株主総会当日の流れとは?
議事の進み方・必要な対応・注意点などを解説!
- この記事のまとめ
-
株主総会は、会社にとってもっとも重要なイベントです。多数の株主が来場するため、当日の流れをきちんと把握した上で、事前に十分な準備を整えましょう。
株主総会の開催当日は、会場や議事進行の最終チェックを行った後、株主の受付を経て、実際の議事へ入っていきます。株主総会の議事は、監査報告や事業内容の報告を経て、議案の審議・決議へと移るのが一般的です。
株主総会において、会社(経営陣)は株主との対話を意識し、株主から寄せられる質問に対して丁寧に回答することが求められます。想定問答集を準備するのが一般的ですが、それにこだわらず臨機応変に対応しましょう。
この記事では、株主総会当日の流れについて、議事の進み方・必要な対応・注意点などを解説します。
※この記事は、2023年2月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
株主総会の当日前にやるべきこと
株主総会の開催に備えて、会社は以下の事前準備を行う必要があります。
① スケジュールの策定・会場の選定を行う
株主総会の準備・当日対応・開催後の対応について、具体的なスケジュールを策定します。また、来場する株主の数を想定しつつ、それに合わせた規模の会場を早い段階で選定しておきましょう。
② 招集通知・株主総会参考書類の作成・発送を行う
公開会社では開催日の2週間前まで、非公開会社では開催日の1週間前までに、株主に対して招集通知を発送します(会社法299条1項)。
書面または電磁的方法による議決権行使を認める場合は、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(=株主総会参考書類)を、株主に交付しなければなりません(会社法301条・302条)。株主総会参考書類は、招集通知に同封するか、またはウェブサイトに掲載してURLを案内するのが一般的です。
③ 議事進行予定・想定問答集の作成を行う
当日の議事進行を円滑に行うため、議事進行予定を作成します。議事進行予定には、報告事項や決議事項ごとの所要時間などをまとめておきましょう。
また、株主からの質問へ適切に回答するため、想定される質問に対しては回答を準備しておくのがよいでしょう。
④ リハーサルをする
株主総会当日の人員配置・設備の位置・進行などを確認するため、事前のリハーサルを行います。株主総会当日とは別の日にリハーサルを行い、不測の事態が発覚した場合に是正できる時間を確保することが望ましいです。
株主総会当日の流れ
株主総会の当日は、以下の流れで対応を行います。最初から最後まで油断せず、滞りなく株主総会が開催されるように努めましょう。
① 会場の最終チェック
② 議事進行の最終チェック
③ 株主の受付
④ 株主総会の議事
⑤ 会場の撤収作業
1|会場の最終チェック
リハーサルの段階でも確認しますが、株主総会当日にも会場の最終チェックを行いましょう。
トイレや喫煙室などの設備の場所は、株主から質問される可能性があるため、案内できるように確認する必要があります。また、役員が移動する際の動線などもチェックしておきましょう。
2|議事進行の最終チェック
株主総会の議事進行についても、最終チェックを行います。
司会進行の担当者が流れを確認することはもちろん、株主総会に出席する役員に対しては、議事進行の流れについてブリーフィングを行いましょう。
3|株主の受付
開場時刻になったら、株主を入場させ、受付を行います。
株主受付の担当者は、以下の対応を行う必要があります。
① 出席資格の確認
株主総会に出席できるのは、株主本人か、または適法に授権された代理人だけです。会社が代理人資格を株主に限定している場合は、代理人も株主である必要があります。
招集通知とともに発送した議決権行使書用紙または委任状用紙の提示を求め、出席資格の確認を行いましょう。
② 議決権数の集計
出席株主が保有する議決権数を確認・集計します。書面または電磁的方法による事前の議決権行使がなされている場合は集計に含めますが、株主が会場に現れた場合は、事前の議決権行使は無効となる点に注意が必要です。
株主総会の開始時刻以降も受付を行う場合は、議決権数の集計も継続します。
出席株主の総議決権数は、株主総会決議の定足数および可決ラインの基準となるため、正確に集計しなければなりません。
4|株主総会の議事
開始時刻になったら、株主総会の議事を開始します。以下の流れで議事を進行しましょう。
① 議長の就任・開会宣言
② 出席株主数と議決権数の報告
③ 監査報告
④ 事業内容の報告
⑤ 議案の提出
⑥ 審議方法の確定|一般審議方式と個別審議方式
⑦ 議案の審議・質疑応答
⑧ 議案の決議
⑨ 閉会宣言
議長の就任・開会宣言
株主総会の議長は、定款の定めによって選出され、就任します。株主総会決議で選出することもあり得ますが、それでは煩雑なので、代表取締役が議長を務めるとされるケースが一般的です。
議長は就任後、株主総会の開会宣言を行います。
出席株主数と議決権数の報告
株主の受付を締め切っている場合は、開会直後に出席株主数と議決権数を報告するのが一般的です。株主総会決議の要件を左右するため、議事の透明性を確保する観点から、株主向けに報告を行います。
一方、開会後も株主受付を継続している場合は、締め切った段階で報告するか、または株主総会決議を行う直前のタイミングで報告するのがよいでしょう。
監査報告
監査役設置会社および会計監査人設置会社においては、監査済みの計算書類および事業報告を定時株主総会に提出し、または提供しなければなりません(会社法438条1項)。
それに伴い、監査役(または監査役会)は監査報告を作成した上で(会社法381条1項・390条2項1号)、その内容を定時株主総会で報告します。
監査の段階で問題が見つからなければ、淡々と報告すれば足ります。これに対して、監査によって法令違反・定款違反・著しく不当な事項が発見された場合は、その内容を株主総会に報告しなければなりません(会社法384条)。
事業内容の報告
定時株主総会に提出された監査済みの事業報告については、取締役がその内容を報告しなければなりません(会社法438条3項)。
事業報告は淡々と行えば足りますが、後の質疑応答において、株主から事業報告の内容に関する質問が寄せられることが多いです。そのため、報告内容については裏付けや想定問答集を準備しておき、株主からの質問へ適切に回答できるようにしておきましょう。
議案の提出
株主向けの報告が完了したら、株主総会決議事項に関する審議に入りましょう。
会社が提出する議案については、あらかじめ招集通知に記載します。基本的には、招集通知記載の議案について、審議および株主総会決議を行います。
株主総会の議案は、株主による提出も認められています(会社法304条)。議案提出権は単独株主権とされているため、保有株式数に関わらず、原則として審議の対象としなければなりません。
ただし、議案が法令・定款に違反する場合や、実質的に同一の議案について、株主総会で総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合には、会社は当該議案の提出を却下することが可能です。
審議方法の確定|一般審議方式と個別審議方式
実際の審議に入る前に、議案の内容に応じて審議の方法を確定しましょう。
株主総会議案の審議方法は、「一般審議方式」と「個別審議方式」の2つに大別されます。
① 一般審議方式
同一議題に関する議案を一括で提出・審議した後、各議案について順次採決を行う方式です。
② 個別審議方式
議案ごとに提出・審議・採決を行う方式です。
株主総会の議事進行の円滑化を図るため、一般審議方式を採用するのが一般的です。ただし、特に慎重な審議を行うべき議案については、個別審議方式を採用することも考えられます。
議案の審議・質疑応答
提出された議案について、株主からの質問を受け付けます。株主質問に対しては、主に会社側が回答しますが、株主提出議案であれば提出者である株主が回答し、株主同士の議論になることもあり得ます。
審議の途中で新たに議案が提出されたり、採決の方法に関する提案がなされたりすることもあります(「動議」といいます)。動議が提出された場合、議長は適切に議事を整理しつつ、その当否を株主に向けて諮ることが求められます(会社法315条1項)。
議案の決議
審議が熟した段階で、株主総会決議を行います。
株主総会決議には以下の種類があり、それぞれ決議要件が異なります。
① 普通決議(会社法309条1項)
→株主総会決議は、原則として普通決議によって行います。
定足数:行使可能議決権の過半数(定款の定めによって排除可能)
賛成数:出席株主の有する議決権の過半数
② 特別決議(同条2項)
→定款変更・事業譲渡・合併その他の組織再編行為など、重要度の高い事項を決定する際には特別決議を行います。
定足数:行使可能議決権の過半数(定款の定めによって行使可能議決権の3分の1まで緩和可能)
賛成数:出席株主の有する議決権の3分の2以上
③ 特殊決議
→特別決議よりも加重された要件によって行う株主総会決議です。以下の2つのパターンがあります。
(a) 以下の事項について行う特殊決議
・発行株式の全部につき、譲渡制限を設ける旨の定款変更の承認(同条3項1号)
・公開会社を消滅会社として、既存株主に譲渡制限株式を交付する吸収合併契約・新設合併契約・株式交換契約・株式移転契約の承認(同項2号・3号)
定足数:行使可能議決権の過半数
賛成数:出席株主の有する議決権の3分の2以上
(b) 以下のいずれかの権利につき、株主ごとに異なる内容を定める旨の定款変更の承認について行う特殊決議(同条4項)
・剰余金の配当を受ける権利
・残余財産の分配を受ける権利
・株主総会における議決権
定足数:総株主の半数以上
賛成数:総株主の議決権の4分の3以上
閉会宣言
すべての報告および決議事項の審議・決議が終了したら、議長が閉会宣言を行います。
これで株主総会の議事は終了です。
5|会場の撤収作業
株主総会の終了後、株主の帰宅を見送ったら、会場の撤収作業を行います。
会場側とは今後も良い関係を続けるため、放置されたごみなどは見落とさずに回収しましょう。会場の使用時間をチェックしておき、間に合うように撤収作業を完了することも大切です。
株主総会終了後にやるべきこと
株主総会の終了後には、取締役が株主総会議事録を作成します(会社法318条1項)。株主総会議事録には、会社法施行規則72条所定の事項を網羅的に記載しなければなりません。
作成した株主総会議事録は、株主総会の日から10年間、本店に備え置くことが義務付けられています(同条2項)。支店がある場合には、株主総会の日から5年間、支店にも議事録の写しを備え置かなければなりません(同条3項)。
株主総会当日における注意点
株主総会当日において、経営陣は株主と相対するに当たり、株主との対話や分かりやすい説明、臨機応変の対応を心がける必要があります。
株主との対話・分かりやすい説明を意識する
株主総会は経営陣にとって、株主の声を聴くことができる貴重な場です。株主からの質問や意見に耳を傾け、経営陣自らも株主に問いかけを行うなど、株主との「対話」を意識した対応を行いましょう。
事業内容や今後の方針などに関して株主から質問された場合は、会社のビジョンを株主と共有するチャンスです。株主の目線に立って分かりやすい説明を行うことができれば、経営陣の求心力が向上し、経営の安定につながります。
想定問答集にこだわらない|臨機応変に対応する
事前に予想される株主質問については、回答に窮することがないように想定問答集を作成しておくべきです。
ただし、想定問答集で準備した回答は、絶対的なものではありません。想定問答集に拘って杓子定規な回答をしてしまうと、かえって株主の反発を招いてしまう可能性もあります。
経営陣としては、想定問答集は参考としつつも、当日の質問内容や会場の空気に応じて、株主の心に届くような回答をすることが求められます。
経営に尽力する日々の取り組みや姿勢をさらけ出すような想いで株主総会に臨む方が、株主からの信頼を得られるかもしれません。
この記事のまとめ
株主総会当日の流れの記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!