AIコンプライアンスとは?
違反例や企業のルール・とるべき強化策
などを分かりやすく解説!

契約ウォッチの2026年度版カスタマーハラスメント研修資料です。弁護士監修の資料です。2026年10月に施行される改正労働施策総合推進法と、厚生労働省のカスハラ指針の内容を踏まえた資料です。そのまま研修に使えます。

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この記事のまとめ

「AIコンプライアンス」とは、企業がAIを利用するに当たり、法令その他の社会規範を遵守することをいいます。AIを利用する際には、例えば個人情報や営業秘密の漏えい、著作権侵害、誤情報の発信といった違反が生じ得るところ、企業はこれらの違反を防ぐよう努めなければなりません。

AIコンプライアンスを強化するための方法としては、社内規程の整備、AI利用を統括する専門部署の設置、コンプライアンス研修の実施、違反発生時の対応手順の明確化などが挙げられます。

実際にコンプライアンス違反が発覚したときは、事実関係を迅速・正確に調査したうえで、ステークホルダーへの情報発信や被害者対応、再発防止策の検討などを行いましょう。

この記事ではAIコンプライアンスについて、違反例や企業がとるべき強化策などを解説します。

ヒー

業務でAIを利用する際には、どのような点に注意すべきですか?

ムートン

情報漏えいや著作権侵害などのリスクを理解し、利用ルールを整備することが重要です。

※この記事は、2026年9月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

コンプライアンスについて意味や定義、企業法務としての対策がわかる2026年度版コンプライアンス完全ガイドです。近年では、内部統制の整備や人的資本開示、最新の法改正対応も含めた適切な体制構築が企業に強く求められています。契約ウォッチではコンプライアンスについて企業が取るべき実務対策までを徹底解説します。

AIコンプライアンスとは

「AIコンプライアンス」とは、企業がAIを利用するに当たり、法令その他の社会規範を遵守することをいいます。

AIの利用は業務の効率化や質の向上につながり得る一方で、さまざまなコンプライアンス違反のリスクを伴います。個人情報や営業秘密の漏えい、著作権侵害、誤情報の発信などがその一例です。
企業はこれらの不祥事を防ぐため、AIコンプライアンスの推進に取り組むことが求められます。

AIコンプライアンスとAIガバナンスの違い

AIの利用を適切に管理・統制するための仕組みは「AIガバナンス」と呼ばれることがあります。

AIガバナンスは、AIの利用・管理に関する事項を幅広くカバーする概念です。法令その他の社会規範の遵守を主眼とするAIコンプライアンスも、AIガバナンスの一環として位置づけられます。
AIガバナンスにはそのほかにも、経営判断のプロセスや組織体制、従業員に対する教育など幅広い領域が含まれます。

AIコンプライアンスに関する国内・国外の規制

AIコンプライアンスに関する規制は、国内外において整備が進んでいます。

日本では2025年9月に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(通称:AI法)」が全面施行され、AIの適正な研究開発・活用や透明性確保などが定められています。

EUでは「EU Artificial Intelligence Act」が制定されており、AIのリスクに応じた禁止行為、高リスクAIへの規制、生成AIの透明性確保義務などが段階的に施行されています。

AIの利用について注意すべきコンプライアンス違反の事例・具体例

企業がAIを利用するに当たり、注意すべきコンプライアンス違反としては次の例が挙げられます。

① 個人情報・営業秘密の漏えい
② 著作権侵害
③ 誤情報の発信
④ 不適切な表現の発信

個人情報・営業秘密の漏えい

生成AIに個人情報や営業秘密に当たる情報を入力すると、それがAIの学習に利用され、別のユーザーの利用時に出力されるなど、予期せぬ形で漏えいしてしまうことがあります。

2023年には、韓国企業であるサムスン電子のエンジニアがChatGPTにアップロードした社内機密のソースコードが、外部に流出してしまった事件が報道されました。同社は従業員に対してAI搭載チャットボットの使用を禁止し、その動きはほかの世界的大企業にも波及しました。

参考:Forbes JAPANウェブサイト「サムスン、ChatGPTの社内使用禁止 機密コードの流出受け」

著作権侵害

他人の著作物を生成AIに読み込ませた結果、生成された著作物からオリジナルの著作物の本質的な特徴を直接感得できる場合は、原則として著作権者の許諾を得ない限り、複製や改変(翻案)をすることができません。
著作権者の許諾を得ることなく複製や翻案をすると、著作権侵害の責任を負う可能性があります。

2025年、米国企業のパープレキシティ社が日本経済新聞社・朝日新聞社や米国のNYタイムズ社から、生成AIを用いた検索サービスについて著作権侵害行為の差止めや損害賠償を請求された事件が報道されました。
日本経済新聞社・朝日新聞社が裁判所に提出した訴状によれば、パープレキシティ社は両社のサーバーへ不正にアクセスして記事を収集し、その内容を生成AIで要約した記事を生成・提供したとのことです。

参考:日本経済新聞「日経・朝日、米AI検索パープレキシティを提訴 著作権侵害で」
参考:日本経済新聞「NYタイムズ、米AI新興パープレキシティを提訴 著作権侵害で」

誤情報の発信

生成AIが出力する情報が常に正しいとは限らず、誤った情報が出力されることもあります。誤っていることに気づかないまま、自社サイトやSNSなどを通じてその情報を発信すると、企業としての社会的信用を失ってしまいます。

2025年、宮城県女川町でクマが発生したかのように見えるフェイク画像がSNS上に投稿されました。投稿者自身もフェイクであることに気づいておらず、女川町では小中学校の部活動の中止や集団下校などの大きな騒動に発展しました。

参考:読売新聞オンライン「クマのAIフェイク画像を見抜けずSNS投稿、Xで366万回閲覧…女川町への情報提供者も虚偽と知らず」

不適切な表現の発信

生成AIは、特定の人種に対する差別(ヘイトスピーチ)やわいせつな表現などの不適切な出力を行う場合があります。チェックの仕組みが働かないまま、不適切な出力をそのまま対外的に発信すると、大規模な企業不祥事に発展し得るので注意が必要です。

2025年には、AIチャットボットの「Grok」がユダヤ民族に対する差別的な表現を含む回答を相次いで行ったことが、世界各国の大きな反発を招きました。

参考:日本経済新聞「マスク氏の対話型AI、「反ユダヤ」の回答連発 苦情が殺到」

【2026年公表】「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き」とは

経済産業省は、2026年4月に「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き」を公表しました。

同手引きは、AI利活用の場面における不法行為法上の論点を中心に、現行法の解釈適用に関する方向性を示したものです。
AIを用いたサービスやシステムがどのような事故を引き起こし得るのか、事故について誰がどの程度責任を負うのかといった問題を検討する際の参考資料として役立ちます。

参考:経済産業省ウェブサイト「「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き」を公表しました」

AIコンプライアンスを強化するため、企業がとるべき対策

AIコンプライアンスを推進して不祥事のリスクを防ぐため、企業は次に挙げる対策などを行いましょう。

① AI利用に関する社内規程の整備
② AI利用を統括する専門部署の設置
③ 従業員に対するコンプライアンス研修の実施
④ コンプライアンス違反発生時の対応手順の明確化

AI利用に関する社内規程の整備

AIの不適切な利用を防ぐため、AI利用に関する社内規程を整備しましょう。

次の事項などを社内規程によって明確化しておけば、従業員が行動指針として参照でき、不適切なAI利用の防止につながります。

・利用できるAIサービス
・AIを利用することができる業務
・AIに情報を入力する際に遵守すべきルール(入力してはならない情報など)
・AIによる生成物の確認フロー
・AIによる生成物の利用に関するルール
・AIの利用記録の保存
・AI利用に関するセキュリティ対策
・従業員に対する研修
・規程の見直し
など

AI利用を統括する専門部署の設置

AI利用に伴うリスクを全社的に管理するためには、AI利用を統括する専門部署を設置することが望ましいです。

専門部署には、AIツールの導入や利用状況の確認、社内規程の制定や改定、従業員からのAI利用に関する相談などを一元的に担当させます。さらに、法務部門や情報セキュリティ部門などとの連携も確保すれば、AI利用に伴うリスクの予防や、リスクが顕在化した場合の対応を効果的に行うことができます。

予算等の関係で専門部署を設けることが難しい場合でも、AI利用を統括する責任担当者を定めておきましょう。

従業員に対するコンプライアンス研修の実施

AIの利用に伴うリスクについて、従業員に正しい知識を身に付けさせることも重要です。そのためには、定期的にAIコンプライアンスに関する研修を実施しましょう。

研修では、情報漏えい・著作権侵害・誤情報や不適切な表現の発信などのリスクや、社内規程で定めたルールの内容、トラブルが生じた際の対応手順などを取り上げます。
従業員が実際の業務をイメージしながら学べるように、ケーススタディなどの具体的な事例に沿った形式を採用するのがよいでしょう。

コンプライアンス違反発生時の対応手順の明確化

AI利用に関して情報漏えいや著作権侵害などのコンプライアンス違反が発生した場合に備え、企業としての対応手順を明確化しておきましょう。

具体的には、次の事項などに関する手順をあらかじめ定めておきます。

・違反発生時の報告(報告先、報告すべき事項など)
・違反に対応する部署、部署間の連絡体制
・事実関係の調査(ヒアリング、客観的資料の確認など)
・対外的な情報発信(記者会見、プレスリリース、ステークホルダーへの説明など)
・被害者への対応
・違反行為者に対する処分
・再発防止策
など

対応手順を明確化しておけば、実際にコンプライアンス違反が発生した際、スムーズかつ的確な対応がしやすくなります。

AIコンプライアンス違反が発生した場合の対処法

社内においてAIコンプライアンス違反が発生してしまったときは、次の対処を迅速に行って事態の収拾を図りましょう。

① 事実関係の調査・関係者間での情報共有
② ステークホルダーに対する情報発信・説明
③ 監督官庁への報告
④ 被害者への対応
⑤ 違反者に対する懲戒処分の検討
⑥ 再発防止策の検討・実施

事実関係の調査・関係者間での情報共有

まずは、AIコンプライアンス違反に関する事実関係を調査しましょう。
AIの利用に関する記録(入力や出力の内容・日時、利用した者など)や、AI生成物が共有された関係者の範囲などを確認し、どのような影響が生じているのか、どのような対応が必要なのかを分析・検討します。

事実関係に関する調査結果などの情報は、AI利用を統括する部署のほか、経営陣・法務部門・情報セキュリティ部門などとの間で共有し、全社的な連携ができる体制を整えましょう。

ステークホルダーに対する情報発信・説明

株主・顧客・取引先などのステークホルダーに対しては、AIコンプライアンス違反に関する事実関係・影響の範囲・対応状況などの情報を適切に発信・説明することが大切です。タイムリーな情報発信や説明を行えば、ステークホルダーの信頼を繋ぎ留められる可能性が高まります。

ステークホルダーに対する情報発信・説明の方法としては、記者会見やプレスリリース、個別の説明などが挙げられます。誠実さを伝えつつステークホルダーの不安を解消できるように、状況に応じて適切な方法を選択しましょう。

監督官庁への報告

AI利用に起因するコンプライアンス違反の中には、監督官庁に対する報告が義務付けられているものもあります。個人情報の漏えいなどがその典型例です。

自社に適用される法規制を確認したうえで、必要な場合は漏れなく報告を行いましょう。報告すべき事項や報告の期限などについては、法令の規定を遵守する必要があります。

被害者への対応

コンプライアンス違反によって被害を受けた人がいる場合は、その状況を確認したうえで、被害者に対する謝罪や損害賠償などを行いましょう。特に被害者が多数に及ぶ場合には、組織的な対応が求められます。

損害賠償については、被害者から増額を求められたり、訴訟を提起されたりする可能性があります。その場合は、弁護士と連携しながら対応してください。

違反者に対する懲戒処分の検討

AIコンプライアンス違反に当たる行為をした従業員に対しては、懲戒処分を検討しましょう。

ただし、懲戒処分を行う際には、就業規則上の根拠や、行為と処分の内容が釣り合っているかどうかをよく確認することが大切です。安易な懲戒処分は無効となるおそれがあるので、懲戒処分の可否を含めて慎重な検討を行いましょう。

再発防止策の検討・実施

同じようなAIコンプライアンス違反が再び発生しないように、教訓を生かして再発防止策を検討しましょう。社内規程や実務上の対応フローなどを再点検し、改善すべき部分があれば見直しを行います。

再発防止策の内容は社内全体に周知し、新たなルールや方針に基づくAIコンプライアンス違反の予防に取り組みましょう。

参考文献

経済産業省ウェブサイト「「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き」を公表しました」

ムートン

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