ライセンス契約(使用許諾契約)とは?
種類・ロイヤリティの定め方などを
分かりやすく解説!

この記事のまとめ

ライセンス契約(使用許諾契約)」とは、知的財産権で保護されている特許・意匠・著作物・商標などの実施・使用等を、第三者に許諾する内容の契約です。許諾する側を「ライセンサー」、許諾を受ける側を「ライセンシー」といいます。

ライセンス契約を締結することで、ライセンサーはライセンス料収入を得られる一方、ライセンシーはライセンサーの技術・著作物・商標などを利用して利益を上げることができます。

契約トラブルの発生に備えるため、ライセンス(使用許諾)契約を締結する際には、各条項のポイントを押さえたレビューを行いましょう。

この記事ではライセンス契約について、締結の目的・種類・定めるべき条項などを解説します。

ヒー

ライセンサー、ライセンシー…どちらがどちらか間違えてしまいそうです。

ムートン

さーどうぞ」が「サー」、「かーしーて」が「シー」、なんて覚え方はどうでしょうか。

※この記事は、2022年12月9日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

ライセンス契約(使用許諾契約)とは

ライセンス契約(使用許諾契約)」とは、知的財産権で保護されている特許意匠著作物商標などの実施・使用等を、第三者に許諾する内容の契約です。

ライセンス契約の当事者の呼び方は、契約によって使い分ける場合もありますが、一般的には許諾する側を「ライセンサー」、許諾を受ける側を「ライセンシー」といいます。

ライセンス契約を締結する主な目的

ライセンス契約を締結する主な目的は、ライセンサーとしては「ライセンス料収入を得ること」、ライセンシーとしては「他社の技術やブランドを利用して利益を上げること」です。

ライセンサーの目的|ライセンス料収入を得る

自社が権利を持つ特許・意匠・著作物・商標などの実施・使用を他社に許諾すると、他社からライセンス料収入を得ることができます。

従業員・設備・広告料など、自社のリソースを消費することなく収益を得られる点は、ライセンサーにとって大きなメリットです。

ライセンシーの目的|他社の技術やブランドを利用して利益を上げる

ライセンシーは、ライセンサーの技術やブランドを利用できるようになるため、より素早く効率的にビジネスを展開することが可能となります。

ライセンス料を上回る利益がもたらされると判断すれば、ライセンシーにとってもライセンス契約を締結するメリットがあります。

ライセンス契約のメリット・デメリット

ライセンサーにとっては、ライセンス料収入を得られることが、ライセンス契約を締結する最大のメリットです。
自社ではこれ以上活用したり収益を大きくすることが難しい知的財産を、他社にライセンスすることで収入を得る場合などには特にメリットがあります。
また副次的なメリットとして、ライセンシーの働きによって自社のブランドの知名度がいっそう広まる可能性がある点が挙げられます。
その一方で、ライセンシーによる事業展開が自社のビジネスと競合する可能性が生じる点は、ライセンサーが注意しなければならないポイントです。

ライセンシーにとっては、技術・ブランドの利用によってビジネスを加速できる点が、ライセンス契約を締結する最大のメリットです。
例えば、自社で開発しようとしていた重要な技術について、他社が既に特許権を得ていた、という場合などにも、ライセンシーとなることで、事業を継続することができます。
その一方でライセンス料を支払うデメリットを負うため、ライセンシーがライセンス契約を締結するに当たっては、メリット・デメリットのどちらが上回るかを慎重に判断することが求められます。

ライセンス契約の主な種類

「ライセンス契約」はあくまでも大きなカテゴリーであって、実際にライセンスする(実施・使用等を許諾する)権利等の内容によって、以下のように様々な種類があります。

・特許ライセンス契約
・意匠ライセンス契約
・著作権ライセンス契約
-ソフトウェアライセンス契約
-キャラクターライセンス契約
・商標ライセンス契約
など

特許ライセンス契約

特許ライセンス契約」とは、特許権によって保護される技術(発明)の実施を許諾する契約です。
物・方法・物を生産する方法に関する、自然法則を利用した高度の技術的思想がライセンスの対象となります。

意匠ライセンス契約

意匠ライセンス契約」とは、意匠権によって保護されるデザインの実施を許諾する契約です。
具体的には、物品・建築物の形状・模様・色彩やこれらの結合、ディスプレイされる画像などがライセンスの対象となります。

著作権ライセンス契約

著作権ライセンス契約」とは、著作権によって保護される創作物の利用を許諾する契約です。文芸・学術・美術・音楽に関する創作物がライセンスの対象となります。

著作権ライセンス契約の例としては、「ソフトウェアライセンス契約」や「キャラクターライセンス契約」などが挙げられます。

ソフトウェアライセンス契約

ソフトウェアライセンス契約」とは、コンピューターやスマートフォンなどで動作するソフトウェアの使用を許諾する契約です。
ソフトウェアに含まれるプログラムが著作物に該当するため(著作権法10条1項9号)、著作権ライセンス契約に分類されます。

キャラクターライセンス契約

キャラクターライセンス契約」とは、アニメ・漫画・イベントなどに関するキャラクターコンテンツの利用を許諾する契約です。
販売する商品にキャラクターを印刷したり、キャラクターをパロディ化して二次創作を行ったりする際に、キャラクターライセンス契約が締結されます。

商標ライセンス契約

商標ライセンス契約」とは、商標権によって保護されている登録商標の使用を許諾する契約です。
具体的には、商品やサービスの名称・ロゴマークや、それを象徴する音声などがライセンスの対象になります。

OEM契約とライセンス契約の違い

ライセンス契約と似た要素を持つ契約として、「OEM契約(Original Equipment Manufacturing Agreement)」が挙げられます。

OEM契約とは、企業(委託者)が自社ブランド製品の製造を他社(受託者)に委託する契約です。ライセンス契約とは、(受託者・ライセンシーが)契約相手の技術などを活用して製品の製造を行う点で共通しています。

ただしOEM契約では、委託の対象となるのは製造のみで、製品の販売については委託者側で行います。また、OEM契約は委託者側のニーズに基づいて締結されるため、委託者から受託者に委託料が支払われます。

これに対してライセンス契約は、製品の製造だけでなく、販売についてもライセンシーが行います。また、ライセンシー側のニーズに基づいて締結されるため、ライセンス料を支払うのはライセンシー側です。

ライセンスの主な方法

ライセンス契約における許諾(ライセンス)の方法は、「専用実施権」と「通常実施権」の2つに大別されます。また、ライセンス方法のバリエーションとして「クロスライセンス」や「サブライセンス」などが挙げられます。

専用実施権と通常実施権

専用実施権」とは、対象となる特許・意匠・著作物・商標などを、独占的・排他的実施・使用できる権利です。
ライセンサーがライセンシーに対して専用実施権を与えた場合、ライセンサー自身も当該特許等を実施(使用)できなくなります。また、専用実施権を与えられるライセンシーは1社のみです。

通常実施権」とは、対象となる特許・意匠・著作物・商標などを実施・使用できる権利で、専用実施権でないものを指します。
ライセンサーがライセンシーに対して通常実施権を与えた場合、専用実施権とは異なり、ライセンサー自身も当該特許等を引き続き実施(使用)できます。また、通常実施権は複数のライセンシーに与えることも可能です。

クロスライセンス

クロスライセンス」とは、ライセンス契約の当事者間で、互いに特許・意匠・著作物・商標などの実施(使用)を許諾し合うことをいいます。

つまりクロスライセンスの場合、契約当事者はそれぞれライセンサーでもあり、ライセンシーでもあるということです。

サブライセンス

サブライセンス」とは、他社から許諾を受けた特許・意匠・著作物・商標などの実施(使用)を、さらに第三者へ許諾することをいいます。

ヒー

第三者へ…つまり、誰にでも許諾していいんですか?

ムートン

それだとライセンサーの権利を守ることができませんね。ライセンシーが第三者に対するサブライセンスを行うためには、ライセンス契約で明示的に認められている場合を除き、ライセンサーの許諾を得なければなりません

ライセンス契約に定めるべき主な条項と注意点

ライセンス契約の内容は、権利の種類や商品展開の方法などによって様々ですが、一般的に定めるべき主な条項は以下のとおりです。

・ライセンスの内容・範囲
・ライセンス料(ロイヤリティ)に関する事項
・ライセンス料の定め方
・ライセンス料の不返還条項
・ライセンシーの遵守事項(義務)
・実施(使用)状況等の報告
・帳簿の保管・閲覧
・秘密保持
・第三者との紛争に関する対応
・損害賠償
・契約の解除
・反社会的勢力の排除
・合意管轄・準拠法

ライセンスの内容・範囲

ライセンシーに対して認める行為を明確化するため、ライセンスの内容・範囲を定めます。具体的には、以下の事項を明記しておきましょう。

・ライセンスの種類(専用実施権・通常実施権)
契約期間
・許諾の対象地域
許諾範囲の制限(分野・数量・顧客など。もしあれば)

ライセンスの範囲が不明確にならないように、曖昧な文言を避けて規定する必要があります。

ライセンス料(ロイヤリティ)に関する事項

ライセンス料ロイヤリティ)についても、金額や計算方法を明確に定めておくことが重要です。

ライセンス料の定め方

ライセンス料の定め方には様々なパターンがありますが、一例として以下の方法が挙げられます。

定額実施料(Fixed Sum Royalty)
→ライセンスの実績に関係なく、契約期間に応じた固定額のライセンス料を支払います。

経常実施料(Running Royalty)
→ライセンスの実績に比例したライセンス料を支払います。販売価格に応じた「料率法」と、製品数量に応じた「従量法」の2つがあります。

利益に応じた実施料
→純利益に一定割合を掛けてライセンス料を計算します。

最低実施料(Minimum Royalty)
→ライセンス料の最低保証額を設定することがあります。上記の各方法と組み合わせることも可能です。

ライセンス料の不返還条項

一度支払ったライセンス料については、トラブルの複雑化を防ぐため、返還しない旨を合意しておくケースが多いです(不返還条項)。

ただし不返還条項の内容は、理由を問わず返還を認めないケースから、一定の場合(例えば権利が無効になった場合)に限って返還を認めるケースまで様々です。

ライセンシーの遵守事項(義務)

遵守事項には、ライセンシーが特許・意匠・著作物・商標などを実施(使用)するに当たって、守らなければならないルールを定めます。

遵守事項の具体的な内容は、ライセンス契約の種類などによって異なります。一例として、キャラクターライセンス契約の場合は、以下のような遵守事項を定めることが考えられます。

・使用できるキャラクターイメージは、ライセンサーから提供されたものに限るものとし、勝手に改変しないこと
・ライセンサーの指定する方法により、著作者・著作権者の表示を行うこと
・第三者による著作権侵害行為を発見した場合には、直ちにライセンサーへ報告すること
など

実施(使用)状況等の報告

ライセンスの範囲および遵守事項が適切に守られているかどうかをチェックするため、ライセンシーにはライセンサーに対する実施(使用)状況等報告義務を課すことが多いです。

例えば四半期ごと・半期ごと・1年ごとなど、期間を区切って報告書の提出等を求めることが考えられます。

帳簿の保管・閲覧

ライセンス料を実績ベースで計算する場合(経常実施料・利益に応じた実施料など)は、実際の売り上げ・利益を基にして適切な計算が行われているかどうかをチェックするため、ライセンシーによる帳簿の保管と、ライセンサーによる帳簿の閲覧権を定めるのが一般的です。

なおライセンサーとしては、契約終了後も数年間は、ライセンシーに帳簿の保管を義務付けることが望ましいでしょう。

秘密保持

ライセンスに関する秘密情報の漏えいを防ぐため、秘密保持に関する条項も定めておきましょう。具体的には、以下の事項を定めるのが一般的です。

・秘密情報の定義
・第三者に対する秘密情報の開示・漏えい等を原則禁止する旨
・第三者に対する開示を例外的に認める場合の要件
・秘密情報の目的外利用の禁止
・契約終了時の秘密情報の破棄・返還
・秘密情報の漏えい等が発生した際の対応
など

第三者との紛争に関する対応

ライセンスに関係する権利や製品などにつき、第三者からクレームを受けたり、訴訟を提起されたりした場合の対応についても定めます。

ライセンサーとライセンシーのどちらが主導的に対応するかに加えて、対応にかかる費用の分担についても明記しておきましょう。

損害賠償

契約違反が発生した場合における損害賠償の精算についても、ライセンス契約で定めておきましょう。

損害賠償規定に関しては、損害賠償の範囲をどのように定めるかが重要です。例えば、以下のように定めることが考えられます。

損害賠償の範囲の定め方

・民法の原則どおりとする場合
→「相当因果関係の範囲内で損害を賠償する」など

・民法の原則よりも範囲を広げる場合
→「一切の損害を賠償する」など

・民法の原則よりも範囲を狭くする場合
→「直接発生した損害に限り賠償する」、損害賠償の上限額を定めるなど

契約の解除

相手方が契約に違反した際には、ライセンス契約を解除できる旨を定めるのが一般的です。

ライセンスの種類などに応じた具体的な解除事由に加えて、解除の手続きについても明記しておきましょう(○日間の治癒期間を認める、直ちに無催告解除を認めるなど)。

反社会的勢力の排除

コンプライアンスの観点から、ライセンス契約にも反社会的勢力の排除に関する条項(反社条項)を定めることが推奨されます。

反社条項としては、主に以下の事項を定めます。

・当事者(役員等を含む。以下同じ)が暴力団員等に該当しないことの表明、保証
・暴力的な言動等をしないことの表明、保証
・相手方が反社条項に違反した場合、直ちに契約を無催告解除できる旨
・反社条項違反を理由に契約を解除された当事者は、相手方に対して損害賠償等を請求できない旨
・反社条項違反を理由に契約を解除した当事者は、相手方に対して損害全額の賠償を請求できる旨

合意管轄・準拠法

ライセンサー・ライセンシーの間で契約トラブルが発生した場合に備えて、第一審を戦う裁判所をあらかじめ指定しておきましょう(専属的合意管轄)。基本的には、自社の事業所に近い裁判所を指定することが望ましいです。

また、ライセンサー・ライセンシーのいずれかが海外企業の場合には、準拠法も定める必要があります。ライセンス契約の準拠法は、許諾の対象となる知的財産権の準拠法と揃えるのが一般的です(例えば、日本の特許に関するライセンス契約であれば、日本法を準拠法とする)。

この記事のまとめ

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