雇用保険料とは?
計算方法や申告方法などを解説!
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- この記事のまとめ
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「雇用保険料」とは、労働者の失業などに備える雇用保険の保険料です。雇用保険の被保険者を雇用している事業主は、雇用保険料の申告・納付義務を負います。
雇用保険料の額は、年度中の賃金総額に雇用保険料率をかけて計算します。雇用保険料は労使双方が負担し、負担割合は事業の種類によって決まっています。
雇用保険料については、毎年6月1日から7月10日までの間に「年度更新」の手続きを行わなければなりません。新年度の概算申告と、前年度の確定申告を同時に行います。年度更新の手続きについては、社会保険労務士などが相談を受け付けています。
この記事では雇用保険料について、計算方法や申告方法などを解説します。
※この記事は、2025年9月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
雇用保険料とは
「雇用保険料」とは、労働者の失業などに備える雇用保険の保険料です。雇用保険の被保険者を雇用している事業主は、雇用保険料の申告・納付義務を負います。
雇用保険とは
「雇用保険」とは、失業した労働者や再就職を目指す労働者を支援するための給付を行う公的保険です。
労働者が解雇や自主退職によって職を失った後、すぐに次の仕事が見つからなければ、生活費に困ってしまうことがあります。このような労働者を経済的に支えるため、雇用保険から給付が行われます。
さらに、育児休業を取得している労働者や、再就職に繋がる教育訓練を自主的に受けた労働者なども、雇用保険の給付を受けることができます。
雇用保険の加入対象者
雇用保険の加入対象者は、以下の要件を全て満たす者です。事業主は、要件を満たす労働者を雇用保険に加入させる義務を負います。
- 雇用保険の加入対象者の要件
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① 雇用保険の適用事業所に勤務していること
労働者を1人以上雇用している事業所は、原則として雇用保険の適用事業所に当たります。② 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者は、雇用保険に加入できません。
ただし2028年10月以降は、1週間の所定労働時間が10時間以上の労働者まで、雇用保険の適用範囲が拡大されます。③ 31日以上継続して雇用される見込みがあること
30日以下の短期間に限定して雇用される者は、原則として雇用保険の加入対象外です。
ただし、直前の2カ月間の各月において18日以上同じ事業主に雇用されている場合は、継続して雇用される見込みの期間が30日以下でも雇用保険の加入対象となります。④ 被保険者とならない者に当たらないこと
以下のいずれかに該当する者は、雇用保険に加入できません。
・会社の役員(ただし、役員であっても従業員を兼ねている兼務役員は労働者性が強い場合、被保険者となることがあります)
・会社代表者の同居の親族
・雇用期間4カ月以内で、季節的業務に使用される人
・学生、生徒(卒業後も継続雇用される予定の者など、一部の例外を除く)
・家事使用人
・海外で現地採用される者
・臨時または内職的に日雇い労働を行う者
など
雇用保険料は労使双方が負担する
雇用保険料は、事業主と労働者の双方が負担します。
健康保険料や厚生年金保険料とは異なり、雇用保険料は労使折半(半分ずつ)ではありません。具体的な負担割合は事業の種類によって異なりますが(後述)、事業主の負担割合が多くなっています。
例えば令和7年度において、多くの企業が該当する「一般の事業」の雇用保険料率は、労働者負担分が0.55%、事業主負担分が0.9%とされています。
雇用保険料の計算方法
雇用保険料は「賃金総額」と「雇用保険料率」を用いて計算します。具体的な計算方法を解説します。
雇用保険料の計算式
雇用保険料の額は、以下の式によって計算します。
雇用保険料額=賃金総額×雇用保険料率
賃金総額に含まれるもの・含まれないもの
雇用保険料の計算の基礎となる「賃金総額」には、名称の如何を問わず、事業主が労働者に対して労働の対償として支払う全てのものが含まれます。
賃金総額に含まれるものと含まれないものとしては、以下の例が挙げられます。
- 賃金総額に含まれるもの
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・基本給
・賞与
・通勤手当
・定期券、回数券
・時間外手当、休日手当、深夜手当
・扶養手当、子ども手当、家族手当
・技能手当、特殊作業手当、教育手当
・調整手当
・地域手当
・住宅手当
・精勤手当、皆勤手当
・物価手当、生活補助金
・休業手当
・宿直手当
・雇用保険料、社会保険料(労働者負担分を事業主が負担する場合)
・昇給差額
・前払い退職金
など
- 賃金総額に含まれないもの
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・役員報酬
・結婚祝金
・死亡弔慰金
・災害見舞金
・年功慰労金
・勤続褒賞金
・退職金
・出張旅費、宿泊費(実費弁償に当たるもの)
・工具手当、寝具手当(労働者が自己負担で用意したものに対して支払う場合)
・休業補償費
・傷病手当金
・解雇予告手当
・財産形成貯蓄等のため、事業主が負担する奨励金等
・会社が全額負担する生命保険の掛金
・持家奨励金
・住宅の貸与を受ける利益
など
業種別の雇用保険料率(令和7年度)
令和7年度の雇用保険料率は、以下のとおりです。
| 事業の種類 | 労働者負担分 | 事業主負担分 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 0.55% | 0.9% | 1.45% |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 0.65% | 1.0% | 1.65% |
| 建設の事業 | 0.65% | 1.1% | 1.75% |
※園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については、一般の事業の雇用保険料率が適用されます。
雇用保険料額の計算例
以下の設例を用いて、実際に雇用保険料額を計算してみましょう。
<設例>
・令和7年度
・賃金総額は年間500万円
・インターネット広告に関する事業を行っている(=「一般の事業」に該当)
一般の事業の雇用保険料率は、労働者負担分が0.55%、事業主負担分が0.9%の合計1.45%です(令和7年度)。
したがって雇用保険料額は、以下のように計算されます。
労働者負担分=500万円×0.55%=2万7500円
事業主負担分=500万円×0.9%=4万5000円
合計=2万7500円+4万5000円=7万2500円
事業主は総額の7万2500円を納付する義務を負いますが、そのうち労働者負担分に当たる2万7500円を給与からの天引きなどによって徴収することができます。
雇用保険料率の改定|毎年見直される可能性がある
雇用保険料率は、毎年改定の検討が行われています。実際には据え置かれるケースもありますが、改定されるケースもあります。
雇用保険の年度は、4月1日から翌年3月31日までです。したがって、雇用保険料率が改定された場合は、改定後の雇用保険料率が4月1日から適用されます。
令和7年度分(令和7年4月1日~令和8年3月31日)は、前年度から改定が行われました。事業主においては、最新の雇用保険料率を確認しておきましょう。
雇用保険料の申告方法(年度更新)
雇用保険料の申告手続きは「年度更新」と呼ばれています。
年度更新には、新年度に係る保険料の概算申告・納付と、前年度に係る保険料の確定申告・納付の2つが含まれています。雇用保険の対象となる労働者を雇用している事業主は、毎年年度更新を行わなければなりません。
なお、労災保険についても年度更新が必要とされています。雇用保険と労災保険の年度更新は、まとめて行います。
年度更新の申告先・申告期間
年度更新に関する申告書の提出先は、以下のいずれかから選択できます。
- 年度更新の申告先
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① 金融機関
・日本銀行の本店、支店
・日本銀行の代理店、歳入代理店(全国の銀行、信用金庫の本店または支店、郵便局)② 所轄の都道府県労働局
③ 所轄の労働基準監督署
なお、全国の年金事務所内に設置されている「社会保険・労働保険徴収事務センター」でも申告書の提出を受け付けていますが、保険料の納付はできません。
年度更新の期間は、毎年6月1日から7月10日まで(該当日が土日祝日の場合は翌平日)とされています。ただし、始期または終期が土日祝日である場合は、翌平日に変更されます。
新年度の概算申告・納付
年度更新に当たっては、新年度の保険料に関する概算申告を行います。概算申告は、申告期間が属する年度の雇用保険料につき、支払う賃金の見込額に基づいて申告を行うものです。
例えば、2026年の6月1日から7月10日までに行う新年度の概算申告は、2026年4月1日から2027年3月31日までの期間の保険料について行います。
概算申告では、対象年度に支払う見込みの賃金総額を計算します。その際に考慮すべき要素としては、前年度の実績値や、新年度の昇給・賞与・新規採用・退職の予定などが挙げられます。
概算保険料の計算式は以下のとおりです。事業主は年度更新の申告を行う際、概算保険料を納付しなければなりません。
雇用保険料額(概算)=新年度の見込み賃金総額×雇用保険料率
上記の計算結果などを記載した概算保険料申告書を作成し、金融機関・都道府県労働局・労働基準監督署のいずれかの窓口へ提出するとともに、概算申告の雇用保険料を納付します。
前年度の確定申告・精算
概算申告はあくまでも、年度前半の時期における賃金総額の見込みに基づいて行います。残業代の支払いなどの関係で、実際に支払う賃金の額は当初の見込みからずれるのが普通です。
そこで年度更新の際に、すでに終了した前年度について確定申告を行い、概算保険料と実際の保険料の差額を精算することになっています。
例えば、2026年の6月1日から7月10日までに行う前年度の確定申告は、2025年4月1日から2026年3月31日までの期間の保険料について行います。
確定保険料の計算式は以下のとおりです。計算結果などを記載した確定保険料申告書を作成し、金融機関・都道府県労働局・労働基準監督署のいずれかの窓口へ提出します。
雇用保険料額(概算)=前年度に実際に支払った賃金総額×雇用保険料率
1年前に概算申告をした保険料と、確定申告の保険料が異なっている場合は、還付または納付によって差額を精算します。納付が発生する場合は、新年度の概算保険料と併せて納付しなければなりません。
年度更新は電子申請も可能
雇用保険料の年度更新は、電子申請も認められています。電子申請は、政府の「e-Gov」というウェブサイトを通じて行います。なお、資本金が1億円を超える法人など一部の法人は、必ず電子申請を行わなければなりません。
電子申請は、自宅やオフィスから24時間行うことができます。慣れれば事務負担の軽減につながるので、積極的に電子申請をご利用ください。電子申請の詳しい方法は、厚生労働省のウェブサイトで案内されています。
雇用保険料の申告・納付を怠った場合のペナルティ
雇用保険料の申告や納付を怠った場合や、本来納付すべき額よりも少ない額の雇用保険料を申告・納付した場合は、不足額の保険料を追加で納付しなければなりません。さらに、不足分の10%に相当する追徴金の納付が命じられ、さらに納期限後は延滞金の対象となる場合があり、金銭的な負担が増えてしまいます。
追徴金の納付を避けるためにも、雇用保険の適用対象者を漏れなく把握し、正確に雇用保険料の額を計算したうえで申告を行いましょう。
雇用保険料の申告・納付に関する相談先
雇用保険料の申告や納付については、都道府県労働局と労働基準監督署が相談を受け付けています。申告・納付の手続きについて分からないことがあれば、窓口で相談してみましょう。必要な手続きや注意点などを案内してもらえます。
雇用保険料の申告や納付の代行は、主に社会保険労務士が受け付けています。専門家に任せて正確な申告を行いたいなら、社会保険労務士に相談してみましょう。
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