株主総会の招集手続きとは?
法改正・全体の流れ・留意すべき点を
分かりやすく解説!

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弁護士法人中央総合法律事務所東京事務所弁護士
東京大学法科大学院修了。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。金融機関を中心とした紛争対応や、金融規制、人事労務や不動産取引等の各種相談案件等を取り扱う。
この記事のまとめ

株主総会は、議決権を有する株主によって構成される、株式会社の意思決定機関です。株主総会を開催するための招集手続き会社法の定めに従って行う必要があります。

株主にとって株主総会は、議決権行使を通して自己の意思を会社経営に反映させる重要な場であることから、招集手続きに不備があった場合、株主総会決議が不存在であると評価されたり、株主から株主総会決議の取消しの訴えを提起されるおそれがあるなど、決議の効力に影響を及ぼすような大きな問題が発生しうることとなります。

この記事では、株主総会の招集手続きについて、株主総会資料の電子提供制度など近時の改正点も踏まえながら、基本を分かりやすく解説します。

ヒー

株主総会が近づいてきました! 招集通知などを準備していますが、最近は紙で送る資料とウェブに載せられる資料がいろいろと変わってきていて、判断が難しいです…。

ムートン

自社の機関や定款の内容、株主の承諾など、さまざまな条件の下でとれる手段が変わります。自社にとってどのような招集手続きが適切か、以下で確認していきましょう。

※この記事は、2023年3月10日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名等を次のように記載しています。
産競法…産業競争力強化法
省令…産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会に関する省令
社債株式振替法…社債、株式等の振替に関する法律

株主総会の招集とは

株主総会は、議決権を有する株主によって構成される、株式会社の意思決定機関です。そして、そのような株主総会に対し、株主へ出席および準備の機会を与えるための重要な手続きが、株主総会の招集手続きになります。

株主総会の開催時期

株主総会には、定時株主総会と臨時株主総会の2種類があります。
定時株主総会とは、会社の各事業年度の終了後、一定の時期に招集されるものであり(会社法296条1項)。主に終了した事業年度の計算書類が提出されるほか、事業報告の内容が報告されるなどします(会社法438条1項~3項)。
他方、臨時株主総会は、必要がある場合に招集されるものであり(会社法296条2項)、代表取締役によるほか、後述する株主により招集されることもあります。

株主総会の招集権者

株主総会は、原則として、取締役会設置会社においては、取締役会の決定に基づいて、代表取締役が招集するものですが、会社法では、例外的に株主が招集する場合を規定しています(会社法297条4項)。

取締役による株主総会の招集

株主総会の招集は、取締役会設置会社では、原則として代表取締役が、取締役会の決議に基づき、会社の業務執行の1つとして行います。

この点、会社法296条3項は、「株主総会は…取締役が招集する」と規定しており、取締役であれば誰でも自由に招集できるように読めます。もっとも、旧商法下での判例(最判昭和45年8月20日判時607号79頁)では、「株主総会の招集は、原則として、代表取締役が取締役会の決議に基づいて行なわなければならない」として、代表取締役以外の取締役に招集された株主総会について、法律上の意義における株主総会とはいえないとしています。
そして、現行会社法においても、代表権者が取締役会の決定に基づいて招集するとの理解が一般的であることから、株主総会は原則として代表取締役取締役会の決議に基づいて招集することとなります。

なお、取締役会が設置されておらず、取締役が2名以上いる会社の場合は、原則として取締役の過半数によって決定し(348条2項)、同様に代表取締役招集することとなります。また、代表権のない取締役であっても、特定の株主総会の招集に関する業務執行権限を取締役会から与えられれば、株主総会を招集することができます。

取締役会設置会社における手続きの流れ

✅取締役会による招集の決定
     ↓
✅代表取締役による招集

株主による株主総会の招集

上記のとおり、株主総会を招集する者は原則として代表取締役となりますが、例えば取締役による不正行為が発覚し、早期に取締役を解任する必要があるにもかかわらず、代表取締役が当該取締役をかばい、株主総会が招集されないことが考えられます。

そこで、会社法は、株主は、取締役に対し、株主総会の目的事項および招集理由を示して、株主総会の招集を請求できるとしています(ただし、総株主の議決権の3%以上の議決権を6カ月前から引き続き有する株主に限る。なお、定款によりこれらを下回る議決権保有割合及び保有期間を定めることは可能。会社法297条1項)。

株主総会招集の請求の後、

① 請求後遅滞なく招集の手続きが行われない場合
② 請求があった日から8週間(より短い期間を定款で定めた場合は、その期間)以内の日を株主総会の日とする招集通知が発せられない場合

これらの場合、招集の請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができるとしています(会社法297条4項1号・2号)。

ムートン

株主による株主総会の招集は例外的なものです。以下では特に断りのない限り、取締役会の決定に基づき、代表取締役が株主総会を招集する場合について解説します。

株主総会を招集する場合の決定事項

取締役会は、株主総会を招集する場合、以下の事項を定めなければなりません(会社法298条1項・4項)。

① 株主総会の日時および場所
② 株主総会の目的事項
③ 株主総会に出席しない株主に書面投票を認めるときは、その旨
④ 株主総会に出席しない株主に電子投票を認めるときは、その旨
⑤ その他、法務省令で定める事項(会社法施行規則63条)

株主総会の場所

株主総会の場所は、株主が質問し、説明を聞く機会を確保するため、物理的に入場することができる場所でなくてはならず、株主が出席し難い場所を選択して開催された場合は、招集手続きが著しく不公正であるとして、株主総会決議の取消事由になり得ます(会社法831条1項1号)。
また、株主総会の場所は、上記の物理的に入場する場所でなくてはならないとの理由から、①物理的な会場を設けつつ、②インターネットによる参加ができる、「ハイブリッド型バーチャル株主総会」が以前から開催可能とされていました。

しかし、株主総会をオンラインのみで行う、「バーチャルオンリー株主総会」は、会社法の解釈としては困難とされていました。そこで、2021年施行の改正産業競争力強化法(以下、「産競法」)によって、会社法の特例として「場所の定めのない株主総会」に関する制度が創設され、バーチャルオンリー株主総会の開催が可能となりました。

具体的には、以下の要件を満たす場合に、バーチャルオンリー株主総会を開催することができます(産競法66条1項・2項、省令1条・2条)。

上場会社であること
② 経済産業大臣および法務大臣の確認を受けたこと
③ 株主総会を「場所の定めのない株主総会」とすることができる旨を定款に定めたこと
④ 招集決定時に「省令要件」に該当していること

ムートン

ハイブリッド型バーチャル株主総会・バーチャルオンリー株主総会については、以下の記事もご参照ください。

議題の決定

会社法では、取締役は、株主総会の目的がある場合はその目的を定めなければならないとされています(会社法298条1項2号)。
この「目的」は、一般的に「議題」といわれます。例えば、

✅ 「剰余金配当の件」
✅ 「取締役選任の件」

といったものが、この「議題」に当たります。

議題については、条文上「あるとき」に定めなければならないとしていますが、取締役会設置会社の場合は、原則として招集権者が定めた議題についてしか株主総会において決議できないため(会社法309条5項)、取締役会設置会社の場合は、議題を定めなければならないこととなります。

議案の決定の要否

他方、議題に対して議案とは、株主総会において具体的に決議に付す事項をいいます。例えば、

✅ 「●●を取締役にする」
✅ 「××を取締役から解任する」

といったものがこれに当たります。

議案については、原則として株主総会の招集に先立って決定することは求められていません。
もっとも、株主に対して書面投票または電子投票を認める場合には、議案を定め、株主総会参考資料に記載して通知しなければなりません(会社法298条1項5号・同条4項、会社法施行規則63条3号イ・73条1項1号)。

また、①株主総会において書面投票・電子投票を認めない場合で、②株主総会の目的である事項が特定の事項であり、③当該事項に係る議案が確定しているときには、取締役会において、その議案の概要を定めなければなりません(会社法298条1項5号・同条4項、会社法施行規則63条7号)。

会社法施行規則63条7号(一部抜粋)

① 役員等の選任
② 役員等の報酬等
③ 事業譲渡等
④ 定款の変更
⑤ 合併

なお、上記のような事項が株主総会の目的である場合であっても、議案が確定していない場合は、その旨を定めれば足り、議案の概要を定める必要はありません(会社法施行規則63条7号柱書きかっこ書き)。

株主総会招集通知

招集権者は、招集の決定に従い、株主に対して、株主総会の招集通知を発しなければなりません(会社法299条1項)。

招集通知をする対象

株主総会の招集通知は、「株主」に対して行うこととされています(会社法299条1項)。この「株主」とは、当該株主総会において議決権を有する株主をいうことから(会社法298条2項かっこ書き)、議決権を有しない株主に対しては、招集通知を発する必要はありません。

招集通知の発送時期

公開会社の場合、株主総会の日の2週間前までに、株主に対して招集通知を発する必要があります(会社法299条1項)。

他方、非公開会社の場合、原則として株主総会の日の1週間前までに通知を発する必要がありますが、取締役会を設置していない会社の場合は、定款の定めによりさらに短縮が可能となります(会社法299条1項)。
もっとも、非公開会社であっても、書面投票や電子投票を認める場合には、公開会社と同じく株主総会開催日の2週間前までに、招集通知を発送する必要があります(会社法299条1項かっこ書き)。

ムートン

これらについて、まとめると以下の表のようになります。

公開会社非公開会社
取締役会設置会社非取締役会設置会社
書面投票・電子投票を行わない 
株主総会の日の2週間前
株主総会の日の1週間前株主総会の日の1週間前かつ定款で短縮可
書面投票・電子投票を行う株主総会の日の2週間前

これらの期間は、発送日と株主総会開催日の間の期間を指すものであり、例えば、公開会社の場合には、株主総会招集通知の発送日と、株主総会開催日の間に、丸2週間が必要となります。

招集通知の方法

取締役会設置会社では、招集通知は書面でしなければならないとされています(会社法299条2項2号)。もっとも、株主からあらかじめ承諾を得た場合には、電磁的方法で行うことができるとされています(会社法299条3項)。
他方、取締役会設置会社でない場合には、書面投票・電子投票を認めない限り、招集通知の方法については特段の規制をしていないことから、招集通知を書面ではなく電話口頭にて行うことも可能です(会社法299条2項反対解釈)。

招集通知の記載事項

招集通知には、会社法298条1項に規定されている、株主総会を招集する場合の決定事項について、記載しなければならないとされています(会社法299条4項)。

招集通知の添付書類

株主に対し、書面投票または電子投票を認める場合には、招集通知とともに、株主総会参考書類を、書面投票を認める場合にはあわせて議決権行使書面を交付することが必要となります(会社法301条1項・302条2項)。
株主総会参考書類とは、議決権行使の参考となるべき事項を記載した書面であり、具体的には株主総会の議案や議案の提案理由等を記載したものがこれに当たります。
議決権行使書面とは、文字通り議決権を行使するための書面であり、株主は各議案について議決権行使書面にて賛否を表明することにより、議決権を行使することができます。
また、取締役会設置会社が定時株主総会を招集する場合、計算書類および事業報告を、株主に対して提供する必要があります(会社法437条)。

招集手続きの省略

株主総会の招集手続きは、株主に対し株主総会への出席の機会および準備の機会を与えることを目的とするものであることから、株主全員同意による場合(会社法300条)、全員出席総会の場合には、省略することができます。

株主全員の同意による招集手続きの省略

会社法300条は、株主全員同意がある場合には、招集の手続きを経ることなく、株主総会を開催することができるとしています。もっとも、書面投票電子投票が行われる場合は、株主の全員の同意があっても、招集手続きを省略することはできません(会社法300条但し書き)。

全員出席総会

また、株主全員が株主総会の開催に同意してこれに出席した場合全員出席総会)、招集手続きを欠いていた場合でも、株主総会は適法に成立するとされています(最判昭和46年6月24日民集25巻4号596頁)。
この全員出席総会に該当するためには、代理人による出席でも構わないとされますが、株主本人が会議の目的事項を了知したうえで委任状を作成し、これに基づいて選任された代理人を出席させ、その目的事項の範囲内で決議が成立したことが必要と考えられます(最判昭和60年12月20日民集39巻8号1869頁)。

【2022年施行】株主総会書類の電子提供制度

電子提供制度の概要

株主総会資料の電子提供制度とは、株主総会参考書類等に記載すべき情報(株主総会資料)を、ウェブサイトに掲載し、株主に対する書面による招集通知は、当該ウェブサイトのアドレス等の基本的な情報のみを記載することによって、株主総会資料を提供する制度です。
これまで書面によりなされていた株主総会資料の提供が、ウェブによってなされることから、会社においては、書面の印刷、郵送に要する費用を節約することができ、株主においては、書面による場合よりも早期に、充実した情報を得ることができるというメリットがあります。

電磁的方法による提供・WEB開示との違い

2019年会社法改正前より、類似の制度として、

① 電磁的方法による提供
株主の個別の承諾を得た上で、招集通知を書面に代わり電磁的方法によって行い、株主総会資料全部を電子提供する制度(会社法299条3項・301条2項)

② WEB開示制度
定款に定めを置くことで、株主総会参考書類、事業報告書、計算書類等の一部の情報をウェブに掲載することにより書面による提供を省略する制度(会社法施行規則94条1項・133条3項、会社計算規則133条4項・134条5項)

が定められていました。

新たに設けられた電子提供制度は、株主の個別の承諾を得ずに行える点で①電磁的方法による提供と異なり、株主総会資料の全部を電子提供できるという点で、②WEB開示制度とも異なります。

電子提供制度の導入方法

株式会社は、定款に定めることによって、電子提供制度を導入することができます(会社法325条の2)。なお、振替株式発行会社は、電子提供制度の導入が義務とされています(社債株式振替法159条の2第1項)。

電子提供措置の実施方法

取締役は、株主総会の日の3週間前の日または招集通知を発した日のいずれか早い日から株主総会の日後3カ月経過する日までの間、継続して電子提供措置をとらなければならないとされています(会社法325条の3第1項)。

電子提供制度による招集通知の方法

電子提供制度を採用している場合、株主総会招集通知は、株主総会の日の2週間前までに発送しなければならないとされています(会社法325条の4第1項・325条の7)。これは公開会社、非公開会社のいずれであっても変わりません。

電子提供制度による場合は、株主総会招集通知において、会社法298条1項1号~4号の事項、および電子提供措置をとっている旨や、株主総会資料にかかる情報を掲載するウェブサイトのURL等を記載すれば足ります(会社法325条の4第2項)。

なお、電子提供措置をとりつつも、会社が任意に株主総会資料を株主に送付することは禁じられていません。

株主の書面交付請求権

電子提供措置をとっている会社においても、株主が会社に対し、書面による株主総会資料の交付を請求することができます(会社法325条の5第1項)。
これにより、高齢者などでウェブでの株主総会資料の確認が困難である者についても、会社から電子提供措置事項を記載した書面の交付を受けることによって(会社法325条の5第2項)、株主総会資料を確認することができます。

株主総会の招集手続きに不備があった場合

株主総会の招集手続きに瑕疵があった場合、主に①株主総会決議の不存在事由、および②株主総会決議の取消事由に該当する可能性があります。

株主総会決議の不存在事由

株主総会の招集手続きに瑕疵があった場合、株主総会決議不存在確認の訴えを提起され、当該瑕疵が、株主総会決議の不存在事由と認められる可能性があります。
不存在事由は、決議が物理的に存在しない場合、および何らかの決議があってもそれが法的には株主総会決議と評価できない場合が該当するとされます。

招集手続きとの関係では、主に

①平取締役が取締役会の決議に基づかずに株主総会を招集した場合
②招集通知漏れが著しい場合

が不存在事由とされています。

どの程度の招集通知漏れが「著しい場合」に該当するかは、個別事例によりますが、裁判例では、発行済み株式総数の2分の1を有する株主に対して招集通知を欠いた事例について、決議の不存在を認めています(水戸地土浦支判平成29年7月19日金判1539号52頁)。

株主総会決議の取消事由

また、株主総会決議取消の訴えでは、取消事由として、株主総会等の招集の手続きが法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正なときを定めています(会社法831条1項1号)。

具体的には、取消事由として、

✅ 法令違反
① 代表取締役が有効な取締役会決議に基づかずにした株主総会の招集
② 一部の株主に対する招集通知漏れ
③ 法定の招集期間に足りない招集通知の発出
④ 招集の通知・株主総会参考書類の記載不備等

✅ 定款違反
⑤ 電子提供措置を採用する旨の定款の定めに反する場合

✅ 招集の手続きの著しい不公正
⑥特定の株主の出席が著しく困難な場所で株主総会を実施するような場合

が考えられます。

ムートン

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参考文献

田中亘著『会社法[第3版]』東京大学出版会、2021年

江頭憲治郎著『株式会社法[第8版]』有斐閣、2021年

中村直人編著『株主総会ハンドブック[第4版]』商事法務、2016年

経済産業省ウェブサイト「場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度」

経済産業省産業組織課「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会 制度説明資料(2022年9月)