雇用時の健康診断とは?
対象者や実施タイミング、検査項目、
必要な事前準備などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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雇用時の健康診断(雇入時の健康診断)とは、企業が従業員を雇い入れる際に行う健康診断のことです。労働安全衛生規則に基づき、企業に実施が義務付けられています。
・雇入時の健康診断の対象者は、正社員に限らず、パートタイマーやアルバイトなど常時使用する短時間労働者も含まれます。
・雇入時の健康診断では、法定11項目の検査を雇入れの直前または直後に実施します。
・未実施の場合は、是正勧告を受けるだけでなく、50万円以下の罰金が科される恐れがあり、社会的信用の低下を招く可能性もあります。本記事では、雇入時の健康診断について、基本から詳しく解説します。
※この記事は、2025年12月3日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
雇入時の健康診断とは
雇入時の健康診断とは、企業が新しく従業員を雇い入れる際に義務付けられている検査のことです。
主な目的は、採用後の健康管理です。事前に健康状態を把握しておけば、個々の特性に応じた業務調整が可能になります。
雇入時の健康診断は法律で定められた企業の義務
雇入時の健康診断は、労働安全衛生規則43条によって定められた法的義務です。
実施を怠った場合、労働安全衛生法120条により50万円以下の罰金が科される可能性があり、労働基準監督署からの是正勧告の対象となります。
対象者(パートタイマー・アルバイトなどの短時間労働者を含む)
雇入時の健康診断は、正社員だけでなく、「常時使用する労働者」の要件を満たすパートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者であっても実施義務が生じます。
常時使用する労働者とは、以下の1および2の要件を満たす者です。
- 期間の定めのない雇用契約であること、または有期契約であっても契約期間が1年以上(※)であること、あるいは契約更新により1年以上(※)使用されることが予定されている、もしくは既に1年以上引き続き使用されていること。
- 1週間あたりの労働時間数が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であること。
※ 特定業務従事者(深夜業、有機溶剤等有害業務従事者)については6カ月以上
上記の2に該当しない場合でも、1に該当し、かつ同種業務に従事する労働者の週所定労働時間のおおむね半分以上働いている方も、健康診断を実施することが望ましいとされています。
実施タイミング
雇入時の健康診断の実施タイミングは、雇入れの直前または直後とされています。実務的には、入社前のおおむね3カ月以内、もしくは入社後1カ月以内に実施するのが適切とされています。
ただし、労働者が入社日前3カ月以内に医師による健康診断を受けており、その結果を証明する書類(健康診断書)を提出した場合は、該当する検査項目を省略可能です。
そのため、企業としては内定通知や入社案内の段階で、3カ月以内の健診結果を持っているかを確認します。結果を持っている場合は提出を求めます。その際、検査項目に不足がある場合や、結果を持っていない場合は雇入時健康診断の受診を案内するのが一般的です。
法定の11の検査項目
雇入時の健康診断では、法律で定められた11の検査項目を全て実施する必要があります。具体的な検査項目は以下のとおりです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(赤血球数、血色素量)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質検査(LDL コレステロール、HDL コレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査(安静時心電図検査)
定期健康診断では、年齢によって心電図や血液検査などを省略できる場合がありますが、雇入時の健康診断では全項目の実施が必須です。そのため、健診機関へ予約する際は、「雇入時の健康診断」専用コースを指定するか、法定の11項目が網羅されているかを確認してください。検査項目が不足している場合は再受診が必要となるため注意が必要です。
雇入時の健康診断と定期健康診断・特定業務従事者の健康診断との違い
企業が実施すべき健康診断は、雇入時の健康診断だけではありません。労働安全衛生法では、雇入れ後も労働者の健康を継続的に管理するため、複数の健康診断が義務付けられています。代表的なものが、年1回実施する定期健康診断と特定業務従事者の健康診断です。
定期健康診断とは
定期健康診断は、企業が1年に1回実施することが義務付けられている検査です。雇入時の健康診断とは「検査項目の省略ができるかどうか」という点が異なります。
定期健康診断では、労働安全衛生規則44条2項により、35歳と40歳の節目年齢を除く40歳未満の者について医師が個別に判断した場合に限り、血液検査や心電図検査の省略が認められています。
一方、雇入時の健康診断では、対象者の年齢にかかわらず、法定11項目を全て実施しなければなりません。
特定業務従事者の健康診断とは
特定業務従事者の健康診断は、深夜業をはじめ、有機溶剤や特定化学物質を扱う業務、電離放射線にさらされる業務など、労働安全衛生規則13条の業務に従事する労働者を対象とした検査です。
配置替えの際、および6カ月以内ごとに1回の実施が義務付けられています。
代表的な対象業務である深夜業とは、午後10時から午前5時までの時間帯に、週1回以上または月4回以上勤務する業務を指します。
深夜業務や、有害物質・放射線を扱う業務に従事する予定の労働者を採用する際は、雇入時の健康診断の項目には特定業務従事者の健康診断の項目が含まれているため、改めて実施する必要がありません。
雇用時の健康診断に関し企業が行うべき体制整備
雇入時の健康診断を適切に実施するには、企業側で運用ルールや依頼先を定めておく必要があります。一般的には、以下の流れで体制整備を進めます。
- 健康診断の費用負担について明文化する
- 健康診断を実施する医療機関を決める
- 医療機関を予約する
健康診断の費用負担について明文化する
雇入時の健康診断の費用は、会社負担とするのが原則です。厚生労働省は「事業者に実施義務がある以上、費用も当然事業者が負担すべき」との見解を示しています。
就業規則や内定通知書、健診案内に「費用は全額会社が負担します」と明記することが一般的です。費用負担が不明確な場合、内定者の不安や問い合わせの原因となります。
具体的な支払い方法としては、会社指定の医療機関で請求書払いにして内定者の窓口負担をなくす方法が一般的です。
ただし、指定外の医療機関を利用する際は、内定者が一時的に立て替え、領収書で精算する形をとります。
健康診断を実施する医療機関を決める
健康診断を実施する医療機関は、会社指定の医療機関に統一する方法と、労働者が個別に医療機関を選択する方法があります。
会社指定の医療機関に統一する場合、健診結果を一括管理でき、産業医との連携や5年間の保存義務への対応が効率的です。一方で労働者が個別に医療機関を選択する場合、検査項目の不足に注意が必要です。受診後は、11項目全て含まれているか確認します。
医療機関を予約する
医療機関の予約は、会社が行う方法と、入社予定者自身に行ってもらう方法があります。入社予定者自身に予約してもらう場合は、受診期限と予約方法を明確に案内することが必要です。
案内時に案内するべき事項は、以下のとおりです。
- 受診期限
- 指定の医療機関リスト、またはWeb予約可能な医療機関のURL
- 予約する健診コースの名称(「雇入時の健康診断・法定11項目」)を伝えるよう指示
- 入社前3カ月以内の健診結果がある場合は、結果提出で代替可能であること
予約完了後は、予約日時の報告を受け、受診状況を管理します。健診結果の提出期限もあわせて設定してください。
雇入時の健康診断の費用を最適化する方法
雇入時の健康診断は法的義務であり、対象従業員全員に実施する必要があるため、企業にとって無視できないコストです。しかし、以下のような工夫で、費用を最適化できます。
- 健康保険組合の補助・割引制度を活用する
- 自治体の企業向け健診制度を活用する
健康保険組合の補助・割引制度を活用する
一部の健康保険組合では、「入社日以降に受診する」のような条件を満たすことで、組合の健診コースを雇入時の健康診断として代用できるケースがあります。
利用できれば費用負担を抑えられる可能性があるため、自社が加入している健康保険組合の規定を確認し、「雇入時の受診でも補助対象になるか」を問い合わせることが重要です。
自治体の企業向け健診制度を活用する
一部の自治体では、商工会議所(東京商工会議所や大阪商工会議所など)と連携し、地域の中小企業向けに集団健診や割引料金での健診を提供している場合があります。
自治体によって制度の有無や内容は異なるため、まずは自社が所在する市区町村の商工会議所や保健所に問い合わせてください。
雇入時の健康診断後に企業がすべきこと
雇入時の健康診断は、実施して終わりではありません。雇入時の健康診断後に企業がすべきことは、以下のとおりです。
- 健診結果を本人に通知する
- 健康診断個人票を作成し、5年間保存する
- 健康診断の結果について医師等から意見聴取する
- 診断結果を配属先や業務内容に反映させる
- 健康診断の結果に基づいて保健指導を行う
- 定期健診と兼ねる場合は労働基準監督署長への報告が必要になる
健診結果を本人に通知する
雇入時の健康診断が完了し、医療機関から結果が届いた後、事業者は労働安全衛生法66条の6に基づき、健康診断の結果を遅滞なく本人に通知する義務があります。異常の有無にかかわらず、全員に通知しなければなりません。
健康診断の結果は要配慮個人情報に該当するため、取り扱いには細心の注意が必要です。書面で渡す場合は親展の封筒に入れて直接手渡すか、Web健診システムを活用し、健診機関から本人へ直接結果データが通知される仕組みを整備してください。
なお、多くの医療機関では、本人用の結果通知書を会社経由ではなく、本人の自宅へ直接郵送する対応をとっています。一方、法定健診項目については事業者に保存義務があるため、事業者は医療機関から会社保管用の結果を受領する必要があります。
健康診断個人票を作成し、5年間保存する
健康診断の結果に基づき「健康診断個人票」を作成し、5年間保存することが労働安全衛生規則51条で義務付けられています。
厚生労働省の通達により、健診機関から発行される結果シート(法定の11項目が網羅されているもの)をそのまま「個人票」として扱うことが認められていますが、その場合は別途「医師の意見」欄を設けるなどの対応が必要です。結果シートには「医師の意見」欄がないケースがあるためです。
医師の意見の記入が必要な場合は、産業医等から就業上の措置に関する意見を聴取し、結果シートに追加した医師の意見欄に追記する必要があります。
保存方法は、紙媒体で鍵付きの収納場所に保管する方法に加え、スキャナ保存や健診データ(XML形式など)による電子保存も認められています。電子保存を行う場合は、厚生労働省の定める要件に沿ったセキュリティ対策(アクセス権限の制限や改ざん防止措置など)が必要です。
健康診断の結果について医師等から意見聴取する
健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、事業者は労働安全衛生法66条の4に基づき、健康診断実施日から3カ月以内に医師または歯科医師の意見を聴取しなければなりません。
従業員数50人以上の事業場であれば、産業医に結果を確認してもらい、就業判定(通常勤務、就業制限、要休業)を受けます。
産業医の選任義務がない50人未満の小規模事業場では、地域産業保健センター(地さんぽ)を活用してください。地域産業保健センターは公的な支援事業であり、無料で医師による意見聴取を受けられます。異常所見がある場合は、事業者が「就業に問題はない」と自己判断せず、必ず医師の判断を仰ぐ体制を整えることが望ましいです。
診断結果を配属先や業務内容に反映させる
医師から残業禁止や高所作業不可などの就業制限や、要休業といった意見が示された場合、事業者はその内容を十分に考慮する必要があります。そのうえで、医師の意見に基づき対応が必要と判断される場合は、労働安全衛生法66条の5に基づき、適切な就業上の措置を講じなければなりません。
具体的には、当初予定していた配属先を変更して身体的負荷の少ない業務にしたり、入社直後は労働時間を短縮したりするなどの対応が求められます。
措置を講じる際は、対象となる労働者本人とも十分に話し合い、医師の意見と会社の対応方針を説明する必要があります。
健康診断の結果に基づいて保健指導を行う
健康診断の結果、特に健康保持に努める必要がある労働者に対しては、医師または保健師による保健指導を受けさせるよう努める必要があります。これは、雇入時の健康診断も対象です。
ただし、入社直後は手続きや業務習得で多忙なケースが多いため、まずは要精密検査や要治療といった緊急性の高い判定への受診勧奨を最優先に対応します。
一方で、食事や運動などの生活習慣改善に関する保健指導については、入社直後に限定せず、入社後の定期健康診断のサイクルに組み込んだり、産業医面談の機会を活用したりするなど、中長期的な視点で継続してフォローできる体制をつくる必要があります。
また、40歳以上の労働者が対象になる「特定保健指導」については、実施主体である健康保険組合等からの案内に基づき、業務時間内の面談を認めるなど、適切なタイミングで受診できる環境を整えてください。
定期健診と兼ねる場合は労働基準監督署長への報告が必要にある
雇入時の健康診断の結果については、所轄労働基準監督署長への報告義務はありません。50人以上の事業場であっても、報告が必要なのは定期健康診断の結果であり、雇入時の健康診断は対象外です。
ただし、入社時期が会社の定期健康診断の実施時期と重なり、雇入時の健康診断と定期健診を兼ねて実施した場合は、報告対象に含まれます。常時50人以上の事業場では、定期健康診断結果報告書にその人数を含め、遅滞なく所轄労働基準監督署長へ提出する必要があります。
なお、報告義務の有無にかかわらず、「健康診断個人票」の作成と5年間の保存は全事業者に義務付けられています。労働基準監督署の調査時には提示を求められるため、適切に管理してください。
雇入時の健康診断を怠った場合の企業リスク
労働安全衛生法は、事業規模や雇用形態にかかわらず、「常時使用する労働者」を雇い入れる企業には、雇入時の健康診断の実施を義務付けています。実施義務を怠った場合、以下のような企業リスクがあります。
- 法律違反により罰則の対象となる
- 社会的信用の失墜を招く
法律違反により罰則の対象となる
雇入時健康診断を実施しない場合、労働安全衛生法120条に基づき50万円以下の罰金が科される可能性があります。
実際には、労働基準監督署の定期監督や従業員からの申告で未実施が発覚すると、まず出されるのが是正勧告です。また、勧告に従わない場合や悪質と判断された場合は、書類送検され罰金刑が科されることがあります。
社会的信用の失墜を招く
健康診断の未実施や不適切な対応は、労働安全衛生法違反となります。
違反が発覚した場合、労働基準監督署からの是正勧告の対象となるだけでなく、悪質な場合は「法令遵守意識が低い企業」として、社会的信用を損なうことになります。
このような事実は、口コミサイトで「ブラック企業」といった評判につながる可能性があり、優秀な人材の採用が困難になるほか、既存社員の会社に対する信頼喪失や離職を招く原因です。
雇入時の健康診断に関するよくある質問
雇入時の健康診断において、よくある質問に回答します。
健康診断の結果によって内定取り消しはできますか?
原則として、健康診断の結果のみを理由に内定を取り消すことはできません。
内定が出された時点で労働契約は成立しているとみなされるため、内定取り消しは解雇と同等の法的制約を受けます。内定取り消しが認められるのは、「内定を出した時点では知ることができず、予見もできなかった健康上の問題」が発覚し、その結果として健康状態により業務遂行が著しく困難で、配置転換などの配慮を行っても就業が不可能である場合に限られます。
例えば、自動車の運転を含む業務で採用したが視力が法定基準に達しておらず、視力の矯正を行なってもなお業務に必要な運転免許の要件を満たさない場合など、業務の前提条件を欠くケースです。
安易な取り消しは不当解雇として訴訟リスクを招くため、判断に迷う場合は弁護士に相談することをおすすめします。
入社日までに健康診断が完了しない場合はどう対応すべきですか?
入社日までに健康診断の予約が取れない場合や結果が出ない場合でも、入社後速やかに受診させれば問題ありません。
厚生労働省の通達では「雇入れの直前または直後」とされており、実務上は、入社前3カ月以内から入社後1カ月以内に受診が完了すれば適切とされています。ただし、未実施のまま放置すると法令違反となるため、遅れてでも必ず医療機関で健康診断を受診させ、会社として健診結果を取得・保存することが必要です。
また、本人が過去3カ月以内に医師による健康診断を受けており、法定項目を満たす結果証明書を提出できる場合は、労働安全衛生規則43条に基づき新たな受診は不要です。
雇入時の健康診断を実施した後は定期健康診断を省略できますか?
雇入時健康診断を実施した場合、その実施日から1年間は、その検査項目に相当する定期健康診断の項目を省略することができます。
労働安全衛生規則44条3項では、定期健康診断は1年以内ごとに1回実施すればよいと規定されています。雇入時健康診断を実施してから1年が経過していない場合、定期健康診断の対象から外しても法的な問題はありません。
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監修者












