責に帰すべき事由とは?
読み方・帰責性の意義・問題になる場面・
具体例・立証責任などを分かりやすく解説!

おすすめ資料を無料でダウンロードできます
[法務必携!]ポケット契約用語集~基本編~
この記事のまとめ

責に帰すべき事由(せめにきすべきじゆう)」とは、故意もしくは過失、または信義則上これらと同視すべき事由をいいます。「責めに帰すべき事由」のほか、「帰責性(きせきせい)」「帰責事由(きせきじゆう)」という場合もあります。

責に帰すべき事由は、
債務不履行に基づく損害賠償
契約不適合責任
危険負担
に関して問題になります。

債務不履行について、債務者に責に帰すべき事由がある場合には、債権者に対する損害賠償責任および契約不適合責任を負います。
これに対して、債務者の責に帰することができない事由によって債務不履行が生じた場合には、危険負担の問題となります。

そのほか、契約の解除、賃貸借契約における賃貸人の修繕や原状回復、労働基準法に基づく休業手当などについて、責に帰すべき事由が問題となります。

責に帰すべき事由の立証責任は、債務者側が負うと解されています。責任を免れようとする債務者は、責に帰すべき事由がないことを基礎づける事実を立証しなければなりません。

この記事では責に帰すべき事由について、意義・問題になる場面・具体例・立証責任などを解説します。

ヒー

この「せきにかえすべきじゆう」って何ですか?

ムートン

それは「『せめ』に『き』すべきじゆう」です。専門用語なのでちょっと難しいですが、平たくいうと「その人に責任を負わせるべきか」を決める事柄です。契約上よく出てきますので、確認していきましょう。

※この記事は、2024年4月11日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

責に帰すべき事由とは|帰責性の意義

責に帰すべき事由(せめにきすべきじゆう)」とは、故意もしくは過失、または信義則上これらと同視すべき事由をいいます。「責めに帰すべき事由」のほか「帰責性(きせきせい)」「帰責事由(きせきじゆう)」という場合もあります。

故意とは

故意」とは、債務不履行が生ずることを知っていながら敢えて何かをすること、または何もしないでいることを意味します。

例えば、借金の返済義務があることを知っていながら、債権者に対して返済しないことは「故意」に当たります。

過失とは

過失」とは、善良な管理者の注意を欠いたために、債務不履行の発生を認識しないことを意味します。

ヒー

善良な管理者の注意って何ですか?

ムートン

その人の能力や地位に応じて、当然払うべき注意のレベルを意味しています。「善管注意義務」と呼ばれるものですね。善管注意義務の程度は、自分の財産を管理する際に払うべき注意よりも高度とされています。

例えば、債務者が借金の返済期限を失念しており、返済しないまま期限を経過してしまったとします。

この場合は、意図的ではないので「故意」には当たりません。

しかし、債務者には返済期限を把握した上で、きちんと期限までに返済する注意義務があると考えられます。したがって、失念により返済期限を経過してしまったことにつき、債務者の過失が認められます。

故意・過失と信義則上同視すべき事由とは

故意・過失と「信義則上同視すべき事由」として重要なのは、いわゆる「履行補助者の故意・過失」です。「履行補助者」とは、債務者が債務を履行するために使用する者をいいます。

例えば、業務委託契約の受託者が第三者に業務を再委託する場合、当該第三者は受託者の履行補助者に当たります。

受託者自身に故意・過失がないとしても、履行補助者に故意・過失があれば、受託者は委託者に対して債務不履行に基づく損害賠償責任を負うと解されます。
履行補助者の使用は受託者側の都合によるものであり、履行補助者の故意・過失は受託者自身の故意・過失と信義則上同視すべきだからです。

責に帰すべき事由が問題になる場面・具体例

「責に帰すべき事由」が問題になる場面としては、以下の例が挙げられます。

① 債務不履行に基づく損害賠償
② 契約不適合責任
③ 危険負担
④ 契約の解除
⑤ 賃貸人による修繕
⑥ 賃借人の原状回復義務
⑦ 休業手当

債務不履行に基づく損害賠償|2020年民法改正の影響あり

民法
(債務不履行による損害賠償)
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 略

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

民法415条1項では、債務不履行によって生じた損害につき、原則として債権者の債務者に対する損害賠償請求を認めています(同項本文)。
その一方で、債務不履行が債務者の責に帰することができない事由によるものであるときは、例外的に損害賠償責任が否定される旨を定めています。この場合は、危険負担(後述)が問題となります(同項但し書き)。

同項但し書きの規定は、2020年4月1日に施行された改正民法によって、従来の規定を整理した上で新設されたものです。
また、債務者の免責要件を「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」判断する旨も、同改正民法によって新たに明記されました。

契約不適合責任

民法
(買主の追完請求権)
第562条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

(買主の代金減額請求権)
第563条 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一~四 略 3 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

契約不適合責任とは、目的物やサービスの内容が契約に適合していなかった場合に、売主が買主に対して負う責任です。債務不履行責任の一種と位置付けられています。

契約不適合責任の追及方法のうち、履行の追完請求(修補など)と代金減額請求を定める規定では、不適合が買主の責に帰すべき事由によるものであるときは請求を認めない旨を定めています(民法562条2項・563条3項)。
買主に責任がある不適合について修補や代金の減額を認めるのは、売主にとって酷であり不公平だからです。

契約不適合責任については、以下の記事を併せてご参照ください。

危険負担

民法
(債務者の危険負担等)
第536条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

危険負担とは、債務者の責に帰すべき事由によらずに債務が履行できなくなった場合に、債務者が債権者に対して反対給付を請求できるかどうかという問題です。

例えば、天災によって売買契約の目的物が滅失してしまい、買主が売主に対して目的物を引き渡せなくなったとします。
天災の発生は、債権者側の責にも帰することができない事由なので、債権者は売買代金の支払い(=反対給付の履行)を拒むことができます(民法536条1項)。

これに対して、債務が履行できなかったことが専ら債権者の責に帰すべき事由による場合には、債権者は反対給付の履行を拒むことができません(同条2項)。
例えば、会社の不当解雇によって労働者が働けなくなった場合、労働義務の不履行は専ら会社の責に帰すべき事由によるため、会社は労働者に賃金全額を支払う義務を負います。

危険負担については、以下の記事を併せてご参照ください。

契約の解除|2020年民法改正の影響あり

民法
(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第543条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

民法541条は催告による解除催告解除)、民法542条は催告によらない解除無催告解除)について定めた規定です。

民法543条では、債務不履行が債権者の責に帰すべき事由による場合に、債権者は催告解除および無催告解除ができない旨を定めています。他方で債務者は、債権者の責に帰すべき事由がなくても契約を解除できます。

民法543条の規定は、2020年4月1日に施行された改正民法によって変更されたものです。
従来は債務不履行が債務者の責に帰することができない事由による場合に、債権者による契約の解除を禁止する内容でした。
しかし、それでは債権者にとって酷な結果を生じ得るとの批判があったため、上記の現行規定への改正が行われました。

賃貸人による修繕

民法
(賃貸人による修繕等)
第606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 略

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

民法606条1項は、賃貸借契約において賃貸人が負う目的物の修繕義務を定めています。

ただし、賃借人の責に帰すべき事由によって修繕が必要となったときは、賃貸人は修繕義務を負わないものとされています。

賃借人の原状回復義務

民法
(賃借人の原状回復義務)
第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

民法621条は、賃貸借契約の終了時における賃借人の原状回復義務を定めています。

賃借人の原状回復義務の対象からは、通常損耗および経年変化のほか、賃借人の責に帰することができない事由による損傷が除外されています。
したがって、実際に賃借人が原状回復義務を負うのは、賃借人の責に帰すべき事由によって発生した損傷に限られます。

休業手当

労働基準法
(休業手当)
第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

労働基準法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

労働基準法26条では、使用者の労働者に対する休業手当の支払義務を定めています。
使用者の責に帰すべき事由による休業について、使用者は労働者に対し、平均賃金の60%に相当する休業手当を支払わなければなりません。

責に帰すべき事由の立証責任は債務者側が負う

責に帰すべき事由がないことの立証責任は、債務者側が負うと解されています(最高裁昭和34年9月17日判決等)。契約等によって一定の給付を行うことが義務付けられている債務者に立証責任を負わせることが、信義則上公平であると考えられるためです。

したがって、債務不履行の責任を免れようとする債務者側が、自らの責に帰すべき事由がないことを立証しなければなりません。もし立証できなければ、債務者は債権者に対して、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことになります。

これに対して不法行為の場合は、故意・過失立証責任を債権者側(=不法行為を受けた側)が負うと解されています。
不法行為は契約関係にない者同士の間でも生じ得るので、故意・過失の立証責任は債権者に負わせるのが公平と考えられるためです。

ムートン

最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

おすすめ資料を無料でダウンロードできます
[法務必携!]ポケット契約用語集~基本編~