ステークホルダーとは?
語源・意味・具体例・重要性・
関わり方などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

ステークホルダーとは、企業と利害関係にある者全般を意味します。

具体的には、以下の者が企業のステークホルダーに該当します。
株主・投資家
労働者(従業員)
グループ会社・関連会社
債権者(金融機関)
顧客・取引先
利益団体
地域社会
行政機関
マスメディア など

企業が中長期的かつ安定的に成長するためには、ステークホルダーとの対話と協働が必要不可欠です。

上場企業に適用される「コーポレートガバナンス・コード」では、企業のステークホルダーとの関わり方に関する基本原則が示されています。

この記事ではステークホルダーについて、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

企業の法務部で働く僕もステークホルダーなのでしょうか?

ムートン

企業と利害関係にあればステークホルダーになりますから、もちろんそうですよ。

※この記事は、2023年9月17日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

ステークホルダーとは|語源や意味を分かりやすく解説!

ステークホルダー(stakeholder)とは、企業経営において、直接的・間接的に影響を受けるすべての個人・団体(利害関係者)を意味します。

言い換えると、クライアントや従業員、株主など、企業の事業・プロジェクトの影響を受けるすべての関係者がステークホルダーです。

stake”は「掛金」、”holder”は「保有者」を表すことから、「掛金を保有する人(=投資者)」が語源とされています。しかし現在では、企業と利害関係にある者全般という意味に拡大して捉えられています。

企業経営に関して、伝統的には、企業は株主の利益を最⼤化すべきという考え⽅がなされていました。

しかし、企業には、株主のみならず、労働者や顧客・取引先・地域社会など、さまざまな利害関係者がいます。このような事実を忘れ株主の利益だけを追及してしまうと、例えば、労働者を限界を超えて働かせたり、環境汚染や児童労働を許容したりといった悪影響が社会に生じかねません。

そこで、株主のみならず、ステークホルダー全体の利益の最大化を目指すべきとの考え⽅が広がり始めました。

ムートン

企業はステークホルダーと適切に協働し、安定した中長期的な成長を目指すことが求められます。

ステークホルダーとストックホルダー・シェアホルダーとの違い

ステークホルダーが企業の利害関係者全般を指すのに対して、ストックホルダー(stockholder)」と「シェアホルダー(shareholder)」は、いずれも株主を意味します。

”stock”と”share”には、いずれも「持分」や「株式」という意味があります。

ムートン

株主(=ストックホルダー、シェアホルダー)は、企業にとって最も重要なステークホルダーです。

【ステークホルダーとストックホルダー・シェアホルダーの関係性】

企業のステークホルダーの具体例

企業のステークホルダーに当たるのは、以下の者です。

①株主・投資家
②労働者(従業員)
③グループ会社・関連会社
④債権者(金融機関など)
⑤顧客・取引先
⑥利益団体
⑦地域社会
⑧行政機関
⑨マスメディア
など

具体例1|株主・投資家

株主は会社の実質的所有者であり、最も重要なステークホルダーといえます。会社は株主利益を最大化するため、株主と対話しながら中長期的な成長を目指すべきです。

また、株式以外の方法で会社に投資している人(社債の保有者など)も、会社の重要なステークホルダーといえます。

具体例2|労働者(従業員)

会社で働く労働者(従業員)も、重要度の高いステークホルダーです。

会社が成長を続けていく上では、労働者の貢献が欠かせません。労働者の能力を向上させ、モチベーションと健康を維持し、継続的に会社に貢献してもらうことは、会社の成長に当たって必要不可欠といえます。

会社としては、労働者に対して十分な待遇を与えるとともに、労働時間の管理などを適切に行うことが求められます。

具体例3|グループ会社・関連会社

資本関係を持つグループ会社・関連会社も、会社にとって重要なステークホルダーといえます。

グループに属する会社の業績は、グループ内の他の会社の業績とも連動します。業績の悪いグループ会社があると、自社の業績の足を引っ張る可能性がある点に注意が必要です。

特に親会社には、グループ全体の経営戦略を適切に立案・遂行することが求められます。

具体例4|債権者(金融機関など)

会社にお金を貸している債権者(金融機関など)は、会社の業績について特に高い関心を持っているステークホルダーです。

会社の財務状況が悪化すると、金融機関は債権を回収できなくなるリスクが生じます。そうならないように、金融機関は会社に対して、経営に関するさまざまな注文を付けてくることが多いです。

会社としては、金融機関の要求をうまくコントロールしつつ、適切にリスクをとった経営の舵取りが求められます。

具体例5|顧客・取引先

会社の商品・サービスを購入している顧客や、会社との間で発注・受注を行う関係にある取引先も、重要なステークホルダーです。顧客や取引先からの信用は、会社の業績に直結します。

会社としては、顧客や取引先の満足度を高めるため、商品やサービスの改良などに取り組むことが求められます。

具体例6|利益団体

利益団体」とは、構成員に共通する目標や利益を実現するため、社会や政治に影響を与えようとする団体です。例えば日本には、

  • 日本経済団体連合会(経団連)
  • 日本労働組合総連合会(連合)
  • 日本医師会

などの利益団体があります。

利益団体の構成員である会社にとって、利益団体は間接的なステークホルダーの一つです。会社の規模が大きければ大きいほど、利益団体からの圧力が生じやすくなります。

具体例7|地域社会

会社が商品やサービスを提供する地域社会も、間接的なステークホルダーの一つといえます。

特に近年では「CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)」の考え方が浸透し、地域社会に対する企業の責任がクローズアップされる機会が増えています。

具体例8|行政機関

会社を監督する行政機関も、間接的なステークホルダーの一つです。

労働者を雇用している会社では、共通して厚生労働省や労働基準監督署などがステークホルダーとなります。さらに、銀行や証券会社であれば金融庁、建設会社であれば国土交通省など、事業内容によってステークホルダーとなる行政機関が異なります。

具体例9|マスメディア

マスメディアも、会社にとって間接的なステークホルダーの一つといえます。マスメディアとの関係を良好に保つことは、会社のレピュテーション評判)を向上させる上で非常に重要です。

ステークホルダーの分類|直接的ステークホルダー・間接的ステークホルダー

ステークホルダーは、「直接的ステークホルダー」と「間接的ステークホルダー」の2つに大別されます。

①直接的ステークホルダー
企業活動に直接的な影響を与え、または企業活動の結果によって直接的に影響を受ける人や組織です。
(例)
・株主・投資家
・労働者(従業員)
・グループ会社・関連会社
・債権者(金融機関など)
・顧客・取引先

②間接的ステークホルダー
会社との間で直接的に影響を与え、または影響を受ける関係にはないものの、企業活動について間接的な利害関係を有する人や組織です。
(例)
・利益団体
・地域社会
・行政機関
・マスメディア

企業にとってステークホルダーが重要な理由

企業にとってステークホルダーが重要なのは、ステークホルダーに支えられなければ企業活動の継続が望めないからです。

企業にとって最も重要なステークホルダーである株主は、取締役の選任・解任を含めて、会社に関する重要な事項を決定する権利を持っています。取締役は信頼を失えば株主総会で解任されるので、株主の利益に配慮した経営を行わなければなりません。

また、労働者の貢献は会社の事業を遂行する上で必要不可欠ですし、多くの会社は金融機関から運転資金を借り入れています。顧客や取引先から信頼を得ることは、会社の業績を向上させるためのキーポイントです。

間接的ステークホルダーとの関係性構築も、企業の成長に当たって重要な要素といえます。

利益団体・地域社会・マスメディアから支持されていれば、企業活動は非常にやりやすくなるでしょう。行政機関に対しては、法規制やガイドラインを遵守していることを示し、行政処分等を受けないようにすることが大切です。

ムートン

このように、企業はさまざまなステークホルダーに支えられているため、これらの主体との対話や協働が必要不可欠といえます。

ステークホルダーと良い関係を築くために知っておきたい知識

ステークホルダーと良好な関係性を構築するためには、以下の3つの要素を押さえておくとよいでしょう。

①ステークホルダーマネジメント
②ステークホルダーエンゲージメント
③ステークホルダー分析

知識1|ステークホルダーマネジメントとは

ステークホルダーマネジメント(stakeholder management)」とは、会社やプロジェクトの利害関係者を管理することをいいます。

会社としては、コミュニケーションをとってステークホルダーのニーズを把握し、異なるニーズの間でバランスを取ることが重要です。もしステークホルダーのニーズを実現できない場合は、その理由を丁寧に説明したり、別の形で利益を還元したりするなど、良好な関係性を維持する努力が求められます。

知識2|ステークホルダーエンゲージメントとは

ステークホルダーエンゲージメント(stakeholder engagement)」とは、ステークホルダーのニーズをよく理解した上で、そのニーズに応えることをいいます。

ステークホルダーエンゲージメントは、ステークホルダーマネジメントの中でも重要度が高く、各ステークホルダーとの良好な関係性を維持するために不可欠の要素です。

知識3|ステークホルダー分析とは

ステークホルダー分析」とは、会社にとってのステークホルダーを分析して、事業やプロジェクトを遂行する上で必要な情報を得ることをいいます。

ステークホルダー分析は、適切なステークホルダーマネジメントの前提となるプロセスであり、多角的な視点から行うことが求められます。

コーポレートガバナンス・コードに示されるステークホルダーとの関わり方

上場会社に適用される「コーポレートガバナンス・コード」では、会社とステークホルダーの関わり方について、以下の基本原則および原則が示されています。

  • 株主の権利・平等性の確保(基本原則1)
  • 株主以外のステークホルダーとの適切な協働(基本原則2)
  • 適切な情報開示と透明性の確保(基本原則3)
  • 取締役・監査役等の受託者責任(原則4-5)
  • 株主との対話(基本原則5)

株主の権利・平等性の確保

【基本原則1】
上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。
また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。
少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。

株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」4頁

基本原則1では、上場会社には株主を含む多様なステークホルダーが存在しており、ステークホルダーとの適切な協働を欠いては、その持続的成長を実現することは困難である旨が示されています。

ムートン

この考え方は、コーポレートガバナンス・コード全体に通じるものです。

株主以外のステークホルダーとの適切な協働

【基本原則2】
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。

株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」8頁

基本原則2では、上場会社には株主以外にも重要なステークホルダーが数多く存在し、持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を達成するためには、これらのステークホルダーとの適切な協働が不可欠であることを十分に認識すべきと示されています。

適切な情報開示と透明性の確保

【基本原則3】
上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。
その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」11頁

基本原則3では、上場会社とステークホルダーの間には情報の非対称性があることが示されています。

その前提の下、ステークホルダーと認識を共有してその理解を得るために、適切な情報の開示・提供が有力な手段であり、建設的な対話にも資することが指摘されています。

取締役・監査役等の受託者責任

【原則4-5.取締役・監査役等の受託者責任】
上場会社の取締役・監査役及び経営陣は、それぞれの株主に対する受託者責任を認識し、ステークホルダーとの適切な協働を確保しつつ、会社や株主共同の利益のために行動すべきである。

株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」17頁

取締役会等の責務を示す基本原則4に関して、原則4-5では、取締役・監査役等がステークホルダーと適切に協働し、会社や株主協働の利益のために行動すべきであるという受託者責任が示されています。

株主との対話

【基本原則5】
上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。
経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。

株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」23頁

基本原則5では、株主との建設的な対話の重要性が説かれています。上場会社には、株主を含む多様なステークホルダーの立場を理解し、それを踏まえてバランスの取れた経営を行うことが求められます。

ムートン

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参考文献

内閣官房「新しい資本主義(ステークホルダー論)を巡る識者の議論の整理」

浜田宰/定金史朗編著『Q&A 人権DD』金融財政事情研究会、2023年