派遣社員とは?
雇用するメリット・デメリットや
3年ルールについて分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

派遣社員とは、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業で指示を受けて働く雇用形態です。

・給与の支払いや社会保険の手続きは派遣会社が行います。
有期雇用無期雇用があります。
・派遣可能期間の上限や禁止業務があるため事前に把握しておくことが大切です。

本記事では、派遣社員について、基本から詳しく解説します。

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派遣社員を雇用しようと思っていますが、何に注意する必要がありますか?

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派遣社員を雇用する際には派遣可能期間の上限や禁止業務があるため、事前に内容を把握しておくことが大切です。派遣社員のメリット・デメリットに合わせて、知っておくべきルールについて解説します。

※この記事は、2025年6月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名等を次のように記載しています。

  • ・労働者派遣法⋯労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

派遣社員とは

派遣社員とは、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業で指示を受けて働く雇用形態です。給与の支払いや社会保険の手続きは派遣会社(派遣元企業)が担い、就業先とは直接の雇用関係にありません。

契約期間が定められている有期雇用が基本で、業務内容や勤務先に応じて契約が更新されるケースもあります。

派遣社員の理解を深めるために、他の雇用形態との違いについて以下で解説します。

正社員との違い

派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業で働く間接雇用の形態です。正社員との大きな違いは、雇用主が派遣会社である点です。

給与や社会保険手続きなども派遣会社が担い、雇用期間は有期契約になります。一方、正社員は無期雇用で、賞与支給や昇給も対象です。派遣社員は時給制が多く、ボーナスは支給されないこともありますが、同一労働同一賃金の考え方により待遇改善も進んでいます。

福利厚生は派遣元である派遣会社の制度が適用されるため、従業員にとってはどの派遣会社と契約するかも働きやすさに影響します。

契約社員との違い

契約社員は、勤務先企業と直接契約を結ぶ有期雇用です。派遣社員との違いは、雇用主が企業か派遣会社かという点にあります。

契約社員は業務指示や就業規則などを全て就業先企業に従い、1回の契約期間は原則3年までです。また、契約期間が通算5年を超えた場合、労働者は無期雇用への転換を申し込むことができます。

一方、派遣社員が同じ部署で働けるのは原則3年までと法律で制限されています。正社員登用の機会も、契約社員は企業判断で行われますが、派遣社員は紹介予定派遣などの制度を経て採用される流れが一般的です。

派遣の種類

派遣には、以下のような種類があります。

  • 登録型派遣
  • 無期雇用派遣
  • 紹介予定派遣

派遣社員の雇用形態の種類について整理し、それぞれの特徴や導入時の検討ポイントを紹介します。

登録型派遣

登録型派遣は、派遣社員と派遣会社が仕事が決まったタイミングで契約を結ぶ有期雇用の雇用形態です。

契約期間は3カ月から1年程度が一般的で、期間満了とともに雇用も終了します。勤務日数や時間を比較的柔軟に調整できるため、子育て中の主婦(夫)や学生など、限られた時間で働きたい人材の受け入れにも適しています。

また、短期間での人材補充や繁忙期対応など、スポット的な人員ニーズにも対応しやすいのが特徴です。

無期雇用型派遣

無期雇用型派遣は、派遣社員が派遣会社と期間の定めがない契約を結ぶ雇用形態のことで「常用型派遣」ともいわれています。派遣先での勤務が終了しても雇用契約は続くため、派遣社員にとっては安心して働き続けられる環境が整っています。

「3年ルール」の対象外となるため、同じ派遣スタッフに長く働いてもらうことが可能です。特に専門性の高い人材を、安定的に確保したい企業にとっては有効な選択肢といえます。

ただし、無期契約へ切り替えるには、派遣会社が定める一定の基準を満たす必要があるため、事前に確認しておくことが大切です。

紹介予定派遣

紹介予定派遣は、派遣期間(最長6カ月)を経て、派遣社員と企業双方の合意があれば、正社員や契約社員として直接雇用に切り替えられる仕組みです。

実際の業務を通じてスキルや職場との相性を見極められるため、採用後の早期離職リスクを抑えやすいのが特徴です。特に経理職やIT職など、専門性が求められるポジションでは、派遣期間中の実務能力を踏まえたうえでの登用判断ができます。

ただし、必ずしも登用が前提ではないため、採用基準や評価の観点をあらかじめ明確にしておくことが、制度を有効に活用するためのポイントになります。

派遣社員を雇用するメリット

企業が派遣社員を活用することで得られる主なメリットは、以下のとおりです。

  • 専門性の高い人材を活用できる
  • 採用・教育コストを削減できる
  • 必要な期間だけ雇用できる
  • 労務管理の負担軽減につながる

それぞれのメリットについて解説します。

専門性の高い人材を活用できる

派遣社員を活用することで、特定の業務に必要なスキルを持つ人材を短期間で確保できます。

派遣会社にはIT・経理・貿易事務など、専門性の高い分野に特化した登録者が多数おり、企業の業務内容に合った人材を迅速に紹介してもらえるのが特徴です。例えば、システム開発でJava経験者が急に必要になった際も、派遣であれば1〜2週間で人材が確保できる場合があります。

経理部門でも、決算期に税務経験者を派遣で補い、担当者の負担を軽減することも可能です。このように、必要な時期に即戦力人材を活用できるのは、派遣ならではのメリットといえます。

採用・教育コストを削減できる

派遣社員を活用することで、求人広告の掲載や面接対応、入社手続きといった採用業務にかかる手間やコストを削減できます。

派遣会社によって、スキルやビジネスマナーの確認が事前に行われているため、必要な人材をスムーズに受け入れやすいのも特徴です。

派遣先の企業は、自社ルールや業務フローだけを伝えれば良いので、即日など短期間での稼働開始が可能です。即戦力を求める現場にとって有効な選択肢といえるでしょう。

必要な期間だけ雇用できる

派遣社員は契約期間を柔軟に設定できるため、短期プロジェクトや繁忙期など、一時的な人手不足にも対応しやすい働き方です。

例えば、小売業では年末年始のセールに合わせて3カ月間だけ販売スタッフを増員し、業績アップと正社員の負担軽減を両立することが可能です。製造業でも、新製品の立ち上げ時に6カ月間だけ品質管理スタッフを確保し、プロジェクト終了と同時に契約を終了することで人件費の最適化を図れます。

業務量や期間に応じて必要な人材を確保できる点は、派遣活用の大きなメリットです。

労務管理の負担軽減につながる

派遣社員の労務管理は基本的に派遣会社が行うため、企業側の手間を軽減できます。

給与計算や社会保険の手続き、有給休暇の管理などは派遣会社が対応するため、企業は勤怠管理と業務指示に専念できます。また、法改正への対応も派遣元が担うため、コンプライアンス面の不安も抑えられる点もメリットです。

例えば、正社員の労務管理を1名で担当している場合、繁忙期に派遣社員を活用することで担当者の負担を増やすことなく必要な人員を確保できます。

派遣社員を雇用するデメリット

派遣社員を雇用する主なデメリットは以下のとおりです。

  • 機密情報の管理と漏洩リスクへの配慮が必要になる
  • 社内とのコミュニケーションや一体感に差が出やすい

デメリットを把握することで、適切な対策を整えられるでしょう。

機密情報の管理と漏洩リスクへの配慮が必要になる

派遣社員は異なる企業で働く機会が多く、業務ごとに職場が変わるケースもあるため、正社員と比べてひとつの企業に対する帰属意識が希薄になりやすい傾向があります。そのため、機密情報や顧客データを扱う業務では、セキュリティ面の配慮が欠かせません。

特に金融・IT・製造業などでは、USBの使用制限や専用端末の活用、印刷や操作ログの監視などの対策が有効です。また、NDA(機密保持契約)の締結を徹底し、派遣社員向けに情報管理研修を実施することでリスクを軽減できます。

業務に応じたアクセス権限の設定や、ログ確認の体制を整えることも、安全な運用に向けた重要なポイントです。

社内とのコミュニケーションや一体感に差が出やすい

派遣社員は契約期間が限られていることから、企業文化や方針への理解が深まりにくく、業務に必要な情報が行き届かない可能性があります。その結果、業務上のコミュニケーションが不足し、ミスやトラブルにつながる可能性がある点がデメリットです。

例えば、正社員からのノウハウ共有が不十分で作業品質に差が出たり、社内会議に派遣社員が参加できず、必要な情報が行き届かなかったりするケースなどが考えられるでしょう。

コミュニケーション不足を防ぐためには、定期的な情報共有ミーティングの実施や業務マニュアルの整備、派遣社員の声を拾う仕組みを整えることが大切です。

派遣社員を受け入れる際に知っておくべきルール

派遣社員を受け入れる際には、以下のルールを理解しておく必要があります。

  • 3年という期間制限ルール
  • 派遣が禁止されている業務
  • 労働契約申込みみなし制度

派遣社員を受け入れる際には、労働者派遣法をはじめとした法的ルールを正しく理解し、適切に対応することが大切です。

3年という期間制限ルール

労働者派遣法では、派遣先に対し、有期雇用の派遣労働に関して事業所単位の期間制限労働者個人単位の期間制限の2つが設けられており、いずれも原則3年を超えて継続することはできません。(40条の2・40条の3)

ここでいう事業所単位とは、課やグループなど、業務を行う一定の単位を指します。これらのルールは一般的に3年ルールとも言われ、派遣労働の長期化を防ぎ、安定した雇用への移行を促すための制度です。

事業所単位の期間制限と個人単位の期間制限について整理すると次のようになります。

2種類の期間制限概要
事業所単位同一の派遣先事業所において同一の業務について有期雇用の派遣社員を継続して受け入れられるのは原則3年まで。
派遣社員が交代しても配属先と業務内容が同一であればこの期間は通算される。
個人単位同一の派遣社員を同一の組織単位(課、グループなど)で受け入れることができるのは原則3年まで。

個人単位の期間制限は延長できませんが、事業所単位の期間制限は派遣開始日から期間制限の抵触日(後述)の1カ月前の日までに以下の手続きを経ることで、さらに3年間を上限として期間を延長できる可能性があります。

  • 過半数労働組合等に対して書面による延長の意向の通知を行う
  • 過半数労働組合等から異議があった場合、派遣可能期間が経過する前に、期間延長の理由と延長期間、当該異議への対応方針を説明する

期間制限に関するルールに違反した場合は罰則が科されたり、行政指導の対象となったりする可能性もあるため、優秀な人材を継続的に確保するためにも、事前に対応方針を検討しておくことが大切です。

抵触日とは

抵触日とは、派遣可能期間が終了した翌日のことを指します。個人単位と事業所単位それぞれに抵触日があるため、両方を把握する必要があります。また、派遣契約や更新のタイミングで、派遣先企業は派遣元企業に抵触日の通知を行わなければなりません。

さらに、個人単位での抵触日と事業所単位の抵触日は並行して管理する必要があり、先に来る抵触日の到来をもって当該派遣労働の継続ができなくなります。

3年ルールの例外

派遣社員のなかには、労働者派遣法の3年ルールが適用されないケースもあります。例外に該当するのは、以下のようなケースです。

  • 派遣社員が60歳以上である場合
  • 派遣会社と無期雇用契約を締結している場合
  • 産前産後休業・育児休業・介護休業の代替要員として就業する場合
  • 日数限定(月10日以下)の業務に従事している場合

例えば、無期雇用のITエンジニアが長期プロジェクトに参加する場合や、育休中の代替スタッフとして一時的に派遣される場合などが該当します。ただし、例外規定の適用には明確な条件があり、派遣会社との事前確認や記録管理が欠かせません。

参考:厚生労働省「派遣労働者を受け入れるにあたって」

派遣が禁止されている業務

労働者派遣法では以下に該当する業務への派遣は禁止されています。

  • 港湾運送業務
  • 建設業務
  • 警備業務
  • 病院等における医療関係業務(紹介予定派遣の場合、産休・育休社員の代替である場合など一部例外あり)

上記に該当する業務は、派遣社員にとって危険が多い点や、特殊な技術を必要であるという点が禁止の理由です。

労働契約申込みみなし制度

労働契約申込みみなし制度とは、労働者派遣法に違反した場合、派遣先企業が派遣社員に対して「直接雇用の申込みをした」とみなされる制度です。例えば、派遣禁止業務への配置や無許可の派遣会社からの受け入れ、派遣期間(3年ルール)の超過などが該当します。

労働契約申込みみなし制度が適用されると、企業は知らないうちに派遣社員を正社員として雇う義務を負う可能性があるため注意が必要です。

派遣を受け入れる際は、業務内容や契約期間、派遣元の許認可状況を事前に確認し、法務部門と連携したチェック体制を整えることが大切です。

信頼できる派遣会社の選び方

信頼できる派遣会社を選ぶ際には以下のポイントを確認しましょう。

  • 自社の業界や職種への派遣経験が豊富にあるか
  • 派遣後のフォロー体制が整っているか
  • 料金体系は自社に合っているか

それぞれのポイントについて具体的に解説します。

自社の業界や職種への派遣経験が豊富にあるか

派遣会社を選ぶ際は、自社の業界や職種に関する理解や実績があるかを確認することが大切です。

業界特有の用語や業務フローを把握している派遣会社であれば、ミスマッチのリスクが低く、スムーズな人材配置が期待できます。例えば製造業であれば品質管理や安全管理の知識が、IT業界であれば使用する言語や開発工程への理解が必要になります。

過去の紹介事例や保有資格、研修体制などをチェックし、自社の業務に対する親和性が高いかを見極めましょう。業界に精通した派遣会社と連携することで、より精度の高い人材確保が可能になります。

派遣後のフォロー体制が整っているか

派遣社員が職場にスムーズに定着するためには、派遣会社による就業後のフォロー体制が整っているかどうかが重要です。

例えば、就業開始後の1週間・1カ月・3カ月といったタイミングで定期面談を実施しているか、24時間対応の相談窓口があるかといった点がチェックポイントになります。

現場訪問やスキルアップ支援などの継続的なサポートも、派遣社員のモチベーション維持や生産性の向上につながります。

また、トラブル発生時の対応方針や相談体制、過去の定着率なども含めて確認し、安心して受け入れられる体制が整っている派遣会社を選ぶことが大切です。

料金体系は自社に合っているか

派遣会社を選定する際は、料金の内訳が明確で、自社の予算や採用方針に合っているかを確認しましょう。

派遣料金には、時給に加えて社会保険料や管理費が含まれますが、その構成や契約条件は会社ごとに異なります。なお、派遣会社はホームページなどでマージン率等の公開を義務付けられているため、派遣労働者や派遣先企業にとって判断材料のひとつになりえます。

例えば、長期契約による割引制度や、月額固定型・成果報酬型など、さまざまな料金プランがあります。

また、料金だけで判断せず、人材のスキルやサポート体制とのバランスも含めて総合的に比較検討することが大切です。見積もりの段階で、追加費用の有無や契約期間による料金の変動も事前に確認しておくと安心です。

派遣社員を正社員として雇用する方法

派遣社員を正社員として雇用するための主な方法は以下のとおりです。

  • 紹介予定派遣の活用
  • 正社員登用制度の設計と運用
  • キャリアアップ助成金制度の利用

派遣社員を長期的に活用したい、あるいは優秀な人材を将来的に正社員として迎えたいと考える企業は、派遣社員からの登用も検討しましょう。

紹介予定派遣の活用

紹介予定派遣は、一定期間(最長6ヶ月)派遣社員として勤務したうえで、企業と本人の合意があれば正社員や契約社員として直接雇用に切り替える仕組みです。実際の業務を通じてスキルや社内との相性を確認できるため、採用後のミスマッチを防ぐ手段として活用されています。

例えばIT企業では、プログラマーのスキルやチームへの適応力を見極めたうえで正社員登用を判断したり、事務職では日常業務や社内ツールへの習熟度を踏まえて採用を検討したりすることが可能です。

派遣期間中に評価基準を明確にしておくことで、登用後の定着にもつながります。

正社員登用制度の活用

企業独自の正社員登用制度を設けておくことで、派遣社員のモチベーション向上や、安定した人材確保につながります。あらかじめ登用の条件や評価基準を明確にし、一定の勤続期間や業務評価、スキルの習得状況などに応じて登用の機会を設けることで、組織への定着も期待できます。

例えば、勤続年数と業務習熟度を基準とした登用制度や、現場からの推薦・評価を踏まえて判断する仕組みなど、職種や業務内容に応じてさまざまな制度設計が可能です。

制度を運用する際は、登用後の処遇やキャリアパスについても事前に丁寧に説明しておくことが大切です。

キャリアアップ助成金制度の活用

派遣社員を派遣先企業が正社員として雇用する際には、国のキャリアアップ助成金制度を活用することも可能です。この制度は、非正規雇用者の処遇改善を目的としており、一定の条件を満たすことで1名あたり30万円〜80万円の助成金が支給されます。

助成金を活用するためには、事前のキャリアアップ計画の提出が必要となるため、計画段階から労働局や社労士への相談を進めておくとスムーズです。

ムートン

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参考文献

厚生労働省「派遣労働者を受け入れるにあたって」

厚生労働省「キャリアアップ助成金」

厚生労働省「労働者派遣法」

厚生労働省「労働契約申込みみなし制度の概要」

監修

アバター画像
遠藤良介 社会保険労務士(愛知社労士会所属)
Reメンバー労務オフィス
労務相談、社会保険・労働保険手続き、社内規定類作成、ライフプランニング相談ほか