり、定款等で任期を短縮することはできません(会社法332条1項・336条1項参照)。
なお、非公開会社では、定款で、監査役の任期を10年まで伸長することが認められています(会社法336条2項)。
監査役の終任
監査役の終任事由
監査役は、以下の事由によって、終任(退任)することとなります。
① 任期満了
② 死亡(会社法330条、民法653条1号)
③ 破産手続開始の決定(会社法330条、民法653条2号)
④ 後見開始の審判(会社法330条、民法653条3号)
⑤ 資格の喪失(会社法335条1項・331条1項)
⑥ 辞任(会社法330条、民法651条1項)
⑦ 解任(会社法339条1項・309条2項7号・343条4項)
監査役の解任方法
監査役は、いつでも株主総会の特別決議によって解任することができます(会社法339条1項・309条2項7号・343条4項)。取締役等の他の役員は、株主総会の普通決議により解任することができますが(339条1項・341条)、監査役については、その独立性を確保するために、解任のために特別決議が必要とされています。
このように監査役はいつでも解任される可能性がありますが、解任された監査役は、解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対して解任によって生じた損害(原則として、残存任期で得られるはずであった報酬相当額)の賠償を請求することができます(会社法339条2項)。
なお、「監査役の選任方法」に記載のとおり、監査役には、監査役の選任議案を株主総会に提出するに当たり、同意権(会社法343条1項)や提案権(同条2項)が認められていますが、監査役の解任の際には、このような権利は与えられていません。
一方、選任の場合と同様、監査役には、株主総会において、監査役の解任について意見を述べる権利が認められています(会社法345条4項・1項・2項)。
監査役と会社の関係
委任関係
監査役と会社とは委任関係に立ちますので(会社法330条)、監査役は会社に対し、善管注意義務(民法644条)を負っています。
監査役の報酬
監査役が会社から受け取る報酬等(会社法361条1項柱書参照)の額については、定款で定めるか、株主総会の普通決議によって定める必要があります(会社法387条1項)。
監査役が2人以上いる場合は、定款や株主総会決議で監査役の報酬等の上限(総額)を定めたうえ、その範囲内で、監査役の協議によって、各監査役の報酬等を定めることができます(会社法387条2項)。なお、監査役は、株主総会において、監査役の報酬等について意見を述べることが認められています(同条3項)。
このように、監査役の報酬等の決定について、定款や株主総会決議、各監査役の協議により決定できるとされているのは、会社の経営陣が監査役の報酬等を決定できるとすると、監査役の経営陣からの独立性を確保することができなくなってしまうからです。
監査役の役割・権限
監査役は、取締役の職務執行を監査することをその役割とする機関ですが、監査役が当該職務を全うできるよう、以下のとおり、監査役には、会社法上、各種の権限が与えられています。
なお、監査役が2人以上いる場合でも、各監査役はそれぞれ独立して以下に掲げる権限を行使することができます。これを監査役の独任制といいます。
監査報告
監査役は、取締役の職務執行を監査した場合、監査報告を作成する必要があります(会社法381条1項後段)。
特に、監査役は、会社が作成する各事業年度に係る計算書類、事業報告やこれらの附属明細書を監査しなければなりません(会社法436条1項・2項)。
この場合における監査報告の内容として、事業報告とその附属明細書については、会社法施行規則129条1項各号が、計算書類とその附属明細書については、会社計算規則122条および127条が、それぞれ定めています。
調査権限
監査役は、いつでも、取締役、会計参与、使用人に対して事業の報告を求めることができ、また、会社の業務・財産の状況の調査をすることができます(会社法381条2項)。
加えて、監査役は、必要があるときは、子会社に対して事業の報告を求めることができ、また、子会社の業務・財産の状況の調査をすることができます(会社法381条3項)。
報告義務
監査役は、取締役が不正の行為をしているときやそのおそれがあるとき、法令・定款に違反する事実や著しく不当な事実があるときは、遅滞なく、その旨を取締役会(取締役)に報告しなければなりません(会社法382条)。
取締役会への出席義務等
監査役は、取締役会に出席しなければならず、必要があるときには意見を述べなければなりません(会社法383条1項本文)。
取締役会では、会社の業務執行の決定という重要な意思決定が行われますし(会社法362条2項1号)、その他にもさまざまな情報のやりとりがされますので、監査役が監査の役割を果たすためには、取締役会に出席することが必要となりますし、場合によっては、取締役会で違法な業務執行の決定がされることも考えられますので、そのようなときは意見陳述をしなければならないこととなります。
また、監査役は、必要があると認めるときは、取締役に対し取締役会の招集を請求することができ、当該請求にもかかわらず一定期間内に取締役会が招集されない場合には、自ら取締役会を招集することができます(会社法383条2項・3項)。
「報告義務」のとおり、監査役は、取締役が不正の行為をしている等の事情がある場合には、当該事実を取締役会に報告する必要がありますので(会社法382条)、取締役会の招集請求権等が認められているといえます。
株主総会に対する報告義務
監査役は、株主総会に提出される議案等を調査しなければならず、また、この場合に、法令・定款違反や不当な事項があるときは、調査結果を株主総会に報告しなければなりません(会社法384条)。
取締役の行為の差止め
監査役は、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をしているときや、そのおそれがある場合で、当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめるよう請求することができます(会社法385条1項)。
なお、差止請求を仮処分によって行うことが考えられますが、この場合、一般の仮処分では、保全命令の発令に当たり担保を立てる(担保金を供託する)ことが求められますが(民事保全法14条1項)、取締役の行為の差止めを仮処分で行う場合には、監査役の権限行使を容易にするために、担保を立てさせないで行うこととされています(会社法385条2項)。
取締役との間の訴えにおける会社の代表等
監査役は、会社と取締役との訴えについて、会社を代表します(会社法386条1項1号)。
費用等の請求
監査役は、職務執行に必要な費用等を会社に請求することができます(会社法388条)。
会計監査限定監査役の特則
非公開会社(監査役会設置会社・会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができますが(会社法389条1項)、この場合、会社法381条~386条の規定(上記「監査報告」~「取締役との間の訴えにおける会社の代表等」)は適用されず(会社法389条7項)、会社法389条2項~6項に従い、会計の範囲に限定された監査を行うことになります。
社外監査役とは
社外監査役の定義
社外監査役とは、会社の監査役であって、次の①~⑤のいずれにも該当する者をいいます(会社法2条16号)。
① 過去10年間会社や子会社の取締役、会計参与、執行役、使用人であったことがないこと(イ)
② 過去10年内のいずれかの時に会社や子会社の監査役であった場合には、監査役への就任の前10年間会社や子会社の取締役、会計参与、執行役、使用人であったことがないこと(ロ)
③ 会社の親会社等や親会社等の取締役、監査役、執行役、使用人でないこと(ハ)
④ 会社の親会社等の子会社等の業務執行取締役等でないこと(ニ)
⑤ 会社の取締役、重要な使用人、親会社等の配偶者や二親等内の親族でないこと(ホ)
社外監査役を設置しなければいけない場合
監査役会設置会社では、監査役が3人以上必要ですが、そのうち半数以上が社外監査役でなければなりません(会社法335条3項)。
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