債務承認弁済契約書とは?
記載事項・記載例・テンプレート・収入印紙の額・
作成時の注意点などを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

債務承認弁済契約書」とは、債務者が既に負担している債務の内容を認めて、それを弁済する方法を債権者との間で合意する契約書です。
未払いとなっている債務の状況を整理・確認することや、弁済の負担を軽減することなどを目的として、債務承認弁済契約書が締結されることがあります。

債務承認弁済契約書には、債務の内容弁済の条件を明確に記載する必要があります。また、確認した債務が不払いとなることを想定して、スムーズに強制執行の申立てができるように、公正証書で債務承認弁済契約書を作成することが望ましいです。

債務承認弁済契約書の内容によっては、収入印紙の貼付が必要になることがあります。正しい金額の収入印紙を貼りましょう。

この記事では債務承認弁済契約書について、主な記載事項・記載例・収入印紙の要否・作成時の注意点などを解説します。

ヒー

古い金銭消費貸借契約書を巻き直して、「債務承認弁済契約書」を作成してほしいという依頼がありました。注意点はありますか?

ムートン

いくつか整理しておくべきポイントがあるので、確認していきましょう。契約書のひな形もご紹介しますね!

※この記事は、2025年3月17日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

債務承認弁済契約書とは

債務承認弁済契約書」とは、債務者が既に負担している債務の内容を認めて、それを弁済する方法を債権者との間で合意する契約書です。

債務承認弁済契約書を締結する目的

債務承認弁済契約書を締結することの主な目的は、未払いとなっている債務の状況を整理・確認することです。どのくらいの額の債務が残っていて、いつまでに支払う必要があるのかなどを確認することにより、完済までのスケジュールや見通しが明確になります。

また、既存の債務の支払い内容を変更する場合も、債務承認弁済契約書が締結されることがあります。
特に、債務の支払いが困難と思われるときは、減額支払いスケジュールの変更などを合意することが考えられます。この場合は、変更後の支払い内容を明記した債務承認弁済契約書などを締結します。

債務承認弁済契約書と金銭消費貸借契約書・借用書の違い

債務承認弁済契約書は、すでに発生している債務の内容を確認するものです。典型的には、過去に貸し借りをしたお金の返済状況を確認したうえで、現在の残高や今後の支払い方法などを合意する際に締結します。

これに対して、新たにお金を貸し借りする際には「金銭消費貸借契約書」を締結するか、または債務者が債権者に「借用書」を提出するのが一般的です。

ただし実際には、お金の貸し借りをした後で、その内容を確認するために金銭消費貸借契約書や借用書を作成するケースもあります。
記載された条件で債務を支払っていくという意味では、債務承認弁済契約書・金銭消費貸借契約書・借用書の間に大きな違いはありません。

なお、債務承認弁済契約書金銭消費貸借契約書は、債務者と債権者が共同で作成する合意文です。これに対して、借用書は債務者が単独で作成する書面となります。

債務承認弁済契約書の主な記載事項・記載例

債務承認弁済契約書には、主に以下の事項を記載します。

① 債務の内容と、債務者がそれを承認する旨
② 弁済の期日・方法・手数料の負担者
③ 利息
④ 遅延損害金
⑤ 期限の利益の喪失
⑥ 保証
⑦ 合意管轄

債務の内容と、債務者がそれを承認する旨

第1条(債務の内容および承認)
甲は、本契約締結日時点において、貸金返還債務として、乙に対して100万円の支払義務(以下「元本」という。)を負うことを認める。

債務承認弁済契約書によって確認する債務の内容と、債務者がそれを承認する旨を記載します。債務の種類(貸金返還債務、慰謝料など)や金額などを明記しましょう。

弁済の期日・方法・手数料の負担者

第2条(債務の弁済)
1.甲は、乙に対し、元本を以下の方法によって弁済する。弁済に要する手数料は、甲の負担とする。
弁済期日:○年○月以降、毎月末日
弁済額:毎月10万円ずつ
弁済方法:乙が指定する銀行口座への振込

2.前項にかかわらず、甲は、乙の承諾を得た場合に限り、元本を弁済期日の前に弁済することができるものとする。この場合、弁済に要する手数料および弁済方法については、前項の例による。

債務の元本の弁済期日弁済額弁済方法手数料の負担者などを定めます。弁済に要する手数料は債務者が負担するのが一般的です。

期限前弁済を認めるかどうかと、認める場合はそのルールも定めておきましょう。

利息

第3条(利息)
1.元本に対する利息(以下「利息」という。)は年5%で、本契約締結日の翌日以降、1日ごとに発生するものとする。

2.甲は乙に対し、前条に基づく元本の弁済と同時に、当該弁済の日(同日を含む。)までに発生した利息全額を支払うものとする。この場合、利息の支払いに要する手数料および支払方法については、前条第1項の例による。

利息の利率計算方法支払方法などを定めます。利息を支払うタイミングは、元本の弁済と揃えるのが一般的です。

遅延損害金

第4条(遅延損害金)
甲が元本または利息を支払うべき期日に遅れた場合は、甲は乙に対し、当該期日の翌日(同日を含む。)から支払い済みの日(同日を含む。)まで、年14.6%の割合による遅延損害金(以下「遅延損害金」という。)を支払うものとする。この場合、遅延損害金の支払いに要する手数料および支払方法については、第2条第1項の例による。

元本や利息の支払いが遅れた場合には、支払期日の翌日から支払い済みの日まで遅延損害金が発生します。
遅延損害金の利率は、特に定めがなければ法定利率年3%となります。それより高い利率を定める場合は、約定利率を契約書に明記しましょう。

期限の利益の喪失

第5条(期限の利益の喪失)
1.甲が元本または利息を支払うべき期日に遅れ、かつ当該遅滞が解消されないうちに乙の甲に対する通知が甲に到達したときは、甲は期限の利益を喪失し、乙に対して直ちに元本全額を弁済しなければならない。

2.前項に基づき、甲が期限の利益を喪失したときは、当該喪失の日の翌日から支払い済みの日まで、前条に基づく遅延損害金が発生するものとする。

元本や利息の支払いが遅れた場合には、債権者が債務者に対して、残りの元本の一括弁済を請求できるようにするのが一般的です。これを「期限の利益の喪失」といいます。

期限の利益を喪失させるための手続き(債権者の債務者に対する通知など)や、遅延損害金の取り扱いなどを定めましょう。

保証

第6条(保証)
1.丙は、本契約に基づき甲が乙に対して負担する一切の債務(元本、利息および遅延損害金を含むが、これらに限らない。)を連帯保証する。

2.前項の保証に係る極度額は、200万円とする。

債務者の親族などが債務を保証する場合は、保証人も債務承認弁済契約書の当事者となることがあります。
この場合は、保証に関する規定を設けましょう。債権者が保証人に対してスムーズに請求できるように、連帯保証とするのが一般的です。

また、契約に基づく一切の債務を保証する場合は「根保証」に当たると考えられます。個人が根保証を行う場合は、極度額の定めが必要となる点にご留意ください。

なお、保証人がいない場合や、保証契約を別途締結する場合は、債務承認弁済契約書において保証に関する条項を定める必要はありません。

合意管轄

第7条(合意管轄)
本契約に関して当事者間で紛争が発生した場合は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

債務承認弁済契約書の当事者間において、万が一紛争が発生した場合に、訴訟を提起する裁判所を合意します。住所地や本店所在地の最寄りの裁判所とすることが望ましいです。

債務承認弁済契約書のテンプレート(フォーマット)

債務承認弁済契約書のテンプレートを紹介します。実際の貸し借りの条件に応じて、内容を調整してご利用ください。

債務承認弁済契約書

○○(以下「甲」という。)と××(以下「乙」という。)は、以下のとおり債務承認弁済契約書を締結した。
 
第1条(債務の内容および承認)
甲は、本契約締結日時点において、貸金返還債務として、乙に対して100万円の支払義務(以下「元本」という。)を負うことを認める。


第2条(債務の弁済)1. 甲は、乙に対し、元本を以下の方法によって弁済する。弁済に要する手数料は、甲の負担とする。
弁済期日:○年○月以降、毎月末日
弁済額:毎月10万円ずつ
弁済方法:乙が指定する銀行口座への振込2. 前項にかかわらず、甲は、乙の承諾を得た場合に限り、元本を弁済期日の前に弁済することができるものとする。この場合、弁済に要する手数料および弁済方法については、前項の例による。


第3条(利息)
1. 元本に対する利息(以下「利息」という。)は年5%で、本契約締結日の翌日以降、1日ごとに発生するものとする。2. 甲は乙に対し、前条に基づく元本の弁済と同時に、当該弁済の日(同日を含む。)までに発生した利息全額を支払うものとする。この場合、利息の支払いに要する手数料および支払方法については、前条第1項の例による。


第4条(遅延損害金)
甲が元本または利息を支払うべき期日に遅れた場合は、甲は乙に対し、当該期日の翌日(同日を含む。)から支払い済みの日(同日を含む。)まで、年14.6%の割合による遅延損害金(以下「遅延損害金」という。)を支払うものとする。この場合、遅延損害金の支払いに要する手数料および支払方法については、第2条第1項の例による。


第5条(期限の利益の喪失)
1. 甲が元本または利息を支払うべき期日に遅れ、かつ当該遅滞が解消されないうちに乙の甲に対する通知が甲に到達したときは、甲は期限の利益を喪失し、乙に対して直ちに元本全額を弁済しなければならない。2. 前項に基づき、甲が期限の利益を喪失したときは、当該喪失の日の翌日から支払い済みの日まで、前条に基づく遅延損害金が発生するものとする。


第6条(保証)
1. 丙は、本契約に基づき甲が乙に対して負担する一切の債務(元本、利息および遅延損害金を含むが、これらに限らない。)を連帯保証する。2. 前項の保証に係る極度額は、200万円とする。


第7条(合意管轄)
本契約に関して当事者間で紛争が発生した場合は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。以上、本契約の締結を証するため、本書3通を作成し、各当事者が記名押印または署名捺印を行ったうえで、各1通を保有する。


○年○月○日
 
甲(債務者):


乙(債権者):


丙(連帯保証人):


債務承認弁済契約書を作成する際の注意点

債務承認弁済契約書を作成する際には、特に以下の2点に注意しましょう。

  • 債務の内容や弁済の条件を明確に記載する
  • 公正証書で作成することが望ましい

債務の内容や弁済の条件を明確に記載する

債務の支払いが疑義なく行われるように、債務の内容弁済の条件などは明確に記載することが大切です。特に利息の計算方法などは不明確になりやすいので、きちんとリーガルチェックを行いましょう。

公正証書で作成することが望ましい

特に債権者の立場では、債務承認弁済契約書は公正証書で作成することが望ましいです。

公正証書を作成しておけば、債務が不払いとなった場合に、強制執行をスムーズに申し立てることができます。契約書の紛失や改ざんを防げる点も、公正証書の大きなメリットです。

公正証書は、公証役場に申し込めば作成することができます。

債務承認弁済契約書には収入印紙を貼るべき?

債務承認弁済契約書には、収入印紙を貼るべき場合とそうでない場合があります。収入印紙の要否を確認したうえで、必要な場合は正しい金額を貼付しましょう。

収入印紙が必要となるケース

以下の債務について定める債務承認弁済契約書は、印紙税法上の課税文書とされているため、原則として収入印紙の貼付が必要です。

・不動産の売買代金
・土地の賃料
・運送料
・借入金の返済
・請負代金
など
※契約金額が1万円未満の場合は非課税

収入印紙が不要であるケース

債務承認弁済契約書に収入印紙の貼付を要するのは、印紙税法上の課税文書に当たる場合のみです。

例えば、物品の売買代金を支払う義務について定める債務承認弁済契約書は課税文書に当たらず、収入印紙を貼る必要はありません。

債務承認弁済契約書に貼るべき収入印紙の金額

収入印紙の貼付を要する債務承認弁済契約書は、印紙税法上の「第1号文書」または「第2号文書」に当たるケースが多いです。具体的には、債務の種類に応じて以下のように振り分けられます。

<第1号文書>
・不動産の売買代金
・土地の賃料
・運送料
・借入金の返済
など

<第2号文書>
・請負代金

第1号文書と第2号文書の印紙税額は、以下のとおりです。

<第1号文書の印紙税額>
契約金額印紙税額
1万円未満非課税
1万円以上10万円以下200円
10万円超50万円以下400円
50万円超100万円以下1,000円
100万円超500万円以下2,000円
500万円超1,000万円以下1万円
1,000万円超5,000万円以下2万円
5,000万円超1億円以下6万円
1億円超5億円以下10万円
5億円超10億円以下20万円
10億円超50億円以下40万円
50億円超60万円
契約金額の記載のないもの200円

(※不動産売買契約書等に関する印紙税は軽減措置により額が異なります)

<第2号文書の印紙税額>

契約金額印紙税額
1万円未満非課税
1万円以上100万円以下200円
100万円超200万円以下400円
200万円超300万円以下1,000円
300万円超500万円以下2,000円
500万円超1,000万円以下1万円
1,000万円超5,000万円以下2万円
5,000万円超1億円以下6万円
1億円超5億円以下10万円
5億円超10億円以下20万円
10億円超50億円以下40万円
50億円超60万円
契約金額の記載のないもの200円

債務承認弁済契約書については、原契約書に基づく契約金額を変更しない場合は「契約金額の記載のないもの」として取り扱われるため、貼付すべき収入印紙は200円です。

これに対して、原契約書で契約金額の定めがない場合や、原契約が口頭契約である場合などには、債務承認弁済契約書によって新たに契約金額を証明することになります。
これらの場合は、契約金額に応じた収入印紙を貼付しなければなりません。

ムートン

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参考文献

国税庁ウェブサイト「債務承認弁済契約書」