労働者派遣法とは?
概要・改正の経緯や留意すべきポイントを
分かりやすく解説!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 企業法務担当者が押さえておきたい重要法令まとめ |
- この記事のまとめ
-
労働者派遣法とは、労働者派遣事業そのものと、労働者派遣における派遣元、派遣先、派遣労働者の三者間の関係について定めた法律です。
労働者派遣事業を営む場合はもちろん、派遣労働者を受け入れる場合においても、派遣契約の内容や期間など、多くの注意すべき事項があります。
特に、禁止事項に違反した場合、罰則が科されることもあります。労働者派遣法のルールを理解して、適切な運用を行うことが重要になります。
この記事では、派遣元・派遣先がしなければいけないことを中心に、労働者派遣法に沿った対応のポイントを分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年2月2日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名等を次のように記載しています。
・労働者派遣法・派遣法…労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
・派遣法施行規則…労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則
・派遣法施行令…労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令
・職安法…職業安定法
・労基法…労働基準法
・労契法…労働契約法
・安衛法…労働安全衛生法
・育児・介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
・取扱要領…労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和4年10月1日以降)
目次
労働者派遣法とは
労働者派遣法(派遣法)とは、労働者派遣事業の規律と、派遣労働者の取り扱いについて定めた法律です。
事業者は、労働者派遣事業を営む場合はもちろん、派遣労働者を受け入れる場合においても、派遣法のルールを理解して遵守する必要があります。
労働者派遣法の目的
派遣法1条は、派遣法の目的について、以下のように規定しています。
派遣法
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
(目的)
第1条 この法律は、職業安定法と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。
この規定を派遣法制定の沿革に照らして整理すると、派遣法の目的は、
① 労働者派遣事業の制度化
② 常用型雇用の代替の禁止
③ 派遣労働者の保護
の3つに大きく分けられます。
①労働者派遣事業の制度化
派遣法は、労働者派遣事業の制度化として、労働者派遣事業を適正に行うため、許可制など各種の制度を設けています。
法制度がなかった時代の職業紹介事業や労働者供給事業は、人身売買や強制労働、中間搾取といった問題が多く、有料労働者供給事業を全面的に禁止するなどの規制がされました(職安法44条)。
その後、サービス産業の拡大などにより労働力の臨時的・一時的な需用が強まるとともに、労働者側も希望する就業形態が多様化し、フルタイム・無期雇用ではない働き方のニーズが生じていました。
そこで、職安法44条の精神を維持しつつ、労働者の保護と雇用の安定に配慮した上で、労働者派遣事業を制度化するために、1986年に派遣法の制定により、労働者派遣事業が解禁されました。
②常用型雇用の代替の防止
派遣法は、派遣労働者を常用労働者と代替させないこと(常用代替防止)を基本としています。
日本の雇用慣行は、新卒雇用後、企業内でキャリア形成、昇進昇格していくというものです。労働者派遣事業は、このような雇用慣行との調和を図り、労働者全体の雇用の安定と労働条件の維持向上が損なわれないように配慮する必要があります。
③派遣労働者の保護
派遣法は、2012年改正により、派遣労働者保護を目的として明記しました。派遣労働者は、派遣元と雇用関係がありつつも、派遣先の指揮命令を受ける点で通常の労働契約と異なるため、派遣法ではこのような特殊性に配慮した規律がされています。
労働者派遣法の制定とこれまでの改正について
派遣法は、労働市場の新たな動向に対応するため頻繁に改正がされており、フォローアップの必要が高い法律です。
上記のとおり、労働者派遣事業は当初、常用代替防止の観点から、対象を13業務に限定するなど、限定的なものでした。その後、労働市場のニーズに対応して、現在では対象業務が原則自由化されるなどの規制緩和が大きく進み、派遣労働者の保護に関するルールも増えるという改正がされています。
また、2018年改正では、働き方改革関連法として、いわゆる同一労働同一賃金法制に対応する規定が設けられるなど、他の労働法規と連動した改正がされていることにも留意が必要です。
「労働者派遣」の定義
「労働者派遣」は、派遣法において、以下のように定義されています。
派遣法
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
(用語の意義)
第2条 (略)
一 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
このように、労働者派遣とは、
① 派遣元と労働者の間に雇用関係がある
② 派遣先から指揮命令を受けている
就業形態をいいます。
労働者供給との違い
労働者派遣と区別すべきものとして労働者供給があります。労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させるもので、労働者派遣に該当しないものをいい、職業安定法(職安法)で禁止されています(職安法44条)。
職安法4条8項は、労働者供給について、以下のように定義しています。
職安法
職業安定法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第4条(略)
8 この法律において「労働者供給」とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。
労働者供給の定義に「労働者派遣に該当しないもの」との要件が含まれているため分かりにくいですが、取扱要領11頁では以下のように説明されています。
労働者供給と労働者派遣の区分は次により行うこととする(第1-3図参照)。
① 供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる場合のうち、供給元と労働者との間に雇用関係がないものは、全て労働者供給に該当する。具体的には、労働保険・社会保険の適用、給与所得の確認等に基づいて行う。
② 供給元と労働者との間に雇用関係がある場合であっても、供給先に労働者を雇用させることを約して行われるものは、労働者派遣には該当せず、労働者供給となる。
参考元 │厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和4年10月1日以降)」11頁
請負との違い
請負とは、「当事者の一方がある仕事を完成させることを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって、その効力を生じる」と規定されています(民法632条)。
労働者派遣では、派遣先と派遣労働者との間で指揮命令関係が存在するのに対し、請負では発注者と受注者の間に指揮命令関係が生じない点に違いがあります。
労働者派遣と請負のどちらに該当するかについては、事例ごとに、個別具体的に判断するしかありませんが、厚生労働省・都道府県労働局「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」にて、労働者派遣・請負を行う事業者に向けて、具体的な判断基準やQ&Aが示されており、参考になります。
特に、名目的には請負としていても実際は労働者派遣に該当する、いわゆる「偽装請負」の場合、罰則の対象となります。事業者は留意すべきでしょう。
紹介予定派遣とは
紹介予定派遣とは、労働者派遣事業のうち、派遣元事業主が労働者派遣の開始前または開始後に、派遣労働者および派遣先に対して、直接雇用を前提にして職業紹介を行うものです(派遣法2条4号)。
紹介予定派遣では、派遣先による派遣労働者の事前面談ができる、派遣期間は最長6カ月など、一部で通常の派遣労働者と異なるルールが定められています。
労働者派遣事業の規制のポイント・禁止事項
まず、労働者派遣事業の規制に関わる事項について、解説します。
労働者派遣事業の許可制
労働者派遣事業の健全化の観点から、労働者派遣事業を行おうとする事業者は、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります(派遣法5条)。無許可で労働者派遣事業を行うと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるおそれがあります(派遣法59条2号)。
派遣先は、許可を受けていない者から労働者派遣を受けてはならず(派遣法24条の2)、違反した場合は、行政指導・勧告(派遣法48条1項・49条の2第1項)を受ける可能性があり、勧告に従わなかった場合には企業名の公表(派遣法49条の2第2項)の対象となります。
したがって、労働者派遣事業を行おうとする場合はもちろんのこと、派遣先となる場合も、派遣元事業主が労働者派遣事業の許可を取っているか、確認する必要があります。
適用対象業務と禁止業務(ネガティブリスト)
派遣法では、改正が重ねられたことにより、労働者派遣の適用対象業務は原則自由化され、例外的に禁止業務が規定されています(ネガティブリスト)。
現在労働者派遣事業を行うことができない業務(禁止業務)は、
① 港湾運送業務
② 建設業務
③ 警備業務
④ 医療関連業務
の4つに限定されています(派遣法4条1項、派遣法施行令1条・2条)。
なお、これらの業務の具体的内容は取扱要領に記載されています。
例えば、「②建設業務」には、建設に関する業務全般が含まれるわけではありません。
✅ 建設業務とは、建設工事の現場において直接に土木、建築などの作業に従事するものに限られる。
✅ 建設現場の事務職員が行う業務は、法律上当然に禁止業務に該当することにはならない。
✅ 工事の施工の管理を行う施工管理業務は、建設業務に該当せず労働者派遣の対象となる。
参考元|厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和4年10月1日以降)」24頁
ネガティブリストに該当する業務か否かは、取扱要領を参照して、実質的に判断することが必要です。
派遣労働者の雇用形態
派遣労働者には、有期雇用の派遣労働者(いわゆる登録型派遣)と、無期雇用の派遣労働者(いわゆる常用型派遣)があります。
有期雇用の派遣労働者は、派遣元と派遣期間に対応した期間の定めのある雇用契約を結び、派遣先への派遣期間が終了すると派遣元との雇用契約も終了します。
無期雇用の派遣労働者は、派遣元と期間の定めのない雇用契約を結ぶため、派遣先への派遣期間が終了しても雇用関係は継続します。
無期雇用派遣は安定した雇用や長期的なキャリア形成につながりやすく、2015年改正でも促進がされています。
派遣期間の制限(3年ルール)
有期雇用の派遣労働者は、①事業所単位、かつ、②個人単位にて、派遣期間を原則3年以内とする制限が課されています(派遣法35条の3・40条の3・40条の2。いわゆる「3年ルール」)。
- 派遣期間の制限(3年ルール)
-
① 派遣先の「事業所単位」の期間制限
派遣先は、同一の事業所において3年を超えて派遣労働者を受け入れることはできない。なお、派遣先の事業所の過半数労働組合等から意見を聞いた上であれば、3年を限度として派遣可能期間を延長できる(異議のある場合には理由の説明義務あり)。② 派遣労働者個人の「個人単位」の期間制限
①の「事業所単位」の派遣可能期間を延長した場合でも、派遣先の事業所における同一の組織単位で、3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れることはできない。
上記ルールは無期雇用の派遣労働者に対しては適用されません(派遣法40条の2第1項1号)。
なお、派遣先は労働者派遣契約の際に、①の期間制限の対象となる労働者派遣を受ける場合、抵触日(派遣可能期間終了日の翌日)を通知する義務があります(派遣法26条4項)。
日雇い派遣の原則禁止
派遣法は、一部の業務を除き、日雇労働者の派遣を行ってはならないと規定しています(派遣法35条の4第1項)。この「日雇労働者」とは、文字通りの日雇いだけでなく、30日以内の期間を定めて雇用する労働者を含みます。
派遣労働者取り扱いのポイント
以下では、派遣元および派遣先が留意すべき派遣労働者の取り扱いについて、派遣法のルールを解説します。直接雇用とは異なるルールもあるため注意しておきましょう。
①労働者派遣契約の内容・締結手続
労働者派遣契約とは、派遣元が派遣先に対し、労働者派遣をすることを約することをいいます(派遣法26条)。この契約は、本来であれば、口頭でも問題はないはずです。
しかし、派遣法は、労働者派遣契約の締結に当たって、必要な事項を定め、書面に記載しておかなければならないと規定しています(派遣法26条、派遣法施行規則22条)。
✅ 業務の内容
✅ 業務に伴う責任の程度
✅ 労働に従事する事業所の名称、所在地
✅ 就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項
✅ 労働者派遣の期間、派遣就業をする日
✅ 派遣就業の開始・終了の事項、休憩時間
✅ 派遣元責任者、派遣先責任者に関する事項
など
なお、取扱要領(132頁以下)には、労働者派遣契約の定めの例が掲載されており、労働者派遣契約書を作成する場合には、参考とすることができます。
また、派遣先は、紹介予定派遣の場合を除いて、労働者派遣契約の締結に際し、派遣労働者を特定することを目的とした行為(特定目的行為)を行わないように努めなければなりません(派遣法26条6項)。労働者派遣に先立って面接をしたり、履歴書を送付させるようなことは行わないようにしましょう。
②賃金・待遇の改善(同一労働同一賃金など)
派遣元の義務
派遣労働者は、派遣元との間で雇用契約を締結するため、派遣元が労働条件を設定することになります。
派遣元は派遣法の規定に即した労働条件を設定する必要がありますが、派遣法はいわゆる同一労働同一賃金として、均衡待遇および均等待遇に関するルールを定めています。
均衡待遇とは、派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇について、派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、不合理と認められる相違を設けてはならないとするものです(派遣法30条の3第1項)。
均等待遇とは、派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者で「職務内容」が同一で、「職務内容・配置」の変更範囲も同一と見込まれる場合、派遣労働者を不利な待遇としてはならないことをいいます(派遣法30条の3第2項)。
派遣先の義務
派遣先は、派遣労働者に対して均衡待遇の確保をしなければなりません。
例えば、派遣先は、雇用する労働者に対して、業務の遂行に必要な能力を付すための教育訓練を行っている場合、同種の業務に従事する派遣労働者に対しても、原則として同様の訓練を実施しなければなりません(40条2項)。
また、派遣先は、雇用する労働者が利用できる福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については、派遣労働者も利用できるようにしなければなりません(派遣法40条3項)。
③有期雇用派遣労働者に対する雇用安定措置
「派遣期間の制限(3年ルール)」を超えて、有期雇用派遣労働者が派遣先の1つの組織単位の業務に3年間従事した場合、派遣元は当該派遣労働者に対し、以下のいずれかの措置(雇用安定措置)を講じなければなりません(派遣法30条1項・2項、派遣法施行規則25条の2)。
(1) 派遣先への直接雇用の依頼
(2) 新たな派遣先での就業機会の提供
(3) 派遣元での無期雇用の機会の提供
(4) その他教育訓練であって雇用の安定に特に資すると認められる措置
④離職した労働者についての労働者派遣の受け入れの禁止
離職した労働者を派遣労働者として受け入れることは禁止されています。
派遣法は、常用雇用の代替防止を目的としているため、派遣先は、原則として派遣先を離職して1年未満の労働者の派遣を受け入れてはならず(派遣法40条の9、派遣法施行規則33条の10第1項)、派遣元はこれに該当する労働者派遣を行ってはなりません(派遣法35条の5)。
⑤労働基準法などの適用
派遣労働者は、派遣先との間で指揮命令関係が生じますが、労基法、安衛法などの労働関係法については、原則として派遣元事業主が雇用者として責任を負うことになります。他方、現実の就労や指揮命令に関わる一定の義務・責任については、派遣先も法令上の責任を負うものとされています。
労働基準法等の適用について
派遣元事業主 | 派遣先 | 双方 | |
---|---|---|---|
労働基準法 | ・賃金 ・年次有給休暇 ・災害補償 など | ・労働時間 ・休憩 ・休日 ・時間外/休日労働等 | ・均等待遇 ・申告を理由とする不利益取扱い禁止 ・強制労働の禁止 など |
労働安全衛生法 | ・雇入れ時の安全衛生教育 ・一般健康診等 | ・安全管理者、安全委員会 ・危険防止等のための事業者の講ずべき措置等 ・危険有害業務就業時の安全衛生教育 ・有害な業務に係る健康診断等 | ・総括安全衛生管理者 ・衛生管理者、衛生委員会 ・作業内容変更時の安全衛生教育 ・健康診断実施後の作業転換等の措置 |
育児 ・介護休業法 | - | ・職場における育児休業、介護休業等に関する言動に起因する問題に関する指揮命令上の措置 | ・育児休業、介護休業等を理由とする不利益取扱いの禁止 ・職場における育児休業介護休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置 ・職場における育児休業介護休業等に関する言動に起因する問題に関する事業主の責務 |
⑥その他のルール
上記で紹介したもの以外にも、派遣法にはさまざまなルールが定められています。
まず、派遣労働者のキャリアアップのため、派遣元は、その雇用する派遣労働者に段階的かつ体系的な教育訓練を実施しなければならないとしています(派遣法30条の2第1項)。
また、派遣元では、就業条件等の明示、派遣労働者に対する必要な助言および指導の実施等のために、派遣元責任者を選任して、派遣元管理台帳を作成し、派遣労働者の従事する業務の責任の程度等について記載しなければなりません(派遣法36条・37条)。
また、派遣先においても、派遣法や法令上求められる労働者派遣契約で定められる事項の周知のために派遣先責任者を選任して、派遣先管理台帳を作成し、派遣元管理台帳と同様の事項を記載しなければなりません(派遣法41条・42条)。
労働者派遣契約の解除
派遣法では、派遣先は派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、正当な組合活動等を理由として、派遣契約を解除してはならないと規定しています(派遣法27条)。これに違反して解除された場合、解除は無効となり、派遣元は派遣先に対し損害賠償の請求をすることができます。
また、派遣元は、派遣先が派遣法等に違反した場合、当該労働者派遣を停止し、または労働者派遣契約を解除することができます(派遣法28条)。
派遣労働者の契約の終了
派遣法では、派遣先と派遣労働者の間の契約の終了について定めた規定はありません。したがって、労働契約法等により判断されることとなります。
派遣労働者が無期雇用(いわゆる常用型派遣)の場合は、通常の解雇と同様、解雇権濫用法理が適用され、解雇には客観的・合理的理由が存在することおよび社会通念上相当であることが求められます(労契法16条)。
派遣労働者が有期雇用(いわゆる登録型派遣)では、①派遣期間の途中で解約する場合、②期間満了によって解約する場合の2つが考えられます。
①派遣期間の途中で解約する場合には、期間途中解雇を正当化する「やむを得ない事由」(労契法17条1項)が求められます。
②期間満了によって解約する場合について、裁判例(伊予銀行・いよぎんスタッフサービス事件・高松高判平成18年5月18日労判921号33頁など)は、派遣法は常用代替の防止を目的としていることから、同一労働者の同一事業所への派遣を長期間継続することによって派遣労働者の雇用の安定を図ることは、派遣法が予定するところではないとし、雇用継続に対する期待は合理性を欠き、保護されないとの判断をしています。したがって、雇止め法理(労契法19条)には反しないものと考えられます。
労働者派遣法に違反した場合
刑罰、行政処分など
派遣法への違反が認定された場合の効果は、個別の規定によってさまざまですが、大きく分けて、
① 懲役や罰金等の罰則が科される場合
② 派遣元事業主に対する許可の取消や事業停止命令等の行政処分が科される場合
③ 勧告や公表の措置の対象となる場合
があります。
また、違法行為の申告があり、許可の取り消しや事業停止命令等の行政処分の判断に必要な場合などには、労働局職員による立入検査が行われる可能性があります(派遣法51条)。
労働契約申込みみなし制度
以下の違法派遣行為に該当する場合、派遣先はその派遣労働者に対し、労働契約の申込みをしたものとみなされます(派遣法40条の6第1項)。
・禁止業務への従事
・無許可事業主からの派遣労働者の受け入れ
・労働者派遣の役務の提供を受ける期間の制限(3年ルール)違反
・偽装請負
違法派遣行為の対象となった派遣労働者がこの申込みに対する承諾を行った場合、派遣元と締結されている雇用契約と同一の労働条件にて、派遣先との間で労働契約が成立することとなります。
この労働契約の申込みは、これらの違法派遣行為が終了してから1年間は撤回できないとされています(派遣法40条の6第2項)。なお、これらの違法派遣行為について、派遣先が善意無過失であった場合は、この申込みみなし制度は適用されません。
この記事のまとめ
労働者派遣法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 企業法務担当者が押さえておきたい重要法令まとめ |
参考文献
厚生労働省職業安定局「労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和4年10月1日以降)」
厚生労働省・都道府県労働局「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」