景品表示法(景表法)の景品規制とは?
プレゼント配布時に注意すべきポイントを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

景品表示法の景品規制のポイントを解説!!

「ただのおまけ。ただのプレゼント企画。」そう思っていませんか?
その「おまけ」、「プレゼント企画」が、景品表示法に違反する可能性があります。

この記事では、景品表示法の知識がない方にも、基本から分かりやすく景品規制のポイントを解説します。

この記事では、法令名等を次のように記載しています。
・定義告示…不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件
・定義告示運用基準…景品類等の指定の告示の運用基準について
・懸賞制限告示…懸賞による景品類の提供に関する事項の制限
・懸賞運用基準…「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
・総付制限告示…一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限
・総付運用基準…「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について

ヒー

先生、景品表示法というのは、消費者の利益を守るために定められているのですよね?自社の商品を購入してくれたお客さんにおまけを渡したりする場合等、一見すると消費者にとって利益となるような場合も規制対象となるのでしょうか?

ムートン

はい。規制対象となりえます。おまけがもらえるために、消費者が本来不要なものを購入するといったこともありえるように、消費者の意思決定に影響を与えることから規制対象となってきます。

(※この記事は、2021年10月4日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)

景品表示法(景表法)とは?

景品表示法は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限すること等により、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守る法律です。

さっそく詳細をみていきましょう。

景品表示法の目的

景品表示法は、以下のように、消費者が自主的かつ合理的に商品または役務の選択を行える意思決定環境の創出・確保を目的としています。

(目的)
第1条
この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。

不当景品類及び不当表示防止法 e-Gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

そのための手段として、景品表示法は、不当な表示や、過大な景品類の提供による顧客の誘引を禁止しています。

景品表示法の規制

✅不当な表示の禁止(景品表示法4条)
✅過大な景品類の禁止(景品表示法5条)

商品の購入者におまけを付けるというような、 一見消費者の利益となりそうな行為であっても、おまけが付けられることによって、消費者が、本来であれば購入することのない商品を購入する動機が生じ得る等、消費者の自主的かつ合理的な意思決定が阻害される可能性が生じます。

そこで、おまけを付けるというような景品提供行為であっても、消費者に不利益を及ぼしうるため、景品表示法は、規制対象としています。

消費者なら、誰もがより良い商品やサービスを求めます。ところが、実際より良く見せかける表示が行われたり、過大な景品付き販売が行われると、それらにつられて消費者が実際には質の良くない商品やサービスを買ってしまい不利益を被るおそれがあります。

景品表示法は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限することなどにより、消費者のみなさんがより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守ります。

消費者庁「景品表示法とは」

不当な表示とは?優良誤認表示と有利誤認表示について解説

景品表示法では、主に「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の2つが不当な表示として禁止されています。

優良誤認表示・有利誤認表示とは、以下のいずれかに該当する表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのあるものをそれぞれ意味します。

優良誤認表示の類型

✅ 商品やサービスの品質・規格その他の内容が、実際の商品やサービスよりも著しく優良であると示す表示
✅ 商品やサービスの品質・規格その他の内容が、事実に相違して、競合他社の商品やサービスよりも著しく優良であると示す表示

有利誤認表示の類型

✅ 商品やサービスの価格その他の取引条件が、実際の商品やサービスよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
✅ 商品やサービスの価格その他の取引条件が、競合他社の商品やサービスよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

優良誤認表示の具体例

優良誤認表示に該当する広告表現や商品表示としては、以下の例が挙げられます。商品やサービスの品質を不当に良く見せて消費者を誤導するのが、優良誤認表示の問題点です。

優良誤認表示の例

✅ 中古自動車の走行距離を2万キロと表示していたが、実際には10万キロ以上走行しており、メーターが巻き戻されていた。

✅ 国産有名ブランド牛の肉である旨を表示していたが、実際にはそのブランドではない国産牛肉だった。

✅ 医療保険商品について、入院1日目から給付金を支払う旨を表示していたが、実際には入院後に診断が確定するまでは給付金が支払われない仕組みになっていた。

✅ 天然ダイヤを使用した宝飾品であると表示していたが、実際には天然ダイヤではなく人造ダイヤが使用されていた。

✅ 転職マッチングサービスについて、有名上場企業への内定率が業界第1位である旨を表示していたが、「業界第1位」であることの根拠となる比較データなどが一切示されていなかった。

有利誤認表示の具体例

有利誤認表示に該当する広告表現や商品表示としては、以下の例が挙げられます。商品やサービスの価格を不当に安く見せたり、事実に反して契約条件を有利に見せたりして消費者を誤導するのが、有利誤認表示の問題点です。

有利誤認表示の例

✅ 外貨預金の利率を「年5.00%」と表示していたが、金融機関が収受する手数料を差し引くと、実際の受取利息は年2%以下にとどまる契約内容だった。

✅ 基本価格を記載せずに「今なら半額」と表示して商品を販売していたが、実際にはほぼ定価に近い金額での販売だった。

✅ 「月給50万円以上の高待遇」というキャッチフレーズで求人勧誘を行ったが、実際に採用された人の中で、月給50万円以上を受け取れた人はほとんどいなかった。

✅ 「他社商品の2倍」の量が含まれていると表示して商品を販売したが、実際には他社と同程度の内容量しか含まれていなかった。

✅ 初診料と検査診断料の総額1万円程度を支払えば、歯列矯正のサービスを利用できるかのように表示していたが、実際には矯正器具の費用として、100万円程度の費用が追加で必要となる施術内容だった。

景品表示法に違反した場合のリスク

景品表示法に違反した場合、消費者庁により、措置命令や課徴金納付命令がなされるおそれがあります。

また、不当な表示や過大な景品類などは、SNSにて炎上するおそれもあります。

これらにより、企業に対する、また、企業の商品やサービスに対する消費者の信頼を損なう可能性があります。

景品表示法に違反した場合のリスク

✅措置命令がなされたり、課徴金の納付が命じられる。
→不当表示や、過大な景品類の提供をした場合、措置命令がなされて、景品類提供の排除、再発防止策の実施等を命じられる。措置命令がなされると、その旨が公表される。不当表示をした場合、課徴金の納付命令が出される。

✅SNSで炎上等する。
→SNS等でキャンペーン等の問題点が指摘され、企業、企業の商品・サービスへの信頼が低下する(レピュテーションリスク)。また、キャンペーンの中止や、クレーム対応等にコストがかかる。

景品規制とは?

景品表示法は、景品類について、消費者庁の主任大臣たる内閣総理大臣の指定によってその定義を定めることとしています(景品表示法2条3項)。
また、内閣総理大臣が不当な顧客の誘引を防止するため必要と認めるときに、景品類の価額の最高額・総額、種類・提供の方法等の景品類の提供に関する事項を制限し、景品類の提供の禁止を行うことができる旨を定めています(景品表示法4条)。

(景品類の制限及び禁止)
第4条
内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。

不当景品類及び不当表示防止法 e-Gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

商品・サービスの質や価格面での競争は、事業者・消費者双方にとって有益なものであるから、景品類の提供は、その手法そのものが否定されるべきものではありません。

そこで、その額が過大である等、一定の限度を超える場合にのみ規制することとされています。

(商品・サービスの質や価格面での競争は、事業者、消費者の双方にとって有益なものです。しかし、事業者が過大景品を提供することにより消費者が過大景品に惑わされて質の良くないものや割高なものを買わされてしまうことは、消費者にとって不利益になるものです。また、過大景品による競争がエスカレートすると、事業者は商品・サービスそのものでの競争に力を入れなくなり、これがまた消費者の不利益につながっていくという悪循環を生むおそれがあります。

このため、景品表示法では、景品類の最高額、総額等を規制することにより、一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止しています。

消費者庁「景品規制の概要」

景品表示法で定義する「景品類」に該当するとされた場合、「懸賞」の方法によるときには、懸賞景品規制(一般懸賞、共同懸賞)の対象となります。

一方で、「懸賞」の方法によらない場合には、総付景品規制の対象となります。

景品表示法の景品規制

✅一般懸賞による景品類の提供制限
✅共同懸賞による景品類の提供制限
✅総付景品の提供制限

「景品類」とは?

景品表示法で、「景品類」は以下のように定義されています。

(定義)
第2条
1~2 (略)
3 この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。
4 (略)

不当景品類及び不当表示防止法 e-Gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

そして、これを受けて指定された定義告示1項では、「景品類」の意義について以下のように定められています。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第2条の規定により、景品類及び表示を次のように指定する。
1 不当景品類及び不当表示防止法(以下「法」という。)第2条第3項に規定する景品類とは、顧客を誘引するための手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、次に掲げるものをいう。ただし、正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益は、含まない。
(1)物品及び土地、建物その他の工作物
(2)金銭、金券、預金証書、当せん金附証票及び公社債、株券、商品券その他の有価証券
(3)きよう応(映画,演劇,スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)
(4)便益、労務その他の役務
2 (略)

公正取引委員会「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」

したがって、「景品類」に該当するためには、以下の3つの要件すべてに該当することが必要となります。

「景品類」に該当する要件

✅顧客誘引性(「顧客を誘引するための手段として」)
✅取引付随性(「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して」)
✅経済的利益(「物品、金銭その他の経済上の利益」)
※正常な商慣習に照らして値引き、アフターサービス等と認められるものは除きます

そして、公正取引委員会は、上記定義告示1項で定められた景品類の定義をさらに明確化するため、定義告示運用基準を公表しており、景品表示法の移管に伴い、消費者庁においても同運用基準に示された考え方により法の運用が行われています。

以下では、上記の3つの要件を掘り下げます。

顧客誘引性

ヒー

顧客誘引性は、どのような場合に認められるのでしょうか?

ムートン

金品等が、顧客を誘因するための手段として用いられる場合に認められます。定義告示運用基準1(1)によれば、提供者の主観的意図やその企画の名目とは関係なく、客観的に顧客誘引のための手段になっているかどうかによって判断するとされています。

1 「顧客を誘引するための手段として」について
(1) 提供者の主観的意図やその企画の名目のいかんを問わず、客観的に顧客誘引のための手段になっているかどうかによって判断する。したがって、例えば、親ぼく、儀礼、謝恩等のため、自己の供給する商品の容器の回収促進のため又は自己の供給する商品に関する市場調査のアンケート用紙の回収促進のための金品の提供であっても、「顧客を誘引するための手段として」の提供と認められることがある。
(2) 新たな顧客の誘引に限らず、取引の継続又は取引量の増大を誘引するための手段も、「顧客を誘引するための手段」に含まれる

消費者庁「景品類等の指定の告示の運用基準について」

取引付随性

ヒー

では、取引付随性については、どのような場合に認められますか?

ムートン

金品等が、商品の購入者やサービスの利用者に提供される等、取引に付随して提供される場合に認められます。定義告示運用基準では、取引付随性の要件がさらに3つの要件に細分化されています。これらの3つの要件を満たしてはじめて、取引付随性が肯定されることになります。

商品の購入者、サービスの利用者や、店舗への来店者を対象として金品等を提供する場合、「取引に付随して」提供すると解されます。

一方で、商品の購入者、サービスの利用者、来店者等に限定せずに申し込むことができ、抽選で金品等を提供する企画(オープン懸賞)の場合は、「取引に付随して」提供したものとは解されず、景品表示法の「景品類」には該当しないため、景品規制は適用されません。

取引付随性は、定義告示運用基準により3つの要件に細分化されており、「事業者」(定義告示運用基準2)、「自己の供給する商品又は役務の取引」(定義告示運用基準3)、「取引に附随して」(定義告示運用基準4)の3要件を充足して初めて認められます。

取引付随性

✅「事業者」が、
✅「自己の供給する商品又は役務の取引」について、
✅当該「取引に付随して」

とりわけ注意すべきは、「取引に附随して」の判断です。
取引附随性の有無については、当該取引や提供の形態等をみて個別具体的に判断される必要があります

かかる判断は、定義告示運用基準4によると、基本的には以下のように考えられます。

4「取引に附随して」について
(1) 取引を条件として他の経済上の利益を提供する場合は、「取引に附随」する提供に当たる
(2) 取引を条件としない場合であっても、経済上の利益の提供が、次のように取引の相手方を主たる対象として行われるときは、「取引に附随」する提供に当たる(取引に附随しない提供方法を併用していても同様である)
ア  商品の容器包装に経済上の利益を提供する企画の内容を告知している場合(例商品 の容器包装にクイズを出題する等応募の内容を記載している場合)
イ  商品又は役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能又は 容易になる場合(例 商品を購入しなければ解答やそのヒントが分からない場合、商品 のラベルの模様を模写させる等のクイズを新聞広告に出題し、回答者に対して提供する場合)
ウ  小売業者又はサービス業者が、自己の店舗への入店者に対し経済上の利益を提供する場合(他の事業者が行う経済上の利益の提供の企画であっても、自己が当該他の事業者に対して協賛、後援等の特定の協力関係にあって共同して経済上の利益を提供していると認められる場合又は他の事業者をして経済上の利益を提供させていると認められる場合もこれに当たる)
エ  次のような自己と特定の関連がある小売業者又はサービス業者の店舗への入店者に対し提供する場合
① 自己が資本の過半を拠出している小売業者又はサービス業者
② 自己とフランチャイズ契約を締結しているフランチャイジー
③ その小売業者又はサービス業者の店舗への入店者の大部分が、自己の供給する商品又は役務の取引の相手方であると認められる場合(例 元売業者と系列ガソリンスタンド)
(3) 取引の勧誘に際して、相手方に、金品、招待券等を供与するような場合は、「取引に 附随」する提供に当たる
(4)~(7)   (略)

消費者庁「景品類等の指定の告示の運用基準について」

なお、「事業者」、「自己の供給する商品又は役務の取引」の詳細については、定義告示運用基準2、3をご参照ください。

経済的利益

ヒー

経済上の利益については、定義告示1項各号に列挙されていますね!

ムートン

確かに定義告示1項各号にて経済上の利益にあたるものが列挙されていますが、経済上に利益については、ここに列挙されているものに限定されませんよ。

景品類に該当し得る「経済上の利益」については、定義告示1項1号から4号までに列挙されていますが、これらは、通常、経済的対価を支払って取得するものをすべて含む、という趣旨であり、ここに列挙されているものに限定されるわけではありません。

経済的対価を支払うか否かは、提供を受ける者の立場から判断されます。すなわち、提供を受ける者側からみて、通常、経済的対価をを支払って取得すると認められるものは、「経済上の利益」に含まれることになります。

これは、提供を行う側の事業者が、そのための特段の出費を要しないで提供できる物品等であったり、市販されていない物品であっても同様です。

また、商品または役務を通常の価格よりも安く購入できる利益も、経済的利益に含まれます。

5 「物品、金銭その他の経済上の利益」について
(1) 事業者が、そのための特段の出費を要しないで提供できる物品等であっても、又は市販されていない物品等であっても、提供を受ける者の側からみて、通常、経済的対価を支払って取得すると認められるものは、「経済上の利益」に含まれる。ただし、経済的対価を支払って取得すると認められないもの(例 表彰状、表彰盾、表彰バッジ、トロフィー等のように相手方の名誉を表するもの)は、「経済上の利益」に含まれない。
(2) 商品又は役務を通常の価格よりも安く購入できる利益も、「経済上の利益」に含まれる。
(3) 取引の相手方に提供する経済上の利益であっても、仕事の報酬等と認められる金品の提供は、景品類の提供に当たらない(例 企業がその商品の購入者の中から応募したモニターに対して支払うその仕事に相応する報酬)。

消費者庁「景品類等の指定の告示の運用基準について」

景品類に該当しない経済上の利益

ヒー

商品やサービスは、顧客誘引性、取引付随性、経済上の利益の3要件さえ充足すれば、「景品類」に当たるのですか?

ムートン

良い質問ですね。商品やサービスが、「景品類」の3要件を充足した場合であっても、「景品類」には、該当しないとされる場合があります。

定義告示1項ただし書は、形式的に、「景品類」の3要件を満たしたとしても「景品類」に該当しない経済上の利益として、➀「正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益」、➁「正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益」、の2つの類型を掲げています。

「景品類」に該当しない例外

①正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益
②正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益

これは、上記2類型の経済上の利益が、商品又は役務の価格、品質、内容等に極めて密接に関係しており、その性質上取引の本来の内容をなすべきものであることから、景品類に該当しないことを確認的に定めているものです。

詳細につきましては、定義告示運用基準6項ないし8項をご参照ください。

一般懸賞

「懸賞」とは?

ヒー

「懸賞」とは、具体的にどのようなものを指しますか?

ムートン

くじ等の結果で景品類を提供したり、クイズの正誤等、特定の行為の優劣の結果で景品類を提供することをいいますよ。

懸賞とは、例えば、一部の商品に景品類が付いているが、外観上では景品類が付いているか分からないものや、クイズに正解した人にのみ景品類を提供する、といったものが挙げられます。

懸賞制限告示1項において、「懸賞」は、以下のように定義されています。

1 この告示において「懸賞」とは、次に掲げる方法によつて景品類の提供の相手方又は 提供する景品類の価額を定めることをいう。
一 くじその他偶然性を利用して定める方法
二 特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法

消費者庁「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」

これを受けて、懸賞運用基準は、懸賞制限告示1項1号、2号それぞれについて、以下のように例示しています。

1 告示第一項第一号の「くじその他偶然性を利用して定める方法」について これを例示すると、次のとおりである。
(1)抽せん券を用いる方法
(2)レシート、商品の容器包装等を抽せん券として用いる方法
(3)商品のうち、一部のものにのみ景品類を添付し、購入の際には相手方がいずれに添 付されているかを判別できないようにしておく方法
(4)すべての商品に景品類を添付するが、その価額に差等があり、購入の際には相手方 がその価額を判別できないようにしておく方法
(5)いわゆる宝探し、じゃんけん等による方法

2 告示第一項第二号の「特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法」について これを例示すると、次のとおりである。
(1)応募の際一般に明らかでない事項(例 その年の十大ニュース)について予想を募集し、その回答の優劣又は正誤によって定める方法
(2)キャッチフレーズ、写真、商品の改良の工夫等を募集し、その優劣によつて定める 方法 (3)パズル、クイズ等の解答を募集し、その正誤によって定める方法
(4)ボーリング、魚釣り、○○コンテストその他の競技、演技又は遊技等の優劣によって定める方法(ただし、セールスコンテスト、陳列コンテスト等相手方事業者の取引高その他取引の状況に関する優劣によって定める方法は含まれない。)

消費者庁「『懸賞による景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」

懸賞運用基準1は、誰に景品類を与えるか、与える景品類のうちどのようなものを与えるかを「偶然」によって決定する場合を、くじの方法によるもの以外にも広く「懸賞」として扱うことを明らかにしました。

ここでいう「偶然」とは、応募者からみて不確定・不明確であるということであり、景品類の提供者が既に知っていることでも、応募者からみれば、不確定・不明確であるような場合であれば、これに当たります。

懸賞運用基準2は、懸賞運用基準1の「くじその他偶然性を利用して定める方法」と異なり、誰に景品類を与えるか、与える景品類のうちどのようなものを与えるかを偶然性以外の要素も加味して決定する場合を例示しています。

最高額・総額の制限

一般懸賞について、懸賞制限告示によって、懸賞により提供する景品類の最高額及び総額が制限されています。

具体的には、以下のように制限されています。

懸賞による取引価額 景品類限度額
最高額 総額
5,000円未満 取引価額の20倍 懸賞に係る売上予定総額の2%
5,000円以上 10万円

消費者庁「景品規制の概要」

最高額・総額の制限に違反しているか否かを判断する際にまず問題となるのは、景品類の価額と取引の価額の認定方法です。

まず、景品類の価額については、「景品類の価額の算定基準について」において、以下のように、算定の際の考え方が示されています。

1 景品類の価額の算定は、次による。
(1) 景品類と同じものが市販されている場合は、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格による。
(2) 景品類と同じものが市販されていない場合は、景品類を提供する者がそれを入手した価格、類似品の市価等を勘案して、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入することとしたときの価格を算定し、その価格による。

消費者庁「景品類の価額の算定基準について」

次に、取引の価額については、懸賞運用基準5(1)によって準用される、総付運用基準1(1)~(4)において、その算定方法が示されています。

1 告示第一項の「景品類の提供に係る取引の価額」について
(1) 購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、当該購入額を「取引の価額」とする。
(2) 購入者を対象とするが購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、百円とする。ただし、当該景品類提供の対象商品又は役務の取引の価額のうちの最低のものが明らかに百円を下回つていると認められるときは、 当該最低のものを「取引の価額」とすることとし、当該景品類提供の対象商品又は役 務について通常行われる取引の価額のうちの最低のものが百円を超えると認められる ときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができる。
(3) 購入を条件とせずに、店舗への入店者に対して景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、百円とする。ただし、当該店舗において通常行われる取引の価額のうち最低のものが百円を超えると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができる。この場合において、特定の種類の商品又は役務についてダイレクトメールを送り、それに応じて来店した顧客に対して景品類を提供する等の方法によるため、景品類提供に係る対象商品をその特定の種類の商品又は役務に限定していると認められるときはその商品又は役務の価額を「取引の価額」として取り扱う。
(4) 景品類の限度額の算定に係る「取引の価額」は、景品類の提供者が小売業者又はサービス業者である場合は対象商品又は役務の実際の取引価格を、製造業者又は卸売業 者である場合は景品類提供の実施地域における対象商品又は役務の通常の取引価格を基準とする。

消費者庁「『一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」

上記の算定方法に従い、取引の価額を検討する際には、以下の点に注意が必要です。

ポイント|取引の価額の考え方

✅取引価額は、原則、個々の事案ごとに検討します。
一定の期間継続的に取引を続けることが前提とされる場合には、取引価格を一定期間の取引価額の合計額で考えることができる場合があります。

共同懸賞

最高額・総額の制限

多数の事業者が共同して実施する共同懸賞については、懸賞による景品類の提供の制限の特例として、以下の通り、一般懸賞と比較して、制限が緩やかとなっています

景品類限度額
最高額 総額
取引価額にかかわらず30万円 懸賞に係る売上予定総額の3%

消費者庁「景品規制の概要」

ヒー

どのような場合に、共同懸賞に当たるのですか?

ムートン

一定の地域や業界の事業者が共同で景品類を提供する場合、共同懸賞にあたりますよ。

共同懸賞は、例えば、商店街の各事業者が共同でキャンペーンを実施したりする場合が挙げられます。

懸賞制限告示により、以下の3つの類型が、共同懸賞に該当しうるとされています。

共同懸賞

✅一定の地域における小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合
✅一の商店街に属する小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合
(*ただし、中元、年末等の時期において、年3回を限度とし、かつ、年間通算して70日の期間内で行う場合に限る)
✅一定の地域において一定の種類の事業を行う事業者の相当多数が共同して行う場合

ただし、他の事業者の参加を不当に制限する場合は、上記の3つの類型に該当しても、共同懸賞には当たらないとされています。

総付景品

最高額の制限

総付景品とは、事業者が一般消費者に対して懸賞によらずに提供する景品類をいいます。

総付景品は、例えば、商品の購入者全員に景品類をプレゼントしたり、商品の購入者に対して先着●名に景品類をプレゼントする、といった場合が挙げられます。

総付景品については、総付制限告示によって、提供する景品類の最高額が制限されています。

具体的には、以下のように制限されています(総付制限告示1項)。

取引価額 景品類の最高額
1,000円未満 200円
1,000円以上 取引価額の10分の2

消費者庁「景品規制の概要」

総付制限告示1項によれば、景品類の額が、上記の額の範囲内であって、「正常な商慣習に照らして適当と認められる限度」内にあることが要求されています。

なお、総付制限告示における取引価額及び景品類の額についての考え方は、懸賞制限告示の場合と同様です。

一方で、景品類であっても、総付制限告示2項各号に規定された、以下の経済上の利益は、総付制限告示1項による規制の対象から外れます。

2 次に掲げる経済上の利益については、景品類に該当する場合であつても、前項の規定 を適用しない。
(1) 商品の販売若しくは使用のため又は役務の提供のため必要な物品又はサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
(2) 見本その他宣伝用の物品又はサービスであつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
(3) 自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
(4) 開店披露、創業記念等の行事に際して提供する物品又はサービスであつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの

消費者庁「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」

業種別景品告示

これまで見てきた一般的な景品規制に加え、業界の実情等に鑑み、これらと異なる独自の規制が必要となるケースがあります。

そこで、設けられたのが、業種別景品表示です。

現在、以下の4業種について、業種別景品告示が定められています。

新聞業や雑誌業、不動産産業、医療関係の各業種の事業者が景品提供を行う場合には、一般的な景品規制に加え、別途各業種の景品告示を確認する必要があります。

まとめ

・景品表示法は、不当な表示、過大な景品類の提供、による不当な顧客の誘引を禁止している。
・過大な景品類の提供は、消費者の自主的かつ合理的な意思決定が妨げられるため、規制される。
・景品表示法に違反した場合、措置命令を受ける、SNSで炎上する等のリスクがある。
・景品表示法の景品規制が適用される「景品類」は、顧客誘引性、取引付随性、経済的利益、を満たすものが該当する。
・景品表示法の景品規制として、懸賞について最高額と総額の制限、総付景品について最高額の制限がされている。
・特定の業界では、独自の景品規制が存在する。

参考文献

消費者庁ウェブサイト「景品表示法とは」

消費者庁ウェブサイト「景品規制の概要」

消費者庁ウェブサイト「景品に関するQ&A」

消費者庁「事例でわかる景品表示法」

西川康一「景品表示法(第6版)」(株式会社商事法務)

波光巖ほか「実務解説 景品表示法(第2版)」(株式会社青林書院)

川井克倭ほか「Q&A景品表示法(改訂版第2版)」(株式会社青林書院)