休日出勤とは?
種類・割増賃金率・休憩時間の取り扱い・
拒否できるか否かなどを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
-
休日出勤とは、労働者が休日に出勤して働くことをいいます。持ち帰った仕事を家で休日に行う場合や、休日にテレワークを行う場合なども休日出勤に当たります。
会社の休日は、主に、「法定休日」と「法定外休日(所定休日)」の2つに分類でき、これらの休日に働くことを全て「休日出勤」と呼びます。ただし、法定休日出勤か法定外休日出勤かで、割増賃金率などが異なります。
使用者(会社)が労働者に休日出勤を命じるためには、労働契約または就業規則の根拠が必要です。
使用者は、休日出勤の時間を正しく管理しないと、労働者との間でトラブルになる可能性が高いので注意が必要です。
この記事では休日出勤について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年8月9日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
休日出勤とは
休日出勤とは、労働者が休日に出勤して働くことをいいます。
休日に会社に出社することに限らず、
- 持ち帰った仕事を家で休日に行う場合
- 休日にテレワークを行う場合
なども休日出勤に当たります。
休日と休暇の違い
休日とは、もともと労働者の労働義務がない日をいいます。
これに対して休暇とは、本来は労働日であるものの、労働基準法や就業規則などに基づいて労働義務が免除された日をいいます。例えば、労働基準法に基づく有給休暇や、就業規則に基づく私傷病休暇などが休暇に当たります。
休日出勤時の休憩時間の取り扱い
休日出勤時も、通常の労働日同様、労働時間に応じて以下のとおり、休憩を与えなければなりません(労働基準法34条)。
- 労働時間が6時間を超える場合:45分以上の休憩
- 労働時間が8時間を超える場合:1時間以上の休憩
なお、休日出勤の時間が6時間以内の場合は、休憩を与えなくても違法ではありません。
休日出勤は拒否できる?
休日出勤命令が適法である場合、労働者は休日出勤を拒否できません。適法な会社の命令に反して休日出勤を拒否すると、懲戒処分の対象となる可能性があります。
これに対して、違法な休日出勤命令は拒否できます。
企業が適法に休日出勤を命じるための要件については、「企業が適法に休日出勤を命じるための要件」にて後述します。
休日出勤の種類
休日出勤は、
- 法定休日の出勤
- 法定外休日(所定休日)の出勤
の2つに大別されます。
1|法定休日の出勤
法定休日とは、労働基準法35条に基づき付与が義務付けられた休日です。1週間のうち1日、または4週間を通じて4日の休日が法定休日に当たります。
自社の法定休日の調べ方
どの休日が法定休日に当たるかは、以下の要領で決まります。
①労働契約または就業規則に定めがある場合
→その定めに従います。
②労働契約または就業規則に定めがない場合
→対象期間(1週間または4週間)において、もっとも後ろに位置する休日が法定休日となります。なお、対象期間の初日は日曜日です。
(例)土曜・日曜が休みの場合は、土曜が法定休日
法定休日に労働者が出勤した場合、使用者は休日手当として、通常の賃金に対して135%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
2|法定外休日(所定休日)の出勤
法定外休日(所定休日)とは、法定休日以外の休日です。
法定外休日に労働者が出勤した場合、使用者は以下のとおり、残業手当を支払う必要があります。なお、法定労働時間は原則として「1日8時間・1週40時間」です。
法定内残業に当たる場合
法定内残業とは、会社が定める所定労働時間は超えるが、法定労働時間の範囲内の残業のことです。
【所定労働時間が7時間の会社で2時間残業した場合の考え方】
休日出勤をした時間が、法定労働時間の範囲内である場合は「法定内残業」となり、残業手当として通常の賃金が発生します。
法定外残業(時間外労働)に当たる場合
休日出勤した時間が、法定労働時間を超える場合は「法定外残業(時間外労働)」となり、時間外労働手当として、通常の賃金に対して125%以上(※)の割増賃金が発生します。
※月60時間を超える部分については、通常の賃金に対して150%以上
【休日出勤の種類まとめ】
休日出勤は違法?
企業が労働者に対して休日出勤を指示することは、必ずしも違法ではありません。一定の要件を満たせば、労働者に休日出勤を命じることもできます。
企業が適法に休日出勤を命じるための要件
要件1|36協定が締結されている
事業場の労働者の過半数で構成される労働組合、または事業場の労働者の過半数代表者との間で、「36協定」を締結する必要があります。
要件2|36協定で定められたルールの範囲内である
36協定において定められた、時間外労働および休日出勤の上限時間・上限日数などを遵守する必要があります。
要件3|労働契約や就業規則において、休日出勤があり得る旨が明記されている
休日出勤の根拠規定がない労働者に対しては、休日出勤を命じることができません。
要件4|休日出勤の必要性がある
業務上の必要性がない場合は、休日出勤命令が指揮命令権の濫用として無効となる可能性があります。
要件5|休日出勤を命じることが相当である
休日出勤を命じることが社会的相当性を欠く場合は、休日出勤命令が指揮命令権の濫用として無効となる可能性があります。
休日出勤命令が違法になる場合の例
例えば、以下のような休日出勤命令は違法である可能性が高いです。
- 違法な休日出勤命令の例
-
・36協定を締結していないにもかかわらず、休日出勤を指示した。
・36協定では、1カ月当たりの休日労働の上限日数が1日と定められているにもかかわらず、同じ月に2日目の休日労働を指示した。
・労働契約および就業規則に休日出勤の根拠規定がない労働者に対して、休日出勤を指示した。
・気に入らない労働者に対して、嫌がらせの目的で休日出勤を指示した。
・他に休日出勤を指示できる労働者がいるにもかかわらず、子どもの運動会が重なっている労働者に対して休日出勤を指示した。
休日出勤命令が違法にならない場合の例
これに対して、以下のような休日出勤命令は適法であると考えられます。
- 適法な休日出勤命令の例
-
・36協定を締結した上で、そのルールの範囲内で、決算業務への対応のために休日出勤を指示した。
・36協定を締結した上で、そのルールの範囲内で、1カ月前から労働者に予告した上で休日出勤を指示した。
休日出勤が発生した場合にとるべき措置
労働者が休日出勤をする場合、使用者は以下のいずれかの対応をとる必要があります。
1|休日労働として割増賃金を支払う
2|法定内残業または時間外労働として賃金を支払う
3|振替休日・代休を付与する
1|休日労働として割増賃金を支払う
労働者が休日出勤をしたのが法定休日である場合、使用者は休日手当を支払わなければなりません。
休日手当の計算方法
休日手当の金額は、以下の式によって計算します。
休日手当=1時間当たりの基礎賃金×135%×休日労働の時間数
1時間当たりの基礎賃金
=1カ月の総賃金※÷月平均所定労働時間
※総賃金からは、以下の手当を除外します。
・時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当
・家族手当(扶養人数に応じて支払うものに限る)
・通勤手当(通勤距離等に応じて支払うものに限る)
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当(住宅に要する費用に応じて支払うものに限る)
・臨時に支払われた賃金
・1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
月平均所定労働時間=年間所定労働時間÷12カ月
(例)
1か月の総賃金:30万円
月平均所定労働時間:150時間
休日労働の時間数:8時間
休日手当=30万円÷150時間×135%×8時間=2万1,600円
2|法定内残業または時間外労働として賃金を支払う
労働者が休日出勤をしたのが法定外休日である場合、使用者は、
- 法定労働時間の範囲内の時間については法定内残業手当
- 法定労働時間を超える時間については時間外労働手当
を支払わなければなりません。
法定内残業手当・時間外労働手当の計算方法
法定内残業手当・時間外労働手当の金額は、以下の式によって計算します。
法定内残業手当=1時間当たりの基礎賃金×法定内残業の時間数
時間外労働手当=1時間当たりの基礎賃金×125%※×時間外労働の時間数
※月60時間を超える部分については150%
※1時間当たりの基礎賃金の計算方法は、休日手当と同様
(例)
1か月の総賃金:30万円
月平均所定労働時間:150時間
法定内残業の時間数:2時間
時間外労働の時間数:6時間
法定内残業手当=30万円÷150時間×2時間=4,000円
時間外労働手当=30万円÷150時間×125%×6時間=1万5,000円
合計:1万9,000円
3|振替休日・代休を付与する
法定休日に出勤する労働者に対しては、振替休日または代休を付与する選択肢もあります。
振替休日と代休の違い
振替休日と代休には、以下の違いがあります。
①振替休日
法定休日と労働日をあらかじめ入れ替えます。
もともと法定休日だった日に行われた労働については、休日労働の割増賃金が発生しません。
②代休
法定休日の労働が行われてから、事後的に労働日を休日へ変更します。
法定休日に行われた労働については、休日労働の割増賃金(休日手当)が発生します。
働き方による休日出勤の取扱い
休日出勤の取扱いは、個々の労働者に適用される労働時間制によって異なります。以下の各ケースにおいて、正しい取扱いを解説します。
①パート・アルバイト・派遣社員
②裁量労働制
③フレックスタイム制
パート・アルバイト・派遣社員の休日出勤の取扱い
パートやアルバイトも、正社員と同じく労働基準法上の「労働者」に当たります。
したがって、パートやアルバイトによる休日出勤の取扱いについては、労働基準法の原則的なルールに従います。36協定の範囲内でしか休日出勤を命じることはできず、法定休日の場合は休日手当、法定外休日の場合は法定内残業手当または時間外労働手当の支払いが必要です。
派遣社員も「労働者」であるため、正社員・パート・アルバイトなどと同様に、休日出勤には労働基準法の原則的なルールが適用されます。
ただし、派遣社員を雇用しているのは派遣元事業主です。したがって、36協定は派遣先ではなく、派遣元事業主のものが適用されます。また、休日手当・法定内残業手当・時間外労働手当の支払いは派遣元事業主が行います。
裁量労働制の休日出勤の取扱い
裁量労働制は、労働者が業務の遂行手段や時間配分を裁量的に決められる制度です。裁量労働制で働く労働者には、実労働時間にかかわらずみなし労働時間が適用されます。
裁量労働制が適用される労働者が休日出勤をした場合、法定休日と法定外休日で取扱いが異なります。
法定休日における労働(=休日労働)については、裁量労働制が適用される労働者にも、通常の労働者と同様のルールが適用されます。すなわち、36協定の範囲内でしか休日労働を命じることはできず、さらに実労働時間に応じた休日手当の支払いが必要です。
なお、自宅など事業場外で休日労働をした場合のみなし労働時間(労働基準法38条の2第1項)としては、労働日における所定労働時間が適用されます。
これに対して、法定外休日における労働については、裁量労働制によるみなし労働時間が適用されるかどうかは労使協定の定めに従います。特に定めがない場合は、実労働時間に従って法定内残業手当または時間外労働手当を支払う必要があります。
フレックスタイム制の休日出勤の取扱い
フレックスタイム制は、労働者が始業・終業の時刻を裁量的に決められる制度です。
フレックスタイム制が適用される労働者に関しては、休日出勤の取扱いは通常の労働者と異なりません。フレックスタイム制はあくまでも、労働日における始業・終業時刻の決定に関する制度であって、休日出勤の取扱いには影響しないからです。
したがって、36協定の範囲内でしか休日出勤を命じることはできず、法定休日の場合は休日手当、法定外休日の場合は法定内残業手当または時間外労働手当の支払いが必要となります。
問題になりやすい休日出勤の例
特に以下の休日出勤については、従業員との間でトラブルになるケースがよく見られるので、企業は正しい取り扱いに努めましょう。
- 休日に行われる従業員研修
- 休日に行われる持ち帰り残業・テレワーク
休日に行われる従業員研修
休日に従業員研修を実施する場合、それが実質的に強制参加であれば、休日出勤として賃金が発生します。
休日の従業員研修を無給にすると、後から未払い残業代を請求されるおそれがあるので注意が必要です。
休日に行われる持ち帰り残業・テレワーク
労働者が自主的に行う持ち帰り残業やテレワークも、業務の必要上やむを得ない場合や、使用者が黙認している場合には労働時間に当たる可能性が高いです。この場合、持ち帰り残業やテレワークの時間について賃金が発生します。
会社側としては、持ち帰り残業やテレワークの実態を正しく把握するため、勤怠管理システムの整備や労働者に対するヒアリングなどを行うことが求められます。
休日出勤が多い状態を改善する方法
休日出勤によって心身に疲労が溜まっている労働者の方は、以下の対応によって労働環境の改善を図りましょう。
1|上司などに相談する
2|内部通報制度などを利用する
3|労働基準監督署に相談する
4|転職する
1|上司などに相談する
まずは上司などに相談して、業務負担の軽減や休日出勤の日数削減を求めましょう。他の労働者への業務の引き継ぎや、人員の増強などの対応を講じてもらえる可能性があります。
2|内部通報制度などを利用する
違法な休日出勤命令が相次いでいる場合などは、公益通報者保護法に基づく内部通報を行うことも検討すべきです。
会社が設けている社内窓口・社外窓口などに対して、違法な休日出勤命令を受けて困っている旨を通報しましょう。
3|労働基準監督署に相談する
内部通報制度が機能してない場合や内部通報しても違法な状態が改善されない場合は、労働基準監督署に相談することも考えられます。
労働基準監督署が違法状態を認識すれば、事業場に対する臨検(立ち入り調査)を経て、会社に対して行政指導を行う場合があります。労働基準監督署の行政指導がなされれば、違法な休日出勤命令は行われなくなる可能性が高いでしょう。
4|転職する
休日出勤命令を乱発する会社は、長期間にわたって勤務するのに適切な労働環境とは言えません。労働環境の改善を求めて、別の会社への転職を目指すことも検討すべきでしょう。
違法に休日出勤を命じた企業が受ける罰則
労働者に対して違法に休日出勤を命じた者(例えば上司など)は、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処されます(労働基準法119条1号)。
さらに企業に対しても、両罰規定によって「30万円以下の罰金」が科されます(同法121条1項)。
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