契約業務とは?
全体像・効率化のポイントなどを
分かりやすく解説!

この記事のまとめ

契約業務とは、契約書作成(審査)交渉締結管理に至るまでの一連の業務」を指します。

契約業務は、以下の2つの観点から、非常に重要な業務です。
・自社を契約トラブルのリスクから守る(守りの法務
・自社の事業活動を促進する(攻めの法務

今回は契約業務について、全体像・効率化のポイントなどを分かりやすく解説します。

※この記事は、2022年12月22日時点の法令等に基づいて作成されています。

法務部門の仕事の中では、「契約業務」が一番大きな割合を占めると聞きました。

契約業務をいかに効率化できるかは、全ての法務部門に共通する課題といえるでしょう。この記事では、契約業務の全体像から、効率化のポイントまで解説しますね。

契約業務とは

契約業務とは、契約書の作成(審査)→交渉→締結→管理に至るまでの一連の業務」を指します。

企業において契約業務を主に担当するのは、法務部門です。ただし、法務部門がない企業は、

①総務部門などの中に、法務担当者を一人置き、専任で契約業務を担当する(一人法務)
②総務担当者などが法務担当者を兼任して、契約業務を担当する(兼任法務)
③法務部門も法務担当者も置かず、契約業務が発生する度に外部弁護士に依頼する

といったかたちをとることが多いでしょう。

契約業務の重要性

契約業務は、主に以下2つの観点から、企業において非常に重要な業務です。

・自社を契約トラブルのリスクから守る(守りの法務)
・自社の事業活動を促進する(攻めの法務)

自社を契約トラブルのリスクから守る(守りの法務)

契約が成立すると、当事者には、それぞれ権利義務が発生し、契約に拘束されます。そのため、契約書の内容をきちんと確認せず、契約を締結してしまうと、「自社に不利益な内容が含まれていて、損害を被ってしまった」といったことになりかねません。

こうした事態に陥らないためにも、契約を締結する前に、契約書の内容をきちんと確認し、自社を契約トラブルのリスクから守る必要があるのです。

ちなみに、契約書の内容を確認することを、「契約審査」「契約書レビュー」「リーガルチェック」などと呼びます。本記事では、「契約審査」で統一します。

自社の事業活動を促進する(攻めの法務)

契約業務には、リスクから自社を守るだけでなく、自社の事業活動を契約面から積極的にサポートする(=攻めの法務という側面もあります。

特に、自社が新規事業に取り組む際には、法的な課題を整理した上で、それらの解決策を検討する必要があります。その際、

・自社が実現したい取引内容などを、きちんと契約に落とし込む
・取引を円滑に進めるために必要な条項を検討し盛り込む

といったことを通じて、自社が安心して新規事業に取り組める環境をつくることが、非常に重要になります。

そのためには、法務担当者のほうから、積極的に事業部門へコミュニケーションをとりに行くといったことが大切ですよ。

契約ライフサイクルマネジメントとは

契約業務の全体像をとらえる上では、契約ライフサイクルマネジメント(CLM:Contract Lifecycle Management)」という考え方が有用です。

契約ライフサイクルマネジメントとは、契約の締結前から締結後の管理に至るまでのフローを一連のライフサイクルととらえ、最適化・効率化することをいいます。

昨今の日本では、企業法務の重要性が増す一方で、法務担当者の人手不足などに悩んでいる企業も多いようです。

契約業務は法務の仕事の中でも、大きな割合を占めるので、「契約業務」の効率化は重要課題といえます。

これから法務部門をつくる企業も、既に法務部門がある企業も、契約ライフサイクルマネジメントを実施し、自社における最適な契約業務のフローを構築していくことが大切です。昨今は、さまざまなリーガルテックサービスがでているので、それらの利用を検討するのも一案でしょう。

契約業務のフロー

契約業務は、おおむね以下のフローで進みます。

(1)契約審査受付
(2)契約審査(または契約書ドラフトの作成)
(3)契約交渉→契約内容の合意
(4)契約締結
(5)契約管理

1|契約審査受付

契約審査受付」とは、契約を締結することが必要となった部門から、契約審査や契約書作成の依頼を受け付けることをいいます。

受付後、法務部門内では、メンバーの業務状況などを鑑みて、担当者をアサインします。

担当者は、依頼者にヒアリングを行い、

・取引の概要
・契約審査において留意すべき事項
・審査完了までのスケジュール

などの情報を共有し、認識を合わせます。

受付フロー整備のポイント

契約審査受付は、一見、単なる依頼の受付として軽視されがちです。しかし、契約業務全体を効率化するためには、起点となる契約審査受付のフローを整備することが重要にあります。

整備のポイントとしては、以下の3つが挙げられます。

・相談チャンネルの明確化
 →相談チャンネルはできるだけ固定する(基本的に複数のルートを設定しない)
  *相談の重要性、緊急性、秘匿性などを考慮し、複数設定する場合はある

・ルールの明確化
 →相談内容の明確化のため、依頼はメールやチャットなど、記録として残るかたちで行う
  (口頭、電話、内線等による相談は基本NG)
 →相談内容のフォーマット設定(依頼項目、期限、関連資料の添付等)

・社内周知の徹底
 →全社メールやチャット、社内システムなどで受付フローとルールを社内に周知する

2|契約審査(または契約書ドラフトの作成)

契約審査とは、会社が当事者として締結する契約書をレビューする業務です。

契約審査受付の段階で事業部門からヒアリングした内容を踏まえ、スケジュールに沿って契約審査を行います。

相手方がドラフトを作成する場合はその内容をチェックしますが、自社の側で契約書ドラフトを作成することを求められる場合もあります。

相手方がドラフトを作成する場合

相手方が契約書ドラフトを作成する場合、その内容には自社に不利益な条項が含まれている可能性が高いです。

契約業務担当者は、相手方から受領したドラフトを隅々まで精査し、自社に不利益な条項があれば修正を求める必要があります。

しかし、一般的に、相手方に有利な契約書の内容を修正するのは意外と大変です(自社に不利な点に気付かずに締結してしまうというおそれもあります)。

相手方とのパワーバランスにもよりますが、なるべく自社が作成するようにしたほうが良いでしょう。

自社内で知見のない分野の契約である場合は、外部の弁護士にドラフト作成を依頼することも考えられます。

自社でドラフトを作成する場合

自社で契約書ドラフトを作成する場合は、自社にとって有利な条項を盛り込める点がメリットです。ただし、取引に必要な事項を漏れなく盛り込む必要があるので、相手方がドラフトを作成する場合以上に慎重な検討が求められます。

なお、過去に経験のある種類の契約であれば、その際の契約書を参考にドラフトを作成するのが良いでしょう。反復して発生する契約なら、あらかじめひな形を作成しておくことも有用です。

契約ウォッチでも、メジャーな契約書のひな形は、無料で配布しているので、必要に応じて活用くださいね。

3|契約交渉→契約内容の合意

法務部門は、契約条項について必要な修正を加えた上で、事業部門に契約書を戻します。

事業部門は、修正内容について法務部との趣旨確認や調整を経た後、相手方に対してコメントバックを行います。このように相手方と契約内容について協議することを契約交渉といいます。

やり取りを何往復か重ねる中で、契約上の論点が徐々に解消されていきます。最終的に、内容全体について合意に至った場合は、契約書のファイナル版を作成します。

4|契約締結

契約締結とは、契約審査・交渉を経て完成した契約内容につき、当事者全員が合意することをいいます。

契約締結の方法としては、

・紙の契約書(書面)による方法
・電子契約による方法

の2通りがあります。

書面での契約の流れ

書面で契約する場合は、主に以下の流れで進みます。

稟議申請
ファイナル版作成後、社内で契約締結についての承認手続きを行う(契約稟議申請)。

印刷
相手用・自分用で、2部印刷するのが一般的です。

製本
契約書が複数枚に渡る場合に、それらを一つにまとめて袋とじするなどの方法により本の体裁を整えます。

④(必要に応じて)収入印紙の貼付
収入印紙の貼付が必要な契約書の場合は、収入印紙を購入して、それを書面に貼付し、消印を押す必要があります。詳細は、「印紙税法とは? 課税対象となる文書・ 電子契約における取扱いなどを分かりやすく解説!」の記事を参照ください。

記名押印または署名捺印
契約書内の契約当事者欄(契約当事者が誰かが書かれた部分)に、記名押印または署名捺印をします。

郵送
契約書を相手方へ送付します。

相手方から返送
相手方から、記名押印または署名捺印済みの契約書が1部返送されます。

互いに1部ずつ保管
その後は、お互いに1部ずつ契約書を保管します。

電子契約の流れ

電子契約は、電子署名を施すことのできる電子契約サービスを通じて締結するのが一般的です。

電子契約の場合、契約稟議の後は、以下の流れで進みます。

②契約書を電子契約システムにアップロードする

③電子契約システム上で双方が電子署名する

④締結済みの契約書(電子データ)をシステム上で保管する

書面での契約と比べて工程が少ないですね。でも、印紙税は電子契約の場合、どう対応するんでしょうか。

実は、電子契約の場合、印紙税はかからないんです。

そうなんですか! では、電子契約を使ったほうが、印紙代が節約できて良いですね。

そうですね。そのほか、電子契約には、以下のようなメリットがありますよ。

電子契約のメリット

・出社して印刷・製本するなどの手間を省ける
・保管場所を取らない
・紛失リスクが少ない

5|契約管理

契約締結がやっと完了しました! これでもう大丈夫ですね!

そんなことはありませんよ。契約は、締結してからがスタートです。締結した契約書は、適切に管理する必要があります。

では、適切な契約管理ができている状態って、どんな状態ですか?

目指すのは、必要な人」が「すぐに取り出せる状態になります。そのためには、以下の4つがポイントになりますね。

1.保管ルールがある
2.情報の検索性が高い
3.有効期間の管理ができている
4.関係者のみ閲覧できる

契約管理の重要性

契約書を適切に管理する必要があるのは、主に以下3つのメリットがあるからです。

リスクマネジメント
→契約に基づく取引についてトラブル等が生じた場合には、すぐに過去の契約書の内容を確認する必要があります。その際、過去の契約書をスムーズに検索できるようになっていれば、トラブルをスムーズに解決できるでしょう。

契約書の流出の防止
→契約書が流出すると、営業秘密の漏えいや相手方とのトラブルにつながりかねません。この点、契約書に必要最小限の者しかアクセスできないようにするなど、適切な権限設定をすることで、契約書の流出リスクを軽減できます。

業務効率化
契約書を適切に管理していれば、「先方とのトラブルで、過去の契約書を見直したいとき」「移動により担当者が変わり、新たな担当者が契約書を把握しておきたいとき」などに、スピーディーに検索できるので、大幅な業務の効率化につながります。

契約業務を行う際のポイント

契約業務を行う際は、以下を強く意識するのがポイントです。

<契約業務全体に関するポイント>
・各フローを整備し業務効率化を図る
・事業部門と法務部門が適切にコミュニケーションをとる

<契約審査・契約交渉に関するポイント>
・修正すべき条項を見落とさない
・修正には原則として理由を付す

<契約管理に関するポイント>
・適切な契約管理体制を構築する

業務全体|各フローを整備し業務効率化を図る

契約業務全体を効率化するためには、各フローで課題となっていることを整理し、それらを一つずつ解決していくことが求められます。

自社における契約業務のフローつき、定期的に見直しを行い、業務効率化を図りましょう。

業務全体|事業部門と法務部門が適切にコミュニケーションをとる

契約業務全体を通じて、事業部門と法務部門には、十分なコミュニケーションをとることが求められます。

事業部門が、取引の目的や概要などを、法務部門へ正しく伝えなければ、適切に契約審査がなされません。また、法務部門が、事業部門の意図をくみ取ろうとせずに審査を進めた場合も同様です。

双方が積極的にコミュニケーションをとろうとする姿勢をもつことが大切ですよ。

契約審査・契約交渉|修正すべき条項を見落とさない

契約審査・契約交渉を行うときは、修正すべき条項を見落とさないことが非常に重要です。具体的には、以下の条項は修正コメントを付す必要があります。

・自社にとって不当に不利益な条項
→法令の原則・裁判例・実務慣行などに照らして、不当に相手方有利・自社不利な条項は、修正を求める必要があります。

・不明確な条項
→内容が不明確な条項は契約トラブルの原因になるため、修正を求める必要があります。

・過去の契約と整合しない条項
→関連契約の間で内容の矛盾が生じると、契約解釈が不明確になってトラブルの原因になるため、過去の契約と整合しない条項は修正しなければなりません。

・法律の強行規定に違反する条項
→強行規定違反の契約条項は無効になってしまうため、修正が必要です。

・法令上の記載事項が漏れている条項
法令によって記載が求められている事項が抜けていると、契約の無効や行政処分などのリスクが生じるため、必要な事項を網羅する修正を行う必要があります。

契約審査・契約交渉|修正には原則として理由を付す

法務部門が契約内容に修正を行いたい場合、形式的なものを除き、修正には原則として理由を付すべきです。

修正に合理的な理由があることで、取引を担当する部門は法務部門が懸念しているリスクを正しく理解できます。また相手方も、合理的な理由のある修正は拒絶しにくいため、自社の主張が通る可能性が高まります。

契約管理|適切な契約管理体制を構築する

前述のとおり、契約は、締結してからがスタートであり、「必要な人」が「すぐに取り出せる状態」をつくっておく必要があります。

紙の契約書の場合、取り出しやすさの観点から、データ形式での管理と併用することを検討すべきです。具体的には、契約書に関するファイル(初版・ファイナル版・締結版など)を、自社のサーバーやシステム上で管理するのが良いでしょう。また、昨今は、契約管理システム・文書管理システムなどのサービスも充実しているため、これらの利用を検討しましょう。

この記事のまとめ

契約業務の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!