取締役会の議事進行の流れとは?
会社法上のルールなどの 基本を分かりやすく解説!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 【総務・法務の基本がわかる!】株主総会とは? |
- この記事のまとめ
-
取締役会では、決議事項についての審議・決議、報告事項についての報告などが行われています。
原則としては、取締役会を開催し、決議事項の決議、報告事項の報告などをする必要がありますが、一定の場合には、取締役会を開催せずに、これらの手続きを行うことができます。
この記事では、「取締役会の議事進行の流れ」について、分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年2月1日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
取締役会とは
取締役会とは、全ての取締役で構成される合議体(機関)のことです(会社法362条1項)。取締役会では、会社の業務執行に関する意思決定などが行われます。
この記事では、取締役会の議事進行の流れについて解説します。
取締役会における決議事項・報告事項
取締役会の議題には、以下の2種類があります。
・決議事項|取締役会において決議が必要な事項(会社法369条)
・報告事項|取締役会に報告するのみで足りる事項(会社法372条)
決議事項
会社法上、例えば、以下の事項が、決議事項として定められています。
・譲渡制限株式の譲渡承認(会社法139条1項)
・株式の分割(会社法183条)
・株主総会の招集の決定(会社法298条4項)
・競業取引の承認(会社法356条1項1号、365条1項)
・利益相反取引の承認(会社法356条1項2号・3号、365条1項)
・計算書類等の承認(会社法436条3項) など
また、上記のような個別の決議事項に加え、以下の事項やその他の重要な業務執行の決定も、取締役に決定を委任できず、取締役会で決議しなければなりません(会社法362条4項)。
①重要な財産を処分することおよび譲り受けること(1号)
②多額のお金を借りること(2号)
③重要な使用人の選任・解任を行うこと(3号)
④重要な組織の設置・変更・廃止を行うこと(4号)
⑤社債の発行に関する事項を決定すること(5号)
⑥内部統制システムを整備すること(6号)
⑦取締役の任務懈怠責任の免除を行うこと(7号)
なお、「①重要な財産を処分することおよび譲り受けること」に関して、判例では、以下のとおり判示しています。
重要な財産の処分に該当するかどうかは、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべき
最判平6・1・20民集48巻1号1頁
会社では、取締役会規程などで、会社の資産規模なども考慮し、どのような規模の財産の処分や譲り受けの場合に取締役会の決議が必要であるかを定めていることが多いですが、当該取締役会規程などにおける基準は、「重要な財産」(会社法362条4項1号)にあたるかの判断にあたっても参考になると考えられます。
報告事項
報告事項としては、例えば、以下などがあります。
・代表取締役や業務執行取締役による自己の職務の執行状況の報告(会社法363条2項)
・競業取引・利益相反取引をした取締役による当該取引についての重要な事実の報告(会社法365条2項)
・監査役による取締役の不正行為等を認知したときの報告(会社法382条)
なお、以上の決議事項や報告事項は、あくまでも会社法で明示的に取締役会の決議事項・報告事項と定められているものです。
上記以外でも、例えば、営業方針や今後の製品開発予定・採用計画など、会社を運営する上で重要な事項があれば、「その他の重要な業務執行の決定」(会社法362条4項柱書)にあたり、取締役会で決議・報告が行われることとなります。
取締役会の一般的な議事進行の流れ
出席者
取締役会を構成するのは、もちろん各取締役ですが(会社法362条1項)、取締役会には取締役のほか、監査役も出席する必要があります(383条1項本文)。
もっとも、監査役は、取締役会の構成員ではないので、決議に参加することや取締役会の議題などについて提案することはできず、必要に応じ、意見を述べるにとどまります(会社法383条1項本文)。
その他、取締役の補助者として従業員や弁護士などの関係者が取締役会に参加することもあります。補助者として従業員などが参加することは問題ありませんが、取締役が取締役会に出席できない場合に、従業員などが当該取締役の代理として、取締役会に出席することはできません。
議長
会社法上、誰が取締役会の議長となるかについて、特に決まりはありませんし、そもそも必ず議長を選ばなければならないわけでもありません(会社法施行規則101条3項8号参照)。
議長を選ぶ場合は、定款や取締役会規程、取締役会で、適宜誰が取締役会の議長になるかを定めれば問題ありません。実態としては、代表取締役である会長や社長が議長になる旨が定められていることが多いと考えられます。
なお、「決議」に記載のとおり、「特別の利害関係を有する取締役」は、利害関係のある議題の決議に参加することはできません(会社法369条2項)。また、取締役会の議長になることもできません(東京高判平8・2・8資料版商事法務151号142頁)。
議事進行
取締役会の議事の進め方についても特段の決まりはなく、一般的な会議と同様、議題について議論・質疑などをして決議を行えば足ります。
なお、取締役会当日に、取締役から、取締役会の招集通知に記載されていなかった議題について提案があった場合、当該議題についても、審議・決議などをすることができます。
決議
決議の方法については、会社法でルールが定められています。
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(過半数を上回る割合を定款で定めた場合はその割合以上)が出席し、出席した取締役の過半数(過半数を上回る割合を定款で定めた場合はその割合以上)をもって行います(会社法369条1項)。
なお、決議事項を決議する場合だけではなく、報告事項を報告する際にも、定足数を充足する必要があると考えられています。
特別利害関係取締役の決議への参加
会社法369条1項には、「議決に加わることができる」とありますが、決議に「特別の利害関係を有する取締役」は議決に加わることができません(会社法369条2項)。例えば、以下のような取締役は、この特別利害関係取締役にあたると考えられています。
- 代表取締役を解職する決議における当該代表取締役(会社法362条2項3号)
- 利益相反取引の承認決議における当該取引をしようとする取締役(会社法365条1項、356条1項2号・3号)
- 競業取引の承認決議における当該取引をしようとする取締役(会社法365条1項、356条1項1号)
- 取締役会決議で取締役の責任を一部免除する場合における当該取締役(会社法426条)
一方、代表取締役を選定する決議における当該取締役(会社法362条2項3号)については、特別利害関係取締役にあたらないと考えられています。
なお、特別利害関係取締役が、利害関係のある決議に参加してしまった場合、その決議は無効になるのでしょうか。結論としては、当該特別利害関係取締役を除外しても、決議が成立する場合には、当該取締役会は無効にはならないと考えられています。また、特別利害関係取締役は、「議決に加わることができない」取締役なので、定足数にも参入されません。
取締役会議事録の作成・保存
取締役会の議事については、議事録を作成し、出席した取締役や監査役は署名か記名押印をする必要があります(会社法369条3項・4項)。
その上で、取締役会の日から10年間、取締役会議事録を会社の本店に保存しておかなければなりません(会社法371条)。なお、保存された取締役会議事録は、株主や債権者などによる閲覧や謄写(コピー)請求の対象となります(会社法371条2項~6項)。
取締役会議事録に記載すべき事項は、会社法施行規則101条3項・4項に定められており、例えば、
・取締役会が開催された日時および場所(会社法施行規則101条3項1号)
・取締役会の議事の経過の要領およびその結果(同項4号)
などを記載する必要があります。
書面決議
書面決議とは、ある決議事項について、議決に参加できる取締役の全員が書面などで同意の意思表示をしたときに、取締役会を開かずとも可決する旨の決議があったとみなすことができる制度です(会社法370条)。
ただし、監査役が異議を述べたときは、書面決議をすることはできません。
書面決議を行った場合、実際には取締役会を開催していないわけですが、取締役会議事録は作成する必要があります(会社法施行規則101条4項1号)。
例えば、以下などを記載することが求められます。
・取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容(会社法施行規則101条4項1号イ)
・当該事項の提案をした取締役の氏名(同号ロ)
また、「取締役会議事録の作成・保存」に記載のとおり、取締役会議事録は、取締役会の日から10年間、会社の本店に保存せねばなりませんが、書面決議をした場合、各取締役の同意書面も同様に、会社の本店に保存せねばなりません(会社法371条1項)。
実務上、機動的な意思決定を行うために、書面決議を行いたい場合も多いかと思います。しかし、書面決議を行うためには、定款で書面決議が可能であることを定めておく必要があるので、注意が必要です。
報告事項の省略
取締役会の報告事項も、一定の手続きを踏むことで、取締役会での報告が不要になります。
具体的には、取締役や監査役が、取締役や監査役の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会に報告する必要がなくなります(会社法372条1項)。
もっとも、「報告事項」に記載されている報告事項のうち、代表取締役や業務執行取締役による職務執行の状況の報告については、省略できません(会社法372条2項)。
そして、代表取締役や業務執行取締役による職務執行の状況の報告は、3カ月に1回以上行う必要があるので(会社法363条2項)、取締役会は、最低でも3カ月に1回以上、開催しなければならないことになります。
報告事項の報告を省略した場合、実際には取締役会を開催していないわけですが、取締役会議事録を作成する必要があります(会社法施行規則101条4項2号)。
例えば、以下などを記載することが求められます。
・取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容(会社法施行規則101条4項2号イ)
・当該事項の提案をした取締役の氏名(同号ロ)
特別取締役による決議
「決議」に記載のとおり、取締役会の決議が成立するためには、取締役の過半数の出席と出席した取締役の過半数の賛成が必要です(会社法369条1項)。
しかし、取締役の人数が増えてきたり、社外取締役(会社法2条15号)も参画したりするようになると、取締役会の日程調整をするだけで大きな負担が生じ、機動的な意思決定が困難になる可能性があります。
そこで、取締役の人数が6人以上であり、かつ社外取締役がいる会社では、
- 重要な財産を処分することおよび譲り受けること(会社法362条4項1号)
- 多額のお金を借りること(同項2号)
については、あらかじめ選定した3人以上の取締役(特別取締役)の判断に委ねることができます(特別取締役の過半数の出席と出席した特別取締役の過半数の賛成で決議することができます。会社法373条1項)。
なお、特別取締役による決議の定め(会社法373条1項)がある場合、特別取締役による取締役会については、(各取締役ではなく、)各特別取締役が取締役会を招集することになります(会社法373条2項後段)。また、特別取締役の中から選ばれた取締役は、特別取締役による取締役会の決議後、決議の内容をその他の取締役に報告する必要があります(会社法373条3項)。
この記事のまとめ
取締役会の議事進行の流れの記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 【総務・法務の基本がわかる!】株主総会とは? |